CLOSE

公開シンポジウム「ドローンとデジタルコンテンツの未来像」(全7記事)

ロボット産業の蓄積をドローン分野で活用するには 共通する4つの課題をコンサルタントが語る

航空法の改正手続きが進むなど、産業面での活用の道筋が作られつつあるドローン。医療から物流、アートなど幅広い分野での展開が期待されますが、これからのドローン産業を担う人材育成も求められています。デジタルハリウッド大学ではドローンについてのスクールの設立を前に、2015年7月22日にシンポジウムを開催。さまざまな立場から発表が行われました。このパートでは、コンサルタントとして10年間ロボット産業に携わってきたトーマツベンチャーサポート株式会社の瀬川友史氏が登壇。ドローンとロボットの共通点を挙げ、ロボット産業の中で蓄積されてきた知見の活用を提案しました。

10年間ロボットの産業化に取り組んできた立場から語る

瀬川友史氏:みなさんこんばんは。トーマツベンチャーサポートの活動をしております瀬川と申します。当社は名前の通りベンチャー企業のご支援、それから大企業のイノベーションのご支援、それからロボットやドローンといった新産業の創出の支援、そういったことを活動しているメンバーが集まっている会社です。

実は私は今年転職したばかりなんですが、もともとはとあるシンクタンクにいまして、ちょっと下に堅い肩書きが書いてますけど、日本ロボット学会とか日本ロボット工業会で委員をやっていたり、ずっとロボットという話題にはなるけど、なかなか産業にはならないような難しいところを、しつこく10年ぐらい支援してきました。

今日は他の皆さんとちょっと角度を変えて、ロボットを10年間、かなり苦しみながら産業化に取り組んできた立場から、ドローンについてなんらかコメントできないかなと少しお話させていただきます。

「愛・地球博」から10年

簡単に私の経歴なんですけど、もう10年前になってしまうんですが「愛・地球博」で「プロトタイプロボット展」というのがありました。たぶん愛・地球博に行かれた方がいると思うんですが、ロボット展があったことを覚えている方は、ほとんどいないんじゃないかなと思います。実はその時初めて安全基準とかが日本で作られて、ロボットを実際に万博の会場で使ってみようということを試みられました。

それから10年経って、ドローンはこんなに急速に皆さんの関心を集めて、安全だの問題だの議論できるぐらい皆が関心を持っている。そして使いたくてたまらないから議論になるわけで。

それに比べて10年経って、ロボットってどうなのかな、というのでちょっと今日羨ましいなと思いながら聞いていました。その後社名書いちゃってますけど、シンクタンクにいまして、それで今ベンチャーサポートに入るというような経歴の人間です。

なんでここにいるかなんですけど、ドローンもロボットの一種というふうにロボット界では見ているというか、そういう理解です。左側の写真がロボット革命実現会議という去年、安倍首相が5月のゴールデンウィークに、ロボットで日本は産業創出していきますと発言をしたことがきっかけでてきた会議です。

その第1回、初回にドローンは首相官邸の中を飛びました。ご存知の方もいるかもしれませんけれど。それぐらい象徴といいますか、ロボットの中でも1つ大きな関心を集めていることが2つあって、非常にポテンシャルがあるよねと、期待されてるよねと、なんで日本はもっとここ頑張れないのかなという双方の論点があります。

ロボットを構成する3つの要素とは

なのでこれがロボットの一部ということを、右側に簡単にちょっと書かせていただいています。ロボットはasimoとか、AIBOというような、AIBOはもう昔の話になりましたけれど犬型とか、要するに実態を持った物という皆さんの印象が一番強いと思うんです。

実際にロボット界では、ロボテクやロボットテクノロジーというような言い方をさせていただくことがあります。ロボットを分解しますと、動く、感じる、考える、駆動とセンサーと知能、この3つの要素があればロボットと思うんじゃないかというものです。

実際にお掃除ロボットのルンバみたいなのがあれば、例えば洗濯機とか冷蔵庫がちょっと賢くなったって、それってロボットで研究されていたことが使われていたりするよねとか、自動運転も結構ロボットっぽいよねとか、そんな話もしています。

私がいた研究室も、部屋全体をロボットにしてやろうという、ロボティックルームというのをやってまして。まさにその実態は無いけど、ロボット的に賢く振る舞って、人間を助けていこうというコンセプトでやっていました。そういう観点だと、ドローンって非常にロボットと近いようなかたちになってます。

ロボットとドローンにはさまざまな共通点がある

ではそのロボットについてどんな議論がされているかというと、ロボット新戦略が2014年の1月に出されています。分野横断では司令塔を作りましょうとか、技術開発を続けましょうとかの他に、重要なこととして標準化とか、実証経路の整備をしようというようなことがあります。

ドローンでも筑波に飛行実験のところができましたが、ロボット全般でも同じで、どんどん試していく。新しい機械ですから利用方法を考えたり、問題点を洗い出したり、そういうことをするためにも、どんどん実証実験を行っていったり、標準化できるところはしてルールを整備したり、そのようなことが取り組まれています。

そして分野別のところを見ていただければ、ものづくりとか、サービス、バックヤードというようなコンビニの裏方の物を出し入れしたりとかそういうイメージ、介護とか医療とかインフラ・災害対応・建設、農林水産業・食品。

ここまで読み上げまして、最初、鈴木先生の産業のところを思い出していただきたいんですがかなり論点が被っています。

実際インフラ検査とかですと、例えばトンネルとか橋とかくっついて動き回って検査するんですけど、やっぱりドローンのようなものが飛んで行って検査するのが便利な場合って結構あって。結局ロボットの話をしているようでいて、ドローンはいろんなところで登場していきます。

ドローン産業の成長は期待が持てる

ロボットについては、ロボット系の方の中では有名な予測がこれです。2035年に9.7兆円という産業規模を達成しようと、経済産業省の方で打ち出したものです。しかしサービス分野というのが、5兆円ぐらいというピンクのどぎつい色のところですけど、それが2012年の実績だとたかだか600億円というのが現状です。

まだまだロボットは最初に申し上げた通り、非常に期待をされていますが、残念ながらまだまだ市場化していない。「じゃあこの中でドローンはどうなるの?」って気になった方がいるかもしれません。

この市場予測は2011年、2012年、2010年だったかな? 確かそれぐらいにされました。だからドローンの話というのは織り込まれてないです。ドローン抜きのロボット市場ということで、この予測です。

ドローンは前半の話でもあった通り、非常に産業機会が大きいので、ああいう物こそこういったところを上に押し上げていくようなカーブで産業創出していくんじゃないかと期待が持てるような気がします。

今回ロボット革命構想を、これはちょっと私見になるんですが、「愛知万博頃の再来」と辛口な意見を仰る会社があります。そういう気持ちはわかるんですけど時代は変わっていて、ドローンみたいなものが出てきたのは象徴なんですけど、モーターとか小型のバッテリーとか、技術がだいぶ揃ってきたことと、それからクラウドとかITとか当たり前の話になっている。

昔だとコミニケーションロボット1つ作ってもクラウドと繋がってなくて、自分のメモリーに載せられる程度の振る舞いしかできなかった。それだとすぐに限界がきて飽きてしまったり、効果が出なくなったりしますけど。そういう時代ではなくなってきているので、今回はロボットロボットいつも言ってるなぁとか、10年前も言ってたなぁ、ということでは無いというふうに信じています。

産業創出の4つの課題

と言いながら10年間苦労して来た、苦労して支援してきた身としての、ちょっとしたドローンでも通用しそうなことを抽出して言ってます。ロボット産業の創出と課題と解決のポイントということで、4つぐらい課題があるとお話させていただいて、概ね皆さんそうだよねって言っていただいているので、きっとこういうことかなと思っています。

1つはロボットありき、技術開発ありきの発想で捕らえられてしまいがち。ロボットを作ってから、これ作ったんですけど何に使いますかねというようなことが、極端に言えば起きていました。

一方でサービスとか、ソリューションから発想していって、そのためにロボットだけでなくて、言い方を変えればドローンだけじゃなくて、ドローンとその周辺の据え置きのカメラとか、環境に配置したセンサーとか、GPSのシステムとか、いろんなものを組み合わせたときどんな価値が出るのかなっていうことを考えるのが重要ということが1つ。

2つ目。じゃぁロボット相手ではダメなんでしょうか? ユーザーがいる現場を訪問して、ひたすらニーズを聞いて、それに合わせてしまいましょうよということはあると思います。

これある意味では正しいですが、残念ですけどロボットの場合は、例えば介護現場に「ロボットをどう使いますか?」と聞いても、ロボットを使った介護は介護現場の方はわからないわけです。おそらくロボットが入ったときには介護の現場のオペレーションが、大きく変わっている可能性もあります。

ノートでやっていたことがタブレットとかスマホが入って変わったのと一緒で、同じような業務内容ではなくなる可能性があるんです。そう考えていくと、ユーザー側も変革する必要性がある。これはきっとドローンも一緒かなと思います。

3番目。これはもう言わずもがななんですが、既存の法制度の規制とか、ルールが未整備であることが問題になっています。道路交通法とかいろいろな法律が壁になっていて。これは適切な規制による産業振興としてあえて書いています。

規制があるからダメなのではなく、ドローンでも同じ議論だと思うんですけども。規制が正しくあるからこそ、産業として培われていくというような側面があります。

そして最後。サービスロボット市場は先ほど申し上げた通り、数百億円しかないです。ここに大企業がガンガン入っていったとしても、今は全くビジネスとしては成立しない。それでもやっていけるのはソフトバンクのような大きな中長期のビジョンを持って、しかも取り組みが続けられるほど体力はちゃんとあるところ。そういうところぐらいかなと思います。

そういう意味でこういったおそらくは当面のことで言うと、数十億とかそういう市場しかないところ、個別に見ていくと、そこで戦っていけるようなベンチャー企業、そしてそれが大きく花開いて数百億円が数兆円になったときに、それを支えていける、大きくしていける大企業、こういう堰堤って、この分野もっと多くなってもいいんじゃないかなと、きっとドローンも一緒なんじゃないかなぁと思っています。

ロボットを活用した3つの成功事例

3つほどロボットの成功事例をご紹介したいと思います。サービスのほうとあんまり成功している事例がないのが寂しいですけれど、3つぐらい業務分野、今日の空撮とかのコンテンツ系の話と外れちゃうんですけど、ご紹介したいと思います。

意外なものを紹介しています。左の院内搬送ロボット、どこぞの会社のなんですが、これは病院の中で物を運びます。しかしそういうと普通ロボットはみんな運んでくれるでしょうと思うんですけど、実はロボットは臨時搬送しかしてなくて、普通のルーティンの毎日の搬送は人間がやってます。

これをやると一番薬剤部の薬剤師の皆さんの業務がスムーズに進むんだそうです。臨時搬送をやっちゃうと普段の業務が全部乱れちゃって、その後々まで響いてしまう。そこにロボットを入れることで回避するのが一番効果があったそうです。

真ん中、ビル清掃ロボット。これもうやってないので昔の話になってしまうんですが、かなりこれも革新的だったのはロボット保険というのを作ってました。それでそのロボットが走ります。

そうすると人を怪我させることもあるかもしれないし、そうでなくても無人のフロアで物を壊す、じゃあサーバーを壊しちゃったらどうするんだよとか、あるいはロボット自体高いのでロボット自体壊れたらどうするんだとか、そういうところに対して保険をかけるということを実現していた例です。

最後にリハビリロボット。いろいろなロボットが出てきてますが、重要なのはリハビリロボットがあることではなくて、ロボットを使ったリハビリ手法があるということで、大体成功しているリハビリ系とか医療系のメリットはここがしっかりしてます。

手法があるということは、これまでのドローンの話でもありましたけれども、認定ユーザーとかトレーニングプログラムがしっかりしているということです。

課題解決には2つの取組みがあり得る

いずれにしてもロボットとの問題というか、なぜまだ進んでないかというのが、今みたいにしっかり作り込んでいくとビジネスになるんですけどなかなか……。今右下だと思われてます。費用とか、リスクは高いんだけれど、効果はよくわからんという状態。

そうすると2つの取り組みがあり得て、短期的には非常にシンプルで、これだったらどう考えてもこういう効果だし、危なさは想定の範囲内だねっていうようなもの。ドローンで言えばあまり燃料とかも大きくないし、「これぐらいだったら危ないって言ってもたかが知れてるね」というようなところから入っていくという世界と、後はしっかり費用対効果とかリスク対効果というルール整備も含めて進めていくことで、本来貢献できる右上の領域に進んでいくもの。

この2つを進めていくと。こう分けて機能して進めていく必要があると思っています。

活用と対策技術の両輪が必要

ドローンの話もちょっとだけしよう思ったんですけど、他の人もたくさん話しているので簡単にしたいと思います。ドローンはロボット界から見ると羨ましいことに、いろんなイメージがしやすくなってきています。趣味娯楽みたいに書かせていただきましたけれども、ただ検査、モニタリング、配送運搬というふうに利用シーンがどんどん描けてきています。

それによっておそらく単体性能を追う時代から、群として管理する。つまり今まで先ほどまでのドローン1台が飛んでる世界だったと思うんですけど、じゃあここの皆さんの視界に見える範囲に何十台もドローンが飛んでたらどうなるって話ですよね。

1台しか車が走ってないところに何十台も走っていると、全然違う世界が描けてくると思います。そうなったときにどうするのとか。そうなってくると、例えば速度管理みたいな何キロまで出していいんだろうねとか、そんな話もいつか出てくるかもしれませんっていう話。

それから悪用とか、事故防止とか、この話も重要になってきて、まずはちゃんと検知追跡できるようなのが大事だよと。もっと言うとここには入ってほしくないとか、そういうところ。

あるいはダムなんかに突入されたら困るだけで、そういう飛行妨害みたいなところをどうするかとか、もっとIT化が進んできちゃうと逆にハッキングが起きるのでそれをどうするとか、いろんな問題が出てくると思います。こういうドローンの活用と対策技術、両輪が育っていくことで健全な産業になっていくという理解です。

いずれにせよ、最初の方で言いましたが、非常にこれだけ議論が進んでいるということで、本当にドローンって注目を集めていてロボットからすると羨ましいなと思っています。

人が利用できていない場所は地球上にたくさんある

ここでとある航空写真なんですけど、夜を束ねてます。世界を夜で見ていくと、およそ光がついているところが都市部で、それ以外ってあまり人がいないところなんです。

こういうふうに見ていくと、これだけ機械が増えているといっても、たかだかこの光があるところぐらいしか自動車とか人工物とかが増えてないわけで、まだまだドローンみたいなもの、空もあるし山海空地中それから宇宙なんて書いてますが、人が到達していない、利用できていないところって、こんなにあるんだなぁっていうのに気付かされます。

それに対して、衛星みたいにこうやって上から撮っていくマクロでもあるし、それからドローンに至るミクロに見ていくのもあるし、両方あって、やれることっていっぱいあるもんだなぁと、本当に想像を膨らませることができる、夢のある分野だなぁと感じています。

いろいろニュースがあったり、悪い話も当然あるとは思うんですけれども、繰り返しですけど、それこそが非常に注目を集めていて、みんながやりたいから、使いたいからそういうことが起きてるんだと。

ポジティブに捉えていくと、やっぱり可能性がある産業だと、ドローンを今後ご支援していけると思っています。私からは以上です。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「知のゴールドラッシュ」到来と予測する背景 “24時間自分専用AIエージェント”も2〜3年以内に登場する?

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!