2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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曽根原春樹氏:6点目は、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの使い分けです。ロジカルシンキングという言葉は、みなさんよく聞いたことがあると思いますし、日本の本屋さんに行くと、ロジカルシンキングに関して戦コンの方が書かれた本がいろいろありますが、逆にクリティカルシンキングはあまり日本で聞かないような気がするんですよね。
けれどもシリコンバレーのPM界隈では、クリティカルシンキングという言葉がめちゃくちゃ使われますし、めちゃくちゃ求められます。ここができるかどうかが、PMとして腕が立つ・立たないの分水嶺だったりします。
おさらいとしてちょっとお話ししますが、ロジカルシンキングとは何かしらの思考やファクトがあって、それを分解させていくというものです。基本的には要素間のつながりが理にかなっているかという部分を見ていくのがロジカルシンキングですよね。
最初のノードから3つに分かれて、次のノードにつながってという、このつながりがきちんと理にかなっていますか? みたいな話です。あとは最初のノードから3つに分かれていて、これがいわゆるMECEになっていますかみたいなのが、ロジカルシンキングです。
ではクリティカルシンキングはどういうことかというと、コアの考え方のそもそもの部分に対して疑問を投げかけていくことなんです。
例えばなにかのデータを見て、仮説を思いついたとか、ユーザーはこういうフィードバックをしているから、もしかしたらこれがほしいんじゃないかという、そういう思いや思考、ファクトが出てきたとしましょう。
クリティカルシンキングはそれに対して「なんでそう思うの?」とか、もしくは「なぜそうなの?」とか、「どうやったらそうなるの?」とか、もしかしたら「だから何なの?」とか、そういうふうに自分の考えたこと、もしくは相手が考えていることに対してその考えの確からしさということですよね。考えていることがきちんと他の事実、あるいはデータに基づいて解釈されているものかをトレースしていくことをクリティカルシンキングと呼んでいます。
このクリティカルシンキングとロジカルシンキングの2つの思考は包含関係です。どっちかではなくて、どっちもです。逆に言うと、しっかりしたクリティカルシンキングなしにロジカルシンキングだけを行っても、はっきり言って意味がありません。クリティカルシンキングなしにロジカルシンキングだけを行った時に何が起こるかというと、筋だけが通った能書きが出来上がります。
「言っていることは正しそうなんだけど、なんか違くない?」というような感覚に陥ったことがたぶんあると思うのですが、まさにそういう状態とか、フワッとした「なんとなくそうかもな」という意見です。これはクリティカルシンキングがきちんとなされていない証拠です。
どうしてそういうふうになるかというと、それを聞いたみなさんの頭が、「いや、ちょっと待てよ」と、「この人はこういうふうに言っているんだけど、この前見たデータは違う動きをしていたよな」という部分の、きちんと検証していない状態で意見として出てきてしまっている状態なんですね。
ましてや、偉い人がこの筋だけは通った能書きを言ったりすると、やはり日本の環境だと、それに対して「いやいや、ちょっと待ってくださいよ」とか言いにくかったりするわけなんです。けれどもその結果、周りは悩まされるんですね。やはりここがPMとしての覚悟が求められるところでもあるんですよ。
つまり、クリティカルシンキングは、PMとしての覚悟の現れそのものです。相手に忖度して質問することを避けてはいけないんです。本当にすべきことは何か。本当に検証すべきことは何か。その人が言っていることは果たして本当にそうなのか。どうしてその解釈になっているのかをきちんと問い続けるということです。
例えば「〇〇さんがこうだと言ったから」という理由だけで、特にこの〇〇さんが偉い人であればあるほど、すぐに「じゃあ、いつどうやって」という話で終わらせてしまうケースがあるのですが、実はそれは本当にすべきことの真意をきちんと見ずに先に進んでいる可能性があって、結果としてプロダクトマネジメントという観点からすると間違いかもしれないんですよ。
なので、みなさんの覚悟の1つの現れとして覚えておいてほしいのは、誰が何を言っているというシチュエーションに置かれた時に、誰という部分と、何をという部分をぜひ分離してくださいということです。それでみなさんが検証すべきは、何を言っているのか、どうしてそんな意見になっているのかに対してクリティカルシンキングを当てるということですね。
この、誰が・何を言っているかというセットの状態でクリティカルシンキングをすると、やはり日本では、相手を批判していると捉えられてしまうんですよ。そうではなくて、あくまで人と事実を分離してください。ここで言っている事実は、相手が言っている意見のことです。その意見そのものをぜひ深掘りしてほしいということです。おかしいことに対しては「おかしい」と言えるようになってほしいということなんです。
こうしたことは、やはり訓練しないとできないところがたくさんあります。よく問題の本質を、過去の事例や他社の動きを見て、「他がやっているから」とか、「過去がこうだったから」とすぐに結論づけてしまうケースがありますが、やはりこれだと問題の本質にたどり着けないんですよね。
なんで自分はこういうふうに考えているんだろうとか、なんで自分は違和感をおぼえているんだろうかという思いをぜひ大切にしてください。それがみなさんのクリティカルシンキングを発動させるための第一歩になります。このことを英語ではMetacognitionと言うのですが、ぜひこのスキルをみなさんに身に付けてほしいなと思います。
(スライドを示して)こうしたクリティカルシンキングを実行するにあたって、どんなことが役に立つかというと、やはりここに書いたエビデンスエコシステムという考え方です。みなさんがプロダクトマネージャーとして日々活躍される中で、例えばいろいろなファクトやユーザーの声やデータなどに触れる機会があると思うのですが、こうしたたくさんのエビデンスを集められる状態を常に持っていてほしいんです。
もちろんユーザーの声からだけじゃなくて、「Dogfooding」と書いてありますが、プロダクトを使う中で自分で感じる違和感、もしくは他社のプロダクトなどをどんどん使ってもらって、プロダクトのUXフローとか、このプロダクトのオンボーディングが上手だなとか、こういう感覚を常に持っていてほしいんですね。
こうしたファクト、もしくはエビデンスの積み重ねが前提を疑うための基礎体力になったり、現状維持を崩すための新しい仮説を生み出したり、もしくは芯のある仮説を作るための足腰になったりします。
(スライドに)「HiPPO」と書いてあるのですが、このHighest Paid Person's Opinionとは、会議室の中で一番給料が高い人の意見のことをいいます。ひいては、こうした声の大きい人に負けないためのエビデンスエコシステムを持つということにつながっていきます。
ということで今回、プロダクトマネージャーの覚悟ということで、今回シリコンバレーPMの人たちと比べて、どんなことを覚悟として持ったほうがいいかという部分で6つお話をしました。
おさらいすると、まずは視点→視野→視座ですね。A/Bテストの視点から始まって、Step Changeまで、今の自分がやろうとしている施策は視点の中での議論なのか、視野なのか、視座で捉えるべきなのか。こうした部分を行ったり来たりしながら、ぜひ考えてほしいと思います。
2点目はOver-communication。PMとしてのコミュニケーションで一番大事なのはコミュ力よりも揃えることです。相手との理解を揃えるという部分ですね。理解に隙間を作らないという部分です。
3点目は、Over-indexing。自分の得意技を持つのはぜんぜんかまわないし使っていただきたいのですが、それを隠れ蓑に自分の新しいスキルを獲得するのをサボってしまったり、後回しにしてしまうのはやめましょう。やはりこれだとPMとしてスケールしないです。
4点目は経営者感覚。もちろん売上がすべてを癒やすという世界も大事なのですが、実はその先の利益がもっと大事なんですよという部分です。プロダクトマネージャーとして利益を考える時には、そのReturn On Investmentだけではなく、機会コストの両面から考えていきましょう。
5点目は時間の使い方です。LNO Frameworkを紹介しました。今の自分がやろうとしているタスク、例えばみなさんのカレンダーの中には、毎週いろいろなミーティングやタスクがありますが、このLNO Frameworkに照らし合わせた時に、果たして何がLで、何がN(Neutral)で、何がO(Overhead)なんだろうということを1回見直すといいかもしれません。もしNとOが多過ぎたら、それはみなさん時間の使い方を間違っています。むしろ増やさなきゃいけないのはLの時間、レバレッジの時間です。
最後はロジカルシンキングとクリティカルシンキングの使い分けですね。日本ではロジカルシンキングを取り上げるケースが多いですが、実はプロダクトマネージャーとして大事なのはクリティカルシンキングのほうです。
クリティカルシンキングを高めるためには、エビデンスエコシステムを自分の足腰もしくは土台として作ることが大事です。もちろん自分自身で作ってもいいですし、チームもしくは会社として作っていただくとなおいいかなと思います。こうした部分が、みなさんがクリティカルシンキングを発動させるためのきっかけになってきます。
そして繰り返しになりますが、やはりPMとしては常々Dogfoodingをしてほしいんですね。自社のプロダクトをどんどん使ってほしいし、他社のプロダクト、単に競合のプロダクトだけではなくてぜんぜん違うドメインのプロダクトでもいいんです。プロダクトをどんどん使って、自分の中の違和感センサーをどんどん研ぎ澄ましてほしいんですね。
「なんかこれっておかしくない?」とか、「これってなんかどうなっているんだろう」という、心のトリガーですよね。これがみなさんのクリティカルシンキングを大きく伸ばすきっかけになります。
ということで、最後に2分ほどですが、軽く宣伝させてください。(スライドを示して)現在私は、こうしたいろいろなシリコンバレー企業でのプロダクトマネジメント経験を活かして、プロダクトマネジメントコンサルティングとしていろいろな日本企業を支援しています。
単にプロダクト作りというだけでなく、例えばプロダクトマネジメントの組織を作るとか、あるいはスキルを高めるとか、あるいはコーチングするとか、いろいろなニーズがありますが、いずれにせよどこから始めていいかわからないという話がある時には、ぜひお気軽にこのメールアドレスにご依頼いただければと思います。
あとはUdemyで、プロダクトマネジメントの講座が2023年現在で10講座になりました。大変ありがたいことに、今日この日時点で受講者数が24,000人を超えました。本当にありがとうございます。この私の講演を聞いている方たちの中にも、受けていただいた方が何人かいるのかなと思います。本当にありがとうございます。感謝しきれないです。
ということで、私の講演は以上になります。Xのアカウントを持っているので、よろしければフォローしてもらえればと思いますし、今回の公演の感想も教えてもらえると非常にありがたいです。ありがとうございました。
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