2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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Ken Wakamatsu氏(以下、Wakamatsu):こんにちは。
西岡悠平氏(以下、西岡):こんにちは。
水島壮太氏(以下、水島):こんにちは。
Wakamatsu:「Product Leaders 2023」、最後のセッション、Panel Discussion #2、「プロダクトと組織スケール期のHARD THINGS」を始めたいと思います。
最初に、自己紹介をさせていただきたいと思います。本日モデレーターを務める、Ken Wakamatsuです。私は日本CPO協会の代表理事、そしてふだんはDCM VenturesのVenture Partnerを務めています。よろしくお願いいたします。
次に、新理事の西岡さんに自己紹介をお願いしたいと思います。
西岡:みなさん、こんにちは。2023年よりCPO協会の理事をさせてもらっている西岡と申します。ふだんはファストドクターという医療系スタートアップで執行役員、VP of Productとしてプロダクトの責任者をしています。よろしくお願いいたします。
Wakamatsu:じゃあ、水島さんお願いいたします。
水島:理事をやっています、水島と申します。印刷のECでご存じの方も多いかと思いますが、ラクスル株式会社でCPOをやっています。印刷に限らず、ほかのBtoBのサービスも幅広く展開しています。
あと、デジタル庁でも全体のプロダクトのCPOも兼任しています。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
Wakamatsu:よろしくお願いいたします。
Wakamatsu:今回のPanel Discussionでは、後半のセッション、4、5、6の内容についていろいろとディスカッションいたします。
(後半では)Toddさん(Todd Olson氏)の、マルチプロダクト戦略についての話をうかがい、その後、Mind the ProductのEmily Tateさんの、世界最大のプロダクトコミュニティについていろいろとお話を聞きました。最後に、TimeTreeのCPOの吉本さん(吉本安寿氏)に、グローバルプロダクトの作り方についてお話を聞きました。
最初にToddさんのセッション。いろいろと記憶に残る部分があったと思いますが、Pendo(Pendo.io,Inc.)の場合、2つ目のプロダクトを作る際に、常に売上を倍にしていくという目標をもとにプロダクト戦略を考えているとおっしゃっていました。
なので、2つ目のプロダクトを作る際の意思決定や、マルチプロダクトに関わるのも今の組織のメンバーではなく、別プロジェクトとして完全に独立して走らせたという感じの話をされていました。
お二人にも、ご自身の会社や企業、デジタル庁におけるマルチプロダクトの戦略と、組織についてお話をおうかがいしたいと思います。じゃあ、最初に西岡さん、お願いいたします。
西岡:Toddさんも言っていましたが、やはりマルチプロダクトは必要になってくるとは絶対思います。1個で勝てるよりは、ポートフォリオをそろえたほうがいいなと思っています。
そんな中で、ファストドクターでもマルチプロダクトをやっています。正確に言うと、プロダクトというよりはサービスというほうが正確かもしれませんが、やっています。
例えば、もともとtoC向けがメインでしたが、toB向け、クリニック向けも始めています。こういう決断というタイミングですが、やはりtoCがそれなりに大きくなってきて、この事業がきちん回ってきたというところを見てから、次に、toBというところに来たのかなと思います。
その中で、組織はやはりおもしろくも難しくあるのですが、toBを始める時の組織体系みたいな話もありつつ、僕は半年前に入ったので、toCの組織とtoBの組織ではKPIの立て方などいろいろ違うんですよね。
どういうチーム体制で、どういうふうにプロダクト側のやり取りでビジネスを進めていくかというところは、まだまだチャレンジでもありますが、いろいろ工夫しているところです。
Wakamatsu:水島さん、そういった意味だとラクスルは、やはりtoBとtoCの両方をやっていると思うのですけれども。
水島:そうですね。BtoBプラットフォーマーと言っているので、基本Bなのですが、中には当然個人のお客さまもいます。でも、僕、toCとtoBというよりは、toSMB(Small and Medium Business)とエンプラ(エンタープライズ)はやはり違うと思っていて。
SMBってけっこうもう、一人店長が個人でいろいろサービスをやっていたり、けっこう小さいところだと正直あまりtoCの感覚と変わらない。意思決定者とユーザーがほぼ一緒だといつも言っています。
エンタープライズも、ミドルも含めて、意思決定者と実際に使うユーザーが違う時の作り方、攻め方と、それが一体化しているtoC的なやつを同じ組織でやるのはとても難しいと僕も感じているところです。
ラクスルの場合、「マルチプロダクトという観点をいつ始めるんですか?」というところだと、大きく3つあるかなと思っています。
1つは、最近あまり言ってないのですが、当時ファウンダーが「俺は10個サービスを立ち上げる」と。もう最初からマルチでいくという(笑)、もうビジョンの中でマルチになっているケースがあって。そうすると、じゃあ、次に私たちは何をビジョンとして次の柱を立てていくんだねという発想でいくケースもあります。
Toddさんが言っていたのとまったく一緒で、ハイグロースですね。要は、1個だけのサービスをやっているとどうしてもグロースのレートが下がってくる。もっとハイグロースなものを作らないと大きな成長を描けないよねとなると、やはり2つ目の、なにか作らなきゃいけないという使命感から作られるというマルチプロダクトのところ。
あと3つ目は、やはり競合差別化ですね。だんだん競合が出てくるので、競合とまったく同じだとやはり苦しくなってくるんですよね。競合にできないことをなにかしようとする時に、横のマルチプロダクトを置いていくみたいなところで、ラクスルは、けっこうそれをひたすらやっていたら、もうとてつもなくマルチなマルチな(笑)、プロダクトになりました。全部は私、見切れません、みたいな状態になっていますという感じですね。
Wakamatsu:そうですね。Toddさんは、やはり1個できたからといって次が簡単にできるわけではないし、PMFが1回成功したからといって2回目、3回目があるとは限らないとおっしゃっていたんですが、そういった場合の意思決定は別として、組織の中で工夫しているところや、プロセスで工夫しているようなところはありますか?
西岡:ファストドクターでは、小さく始めるというのをやはり意識していると思っています。今あるリソースじゃなくて、違うリソースで小さく始めて、言うなればシステムなども作らずに、ちょっと実験的にやってみるみたいな。スプレッドシートでがんばってちょっとやってみる、というようなことから始めるところは本当にありますね。
Wakamatsu:じゃあ、そのプロダクトにすごく投資をするというよりも、そこにPMFがあることを確認しながら。
西岡:そうですね。
Wakamatsu:ニーズがあって、プロダクトを作るみたいな感じですね。なるほど。
水島:ラクスルも近いですね。社内では、シードフェーズのスタートアップに近いかたちで、最初はもう本当に少ない投資額で、まずシードとしてやってみましょうみたいなことが起こっています。
PMFはぜんぜんしていないのですが、最初の顧客が見つかり、ペインが見つかり、解決できるというケースができたら、次に、社内シリーズAみたいなかたちで投資額がどんどん増えていってというようなかたちのガバナンスをやっているケースが多いですね。
Wakamatsu:いつまでも話し続けられるトピックなんですけども、ちょっと時間の関係で次のトピックにいきたいと思います。Toddさんから、商談で顧客がモバイル対応を条件にしました。「今すぐ契約してくれるなら、モバイル対応を実装しますよ」と言ったという話がありました。
だけど、Toddさんは直感的にたぶん契約しないだろうと感じていて、実際に本気度を検証するために、開発に相談もせずに、「じゃあ、3ヶ月で作ります」みたいな話をしたというのがすごくおもしろかったんですけれども。
顧客のニーズに対して何を作るかはもちろん重要ですが、何を作らないかというのは、下手したらそれ以上に重要かなと思います。そのあたりで2人の経験上で、工夫したことや、これは同感できるというのはありましたか?
じゃあ、水島さん。
水島:やはり先ほど言ったtoCとかtoSMBだと、いろいろな小さな声がいっぱいあって、それはいいんですけど。
先ほど話はやはり、どちらかというとBtoBのセールスベースで、かなり大きいクライアントのビッグディールなんだろうなと想像していて、当然そういう大手のお客さんと商談というか、プロダクトの連携でいろいろ起きた時に、「アカウント連携したらウン億円ですよ」みたいな(笑)、そういうような話は、過去に当然ありました。
「それ、本気かな?」って確かに疑わしいところもあって、僕はエンジニア出身なので、エンジニアから殺気を感じたことがありましたけれども(笑)。
(一同笑)
僕は顧客と接している時も、やはりエンジニア、作る身としてのところを一緒に考えちゃうので、そういうことはしないと思いますが、やはり本気度を測る時にも一番大事なのは、プロダクトを作らずに本気度をお互い試せるようなフェーズ。
例えば、「すみません、オペレーター10人つけます」とか、とにかく顧客のペインが解決できる別の手段をなるべくプロダクト投資を抑えながら本気度を試すと言ったらお客さんに失礼なんですが、「お互い本気ですよね? そのほうがお互いリスク少ないですよね?」というコミュニケーションを取りながら進めていくということは、過去にありましたね。
(西岡さんは)どうですか?
西岡:そうですね、もう少し小さくて、かつ社内の話になるのですが、私たちは社内オペレーターが使うシステムを作っていて、そういう時に、オペレーターさんから、「ここをちょっと使いやすくして。ここをこうしてくれ」といろいろリクエストが来ます。
もちろん全部に対応したいのですが、そこのコストをきちんと計算して、事業分コストを配賦するということを最近ちょっと始めています。
そういうことをすると、やはり同じ方向を目指せるので、ちょっと面倒くさいけれど、手作業で対応しよう、これはやはり事業として大切だからコストを払ってでもきちんとリクエストしようというところが、ビジネスとプロダクト開発の中でうまいことできてきているのかなとちょっと思っています。
Wakamatsu:Toddさんの話でも、SaaSをオンプレにする中で、「このぐらいの金額だったらいいですよ」と言ったら、「じゃあ、やりません」となったというのがありましたが、それとちょっと似ているかなと思います。
あと、よく100ドルテストみたいな感じで、お客さんに「100ドルあげるから、この中で好きな機能を選んでください」と言った時に、少し本気度がわかるという、プラクティスがあるかなと思いました。
(次回へつづく)
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