技術力をビジネスに変えるには?

畑浩史氏(以下、畑):こちらからの質問はこれぐらいにして、会場からぜひ質問を受け付けたいと思います。

質問者1:BASEの藤川(真一)です。今、うちの鶴岡(裕太)を支えるということで、CTOというかたちでコミットしてるんですけど、もともと起業したかったということもあって、やっぱりもう一度起業したいなという気持ちはあるんですね。

だけど、ついついエンジニアが考えると、どうしても実績がなかったりとか、新しいものに目がいっちゃって、既存のものをなにか……という感覚があまりないんですよね。

そうはいってもお金がないから、最初の一歩を商売にして稼ぐ力といいますか、そういうものはどうしたらいいのかなって。アドバイスいただけると。

亀山敬司氏(以下、亀山):まあ、まず頭のなかを変えないとダメだよね。

さっきの話だけど、CTOが技術的なもので、この技術に惚れてるとか、この技術が素晴らしいとか、いいものを作りたいというクリエイティブな考え方だけをしてると、なかなか商売にならない。

もちろん技術が世界を変えることはある。例えば、iPhoneみたいなものは技術力かもしれないけど。でも、それをプロモーションしたり、ちゃんと金勘定したり、在庫をどれだけ持ったら適当なのかという、やっぱりそういう数字的なかたちが必要なんだよね。

だから、どうしても新しいものができて、それが革命を起こして世の中を変えたときに、なにかそこに対する想いがあるんじゃない? たぶんエンジニア系の方たちは。

だけど、ビジネスというのは、どこと戦うんだろうかという妥協の連続だし。すごい損得と、あとはズルさもいるしね。けっこう汚れた世界よ。俺なんか汚れまくってるよ(笑)。超汚れたからね。

(会場笑)

:どんな汚れ?

亀山:清らかな心だと、なかなかその波を戦えないんだよ。俺と君たちとで商売をやった時に、負ける気がしないわけ。この10数年を見てるとね。

(会場笑)

亀山:どう見たって、俺の手のひらで転がしてやるっていう(笑)。

足りないものを補わないと会社は作れない

ただ今、エンジニアとか、さっきのDMM.makeとかも、そういった人間たちが商売しやすいように考えてる。

例えば、ニコニコ動画のクリエイターやYouTuberが生まれるのも……別に商売人でなくたって、プラットフォームがあると、部屋から1歩も出ないオタクでもクリエイターでやっていけるみたいなもので。

DMM.makeで、「僕、モノしか作れないんです」という人でも、「いいものがあれば商売できるかも」という、そういう世界観が作りたいなというのはあるわけよ。

そういうのがインターネットのおかげで進んできてるから、そういうふうにクリエイターとかエンジニアが世の中に出る方法はあると思うんだよね。

ただ、スタートアップはまたちょっと違うんだよね。会社を作って、金を集めて、あっちこっち行って頭下げてね。上の(IVSの)CEOの会場なんか見たらすごいよ、みんな事業プレゼンうまいよ。エンジニアはあんまりしゃべれないからね。

だから、うまいぐらいに世の中の大人をたぶらかしてワイワイ、「僕たちは未来のこうです。なんとかします」ってやりながら金を集めて。それで株式公開したりとかさ。大変よ。

逆に言うと、それをやりたかったら、自分が経営権を渡せる誰かに頼んで、自分は株持つけど、マネジメントはお前にやらすからとか。「俺の技術を活かすために、お前の力がいるんだ」とかね。

たぶん、そんなふうに自分が足りないものを自覚して、足りないものを補わないと会社なんて作れない。所詮会社っていうのは寄せ集めなんだよね。

だから、俺なんかは、逆に言うとそういうものがないじゃない。エンジニアとかクリエイティブがないからそういう人たちが必要なわけよ。

だから、そういう人たちは尊重しないといけないし、そういう人間たちを食わすような仕組みを考えるとか。そのために商売をしてるけど。

それはやっぱり、お互いに足りないものを誰かに求めて。夫婦でも同じだよね。そのときに、技術のことで「俺はこれは譲れないんだ」みたいなことを言ってると、マネジメントが「やってられない」みたいな感じになるよね。

だから、本当に自分たちが実現したかったら、その権利を誰かに渡すぐらいで、株持つとかそういうのがいいと思うんだよね。ということでいいかな?(笑)。

質問者1:ありがとうございます。

:他にいらっしゃいますか?

MBAよりも安くて役に立つのは…

質問者2:安武(弘晃)と申します。所属は今、無職に近いんですけれども(笑)。

亀山:ん?

:元楽天のCTOの方です。

質問者2:商売できるかどうかの知識とかノウハウ、MBAって役に立ちますか?

亀山:ああ、なんとなく立つんじゃないかな。俺もあんまり受けたことないからね(笑)。

(会場笑)

亀山:でも、「役に立たない」とか言うとさ……最近俺、GLOBISとかも出てるから、いろいろ文句言われたら困るしさ(笑)。

(会場笑)

亀山:でも、知識としてはいいと思うよ。俺はほとんどやったことないから、自己流なんだよ。けっこううちの会計士とかCFOに「俺、新しい仕組みを考えて、こうやったらこうできるんだ」とか言うと、「いや、これなんとか理論でありますよ」とか言われちゃって……。「えっ、俺の発見じゃないの?」みたいな(笑)。

(会場笑)

亀山:そういうのがあるわけ。つまり、俺が実践のなかで、「こうやればうまくできるな」と考えたものが、もう何年か前に生み出されてる方式であったりするんだよね。そういうことがある意味手軽に手に入る。

俺もそれを知ってれば、昔からそれをできたかもしれないけど、やっていく中で辿り着いたのがあるよね。

それでいうと、生き方なんかも実践のなかで学んでいくという。サバイバルで、ほっとかれたことで学ぶこともあるけど、初めから火の起こし方を聞いておくのも手だよね。

だから、やらないよりもやっておいたほうがいいし、とくに今のエンジニアの人たちだったら、むしろ「商売ってどういうもんだ?」ということは、あんまり興味ないと思うんだよね。興味ないというか、たぶん知らないことが多いと思うから。

かといって、いきなりそれで「店やれ」とか、そういうこと言っても大変だろうから。やっておいてもいい思う。

まあその程度なんだけどね(笑)。やったからってわかった気になっちゃダメよ。まあやっておいて損はないよね。NewsPicksで俺のコメント読んどいてもためになる(笑)。

:MBAよりも。

亀山:MBAよりも安いよ。タダ(笑)。

(会場笑)

:他いらっしゃいますか?

ピンクオーシャンで戦う苦労

質問者3:すごいいろんな領域でチャレンジされてるんですけれども。逆にこの領域はもう手を出さないというようなところって、なにかありますでしょうか?

亀山:とくにないんだけど、捕まりそうな領域。そこはね(笑)。

(会場笑)

:なるほど。「捕まりそう」ですか? 明らかに「捕まる」というんじゃなくて?

亀山:昔は「捕まりそう」ならやったんだよね。

:グレー?

亀山:だから、俺はピンクオーシャンとグレーオーシャンをやるみたいな。

(会場笑)

亀山:だったんだけど、最近はピンクはいいけど、グレーはやめておこうみたいな。

:それはなにか転換期はあったんですか?

亀山:目立ってきたからね。そろそろやられる頃だと思う。だから、今もけっこうギリギリのところを生きてるんだよね。来年は捕まってるかもしれない。

(会場笑)

亀山:俺はよく目立って、もともとエロをやってて、叩けばピンクのほこりが出る体なわけよ。だからやろうと思えばなんとでもなるわけ。世の中の雰囲気的にもさ。

社員の横領で「マルサ」がガサ入れ

:昔、マルサのガサ入れが入ったとかいう。

亀山:ああ、昔入ったね。あれもぜんぜんお咎めなしなんだけど。うちの会社のやつが横領してて。その口座をもとに、うちにマルサが入ったことがあるんだけどさ。

その時も、もうエロだから「なにを隠してるんだ!」みたいな。総勢200〜300人がわ〜っと来てさ。大捕り物だよ。

俺も尾行されてたらしいのね。「ちゃんと真面目に家帰ってますね」とか「愛人いないですね」とかね。いろいろ調べてるなと思うけどね(笑)。

(会場笑)

亀山:結局しらみ潰しに探してなにも出てこなくって、帰っていったという結果なんだけど。まあでも、自信満々で来たよね。

:絶対なにかある。こいつなにかやってると。

亀山:そいつが横領してた通帳で3億円ぐらいあったんだけど、それは別の裏口座を作ってて、俺も知らなかったやつだったんだけど。結局それ「責任とって払え」と言われたから払ったけどさ。

そいつを刑事告訴しないという条件でね。そいつに「一応払ってやるけど、お前クビ」みたいな。そんな感じで終わったけど。

結局、税務署だろうが警察だろうが、とにかく「なにか悪いことしてるだろう」ってまず来るわけよ。そういう点で言うと、世間的にはやっぱりみんなそういうふうに思うことはあるね。

でも最近は本当に、昔に比べたら税務署も優しくなったし。経産省とか総務省とか、いろんな面でなんとなく優しくなってきたなというのはあるかな。

でも、やっぱりこれは世間の流れとともにいろいろあるから、そういう時のために目立たないようにと思って顔は出さないで、なるべくこういう公な場所でしゃべって、少しずつ味方にしていこうみたいな。

(会場笑)

亀山:ちょっとずつ評判よくしていこうという。けっこう地道にやってるんだよ。だから、テレビとか出てバーってやって「オリャーッ」とか言ってるとさ、なんかいい気になってるとかね。だいたい反対くるじゃない?

だから地道にコツコツやってるね。みんなに酒をおごりながら、ちょっとずつ手なづけていこうと思って。そんな感じ。

(会場笑)

:質問者の方、これで大丈夫ですか?

質問者3:ありがとうございました。

亀山:途中で質問忘れちゃったけど、まあいいか(笑)。

(会場笑)

:あと1問ぐらいできますけど。みなさん大丈夫ですか?

亀山:お、金髪、金髪が手を挙げてる。DQN系だな。

(会場笑)

経営者のお金の使い方

質問者4: 先ほど「明日死ぬわけじゃないんだから、挑戦でお金使ったほうがいいよ」とおっしゃったと思うんですけれども。

弊社今、1億円ぐらいの規模の会社で、実際にそのぐらいの規模のときに、亀山会長が挑戦でお金を使ったとか、そういった話があったらお聞かせください。

亀山:ん? 1億円規模のときに、挑戦でお金使ったかって?

質問者4:どういう挑戦にお金を使われたのかなって。

亀山:1億円ぐらいの規模の頃?

質問者4:はい。

亀山:挑戦してなかったね。そこはね(笑)。

質問者4:マジっすか(笑)。

(会場笑)

亀山:すぐ使っちゃうからね、1億円ぐらい。まだ早いな。10年早いわ。コツコツやってな(笑)。

質問者4:事業がんばります。

亀山:今はコツコツやって、他に行ってる場合じゃないね(笑)。もうちょっとちゃんと足元見て。

自分の稼ぎがあったなかの、利益分ぐらい出すのはいいと思うんだよね。だからいくら稼いでいるのかというのは意外と目安で。集めた金って実はぜんぜん目安じゃないわけよ。1億円って利益?

質問者4:いや、じゃないです。

亀山:集めた金だろう?

質問者4:はい。

亀山:集めた金はすぐなくなるから。会社とかだとあっという間になくなる。規模にもよるけどね。本当に半年でなくなっちゃう金だし。

それで一番のポイントは、やっぱり利益を生む構造が必要なので、利益を生んだときに、毎年1億円生んだとしようか。じゃあ、税金を払って6,000万円ぐらい残ったとしようか。

その分ぐらい投資していくというのは、今のITならまだ伸びてるから、その分はなくなってもいいよ。ちょっとは社員に分けてやって、あとは投資に回すみたいな感じがいいんじゃないかな。

勘違いしがちなのは、集めた金と稼いだ金はまったく違うからね。稼ぐ構造ができて。それがゆとりとして、毎月こんだけ利益が入ってくるんだから、その分投資に回していこうっていうのがいいよね。

でも、いい具合にバッと金が集まったら、パッと使っちゃう。けっこうそれで資金ショート起こす会社はいっぱいあるよね。なのでまあ、まだ早い(笑)。

質問者4:ありがとうございます。

コンピュータに向かうよりも世間に向かうべき

:では、お時間になってきたので、またご質問ある方は次の懇親会でしていただけたらと思います。最後に、亀山会長からなにかメッセージをひと言いただければと。

亀山:私もここまでやって来たので、収穫が欲しいので、ぜひともみなさん会社を辞めたくなったらうち来てください。

(会場笑)

亀山:そんなときは1つの候補として、アフリカでもいいし、アフリカじゃなくてもいいけどね。あんまり希望者は少ないけどさ(笑)。けっこうおもしろいこともあるよ。

これからの時代、CTOでもやっぱり次の10年、何で食ってくか考えなきゃいけない。

さっきのCTOに何を求めるかというと、ビジネスのことも求めるけど、やっぱりこのCTOが古いか古くないかというか、つまり今の時代にちゃんとついていってるかは、やっぱり経営者は考えるわけ。

だから、常に新しい勉強ができてるか、昔からいるからいいのか、というのはやっぱり考えるよね。そのへんで大きい組織は変わってくるわけだからね。だから、やっぱりお勉強だよ。

なので、その辺で言うと、さっきのお金のチャレンジをしなくてもさ、自分の勉強のチャレンジの枠はもっと超えたほうがいいと思うかな。

だから、もっといろんな、NewsPicksでもなんでもいいよ。そういうのを見ながら「次はなんだ?」ということは広く捉えないとさ。

自分たちが置いてけぼりになるとさ、CTOじゃなくなるよね。会社がダメになっちゃうからね。ということなので、やっぱりコンピュータに向かうよりも世間に向かうべきかなという気がします。はい、そんなところで締めくくっちゃいました(笑)。

:ありがとうございました。それではこれでセッションを終わりたいと思いますので、最後に亀山さんに盛大な拍手をお願いいたします。

(会場拍手)