2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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藤井創氏(以下、藤井):いろいろな話が出てきたと思うんですが、ここからメイン的な話、未来の話にいければなと思います。今回のテーマである「10年後、エンジニアはどうなっていると思いますか」というところで、まずは竹迫さんに、ご自身の10年後、育成されているエンジニアの10年後、両方の観点から、どうなっているかのお話を聞ければなと思います。
竹迫良範氏(以下、竹迫):私自身が10年後どうなっているかというと、(年齢的には)56歳なんですが、僕自身がAIになって。今はオンラインで会話していますが、10年後は僕はたぶんアバターになっていて、会話はしているんだけど僕自身は答えていなくて、AIが自動で答えているとか、そんな感じになっているのかなと思っています。
僕自身がどういう意思決定で、どういったプロセスでこういった判断をしているかとか、そういったものをいろいろと書き出したりを今やっています。それをAIに学習させると、自分のコピーみたいなのがたぶんできると思うので。それで、いろいろな会社の技術顧問とか、教育の壁打ち相手になるということとかは考えていますね。
あと、今後の日本は、労働人口がどんどん減っていくという社会問題も出てきていて。自分の仕事をなくす、非効率な仕事をなくすほうに社会がどんどん変化していくので、その中で、業務プロセスを最適化するとか、省力化していくとか、そういったところでのエンジニアの仕事はたくさんあります。
そういったところで活躍できるようなエンジニアは需要があるので、(そういうところで活躍できるエンジニアを)どんどん育成したいなと思っているところですね。
藤井:なるほど。自分のクローンがいっぱいできるというか(笑)。なるほどなと思いながら竹迫さんのAIとしゃべっている未来を想像しました。そうしたら、私も10年後はAIになっているかもしれない(笑)。AI同士で会話をしているかもしれないということがあり得る。
竹迫:そうです。
藤井:おもしろいですね。労働人口の問題であったり、エンジニアそのものがそもそもどうなっていくのか。「役割がいろいろ変わってくるんだろうという話なのかな」と思って聞いてはいたんですが、10年後のエンジニアのために、自分も含めてどうなっているのかをある程度想像しないといけないのかなと聞いていて思いました。ありがとうございます。
藤井:江草さん自身はどうですか?
江草陽太氏(以下、江草):10年前を考えても、今とやっていることはたぶん一緒なんですよね。システム設計して、ソフトウェア書いて、実装して提供するとか、セキュリティのことを考えるとか。
出したい成果、仕事でいうと変わっていないと思いますが、10年前と同じことをしていると言いつつ、やり方はぜんぜん違ったり、(今でさえ、10年前と比較すると)当時と日々やっていることはまったく違う感じになっているので、10年後もたぶん同じようになるんだろうなと。
この10年間を考えると、なにかを作るためにしないといけない作業量はどんどん減っているんですよね。フレームワークだったり言語だったり、ツールが軽くなったり、そういったことで作業量はどんどん減っています。
一方で何が増えたかっていうと、いわゆる日本語で会話する仕事。設計の議論とか、「意思決定をしてくれ」と言われたり、教えたり、議論したり、そういった業務がどんどん増えていっていて。
(10年後は)「じゃあ作ろう」となる(までの)作業が、ゼロに近づいていっているとうれしいなと思うのと、きっとそうなっているんだろうというのと。
自分のAIが代わりにそれをできる状態になっているかはわからないけれど、教える相手、あるいは議論する相手が生身の人間ではなくて、コンピューターになっている感じになるのかな。(自分は)コンピューターが判断するのはまだ難しいやつだけ聞かれたり、(コンピューターに)やってみろと言われてやってみて、(コンピューターがそれを)学習したら自動化されるみたいな感じで、日々プログラミングをやっている代わりに(コンピューターに)教えるみたいになるんだろうなという感じがします。
藤井:なるほど。10年後なら江草さんは、やはりバリバリのエンジニアかなと思って話を聞いていたんですが、そう考えると、もう教える側というか、作業自体はどっかにやって、そのほかの部分をいろいろやっているイメージなんだなと聞いていて思ったんですが、そんな感じですかね?
江草:そうですね。自分も趣味でもいろいろ作るんですが、楽しくてやるのは(これからも)やるとして、「もうあと作業だけやな、面倒くさいな」って思う部分はなくなるんだろうなと思っています。
藤井:2人ともAIの話がけっこう出てきていますが、エンジニアの作業が減ってくると、エンジニアの役割や、「エンジニアとは?」というところの文脈も変わってくるのかなと思いました。ありがとうございます。
藤井:じゃあ、その話を受けてになりますが、もし10年後に2人がそうなるとなった時に、それに向けて今なにかを用意したり、何かしておくべきことみたいなことがあったら聞きたいです。まず江草さんから聞ければと思うんですが。
江草:いやぁ、答えが出ないんですが、教育がより難しくなるなという感じがしていて。今までのエンジニアは、いわゆる普通の作業みたいな、仕様を言われて、「これをプログラミングしてみなさい」と言われてプログラミングをして、それでもなんか変なロジックになってしまい、それをコードレビューで指摘されて、「あぁ、そういうアルゴリズムの書き方するのね」みたいなことを学習して、だんだん成長していって、教える側とか設計する側とかにまわるという感じで今まで来ていたと思います。
それが、作業自体がコンピューターによって自動化されたりとかすると、下積みというか、まず作業で慣れるというフェーズを経ることができない上に、それがないことで設計には行けないという問題がどんどん顕在化してきて、学習すること、あるいは教育することは、機会として難しくなってくるなという課題はちょっと感じていて。
その上で、自動化されているんだけど、あるいはAIでもできるんだけど、「コンピューターがやってくれたらコードレビューもほぼせんでいいコードができるのにな」とは思いつつもやってもらって、ちゃんとコードレビューするっていう、そういう教育を意識的にやっていかなければならないと思うことが大事なのかなという気はしますね。
逆に教育される側からすると、自分でもできることをAIにもやってもらうならいいんだけど、自分ができないからといってAIにやってもらっていると、仮に「自分でやれ」と言われてもできないままなので、それは気をつけないといけないと思っていて。
AIにやらせることも自分でもできるようにする。AIが吐いてきた結果を、ちゃんと自分で咀嚼することは必要なんだろなと、今からやっておかないとだめなんだろうなと思っています。
藤井:つまり、なんでもAIでやってもらおうとしちゃう、自分はできないけどAIにやってもらうとかになっちゃうと、たぶん10年後、その人の仕事はなくなっていますよ、と。「もうそれはAIがやればいいです」になっちゃうので、ちゃんと何をやっているかを理解した上で、自分の仕事が楽になるなら使うのはいいけども、というところですね。
江草:じゃないと、AIに指示をする側に回れなくなるんですよね。なので、いかにAIに指示する側に回れるか。そこをちゃんと見据えないとだめだなという感じがします。
藤井:今の話はけっこう大事かなと思っていて。「AIに取られる仕事」とかいう話もニュースにもなったり聞いたりするんですが、「なんで取られるのかな」ということをちゃんと考えると、たぶんそういうところなんだろうなと思うので。取られるんじゃなくて、自分も含めて変えていくかというところなのかなと今話を聞いていて思いました。ありがとうございます。
藤井:じゃあ、竹迫さんはどうでしょう?
竹迫:10年後を考えると、給料を上げたいですよね。同じ給料とか低い給料になっちゃうと良くないので、給料を上げるためにはどうすればいいかっていう話もしたいと思います。
先ほどの「AIに仕事をさせる、指示をする」っていうのはけっこうポイントで、ChatGPTとかをうまく働かせるためには、初めて職場に来た人に対して指示をするようにプロンプトを書くと、実はちゃんとAIが動いてくれるということがあって。自分が指示する立場とか、教える立場になるというのがまず一番大事かなと思います。
キャリアとして大事なのは、業務プロセスの中で指示を受けてやるというだけだと、やはり給料って上がりにくくて。自分で新しく業務プロセスとか開発プロセスとかを装着しにいく立場になったりとか、新しい職場や新しい場所にそれをどんどん根付けることができるとか、そういうことをすると、給料が上がるような職位になっていくと思います。
何十年もずっと同じ職場にいるとかではなくて、10年間に何回か転職をしているかもしれません。そうすると、前の職場とか学校で学んだこととか、あとは課外の活動のハッカソンとかでやっていた良い取り組み、ベストプラクティスみたいなものとかを(知っているので)、新しい環境で合意形成したりして、「じゃあ、これをやったら改善するかも」みたいにどんどん回していけるような人になっていくというのが、けっこう大事なのかなと思っています。
アウェイな領域とか、ちょっとズレたコミュニティに参加してみるとかはけっこう大事かなと思っていて。転職もけっこう勇気が要ることですが、一瞬ちょっと居心地が悪くなるような選択みたいなものに、やはり意図的に足を踏み込んだほうがいいなと思っています。そうじゃないと、仕事の広がりってなかなか出てこなくなってくると思うんですよね。
平均年齢が1歳ずつ上がっていくようなところにずっと居続けるんじゃなくて、ちょっと違うところに出てみて、平均年齢が変わるようなところに行ってみる。そういうことは、けっこう意識したほうがいいのかなと思います。
藤井:居心地の良いところにいるより、ちょっと居心地が悪いところに行くということは、エンジニアに限らずかもしれないんですが、重要だなと思って。(ずっと同じ場所にいることで)どんどん仕事は楽になっていくんだけど、楽になって何もしなくなっちゃうよりは、あえてそういう(違う)ところに自分を置いておくのはけっこう大事なのかなと、今の話を聞いていて思いました。
10年後、いろいろ変わっていると思いつつ、「でも、ちゃんとやっていれば10年後でもなんとか大丈夫だよ」という感じも受けます。(ただ)「ちゃんとやる」というのがいったい何なのかということが、今お話ししてもらったところなのかなと思いました。
(次回に続く)
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