変わった目を持つデメニギス

ハンク・グリーン氏:アメリカの西海岸のさらに向こう、太平洋の奥底に、ある魚が住んでいます。長く膨らんだ目と透明な頭を持っているという点で、デメニギスは少し変わっています。

生物学者はこの魚についてあまり情報を持っていません。ほかの深海魚と同じで、デメニキスは捕獲しにくいからです。海面600~800メートルに生息しており、自然な姿で観察することは難しいのです。

しかし何年もかけて、調査員は海面で網にかかった標本や、一度だけ成功した写真画像などから研究をしようとしてきました。あまり驚きではないのですが、デメニキスの適応能力はまさに、生き抜くために必要とされているものでした。

まず、目です。

通常、目があるべき小さな口の上には小さな黒い丸がありますが、このことではありません。それは目ではなく、通常は鼻孔である、ナーレと呼ばれるものです。実はこの魚の目はナーレの後ろにある樽型の緑色の部分なのです。

それが名前の由来にもなりました。透明な頭の上部から直接出ているように見えます。デメニギスはチューブ状の目を持つことで知られています。目がチューブの形に似ているのです。

そしてデメニギスは目をある方法で使用します。光を集め焦点を当てるという点で、目というのはよくカメラレンズと比較されます。レンズが大きければ光を多く集められます。これが、暗い海底で餌を捕獲する時などに重要になります。

しかし、デメニギスが集める光では足りません。そのチューブ状の目はずっと遠くのものまで見ることができます。頭の中に双眼鏡があるようなものです。そのため視界の範囲は極めて狭いのですが、大丈夫なのです。なぜなら、ほとんどの場合彼らの目は上しか見る必要がないからです。これはデメニギスが餌のすぐ下に生息しているためです。彼は休止状態で、目が上を向き、食べ物を探しているのです。

不思議な姿には理由が

2007年に、モントレーベイ水族館調査機関の調査員たちは生きたデメニギスをよく見ようとし、彼らの目がもっと特殊な適応をしていたことを発見しました。1つ目が、目が緑色だということです。

生物学者はこれについて、獲物がよく見えるようにするためだろうと考えました。私たちはデメニギスがなにを食べるのかについてはよくわかりませんが、科学者たちはクラゲや小さな魚を捕食するのだろうと考えています。

クラゲはたびたび生物発光をします。これはデメニギスがクラゲの光を探していることを意味します。しかし、デメニギスは食べ物を探して上を見ているので、かなり深い海の底にいても日光に邪魔をされます。そのことが生物発光をしのぐほどの明るさにさせるのです。

目の中の緑色の色素はフィルターのような役割を果たしているのでしょう。見える風景から日光を取り除き、おいしそうな餌の光のみが残るようになります。しかしデメニギスが次の食事に目星をつけると、それを追いかけるのに問題が起こります。

研究者たちはデメニギスが強いトゲの触手のあるクダクラゲから食べ物を盗むと考えています。巨大で感覚が鋭く、光を集める目にトゲが刺されば、デメニギスにとっては楽しいわけがありません。おそらくそれが彼らの頭が透明である理由でしょう。頭には液体が詰まっており、どんなトゲを持つ触手からも目を守れるように防御壁を形成しています。

しばらくの間、科学者を悩ませていた疑問とは、デメニギスが一度食べ物を入手したら、それをどうやって食べているのか、ということです。

チューブ状の目を持つ動物はみんな目をあまり動かすことはありません。しかし、デメニギスの目はいつも上を見ているので、彼らの口が視界に入ることはありません。魚にとって、食べ物の上に口があることはかなり大変なことでしょう。

モントレーベイの調査員は私たちが今まで知らなかったことを発見しました。デメニギスは目を回して前を見ることができるということです。デメニギスの身体が直角を向いているときに見られる行動です。彼らは食べ物に向かって上へと泳いでいるとき、自分の顔の前で見ようと頭の中の目を回せるのです。そうすることで、デメニキスは食べ物をがむしゃらに食べることが簡単になるのです。

私たちはまだデメニギスについて学ぶことがあるのです。食事の時いつも顔を刺される可能性があることを除けば、透明な頭を持って過ごす人生はそんなに悪くないかもしれませんね。