2024.10.10
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今村雅幸氏(以下、今村):よろしくお願いいたします。では本日は私から「プロ経営者としてのCTOが実践するテックカンパニー化請負術」というタイトルで始めたいと思います。さすがに「プロ経営者」というのも何なんですが、CTOを長い間やってきていますので、その中でみなさんにお伝えできる部分を今日は伝えていければなと思います。
アジェンダはこんな感じです。
冒頭に軽く自己紹介をさせていただきます。「何者ですか?」みたいなところなんですが、今村といいます。もともとはヤフーに入って新規事業をやったりしていました。そのあと、スタートアップを創業していわゆるプロダクト開発だったりエンジニア組織のマネジメントだったりをやっていました。
その会社を今「ZOZOTOWN」などを運営しているZOZOに売却をして、そのタイミングでZOZOにジョインしました。それで、ZOZOでCTOですね。プロダクト開発やエンジニアの採用など、いわゆるエンジニアリング組織マネジメントまわりを担当して、テックカンパニー化みたいなところを推進してきました。
2021年にBuySellに移って、今はテックカンパニー化を推進しています。他にもCTO協会の理事だったり、いろいろな投資先の顧問だったり、CTOの育成だったり、そういうところを幅広くやっていたりします。経験としては本当にスタートアップから大企業まで、幅広くCTOとして経験してきたと思うので、今日はその中でなにか役に立つ話ができればなと思っています。
BuySellの紹介を軽くすると、BuySellは「人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。」というところで、リユース事業みたいなところをやっています。グロース市場に上場している会社になりますが、いわゆるお客さんの家に行って物を買い取るというビジネスをやっています。
「誰かの不要なものを誰かの必要なものへ」と、つなぐと。人から人へものを渡していくところに関して、お客さまのニーズに合わせた各種買取や販売チャネルで自宅に眠るさまざまな不要なものを、誰かの必要なものへと変えていくということを行っています。
会社は順調に成長しており、規模感的にはだいたい売上337億円です。それぐらいの規模感まで成長してきています。BuySellは、お客さんから買い取ったものを自社で販売管理して、それをtoC、toBの両方に販売するというビジネスモデルになっています。BuySellもリユース事業を行っている中でテックカンパニ―化していきたいというところで私は2021年にやってきました。
今2年経ってどんな状況になったかというと、こちらは先月(※登壇当時)に出た決算発表に載せているのですが、エンジニアの数はだいたい35人ぐらいから70人ぐらい。新卒を入れると80人ぐらいの規模感にエンジニアの数が増えてきています。
単純に数を増やすだけじゃなく、生産性の高い組織作りを推進してきたというところで、先日(※登壇当時)「エンジニア組織の生産性指標が高い企業」を受賞しました。なので、エンジニア採用や生産性向上みたいなところは、わりかし順調にやってきているのかなと思います。
というわけで、今日ここでお話しする内容は全部自分が実践してきたもので、意味があるなと思ったことだけを紹介したいなと思っています。よくあるマネジメントの本にある「なんか良さそうだな」みたいなやつというよりは、自分が実践してきて本当にこれは良かったなと思っているものだけを話したいなと思っています。
ここに今日参加していらっしゃる方々はCTO、VPoE、エンジニアリングマネージャーの方々が多いのかなとは思いますが、みなさん、CTOに求められる役割とは何だと思いますか? 突然の質問ですが、いろいろあると思うんですよね。
例えばプログラミング能力、技術力、開発環境を作れるスキル、ソフトウェアを設計できる能力、採用できること、評価制度を作れることなど、いろいろあると思うんですよ。
僕も気になったのでChatGPTにちょっと聞いてみました。どれぐらい答えられるのかなと思って「CTOの役割ってどんなものがありますか?」と聞いてみたんですよね。
そしたらメチャクチャしっかり答えてくれたので、もう僕が話す内容はなくなったんじゃないかと衝撃を受けたんですけど。すごく的確な回答をChatGPT君がしてくれたので、非常に役立つなと思って見ていました。このChatGPTの回答にもあるように、技術戦略の選定とか、技術革新の推進とか、チーム統括とか、技術コミュニケーションとか、セキュリティとかいろいろあるんです。これらはいずれも間違っていないと思います。
この中で、じゃあいったいどれが重要なのかについて話していきたいなと思います。CTOの役割はフェーズによって変わると思っています。なので、ここにいらっしゃるみなさんがある企業のCTOになった時に、何でもかんでもできるわけじゃないと思うんですよね。そのフェーズによって自分の役割、求められている役割はいろいろと変わると思っています。
なので、CTOの役割は基本的にフェーズによって変わると思います。じゃあ小さい時と大きい時とで何が違うかですね。大きくなればなるほど、いろいろな分野の、各領域が得意な人を採用していって組織をスケールさせていく仕組みを作ることが非常に重要になります。
要は、人が少ない時は自分ががんばればいいのですが、人が増えてくると各分野が得意な人たちにどんどんしっかりと任せていって、組織自体をスケールさせられるように自分自身が動きを変えていかないといけない。そういうところの変化が求められるなと思っています。
例えば1~10人ぐらいだと、やはり自ら開発して、良い人を即戦力として連れて来る。もう少し人が増えてきたら、エンジニアリングをうまくマネジメントしていくプロダクト開発チーム作りとか、チームでものを作っていく環境の整備とか、チームマネジメントとか。100人ぐらいになったらそもそもの戦略ですよね。エンジニアがたくさんいるけどリソースをどう使っていこうとか、コミュニケーションが複雑になってくるのでそのへんの整理とか、新卒とか技術ブランディングとか、そういうところもきちんとしていく。
さらに大きくなってくると独自の研究開発やビジョン、カルチャーの浸透など、より組織が増えてきても組織が機能するようにマネジメントをしていかなければならない。そしてそれをスケールするための仕組みを作っていかなきゃいけないというのがCTOの役割にはなってくるかなと思っています。
この中で、どのフェーズにおいても重要な要素はここに挙げられるかなと思っています。1つ目は経営者として事業や技術戦略の意思決定など、中長期ビジョンの策定と実行。これが一番重要だと思っていて、CTOしかできないことだと思っています。特に中長期のビジョンの策定が重要かなと思います。もう1つはプロダクト開発マネジメント。要は、ここの上に描いたビジョンをどういうプロダクトを通じて実現していくのかというところですね。
3つ目はそのプロダクトをじゃあどう作っていくのかというところで、エンジニアリング組織マネジメント。こういうふうにプロダクトやエンジニアリング組織もマネジメントしながら、技術的な側面からビジョンの策定や仕組みを作っていくのがCTOに任せられる仕事かなと思っています。
今日はこの内容についていろいろと話していきたいのですが、いかんせん時間がなかなかないので今日は特に重要な、この技術戦略という部分とエンジニアリング組織マネジメントの部分にフォーカスしてお話できればなと思っています。
まずは技術戦略からですね。技術戦略とは何かといいますと、やはりCTOはChief Technical Officerであり経営者であるので、テクノロジーの側面から会社をどうやって成長させるかを考える必要性があると思っています。Chief Technical Officerなので、中長期の戦略を考える上で技術トレンドを把握しておくのは非常に重要だと思っています。
例えばマーケットのトレンドやテクノロジーのトレンド、自社のプロダクトの状況や自社開発への投資方針。これらを踏まえながら中長期の技術戦略を描いていく必要性があると思っています。
それぞれ具体的に見ていくと、例えばマーケットトレンドの把握。これは自分たちが属している業界のトレンドですね。いわゆる競合他社の状況など、そういうのをしっかりと追えるようになったほうがいいと思っています。
意外とCTOだとしてもぜんぜん競合のことを知らないことが多いのですが、やはり技術戦略を立てる上では他社がどういうところに強みを持っているのか、自分たちにはどういう強みがあるのかをしっかりと理解しておく必要性があると思っています。競合他社コンプスのIR、決算情報をチェックします。
競合他社の決算を見ると「こういう新しい取り組みをしていますよ」とか「こういう新しい技術を使っていますよ」というのが全部載っているので、そういうものをしっかりとチェックする習慣を付けるといいかなと思っています。はたまた業界紙ですね。私たちはリユース業界なので『リサイクル通信』になりますが、そこでも各社の取り組みが紹介されているので、そこをチェックして競合他社の新しい取り組みを知る。
特にテクノロジー分野への投資はしっかりと追っていきます。国内だけじゃなく、海外の同業種のニュースを追う。海外のリユース事業はどうなっているのか、どういう企業があるか、これはリユースじゃなくファッションでも同じですが、同じような海外の同業種がどこまで先端を進んでいるのかというところをしっかりとキャッチアップをしておくことが必要かなと思っています。
あとはその競合他社との情報交換みたいなところ。よくあるのですが、やはり同じような業種の経営者同士は意外と仲が良かったりするんですね。同じCTOであればCTO同士で話しますし、CEOだったらCEO同士で話すこともよくあると思います。そういうふうにして、大きな流れがどこに向かっているのかをしっかり把握して、狙うべきマーケットに対して打ち手を考えていくということですね。
これはCTOだったとしても必要な能力だと思っているので、このあたりはしっかりとやるといいのかなと思っています。
次にテクノロジートレンドの把握ですね。昨日最新だったものが今日古くなる世界。唯一移り変わりが激しいというのは、みなさん身をもって知っていると思います。どういう技術を使ってどういう技術に投資するべきかというところはしっかり考えておく必要性があります。
特にCTOは、毎日出てくる技術的なトピックをしっかり把握します。Twitter、はてなブックマーク、国内外のニュースRSSなどをしっかりサブスクライブして、毎日出てくる技術に目を通していくのも重要ですし、自分たちが使っている技術分野、例えばフロントだったらReactだったり、サーバーサイドだったらGoだったり、そういうものの分野でできているさまざまな機械学習やAI。
自分たちが使っている分野で日々出てくる論文をしっかりチェックする。例えばarXivの論文ですね。それに関して自分たちが関係するような部分をしっかりとキャッチアップしておくなどが必要かなと思っています。それと、社内のテックリードたちと最新情報について話しながらキャッチアップしていく。「今はこういうものがトレンドですよ」「これが古くなった」とかですね。そういうものを話していく。
こちらも社外のCTOたちと「こういうSaaSがいいよ」とか「こういう技術をうちでも使っていますよ」みたいな話をしっかりとして情報交換する。すぐにいつでも気軽に聞けるような関係値を構築していくことも非常に重要な要素かなと思っています。このあたりの把握というのは、単純にソフトウェアを作るためにはもちろん必要ですが、今後採用を考えていく上で非常に重要な要素にもなってくるので、しっかりとトレンドを見ておくのは大事かなと思っています。
次に自社プロダクトの状況の把握ですね。マーケットの状況を知りました、技術トレンドも知りました、じゃあうちのプロダクトは今どうなっているんだっけ? というところをCTOとしてしっかりと把握しておく必要性があると思っています。意外とCTOで解像度が低い人がいますが、そもそも自社プロダクトのことをしっかりとよく把握しておきましょうということですね。
「技術的負債ってどれだけあるんだっけ?」とか「どういう状況になっているんだっけ?」とか。あとは「そのサービスを展開して、スケールアップやスケールアウトできないポイントはどこにあるんだっけ?」とか。あとは内製化と外注ですね。ここは内製化するとか、ここは外注するとか。ここは内製化してライブラリを作るみたいな。
ここは今あるサービスを使っていこうとか、自社プロダクトがどこまでの自社プロダクトを内製化するかとか。SaaS化するみたいなところをしっかりと判断することも非常に重要かなと思っています。これは組織企業が小さければ当然全部把握できるのですが、大きくなっていくに連れてだんだん把握できなくなってくるんですよね。
そこをしっかりと把握しておくことが、技術戦略を今後立てていく上では非常に重要かなと思いますし、開発リソースを割くという点だとやはり自社のプロダクトの解像度を高く理解しないと作戦も立てられないので、しっかりと自社プロダクトの状況を把握しておく必要性があると思っています。
次は自社開発への投資方針です。自社の強みをどこに置きますか、というところで、どこに技術的な投資を行うべきかを見ます。これはCTO的にはけっこう重要な要素です。
1つの例として、会社のコアテクノロジーは内製化しましょうと。特に事業の独自性とか優位性に貢献するような、会社の成長のために必要な基礎技術は内製で投資していきましょうと。かつ外注や業務委託を使うにしても、ブラックボックス化を無くしましょうとか。これがいろいろな会社を見ているとすごい大事な要素です。その会社のコア技術なのに外注していたり、中身がどうなっているかわからなかったり、作った人がもういなかったり、そうなっている会社もけっこうありますが、やはり自社の強みのコア部分はしっかり内製化して投資をしておく。
そこは差別化ポイントになりますし、非連続な成長を生み出す源泉になったりするので、そのあたりをしっかりと見極めることも非常に重要かなと思っています。特に技術戦略を立てていく上で、ここは内製化する、ここを外注化するみたいなところの見極めが非常に重要かなと思っています。このへんを把握して技術戦略をしっかりと組み立てていくというところが、まず1つ目の要素で重要かなと思っています。
(次回へつづく)
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