2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
ファイナリスト CTOによるピッチコンテスト(青木 俊介氏) (全1記事)
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司会者:チューリング共同創業者、取締役CTO、青木俊介さまです。持ち時間は6分間となります。青木さま、準備はよろしいでしょうか?
青木俊介氏(以下、青木):はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。
司会者:それでは、お願いいたします。
青木:「We Overtake Tesla」、打倒テスラを掲げるチューリング株式会社、共同創業者のCTOの青木と申します。よろしくお願いします。
私自身の話からですが、私自身、アメリカのカーネギーメロン大学で自動運転システムの開発を5年やってPh.D.を取得してきた、エンジニアや研究畑の人間です。
もともとGeneral MotorsやGoogleなどと研究をしていて、非常に楽しくてエキサイティングな20代を過ごしました。
そんな中で、私の教員の1人である、ルーマニア人の教員にこんなことを言われました。「How can we conquer the market held by Japanese car makers by autonomous driving software?」。
直訳すると、「日本の自動車メーカーが持っている市場を、どう自動運転ソフトウェアで奪っていけるだろうか?」。これを言われた時、私はすごく頭を殴られたような感覚に陥りました。
なぜかというと、私たちの国は、伝統的にものづくりや製造業がすごく強い国ですが、ソフトウェアの変化によって負けてきた国です。Windows OSやiPhoneによって市場が破壊されてきました。今、自動車業界でも大きな変化が起きています。テスラです。テスラによるソフトウェア中心の車作りです。
実際テスラは、世界でも評価されています。(スライドの)向かって左側にテスラの時価総額。右側に既存自動車メーカー12社の時価総額を並べています。
私たちの国は地下資源がないために、食べていくためには、ものづくり、製造業をがんばっていくしかありません。自動車業界は中でも大きく、60兆円毎年出荷をしていますし、550万人が自動車業界に関わっていると言われています。
つまり、テスラによる自動車業界の変革は、日本の基幹産業の大きな危機でもあるわけです。そんな危機感を胸に創業した会社が、チューリング株式会社という会社です。
私たちの会社が掲げる夢は、完全自動運転の実現、自動運転EV車両の量産、そして「We Overtake Tesla」、テスラを超える会社を日本から作りたい。そんな思いで創業しています。
チューリングの戦い方です。豊田喜一郎は、トヨタを作る時に、FordとGMからたくさんのことを学んで、追いかけて、追いついて、最後に品質で世界一になってきました。私たちもテスラを追いかけて、学んで、最後に追いつきたいと思っています。
実際のトラクションです。テスラは2003年に創業し、5年かけて「テスラ・ロードスター」を販売開始しました。私たちは、2021年に創業し、わずか1年半で、「THE 1st チューリング CAR」、初めての製品を世の中に出して、一般の顧客に買っていただき使っていただいています。
もう1つのトラクションです。(スライドを示して)この赤い車は、私たち自身で開発をして、先月(※登壇当時)の「JAPAN MOBILITY SHOW」にも出展させていただきました。この車を作る中で、開発の練度や組織を強めることに大きく成功しました。日経新聞さんのJAPAN MOBILITY SHOW特集では、トヨタでも日産でもSUBARUでもなく、私たちの車の写真が大々的に使われています。
ソフトウェアの思想についてです。自動車の運転って実は非常に難しいです。猿や蛇や鳥はそもそも自動車の運転ができません。これはなぜか。彼らが我々よりもセンサ機構が劣っているからなのか、目が悪いからなのか。
そうではなくて、人間にしか運転ができないのは、我々の頭がいいからです、頭脳がいいからです。5歳児の子どもに運転ができるかというと、けっこう危ないなと私は思っています。そのため、私たちはいいセンサではなく、いいAI、強いAIを作ることに非常に注力しています。
もう1つ、私たちは忘れがちですが、実は免許取得以前に、私たちはいろいろな常識、文化的なルールを獲得しています。私たちが運転できるのは、車の中で過ごした時間が長いからでもなく、いろいろな場所、ルートを運転したからでもなく、頭がいいからです。なので、常識を有するAI基盤モデルを作りましょうと、創業当時から掲げています。
ソフトウェアのトラクションについてです。私たちは、2021年に創業して、わずか1年で認可を受け、公道での自動運転の走行にも成功しています。2022年の秋には、1,400キロメートルの自動運転連続稼働にも成功しています。こちらは、日本のトラックレコードにもなっています。
また、2023年6月には、LLMで動く自動運転車を開発、発表しています。(スライドの)向かって右側にあるように、例えば交通誘導員の指示だったり、道路標識だったり、そういったものを包括的に理解して、自分の運転行動を決定する「ALAN-1」というソフトウェアの開発も進めています。
チューリングという会社は、わずか2年ながら、いろいろなことを成し遂げてきました。これは、強いリーダーシップがあったからだと私は思っています。
CEOには、将棋AI「Ponanza」で初めて人類を打ち倒した山本一成さん。COOには、株式会社メドレーを50人から1,000人規模に大きくし、上場に導いた田中大介さんを迎えています。
エンジニアメンバーにも、他社でCxOを経験した方や、リクルートさん、メルカリさんなど、メガベンチャーと呼ばれている会社からシニアエンジニアがジョインしており、この大きな難しい問題にトライしています。
私たちはディープテックですが、市場へきちんと製品を投入し、会社として生き残っていかなければいけません。このため2023年には、2,000万円の車を納車して、2024年以降は、100台から200台程度の車を納車することを予定しています。また、2030年以降は、量産体制に移り、みなさまの手元に届く車を作っていきたいと思っています。
また、本日(※登壇当時)の日経新聞7面に入っていますが、私たちチューリングは、2024年末から、自動運転機能と、デザインと、車載ソフトウェアを載せた車をみなさまのもとへお届けします。
スタートアップという奇跡を目にしたい方々、一緒にこの船に乗りたいと思う方々、日本のものづくりを憂う方々は、ぜひこの製品を買っていただき、一緒に夢を見ていただいて、日々の生活の中で使ってもらいたいと思います。
最後に、私がチューリングという会社でCTOとして大切にしていることが2つあります。たった2つです。1つ目は、チューリングという大きな夢、膨らんできた夢をきちんと叶えること。そのためには、開発も採用も広報もなんでもやらなきゃいけないなと思っています。
そして2つ目が、情熱と元気です。情熱と元気あふれるプレゼンテーションを聞いていただき、誠にありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:青木さま、ありがとうございました。さぁ、それでは質疑応答のお時間に移らせていただきます。質問のある審査員の方は、挙手をお願いします。
それでは、塚田さま、お願いします。
塚田朗弘氏(以下、塚田):プレゼンテーション、ありがとうございました。
青木:ありがとうございました。
塚田:2つ、教えていただきたいです。テスラの話がすごくたくさん出てきましたが、実際、日本のお客さまのニーズを、どういうふうにリサーチしていて、実際に今どういうニーズがあってどう評価しているのか。このプロダクトでのPMFはどういう状態なんだろうと思ったところから聞きたいです。
もう1つ、ソフトウェアのところがやはり革新的なんだろうと思うのですが、車自体、ハードの部分もチューリングで作ってしまおうということですよね。
青木:はい、そうです。
塚田:やはりハードを作るのはけっこう大変なのかなと単純に思うのですが、どういうエンジニア構成になっているのかとか、そのあたりのなにかチャレンジがあれば教えていただきたいです。
青木:2つ目の質問から先にお答えしたいと思います。私たちのエンジニアの構成ですが、ソフトウェアエンジニアは、いわゆる、SaaS系スタートアップとか、SaaS系のメガベンチャーとか、自動運転を研究してきた方々が入っています。
一方で、私たち、実は2拠点体制を敷いていて、柏の葉(柏の葉キャンパス駅)の駅前にある大きなオフィスと、工場を持っています。工場のほうには、本田さんや日産さんでやってきた方々が今います。
創業する時、あまり解像度が高くなかったのですが、自動車メーカーは必ず3つの機能を持っています。1つは自動車の組立工場、組み立てる場所を必ず持っていることです。次にエンジンを開発する能力。そして最後に自動車会社としてのブランドです。
実はこの3つが大きなパートで、1個1個の部品は、わりとサプライヤーさんに頼っているんですよね。なので、我々もEVの領域で戦っていく時に、この部品1個1個を作っていく必要はないんだなというのを毎日ひしひしと感じています。
大切なことは、このサプライヤーさんに「あいつらはきちんと自動車を作るんだな」と思ってもらって、信じてもらうこと。そのためにはなんでもやっていかなきゃいけないなと思っているのが、2つ目の質問の回答です。
青木:1点目の質問が、マーケットのお話ですね。この会社ってPMFとか、売上とかがぜんぜんないんですよ。2,000万円で車を売りました。「わー、売れた」みたいな感じでやっているのですが。
日経さんにも、2024年以降は50台から100台を売るという話を掲載していただきましたが、一応、リストっぽいものはできていて、たぶん最初に買う人は、チューリングを応援する人です。これは、もうテスラもそうでした。
チューリングのストーリーと、チューリングのやりたい未来を信じて一緒に乗ってくれる人ですね。なんかもう、社員を採用するのと同じ感覚で最初のほうは売っていかなきゃいけないんだなと、最近、毎日感じています。
その先ですね。量産のところも、おもしろいインサイトがあるなと思っています。今、自動メーカーと、パッと言われると、ドイツの3社、BMWさんとかアウディさんとかメルセデス・ベンツさんとか。日本だと、トヨタさんとか日産さんとか。
実は、世界で10パーセントぐらいを取れている会社が世界一になっているんですよね。トヨタさんは世界一なんだけれども、実は10パーセントぐらいしか取れていなくて、トヨタさん10パーセント、BMWグループで10パーセント、日産、ルノーグループで10パーセントみたいな。
実は、けっこうロングテールに敷かれていて、台数が少ないところだとAston Martinさんなど、けっこうセグメントによって買っている車はいろいろあるなと思っていて、寡占状態といものは起こりにくいものなんだなと思っています。
「80パーを取りにいくよ」という話ではないので、そこまで実は心配していない。ただ、解像度を高めていかなきゃいけないのは事実ではあります。
塚田:ありがとうございます。
青木:はい、ありがとうございます。
司会者:ほかにご質問はございますか? それでは藤本さま、お願いします。
藤本真樹氏(以下、藤本):なんとなく、5人順番になっている感じが。それはそれとして、素敵なピッチをありがとうございました。藤本と申します。
どうでもいい感想を最初に申し上げますと、これ(Startup CTO of the year )、けっこう歴史あるイベントなんですけど、「ついにこういう会社も出てきたか」感あるよねと、なんかしみじみ。5年ぐらい前にハードウェアのスタートアップが出てきて、ついに車もみたいな。
2つご質問させていただきます。1個目は、車でソフトウェアというところで、AI部分は、それはそれで1個、ど真ん中あるけど。
もう1個大事な要素として、まさにiPhoneやWindowsみたいなプラットフォームとして車のソフトウェア部分をどこかに握られると、それはそれでけっこうつらいよねみたいな。例えば、AndroidOSみたいなものが全部バッと載って、そこで押さえられちゃうとそれはきついよねと。
そこに対しても考えていく必要があるよなとけっこう思っているところで、そのあたりについて、本当にソフトウェアのコアテクノロジーのところの……上になるのかな? そのソフトウェアプラットフォームの部分、どうしていこうというのがあったら教えていただきたいです。これはお話しできたらで大丈夫です。
青木:まさにそう思っています。プラットフォーム、取られちゃっているじゃないですか。日本で製品を作ると、だいたい10パーとか20パーとか、ヒュヒュヒュッて取られるんですよね。めちゃくちゃ悔しいなと思っていて。
車って、たぶん残されたプラットフォームだと思っているので、きちんと取っていきたいなと思っているというのが1点。
あとこれは、けっこう国防や国の運営とかにも関わってくるところなので、ここが「アメリカ製になっちゃいました、中国製になっちゃいました、まぁ、いっか」というのは、あまりにも悲しいと思っていて。
私たちは、けっこう「想い駆動」というか、私たちの創業のストーリーもそうですが、やはり日本はITで負け続けていて、なんか……ちょっとAWSさんがスポンサーしているのでアレなんですが、AWSさんやGoogleに行くのが正義みたいな、それってやはりすごく悲しいなと思っている面があってですね……あぁ、ちょっとヤバいなこれ。
(会場笑)
青木:まぁまぁまぁ、いいんですけど、ぜんぜん。でも、すみません(笑)。
選択肢として、日本でトップのAIリサーチャーになりたい、エンジニアになりたいといった時に、AIの下請っぽいタスクだったり、誰かに言われたタスクだったりじゃなくて、汎用人工知能を作ることだったり、AI自体の技術を押し上げることだったりって、わりと地続きだと思っていまして。
たぶん汎用人工知能ができる一歩手前に、自動運転するAIぐらいはできるんじゃないかなと思っているので、そこに全力投球して踏み込んでいく選択肢としてチューリングを持っていきたいなと思っています。
藤本:ありがとうございます。
司会者:審査員のみなさま、ありがとうございました。それでは、青木さまに大きな拍手をお送りください。
青木:ありがとうございました。
(会場拍手)
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