2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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内田まほろ氏(以下、内田):さっき未来の社会の話がありました。自分たちが子どもだったときに今みたいな職業がなかったんじゃないかというお話でした。
20年後には、人間や社会も変わって職業もきっと変わるじゃないですか。もし社会の秩序みたいなことが、2人が願っているような形で、ちょっとでも変わるようだったら、どんな状況が進んだ状態なんですかね。
石黒さんも人間とは何かということを探っていて、20年後ぐらいとかに、どんな状態がいい未来の人間なのだと思いますか? 今日のテーマでもあるんですけど。ゆっくり考えていただいても結構です。
石黒浩氏(以下、石黒):先しゃべろうか? 僕は、哲学的になると思ってるんですよ。今まで考えてこなかった問題を、もう少しちゃんと考える余裕ができてくるので、僕の場合ロボットやってるから特にそう言うのかもしれないですけど、ロボットは人を映し出す鏡というか技術。技術っていうのは人間の進化だと思ってて。
遺伝子だけじゃなくて、技術によって人間は進化してて、火を持ったときから動物と人間の差ができて、技術っていうのは体の延長だと思ってるんですよね。その技術によって、人間の定義っていうのが、どんどん変わっていく。どこまで人間の定義が変わり続けることができるのか。
技術によって人間の定義が変わると同時に生活は楽チンになるわけですよね。楽チンになればなるほど、自分に問いかける時間が出てくると。技術によって進化した自分の生活とか自分の体とか、そういったものを見ながら自分について考えるっていうのが未来だと思ってて。
だからロボットも必要だし、チームラボの展示みたいなのを見て「芸術って何かな?」とか、「何で感動するのかな?」とか、そういうことをもう少し考える時間をみんなが増やすというのは僕は理想だと思ってるんですよ。
内田:増やすためには、また技術が必要だったり、社会の仕組みが変わったりって。
石黒:僕は、ガンガン技術を入れる。
内田:技術をガンガン入れて、考える時間を増やすと。
石黒:それもそうだし、人間の定義を変えていくんですよ。人間とは何かっていう。だから技術って人間の肉体的な制約をどんどん取り払うんだけど、その先にあるのは何かっていうのを考えたいということが、僕は人間の運命だと思ってるんですね。
人間と動物の違いは、こんなに大きな脳がどうして必要なのかと。うちの学生によく言うのは、「日曜日にやったことを月曜日に聞く」と。「10分ごとに、やったこと全部ノートに書け」と。「そのうちに人間でしかできないことに丸をつけてみろ」って言ったら、ほとんど丸つかないわけです。
内田:なるほど。
石黒:でも……。
猪子寿之氏(以下、猪子):どういうのですか。
石黒:だからほとんど、犬や猫でもできるようなことしか、やってなかったりするわけです(笑)。
内田:例えば丸がつかないことの例って、何があるんですか?
石黒:例えば、ごはん食べるとか寝るとかね。テレビ見るとかね。
内田:それは、テレビ見るのは人間しかやらないこと。
石黒:違う違う違う。
内田:じゃあ人間しかやらないことっていうものの例って何かあるんですかね。
石黒:それを考えることしか、ないかもしれないです。
内田:なるほど。かっこいいですね。すいません(笑)。
石黒:でも、いずれにしても、だからそう考えると、要するに人間って、こんなに大きな脳を持ってても、ほとんど役に立ってないんですよ。唯一、これは客観視というか、自分を第三者的に見るために、シミュレーションするために、こんな大きな脳を持ってるわけで。
その脳、もっとちゃんと生かさないといけないんじゃないかなという気はするんですよね。だから、まだまだ脳、使われてないところたくさんあるので。
内田:もっともっと使われるようになると思う。
石黒:と思ってはいますけどね。でも、要するにこういう、物事を客観視する機能を持っちゃったがゆえに、そこしか行くとこないんじゃないかっていう気がしてます。
内田:なるほど。
石黒:自分について考える以外に、人間ってもう存在価値っていうか生きていく目的がないでしょう。もし、そうじゃなかったら脳は小さくなるはずなんですよ。
でも多分、これからどうなるかわかんないですよ。大きくなる人と小っちゃくなる人、出てくるのかもしれないですけど、でも少なくとも人は人で、人とは何かって考えるために生きてるように僕は思ってるので。そういう時間が少しでも増えるのが未来だと思ってる。
猪子:何か一瞬、全然関係ないですけど、個体で言うと、例えば縄文時代のときの人間のほうが脳は賢かったみたいな。
石黒:生きてく上ではね、っていうこと?
猪子:だから例えば、ちゃんと覚えてないんですけど、簡単なIQテストをしたときに、今よりも賢かったみたいな、それは多分、少なくとも農業革命が起こるよりも前のほうが、多分、複雑な情報を把握しながら、空間の中で体を動かしながら生きていくために、命も守らなきゃいけないし、ごはんも取らなきゃいけないし、だから脳が個体としては賢かったみたいな。
石黒:かもしれないね。
猪子:何かで見たんだけど。
石黒:ただその生活に、ものすごく縛られた思考なのかもしれないね。
猪子:なるほどね。
石黒:生活から離れたところで、何か抽象的な概念について考える余裕はなかった気がする。
猪子:なるほど。単純に生きていくために脳が発達してたという。
石黒:そうそうそう。
内田:そこを、よく使ってたっていう、今使われてない脳が。
石黒:でも多分、人間の脳って、それ以上にもっとでかくて、もっとこの世の中を抽象化して、第三者的に観察して、想像するっていうようなことができるだけの容量を持ってるわけで、それを1回やっちゃうと、それが。
内田:戻れなくなっちゃうんですか?
石黒:要するに人、僕、動物は本当はわかんないんですけど、犬は「犬って何?」って考えてないような気もするんですよ。「私って何?」って、あんまり考えてないような気がするんだけど、人間は唯一それをしてるんじゃないかと。
でも、それをやると、あまりにもたくさんの情報を処理しないといけなくなっちゃって、どんどんどんどん単調に脳が大きくなってるような気がするんですよね。だから効率悪いぐらいに、脳ってでかいんじゃないかなとさえ思うんです。
猪子:おもしろい。
石黒:でも、だからそうやって、いずれにしろ人は、人って何かを探すために生きてるようなところがあって、それが技術の発展によって、もう少しみんながそういうことを考えるチャンスが増えるんだっていうのが、僕の予測で。いいか、悪いか、わかんないです。
いいとか、悪いとか、そのときどきの価値観で、急に変わったりするので、でもそうなるだろうと思ってますけど。だからアート的な作品とか、きょうみたいな展示がもっともっと増えて、もしかしたら2、30年後に、かなり日常的にいろんな人がいろんなところで、そういうのを見るようになるかもしれないです。
猪子:確かに。10年、20年、少なくとも2、30年の年次で言うと、人間のアートに対する関心って増えてますもんね。おもしろい。
石黒:だから、選ばれた金持ちのためだけのものじゃなくて、一般の人もみんな、そういうことを考える時間ができてきてる。
猪子:なるほどね。おもしろい。
内田:猪子さんが考える進化した人類について聞かせてください。
猪子:いろんな人が結果的には、いやおうなしに社会は前に進んでいくので、その段階で多分人はより、それは10年後か20年後か30年後かわかんないけど、ちょっと先生と近いのかもしれないですけど、創造的なことばかりやってると思うんですよね。
内田:素敵ですね。
猪子:創造的なことばかりやっていて、それは別にすごいハイレベルなことから、別に普通の、そういう例えばサイエンティストとかアーティストとかだけではなくて、普通の仕事っていうことが多分、ほとんどの普通の仕事っていうのは創造的な仕事になっていくと思うんですよね。
だからそういう社会が早く来て、よりいろんな人がいろんなレンジで、いろんなものが創造されていって、普通に生きてると社会が目まぐるしく新しい、自分自身もいろんな人々の創造的な活動によって、何か新しい発見をするわけじゃないですか。
そういうふうな社会になったらいいなと思うんですよね。あとは、そういうふうな社会って多分、より情報社会みたいな、デジタル的なものが社会にどんどん浸透していくにつれ、よりそういうふうに、別に僕だけが言ってるわけじゃないんですけど、あまり創造的じゃない仕事っていうのは……。
内田:減ってくというか。
猪子:ある種、ソフトウェアが代行したり、人工知能みたいなものが代行したり、場合によってはロボットみたいなものが代行したり、多分していくので、ロボットとソフトウェアみたいなものは、すごい境界線がより曖昧になって、いろんなものが代行していくと思うんですね。
そういう社会が、どちらにしろ来ると思うんですね。ただ、より早く来たらいいなと思ってるんですよね。
内田:より早く来るところに、やっぱりコミットしていくというか。
猪子:より早く。
内田:より素敵に。
猪子:石黒先生の言葉を借りればそっちのほうがより人間らしいんだと思うんですよね。多分そっちのほうが楽しいんだと思うんですよね。
内田:だんだん時間がなくなってきているのですが……。
猪子:もう1個だけ。
内田:どうぞ、すみません。
猪子:あとはよりいろんなものが情報化されていく中で、より物質的なものに依存していたものが、物質からより解放されていくと思うんですよね。例えば所有っていう概念も多分この10年で、すごい変わったような気がしていて。
例えば20年ぐらい前だと写真を撮って、物として自分の手元にないと所有した感じにならなかったのが、今は別に写真を撮って、それがネットワーク上にあることが、つまり自分の物質的なものに変換されなくても、所有感としてはほとんど変わらないわけですね、例えば今の若い子とかは。
もしくは例えば音楽みたいなものも、例えば物質的なレコードとかCDにならないと所有した感じがしなかったのが、今とか別に10代の子とかは自分のスマートフォンにすら入れない。
内田:ネットにあるからとか。誰かが持ってるからとか。
猪子:ネットであるものを、聞き続けるみたいな。つまり、少なくとも物質への所有みたいなものは、多かれ少なかれ少し変わっていったんだと思うんです。
内田:薄れてはいますよね、確実に本当に。
猪子:薄れていってると思うんですけど、よりそれが加速することによって、人類はもっと物質から解放されると思っていて、人類がもっと物質から解放されると、ちょっとだけ飛躍するんだけど、有限みたいな概念から解放されると思っていて。
内田:そっか、リミットっていうか。
猪子:そう、有限っていう概念が人々を少し苦しめているような気がしていて、すごいしょうもない話からすると、例えば戦争みたいなものも、ほとんどが有限概念によって起こっていて、例えば1個は、例えば地下資源が、化石燃料が有限なので、それを奪い合うために戦争してるのが多くの戦争の理由だったり、あとは一般的に宗教戦争みたいなことの多くも、神様が有限な、有限概念の強い宗教のほうが、やっぱり戦争起こしやすいですよね。
神様が有限だって、あんまり言い過ぎると怒られちゃうかもしれないけど、神様が有限だっていう宗教のほうが、基本的には宗教戦争が起こってる確率が高くて、あまり神様は有限じゃないと思ってる宗教は、あんまり宗教戦争、起こさないですよね。だったり、何を言おうと思ったのか、ちょっと整理すると。
内田:未来の、進歩した人間とは?
猪子:人間が今有限だと思ってることの多くは、実は有限ではないかもしれなくて、有限という前提が人々をおぞましくしてるかもしれなくて、例えば、すごいわかりやすい例を出すと、例えば需要と供給で価格が決まるって、一般的には思ってるじゃないですか。
内田:はい。
猪子:でも、実際はほとんどのことは、そうではなくて、需要が高いと必ず供給がふえて、そうすると生産効率が上がって、必ず価格が下がるんですよ。
内田:下がる。
猪子:実は、ほとんどのことっていうのは需要が高いと価格が安いんですよね。需要が高ければ高いほど価格が安いんですけど、例えば食べ物で言うと日本人にとっては米が一番重要じゃないですか。最も安いですよね。直感的な価値に対して、コストパフォーマンスがいいっていうか、コストに対してエネルギー効率も高いし。
有限概念があると、例えばほとんどはあんまり有限じゃないんだけど、有限概念によって人々はそれを信じてるがゆえに、例えば独占に、例えばインセンティブが生まれたり、略奪にインセンティブが生まれたり、ちょっとこの話しだすと長くなるから。
内田:そうだね。でも簡単にまとめてください。
猪子:簡単に言うと、よりデジタル的なもので代替可能だっていうことを人々が知ることによって、人々は物質から解放されて、結果的に有限概念みたいなものから解放されるんじゃないかなと思ってるんですよね。
内田:はい。石黒先生が、とても激しくメモを取られました。
石黒:僕はちょっと、いつも考えてるのは貨幣経済がそろそろ弱くなるんじゃないかなと思ってて、やっぱりネットが大分進んで、単純な、貨幣経済だけでは、とても世の中動かないような雰囲気になってきたなというのが同じ感じですね。だから所有っていう概念もそうなんだけど、貨幣経済そのものが弱くなるんじゃないかと。
ほかのもっと人のつながりとか、どういう情報を共有してるかとか、そっち側のほうがずいぶん大事になって。
内田:大事で、有用で。
石黒:ええ、来てるんだとは思うんですね。そこら辺が多分、いろんなものが無限に見えるっていうことで、要するに何か物質と交換しようと思ったら、すべて有限という概念が入ってくるんだけれども。
もともと人間っていうのは人の何かを伝えたいとか、社会の中で何か認められたいとかっていう、単純に物質に変換できないものがゴールなわけで、写真の共有だってそうじゃないですか。
猪子:そうですね。
石黒:社会に自分の存在をアピールするためにネットの上に置ければ、それでいいわけで、無理やり、無限のものを有限にしてきたのは貨幣経済。
猪子:そうです。人間は僕も、本来は無限概念でできてると思ってるんですよ。そっちのほうが感情的には気持ちいいようにできてるのに、先生の言葉を借りれば、物質に変換したがゆえに有限概念にすごい縛られるようになっちゃったんじゃないかな。
石黒:人間社会の協力っていうのを物質に変換して貨幣経済をつくると、すごい効率が一時期よかったんだけれども、今はそれを越えるような手段があるので、もう一回貨幣経済以前に戻りましょうということなんだと思います。
猪子:それによって人間はより、ハッピーになるんじゃないかなと思うんですよね。
石黒:そうだね。だからゴールはあきらかに社会にあるんですよ。そういう点では僕は同意なんですけどね、社会のためにっていうのはあれなんですけど。
やっぱり生きていく上で、「社会って何?」とか、社会がわからないと多分自分も定義できないので、そこら辺に一番大きな興味があるとすると、そんなに有限の財に興味を持ち続けるなんていうことも、ばかばかしいと思うようになるんじゃないかなと思うんですね。そういうデバイスをつくりたいなと思って。
内田:すごい2人のつくりたい未来が見えたところで、今回は時間を守ろうというコンセプトなので、そろそろ終わりに向かいたいんですけれども、実はきょうは当館の館長の毛利がプライベートの時間をさいて、前で聞いてたんです。
最後に会場から質問を取る時間はないので、館長、何か聞きたいことがもしあれば、サプライズ質問をいかがでしょうか。
毛利衛氏(以下、毛利):はい、ありがとうございます。こんな楽しい対談、そして、未来館らしい展示をつくっていただきありがとうございました。
今日の対談の内容は、私は一切解説するつもりはありません。それぞれの人が、それぞれのように思っていただいていいんですけど、今日はクリスマスで楽しそうな顔してらっしゃる家族連れの方、カップルも多いので、簡単に1つだけ質問。
あまりにも高尚な話をされたので、あなたにとって家族とは何ですか? おじいちゃん、おばあちゃんから来て、自分の子ども、孫。あなた自身にとって家族とは何ですか? 質問です。
内田:つながりですね、無限概念から家族です。
石黒:だから、わかんないですけど、全部つながりなんですよね、家族も家族以外のものも、社会、だから社会の一部というか、僕、何て言っていいかわかんない。
猪子:家族っていう概念も、何らかの近代の有限概念が強くなりすぎたことによって生まれた、すごい悲惨な概念だと思っていて、それは家族という概念によって、人類は悲惨になってると思うんですよね。
特に、血のつながりのみを家族と定義したわけですよ、近代。例えば近代以前っていうのは、家族っていう概念は今の僕らが言う、そもそも家族って言葉があったのかみたいな話もあるし、例えば少なくとも血のつながりこそを。
内田:それも物質ですもんね。
猪子:そう。血統っていう何らかの、ある種すごい強い有限な限定的な概念によって、家族っていう概念を近代つくり、それによって人々は極めて不幸になってるわけですね。
内田:同意を求められても……(笑)。
猪子:(笑)。つまり……。
石黒:逆に言うと、みんながつながってる状態が大事であるということですね、全員が家族だということですね。
猪子:そうですね。大人な回答しましたけど、最後(笑)。
内田:大人な回答しましたね。
石黒:もう、収拾つかなくなりそうな……(笑)。
内田:ありがとうございます。はい、お時間になりましたので、最終的に未来は無限で、どんどんどんどん前に進んでいく方向になっていけばいいなと。未来館としては本当に先に向かってく、いいお話が聞けたと思います。どうもありがとうございました。
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