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望ましい自動テストとは: どのようなテストが開発生産性と開発者体験を共に高めるのか(全4記事)

テスト駆動開発の専門家が話す「自動テストは“信号機”」 テスト結果を“情報”として活用し、開発生産性を上げる方法

ソフトウェアエンジニアリングの専門家・和田卓人氏が、自動テストの実行結果の重要性について解説しました。ここでは、テスト結果を単なるデータではなく、開発者の行動を促す「情報」として捉える重要性を強調。さらに、テストの成功・失敗を信号機に例え、失敗の種類とその対応方法の違いを詳説。効果的なアサーションの書き方にも触れ、テスト失敗時の情報の質が開発生産性に与える影響を具体例を交えて解説しました。前回の記事はこちら

自動テストの実行結果

和田卓人氏:では、2つ目のメニューにいきましょう。1つ目、「信頼性の高い」にいきました。2つ目は、実行結果の話です。自動テストの実行結果。

自動テストの実行結果は何かっていうと、ただ単に自動テストの結果というだけではなくて、私は、自動テストの結果は情報であってほしいと思っています。データではなくて情報。情報って何かっていうと、人間に行動を促すもののことです。情報っていうのは、それを見た人間に意思決定と行動を促すというものです。

じゃあ、テストの実行結果を見た人間は何をするべきか。さっき言っていましたね。例えばプルリクエストのテスト結果だったらマージで本番、メインラインのテスト結果だったらデプロイできる。テスト結果が失敗だったら、原因を特定して直しにいかなければならないというわけですね。

とにかく、さっき言ったテストの結果に嘘がなければ、人間の行動は2択に収束していくわけです。緑であれば「前に進め」、赤であれば「コードを直せ」というわけですよね。さっきの象限とは違うところになると。プロダクトコードが正しい、テスト結果が成功ならデプロイ、マージに進めるぞ。誤っているなら、テストが失敗するなら、自分たちのコードをどこを直すか探しにいくという話です。

自動テストは信号機

ということで、自動テストっていうのは信号機なんですよね。緑は進め、赤は止まれです。赤はバグを探しにいけっていう話ですね。たぶんこれ、どうやらそのとおり信号機のメタファーとして始まっていまして。なので、伝統的に自動テストの世界では、テストの成功を緑、失敗を赤で伝えてくれます。緑だったら前に進めるし、赤だったら止まれというわけですね。

機械にとっては色で示すというのは若干わかりにくくて、機械にとっては終了のステータスコードで返すほうがうれしいので、0と1、あるいは1以上というわけですね。0だったら「進め」、1以上だったら「止まれ」というわけです。というので、CIの世界とかではよく「0」「1」でやっていますというような感じですね。人間向けの信号、機械向けの信号があると。

実はその赤のほうには、2種類あります。自動テストの失敗には2種類あって、これはだいぶ細かい話になってくるんですが、みなさんも考えてみると、「なるほど、2つあるな」と思われると思います。

Execution Errorっていうやつと、Assertion Failureっていうやつがあります。Execution Errorって何かって、自動テストの実行中にプロダクトコードのどこかから発生する実行時エラーのことです。NullPointerExceptionとかそういうやつですね。

Assertion Failureって何か。自動テストを書いていて、テスト対象を動かしました。テスト対象から結果が戻ってきて、結果のアサーションをしている期待値と、「そのとおり正しいかな? 期待値と一致するかな?」っていうところで失敗するやつ。つまり、テストコードまで制御が戻ってきて、テストコードの結果のアサーションのところで失敗するやつをAssertion Failureといいます。

この2つっていうのは、失敗した時の行動が若干異なります。Execution Errorのところは、コードのどこで失敗したかをスタックトレースとかから探しにいって、何が起こったかを推測するという話になりますね。

それに対してAssertion Failureは、失敗なく戻ってきてしまっているけど期待と違うので、何がおかしいかなっていうのを推測する。実はAssertion Failureのほうが、若干難易度が高いんですね。ボコッと落っこちているんじゃないから。なので、「なんでこれ、思ったとおりに動かんのだろうな?」と調べにいかなきゃいけないというような話です。

効果的なアサーションの重要性

ということで、アサーションの書き方っていうのは、失敗時に輝きます。失敗した時に助けになるアサーションを書いていかなきゃいけないんですね。試しに、わざと悪い例、頼りにならないアサーションを書いてみました。これもまた軽減税率のロジックだと思ってください。

レシートの税額欄のところ、reducedだから「軽減税額の合計が40であること」というようなアサーションをテストのほうで書いていますが、これは単なる論理式で書いているんです。「assertTrue」で、「reduced() == 40」。

なので、このテストが成功している時はグリーンで「前に進め」でOKなんだけど、失敗した時の情報量に問題があって、失敗した時に「trueだと思ったらfalseでしたよ」ぐらいの情報量しかない。これだと、この次の一歩が難易度高いんですよね。いざという時に「じゃあ、いくらだったの?」みたいな話になるので。

これ、テストが成功している時は、何ていうんですかね、この危うさに気づかないんですよ。失敗した時に初めて、「こいつ、頼りにならんな」と気づいてしまうので、ちゃんと書いていきましょうという話です。

例えば期待値と比較する。Javaで言うとassertEqualsっていうやつですね。となると、40を期待していたけど、返ってきたのは39だったっていうと、39と40、1ずれているから、ということはこれって切り捨てのところのロジックの誤りだなと。これが例えば、40じゃなくてnullだったとか、40じゃなくて0だったとかだと、調べるべきところが、初動が違いますよね。

こういう細かいところに、生産性の差というものが表れてきます。ここはだから、実測値が39だったのかnullだったのか0だったのかによって探すところが変わるというかたちですね。

(次回につづく)

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