2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
湯前慶大氏(以下、湯前):「EM.FM」は、「エンジニアリングマネジメントをもっと楽しく、もっとわかりやすく」をコンセプトにお届けするポッドキャストです。「ゆのん」です。お相手は……。
広木大地氏(以下、広木):広木です。よろしくお願いします。
佐藤将高氏(以下、佐藤):佐藤です。よろしくお願いいたします。
湯前:EM.FMでは、毎回ちょっとためになる情報を紹介していきたいということで、1つのテーマを掘り下げて学んでいこうと思っています。今回は、私、ゆのんがプレゼンターです。
今回のテーマは、「EMのnextキャリア」です。今回、EMのnextキャリアというテーマを考えた時、実はこのテーマは、広木さんと佐藤さんは、実は話せないテーマなんじゃないかなって思って(笑)。
もちろん、いろいろなEMの方々を見られてきてはいると思うのですが、ご自身がEMをそこまでやらずにすぐCTOになっているというところがあるんじゃないかなというところで、これはちょっと僕のほうから話したほうがいいかなと思っているので、話をさせていただきます。
最近、このEM.FMのポッドキャストを始めた頃にEMをやっていた方々が次のキャリアを歩んでいるというのが、なんとなく多くなったなっていう気がしています。
このポッドキャストは、もともと「EM Meetup(Engineering Manager Meetup)」という勉強会からスタートして、2018年の9月から開始したと考えると、だいたい4年以上前ぐらいの話になるので、そこから次のステップにというのは、動きが速い業界なので、そういうもんなんだろうなとは思っています。
青い本の『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』によると、EMの次は、EMのEMとかVPoEとかCTOとかという流れだったと思います。こういう流れはもちろんあるとは思いますが、ちょっとまれなんじゃないかなというイメージがちょっと正直あります。
というのも、そこまで大きくない会社が多かったり、4年という月日の中で、20年とか30年というスパンを考えると、そういう方もいるのかもしれませんが、とはいえ、やはりそういうマネジメントとして階段を上がっていくという人はちょっと少ないんじゃないかなというのが、僕の印象です。
湯前:これについて、広木さんは、どういうふうに思いますか?
広木:そうですね。EMの勉強会とかに行っても、コミットしてくださる期間が意外と短いんですよ。
湯前:(笑)。
広木:というか、参加して、いちプレイヤーになるとか、出世してVPoEとかCTOになるとか転職するとか、いろいろなことがあって、「EMとしてやっていくぞ」となって勉強し始めて、活動をされていって、長く活動されている人は、相対的に、「どんどん移り変わるというか、新しい人がやってくるな」という感じはしていて。
「優秀な人たちが多いからとどまることがなかなか難しいのかな?」みたいなことを、「Slack」のコミュニティなどを眺めていても感じるところではありますね。
ただ、どういう方向に展開していくということもあり得るポジションにいる人が多いなとは思っていて、それはそれでポジティブなことなんじゃないかなと思って、見ていました。
湯前:なるほど、なるほど。そうですよね。僕もけっこう同じような感覚があって、いろいろな方向に行く人はやはり多いなと思うんですよね。
プロダクトマネージャーになる人とか、プロジェクトマネージャーとかスクラムマスターになる人とか、エンジニアの人事担当になる人……これは「ジンジニア」と言ったりもしますが、そういう人もいたり、技術広報になる人もいたり、独立して、転職エージェントになる人もいれば、コーチングにけっこうハマってコーチングのコーチになった人もいる。
もちろんICとしてエンジニアに戻る人もいますし、最初に言ったとおりEMのEMになったりVPoEになったりCTOになったりする人もいて、本当にいろいろな方向に行っているなというのが感覚としてあるんですね。
これだけいろいろな方向性に行けるEMって、けっこうまれな役割なんじゃないかなと思っていて、よくある、「EMになったらマネジメントしかできなくなる」みたいなのに対して「本当なのかな?」と、ちょっと疑ってしまうのが僕の感覚なんですね。
湯前:佐藤さんの周りはどうですか? 実際に、佐藤さんの会社さんとか。
佐藤:うちの会社のメンバーで言うと、マネジメントしかしないのかというと、そうでもないですね。逆に、そこだけでもまったく問題ないというメンバーがEMだけのロールをやっていることが多いです。
やはり、コードを書いて自分の技術を磨き続けたいという方が半分以上なので、基本的には、プレイングマネージャーとして活躍しているケースのほうが多いかなという印象ですね。
だから「EMになったらマネジメントしかできない」というところで言うと、実態はそうではない。
けれど、面接などで最初の話すタイミングで、「マネジメントだけしかできない職種がEMである」みたいな感覚になっている人がいるとすごく感じていて。
「うち、別にそうでもないですよ」とお話ししています。会社にもたぶんよるんじゃないかなとは思いますが、必ずしも、「EM、イコール、コードが書けなくなる」ではないかなという感じではありますね。
湯前:なるほど、なるほど。そうですね。おっしゃるとおり、今EMとしてやっている場合でも、コードを書き続ける人もいればいろいろなことに携わってやっている人も出てくるのかなと思います。
湯前:一方で、EMになると、「次、何をやろうかな?」と迷う人も多いよなという気もしています。いきなりの質問になっちゃいますが、広木さんはなんでだと思いますか?
広木:僕はけっこうこういうたとえをするんですけど、『ドラクエ』とかのゲームをやっていると船や飛行船が手に入る時があるじゃないですか。その瞬間ってすごくワクワクして、「どこにでも行けるな」みたいな感じになると思うんですよね。
一定キャリアを積んできて、次に進むステップとして、「どっちに行ってもいいよ」とか「どこに行ってもいいよ」という視野の高さだったり、自分の仕事へのコンフィデンスだったりが上がっていった時に、「どこでも行けるな」みたいな感じになるので、選択肢が生まれる分、悩むというか、そういうことなのかなと思っていました。
湯前:なるほど、なるほど。確かに、選択肢が広がることで迷うというのは、確かにあるのかなと思います。
湯前:僕は、もう1つ違う考えを持っているので、ちょっとそのあたりをこれから話していこうかなと思います。
EMになる前は、たぶんみなさん、エンジニアというある意味わかりやすい専門性を持ってやってきたので、キャリアに対して不安になるということは、そんなになかったんじゃないかなと思うんですよね。
もちろん、「エンジニアとして食べていけるのか?」みたいなところの不安は一定数あるけれども、それでも自分に手に職があるので、その手に職を持ってなにかやっていければ、ひとまずは職はなんとかなるだろうみたいな、たぶん安心感は一定数あるんじゃないかなと思います。
これは、先人が専門性を声高く言ってくれる中で切り開いてもらったからというのはあると思いますが、そういうエンジニアとしてのキャリアというのは、ある意味わかりやすくなってきたんじゃないかなと思います。
ただ、EMになると、いろいろな情報から意思決定をしていくことが必要になって、その分、いろいろな知識を身につけていく必要があると思うんですよね。そうすると、やはり時間は一定なので、広く浅い知識にならざるを得ないというのがあるんじゃないかなと思っていて。
もちろんこれはこれでEMの1つの専門性ではあると思うし、経営としての専門性の入り口にあると思うので、広く浅い知識を持っていることが専門性がないと言いたいわけではありませんが、ただ、これによって、やはり深い知識を持つ専門性というのがわからなくなってしまって、次のキャリアを見失ってしまうんじゃないかなというのが、僕が思っているところです。
しかもEMの人って、たぶんそれなりに高い給料をもらっているんじゃないかなと思うんですよね。だから、次に新しいことをやると、「深い専門性がないから給料がもしかしたら下がっちゃうかもな」みたいなところで恐怖心が出てしまって、結果として、「次にどうしよう?」と迷うというのがあるんじゃないかなと思っています。
広木さんのはけっこうポジティブな迷いだと思いますが、僕はそういう意味では、どちらかというとネガティブ寄りの迷いというところで、そういうのがあるんじゃないかなと思っています。
湯前:じゃあ、どうすればいいのかというと、やはり結局は「自分が何の専門性を持っているのか?」とか「どんな専門性を持ちたいのか?」というのを把握して深めていくことなんじゃないかなと思っていて。
さっきいろいろな道に行くという話もしましたが、プロダクトマネジメントもそうだし、アジャイル、スクラム、人事、経営、アーキテクトなどなど、いろいろな専門性があるんじゃないかなと思っていて、専門性を持っていれば、その能力を買ってくれるところは必ずあると思っているので、そういった能力を深めるのが大事なんじゃないかなと思っています。
そのためには、EMの時点でその仕事に積極的に関わっていくことが大事で、仕事を勝ち取っていくというのがその次にやるステップなのかなと思います。
これは僕自身の話ですが、僕はEMとしてやっていく時に、アジャイル、スクラム、人事の業務やコミュニティの中に入って、いろいろな方とけっこうディスカッションしていきながら知識を身につけていきました。
経営のほうは、僕自身がちょっとやってみる中で、「あっ、これちょっとちゃんと勉強しなきゃな」みたいに思って、ビジネススクールに行きました。そうやってアジャイル、スクラム、人事、経営の専門性を身につけていくことで、その先のキャリアをある程度描きやすくなったというのが、けっこう感覚としてあるなと感じています。
でも、EMになるとやはりやらなきゃいけないことはけっこう増えると思うんですよね。「本当にあなたがやらなきゃいけないことなのか?」というのを深く考えてみることもやはり大事だなと思っています。
もちろんEMは、それなりに高い給料をもらっていると思いますし、責任も持っていると思うので、そういう仕事が増えるのは、もうしょうがないなとは思いますが、それを誰かに差配したり、なくしたりする権限も持っているというのも、やはり一方ではあるんじゃないかなと思っていて。
なので、EMの「やらなきゃいけない!」みたいなものを増やしすぎて、深い専門性を身につけることをないがしろにしてしまうのは、悲しい方向に向かっていくんじゃないかなと、感じているところです。
もちろんEMは会社の中でそれなりに権限と責任を持っている立場になるので、そういったことを果たす義務はあると思いますが、その義務を果たした先に、「自分の挑戦は何なのか?」とか「専門性とは何なのか?」というのを考えるのもぜひやっていただくと、EMの次のキャリアに迷っている方にとっては、いいんじゃないかなと思っています。ぜひ、ご参考いただけたら幸いです。
(次回へつづく)
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには