2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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藤井涼氏(以下、藤井):野﨑さん、どうなんですかね?けっこうそこのルールメイキングというか、ルールによってまただいぶ活動も変わってきて、影響を受けるんじゃないんですか?そのあたり、いかがですか?
野﨑順平氏(以下、野﨑):いや、本当にすごく大事で、まさに国内法を整備するのは、ある意味、たくさんあるブレイクスルーの1つではあったんですよね。実はそれがあるので、ispaceは、アメリカとルクセンブルクに子会社があるんですけど、まさにアメリカもルクセンブルクも、日本もそうですけど、国内法を整備しているんですよ。
結局我々からすると、「国際の合意がなくて国内法を作ってもいいの?」という考え方をしちゃうと思うのですが、そうではなくて、まずやる人たちがそうやって国内法を作るところからだと思うんですよね。
要は、もうそれだけ宇宙資源を民間企業が採っていくことがリアルになってきていて待ったなしの状況なので、国内法の整備は進んでいます。いずれこれがグローバルなものになることをやはり期待したいと思います。そして、先ほど話があったように実際中国ではサンプルリターンをしているわけですから、やはりもう猶予はないわけですよ。なので、まずそれはすごくポジティブですし。
ispaceは、ミッション2を2024年の冬に打ち上げて、その後着陸する予定です。地味なのであまり我々は話していないのですが、そこで着陸した時にNASAと取引する予定です。我々が採取した月の砂、レゴリスをNASAに対して販売する契約を実は1つ持っています。これはものすごく画期的で、初めて民間企業が、業者がNASAに対して販売を行うことになる予定ですので、少し期待して挑戦を見ていただければと思います。
藤井:ありがとうございます。そういう、NASAに対してモノを提供するビジネスもあると思うのですが、(それ以外にも)データを売っていくのもあると思います。企業から期待されているデータはどういうものがあるのですか?
野﨑:そうですね。それはものすごくあります。その質問をちょっと変えると、「なんで、いろいろな企業が月に行きたいんですか?」という質問に近いのですが、先ほど話があったように、みなさんは宇宙と聞くと、IT、機械、鉄鋼、エンタメ、(そして)宇宙業界みたいに縦軸で来るようなイメージを持っている方が多いですが、そうじゃないんですよね。すべての業種の中でプラットフォームを地球でやるか、あるいは当社の場合は、宇宙でやるか月でやるかという違いなんですよ。
ispaceは、先ほどの紹介の中にもちょっとありましたが、2040年にだいたい1,000人が月の上で活動している世界が来ると思っています。そこで活動して何をするのかっていったら、先ほど申し上げた、月の資源でエネルギーをやはり作りたいんですよ。その資源を採るためには、掘削する人が要るし、それを貯蔵したり電気分解する人が要るんですよ。
そういったことに従事する人が宇宙飛行士だったら、生活する家も要る、移動する時の車も要るということで、見ていただくと、地球上の必要な産業がそのままそっくり月に持っていけるんですよね。
そうすると、例えば家を作る建設会社からすると、では月に家を作りましょうと言ってもわからないんですよ。なぜかというと、どれほど月の砂が地球上よりも柔らかいかがわからない、どれくらいもつかがわからないんですね。それがわからないと、ぜんぜん規約も作れない。
ispaceに期待されているのは、どれくらい砂の耐性があるのかを我々が調べてデータを差し上げますよ、と。あるいはその方々が自分で解析する機器を持っていって、自分たちで調べる。そういう例がたくさんあります。
藤井:基本的には、企業が進出する前のしっかりとしたリサーチをするということですね。
野﨑:そうですね。特に今はまだ、ぜんぜん月に行く人たちが少ない段階なので、今がチャンスなんですよね。5年後、10年後には、もっといろいろな人が月に行く状況ですので。
先ほどお見せしたように、ispaceがまず2027年までにどんどんミッションを打っているのは、かなり無理してミッションを打っているのですが、とにかく今、先行者メリットを取りにいって、早い段階で月の上に痕跡を残したり、データを取れたりすれば、いずれ優位になると思っているのでやっているところです。
藤井:ありがとうございます。そろそろお時間が近づいてきたので、最後の質問にいきたいのですが、今日お話を聞いて、ほんの少しでもやってみたいかなと思った方が実際いるはずなんですよ。
そういう人たちに向けた、まず、これからやってみたらいいんじゃないかというアドバイスを、それぞれの立場からいただきたいです。正直、月探査機を作れというのは絶対無理だと思うのですが、まったくものづくりもできませんとか、ただデータはありますとか、いろいろな方がいると思うのですが、なにか、最初の第一歩になるアドバイスを。いかがでしょうか?
野﨑:第一歩は本当に人それぞれだと思うんですよね。なにか、これが正解というのはたぶんないんだと思っています。私の場合は、例えば、『宇宙兄弟』を読むところから始めたわけです。意外にそういうところから、宇宙を好きになることはありましたし、本当にそれぞれだと思うんですよ。
ただ、第一歩を踏み出す時にあまり恐れないでいただきたいというのは、やはりものすごくあります。間違いなく宇宙は、いろいろな人からきついことを言われることが正直多い分野だと思います。例えば、先ほど言ったように、難しいんじゃないかというマインドセットを変えるところからなので、「それって本当にできるんですか?」とか「そんなニーズあるんですか?」というような声にさらされることが多いんです。
ただ、今すごくおもしろいタイミングなのは、我々はいろいろな民間企業の方と話していますが、同じ業界内でも5社あって、5社とも社長さんがぜんぜん違うことをおっしゃるんですよ。
ある社長さんは、「絶対やりましょう。これが20年後、30年後の自分たちの生きる道です」と。ある社長さんは、「いやいやいや、夢があっていいですね」で終わりなんですよ。この違いを、もうチャンスだと思っていただきたいんですよ。今、ものすごく変わるタイミングなので、そこで恐れすぎずにやっていただきたいと思っています。これがすごく大事なことだと思います。
もう1つ良いことは、いろいろなことを言いますけど、みなさん応援してくれます。信じてくれなくても、我々はディスラプターで壊しているわけでもないですし、やはり、月とか地球から外に出ていくのは、みなさんワクワクしますよね。
やはり次の世代の100年後を作る大事な要素だというのはみなさんわかっていますので、応援してくれる人は多いですね。ぜひ、恐れずに入っていただきたいなと思います。
藤井:ありがとうございます。では、続いて新谷さん、政府の立場やいろいろな立場で、実際、お話しできると思うのですが、いかがですか?
新谷美保子氏(以下、新谷):入ってくる人向けにアドバイス?
藤井:入ろうかなと思っている人へ。
新谷:入ろうかなと思っている人? 入ろうかなと思っている人? 何でしょう。難しいな。入ろうと思っていない人は無理して入らなくていいと思います。というのが正直なところです。あまり甘くないです。
私は、損害が生じてそれを解決する仕事をやっているので、衛星はメチャクチャ大きいやつがちょっとへこんだりして作り直すだけでも、もう2桁億円、3桁億円、すぐいきます。遅延金だけでもいきます。脅すなよとこのセッションで言われていますが、私はメチャクチャ怖い現実を見ています。
でも、保険を適切にかけて、政府の制度を適切に使って、適切な契約をまけば、そんなふうにならないです。いくらでもやりようはあるのですが、やはり先ほどの、「国益を損なうレベルでスペースローヤーがいない」ではないですが、やはりそこがぜんぜんマチュアじゃない産業なので、そういうことが起きていて、まだまだ世界に負けています。
今、欧米はどうなっているかというと、欧州はそんなでもないですが、米国系のスタートアップが今、SpaceXやRocket Labを含めて、この10年で契約書をメチャクチャアップデートしています。
私たちはもう10年近く民間で仕事をしているから見ていますが、彼らはどんどんどんどんいい契約書にしているんです。売れていれば売れている企業ほどそこに力を割いてます。キチンとリスクヘッジすればできるんだけど、今はできていないから、あまり無理して入らなくていいし、すごい装置産業だから、最初にお金がかかりますから、無理しなくていいです。
ただ、私が言いたいのは、最初にも言ったメッセージと一緒ですけど、人間の活動領域が莫大に増えるというその瞬間にたまたまみなさんが生まれて、生きているんだよということです。水から陸に人間が上がった時と同じぐらいのインパクトを与えかねない、今この瞬間だと思っています。
本当に外に出ていく、人が物質が出ていかなくても、衛星が出ていってそのデータを使えるというだけでも、人の見られるもの、使えるものは変わってきます。そのタイミングにいるのに、もう最初から目をつぶる必要はないです。装置を作るのが大変だったら、出てきたデータだけ使えばいいので、それはきっと、ここにいらっしゃるみなさんの得意分野な気がするので、まずはそこからちょっと考えてみてほしいです。
常に陸とか他国との競争の中とかだけではなくて、ちょっと視野を1回広げてみたら、すごいものが見えたり使えたりするかもしれないということを考えてほしいなと思います。
藤井:ありがとうございます。あと3分ぐらいあるんですけれども、では最後におまけで。
私は、まだ2年ぐらいしか宇宙に関わっていなくて、それまでは、「CNET Japan」というメディアの編集者をやっていて、10年以上、GoogleやAmazonやメルカリとか、そういうところを取材していました。
なんですけど、自分の中では最近のITにイノベーションが起こっていないなと感じたので、次に何をしようかと考えていた時に、宇宙では地球の重力では作れない素材が今後いろいろ生まれてくるという話を聞いて、これが次のイノベーションになっていないかと私は思って、宇宙に飛び込んで、今、楽しんでやらせていただいています。本当に飛び込んでよかったなと思っています。
宇宙の関わり方は、モノを作るというやり方もあると思うのですが、メディアや情報発信など、いろいろな関わり方があると思うので、ちょっと興味を持った方は、ぜひなにかちょっと、ちょろっと関わってみたりしてみてはいかがでしょうか。という感じで、1つ目のセッションを終わりたいと思います。
はい、ではispaceの野﨑さん、そして新谷弁護士、本日はありがとうございました。
野﨑:ありがとうございました。
新谷:ありがとうございました。
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