人間は昔からドラッグをやっていた?

マイケル・アランダ氏:ドラッグでハイになって楽しむ風習は現代人ならではのものであり、大昔の人たちはそんなこと考えもしなかった、なんて思われがちですがそんなわけありません。

実際には人々は5,000年も前からコカの実やメスカル豆、ペヨーテサボテンなどの幻覚作用のある植物を育て、使用していたんです。

私たちの祖先はそういったドラッグを実は何百年、何千年も前から使っていたのではないかという科学者たちの意見もあります。大昔の人々がドラッグを特別な式典や儀式の時に使っていたという話は耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。

しかし実際にはさらにそれよりも普及していたと言われていて、健康によいとされ、サプリメント感覚で使用されていたこともあるようです。たまにはそれが麻薬であることを知らずに食べてしまっていたこともあったようですよ。それは最悪ですよね。

最近のドラッグは科学的にいろんな効果のある薬物を組み合わせてより変わった体験ができるように作られています。もちろん大昔の人たちも同じことを考えましたが彼らには設備の整った研究室なんかはありません。ではいったいどうやって効果的なドラッグを作っていたんでしょう?

今日は大昔のドラッグ精製の例をいくつか紹介しますが、それが気持ち悪くないという保証はできませんよ。

大昔の人々がどれだけ麻薬を大切にしていたかは、彼らがどのように麻薬を製造する機器を大事にしていたかという点から知ることができます。

1,500年前、東南アジアへと渡ったインディアンたちは麻薬をとてもとても大切に扱っていたようです。なぜなら彼らはドラッグを精製するありとあらゆる道具をアメリカ本土西岸から400マイルも離れた新境地まで運び込んだのですから。

彼らの持っていたさまざまな道具や陶器製のボウルはおそらくコホバと呼ばれる幻覚作用のある麻薬をうまく摂取するために使われていたのでしょう。

知らないうちにドラッグを摂取している可能性も?

想像してみてください、もしあなたが自分でも気づかないうちにドラッグをやっていたとしたら? そんなのすごく嫌じゃないですか?

しかし麦角カビを摂取した場合、そういった状況を引き起こしてしまうことが大いにあり得るのです。麦角カビとは私たちもいつも口にする色々な種類の麦に発生するカビの一種で、見かけは緑がかった黒い小さな粒上の麦の粒にそっくりなのですが、普通の麦とは違い麦角カビはリセルグ酸という成分を含みます。

リセルグ酸には強力な幻覚作用があり、リセルグ酸ジエチルアミド、つまりLSDの主成分です。

さらに麦角カビにはアヘンに含まれるアルカロイドという成分やべラドナ、ストリキーネという猛毒も含まれ、どんな動物でも少量を摂取するだけで物凄いトリップ感とともに体の壊疽や流産などの深刻な症状を引き起こします。

麦角カビ中毒は主に農村の間で起こったといわれていて、麦角カビを摂取した人々が突如発狂し始めたことから、人々は魔女の仕業だと思い込んだと言います。

ベニテングタケというキノコをご存知ですか? 地球の北半球に幅広く生息する脳に影響をもたらす毒キノコなのですが、「毒キノコ」と言われてあなたが頭のなかに思い描く毒キノコ像そのままの見た目をしています。

当然このキノコには強い毒性があるのですが、そんなことはお構いなくこのキノコを食べる人たちがいるのです。そう、シャーマンたちです。彼らは大昔から儀式のたびにこのキノコを食してきました。

ここではスカンジナビアの先住民、サーミ人を例に挙げてみましょう。彼らはとても賢いやりかたでこのキノコの強い毒性を抜きます。

そのやり方とは、キノコをトナカイで「濾す」のです。トナカイはこの毒キノコが大好きなのですが、それがトナカイがキノコの作用でハイになっているからなのかどうかは定かではありません。

キノコの虜のトナカイは雪を掘り漁って、より新鮮な毒キノコを探し食べ歩きます。そんなトナカイをサーミ人のシャーマンたちは自分たちの集落へと招き入れ、さらにキノコを与えます。そして取るのです……副産物を。

トナカイを通すことによって、ベニテングタケの強い幻覚作用のある物質だけを抽出することができるわけです。サーミ人たちはその副産物、つまりおしっこを集め、飲みます。そしてその作用を楽しむのです。

トナカイは大好きなキノコをたくさん食べることができ、人間は毒性のないベニテングタケの作用を楽しむことができるのです。おしっこを飲む、というところさえとくに気にしないでいられるのなら、みんながハッピーになれますね。