2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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相野谷直樹氏(以下、相野谷):こういう流れは以前の技術トレンドでもあったと思います。例えばマイクロサービス志向とか、Service Oriented Architectureみたいなところで細かくAPIを切って、でかい基幹システムがそれらをオーケストレーションして扱えるような世界観。そういうのが何回かあったと思うんですが、今回は本当にそうなるんじゃないかなと思っていて。そのあたりを中野さんに好奇心で質問してみたかったんですけど、どう思われます?
中野仁氏(以下、中野):そうですね。「SOAとかってあったね」って話だし、「microservices、あったね」って話だけど。これは先ほどのジェネレータとかと同じ話だと思っています。
ジェネレータも結局夢の技術で10年20年実用化されていないというか、一部のところでは使われてはいたけど、結局はやはり機械で機械的に翻訳するので、人間がリーダーブルな状態にならないという時点でけっこう頓挫したというか。なんていうか、キャズムを超えられないみたいな話だったと思います。
しかし、お話しされたように、APIで各システムがおしゃべりして、そのデータベースとビジネスプロセスだけ持っていて、インターフェースは全部どこかのチャットから行って、必要がない限りは見ないような状態は、確定かどうかはわかりませんが、理論上あり得るんじゃないかなと思います。
私が昔ServiceNowを導入した時に、「ServiceNowをなるべく開かせない」という考え方で(取り組んでいて)。フロントの(ツールである)Slackでチケットを切ることで、そこ(ServiceNow)に入って、必要な情報を返す(という)のは、今だと標準プラグインとかがあるんですけれども、当時はなくて。開発して作ってたんですよね。
ユーザーからしてみると、結局やりたい仕事が終わればよくて、各システムなんて別に見たくないし、お作法なんて覚えたくないんですよ(笑)。という根源的な欲求みたいなものにGPT先生がシュッと答えていくと(なると)、SaaSとかはUIなしプランとかがめちゃくちゃ出そうでおもろいですよね(笑)。「UIはございません」みたいなね。
山下鎮寛 氏(以下、山下):やはりもうかなりヘッドレスのサービスが生まれつつあったり、ヘッドレスAPIと呼ばれつつあったりするので、本当にそうなっていくんじゃないかなというところまではもう感じていますね。
中野:そうですよね。
中野:そうなってくると、今日山下さんと話していた「APIがないシステムはどんな理由があろうがあり得ない」というのが、完全に強固な方向性になる。そういうシステムを置いておくだけでボトルネックになるので、「今すぐ捨てろ、早く捨てろ」みたいな気持ちになりますね(笑)。
どうせリプレイスに時間がかかるから、APIとかに対応できないようなシステムは、どんなに安かろうが良かろうが、「ちょっと早めに捨てていったほうがいいんじゃないの?」という気持ちにはなりますね。
山下:そうですね。そこはもう本当に……。相野谷と話をしていた時に、弊社の(サービスの)中でもAPIを出していない部分もあったんですが、それは2周遅れすぎると。もう圧倒的にだめだからすぐそこを出すべきだという話もしていたり。
中野:(笑)。
山下:弊社も最近APIが充足していったところはあるんですが、やはりそこは大事になってきますね。
中野:そうですね。これは別のイベントでも言っていたんですが、昔、システム企画をやっていた時に「中野さん、国産のサービス嫌いなんですか?」って(聞かれて)、「いや、嫌いじゃなくて、APIがないんだよ」って。
(一同笑)
「APIがないんだもん」(でも)営業とかに聞くと「システム連携できます。CSVです」みたいな。「この野郎!」みたいな話になったので。
その当時はまともにAPIを公開していて、セキュリティコントロールもちゃんとできるようになったエンタープライズ向け、しかも海外のSaaSしかなくて、バカ高いけど、将来のことを考えてみるとやはりAPI経路でなにかしようと思うとそうせざるを得ないね、みたいな話でした
APIをベースにいろいろなことができるようになってくると、ほかの普通のサービスも……。優先順位が下がるのは、結局「APIでがっしりする」みたいなニーズが出てくるようになって。(でもその)ユースケースはそんなにたくさんないというか、顧客のマジョリティじゃない。ドマイナーな連中なんですよね。なんですが、そこがもっと叩かれるようになってくると、おそらくAPIを経由した動きがたぶん出てくるんじゃないかなという気はしてきましたね。
APIを叩くという動作自体も、“導かれし者たち”というか「自分でGPT先生に聞いたらできちゃった」みたいな話はたぶんちょいちょい出てくるので、ニーズはグッと上がってくるんじゃないかなという気がします。
生存戦略という観点からすると、やはりGPTを使いながらAPIをベースとしてビジネスのプロセスを自動化するみたいなことを自分でできるような人たちは、比較的生き残る可能性が高いという感じかなと思うんですよね。
非常に適用範囲が……。もうね、GPT周りの何が恐ろしいかというと、本当にすべてにおいて適用範囲が(広い)。(スライドを示して)パッと出ただけでもこれぐらい(のことはできる)という話はあって。しかも全方位なんですよね。
山下:うん。本当に。ここらへんで勝負する気はなくなりましたね、正直(笑)。
(一同笑)
中野:大丈夫ですか。なんか(笑)。
山下:はい。この領域で戦っていくこと自体が、ChatGPTが生む未来にかなり逆行していく世界になってしまうかもしれないので、僕らはChatGPTが動きやすいような仕組みを考えていったほうがいいんじゃないかなと正直ちょっと思っていたところがありますね。
中野:大丈夫ですか。CEOに怒られませんか?(笑)。
(一同笑)
山下:もちろん、UIとかそういったものが、ほとんどの会社さまですぐに導入されるわけではないのでアレなんですけど。やはり未来の方針自体で、「我々が考えているのはそっちだな」というのはやはり強くあるところですね。
相野谷直樹氏(以下、相野谷):そうですね。SaaS事業者としては、競合がとにかくChatGPT系の機能を搭載して、(搭載しすぎた影響で)ChatGPT搭載と言っちゃだめになったみたいで。「powered by ChatGPT」みたいになっていく中で、単体での短期的な最適化としては、SaaS自体のベースがどんどん上がっていくという方向性があります。
それを無視して先に進むという判断はできないので、弊社のUIとしてもLLMを積んで便利にしていくことをやりつつ、APIもちゃんと作らなきゃいけないという。「どっちもやらないといけないのが大変だよな」というのはすごくありますね。
中野:でも生産性が3倍ぐらいになっているので、相野谷さんが赤くなったので(※)。
※ガンダムのキャラクター、シャア=アズナブルのように3倍速くなったという意味です。
相野谷:どっちもできてしまうという。
中野:しかも生産性がもとに戻ることはないと山下さんも言っているので、つまりやれっていう。
(一同笑)
山下:そうですね(笑)。私が先ほど言った「この領域で戦うのを諦めた」というのは、ChatGPT的なものを出すとか、サービスの中でそれをいかに出すかというところにこだわるんじゃなくて、どちらかというと、もっと顧客の本当のユースケースを特定していって、それに対して最適な回答やレスポンスを返せるようなエンジンとしての進化が、各SaaS事業者に対して一番求められるところなんじゃないのかなということです。
ほかのサービスの連携とかを自前でがんばるだけじゃなくて、APIを出して、それ自体はAPIマネジメント系のツールとかにある程度託しながらやっていくみたいなところ。
下手に自分たちでグロースして全部やっていくというよりは、いかに深くそのユースケースや業務に対して差せるのかみたいなところに対しての戦いにシフトしたほうがいいかなと理解をしたという意味での諦めという話でした。Scalebase自体はぜんぜん、1ミリも諦めていませんので。
中野:大人だなぁ(笑)。
山下:いえいえ(笑)。
中野:私も、いわゆるシステムアーキテクチャは比較的……。弊社AnityAが主戦場にしているのも、正直半年前から……。我々はもともと「ぼくのかんがえたさいきょうのシステム構成」とか、「こういうところに落とすべきですよ」みたいなこととか、ソリューションありきで会話したことは一度もないんですけど。
ただ、結局技術トレンドや予算や実行できるケイパビリティや体制など、諸々を考えてみると、「だいたいこのあたりに落ちるよね」みたいな話題はやはりあったんですよね。あったんですけど、やはりそこ自体がわりと変わってきました。
例えば先ほど言ったようなレガシーコードがふんだんにあるものは、「ちょっとがんばってでもどこかのタイミングでSaaSなりなんなりに置き換えていきましょう」とか。「コア業務であるんだったら、ローコードを使って組んでいきましょう」みたいな話でした。
これは別に、GPTだったら「これ別にコンバートすればよくねえか」か「コンバートしながら徐々に作っていったほうが実は合理的なんじゃねえの?」みたいな話はやはりあります。
でも変わらないところは……。あ、そうそう。これもあったんですね。(スライドを示して)山下さんの(お話の)ところで出たんですが、データですよね。データに対してのROI(Return On Investment)自体がグッと取りやすくなったというお話。たしか最初のほうだったと思うんですけど。
山下:最初のほうです。
中野:ですよね。ここはすごく大きいなと思っています。我々がやっていくと、データ基盤に話がいくんですよね。データベースを作ることを目的と(すると)いうよりも、データ連携と、あとデータを利用していくというDWH(Data Ware House)とかEAI(Enterprise Application Integration)的なところがあまりにもなさすぎて。「やはりデータの価値自体を出せないまま過ごしていってるね」というケースがほとんどなんですよ。
となると、やはりそのデータの真ん中、先ほどの(スライド)でいうと緑の部分、弊社では“緑の部分”と言うんですが、「そこに投資しましょう」と。「急がば回れで、少しずつでもちゃんとユースケースを入れて、段階的にちゃんと投資していきましょう」みたいな話になるんですが、やはりここのROIは取りづらいんですよ。パッと直感的にわかるROIみたいなのが取りづらいんです。
それにはいくつか理由があると思います。結局定型情報と非定型情報のデータの両方ともあると思うんですけど、そのデータ自体をちゃんと貯め込むかたちになっていれば、その分だけちゃんとした学習データが存在するということなので、先ほどのファインチューニングで読み込ませ、ROIがかなり取りやすくなるというのはけっこうありそうだなと思っています。
山下:そうですね。本当に今まではデータを貯めて整形していっても、最後に使う部分は人の手で分析をしたり、あとはそのデータを見た上でオペレーションを手で変えたりするという(感じで)断絶が起きていたところが、そこすらもつながっていく。
予測と実装、その実行の部分だったりとか。例えば「そこで予測をして開発者にもっといいようにしましょう」というようなことも当然できるようになってきているし、実際にそういうサービスを提供していると言っている会社もあります。結局一番データが貯まっているのは自社なので、そのデータを使ってやっていく世界がもう本当に目の前に来ているし、今でもやろうと思えばできるような領域になったとことで、圧倒的にデータに対する取り組みみたいなところの価値が本当に大きく跳ね上がった瞬間だと感じましたね。
中野:そこはやはりすごく重要で、「なんでシステム投資をするんだっけ」「経営判断にいかに資するか?」みたいなのはとても大きい話だと思うんですよね。
今ちゃんと基盤系システムのデータが揃っていくんだったら……。フロントからGPTへいわゆる管理会計的な質問を経営が投げかけると返ってくるとか。「そういえばあの案件のあの件どうなったの?」みたいなよくあるやつとか(の場合にも)、別に人に聞かなくても、例えばOneDriveでもGoogle Driveでもいいんですけど、だいたいの情報とかをクローリングして自分のところにだいたいのものが返ってくるという。
前だったら、経営企画の人に「ちょっと調べといてよ」「はい」って言って、3日後ぐらいにどっかにこう……。まぁ3日で出てくれば相当ちゃんとした経営企画ですよね。みんなが泣きながら「うおー」って言って作って(情報を)出して、「ああ、わかったわかった」みたいな感じで調べよう、みたいな感じでした。
しかし、経営が自分でプロンプトを投げて会社の状況を知ることができるのは、かなりエポックメイキングなことなんじゃないかなという気はしますよね。
経営が(会社の状況に)興味を持つと、それが自分たちの判断に資する。それによって一つひとつの判断の精度が上がって、「うちの会社のパフォーマンスは上がったね」と思えると、会社としてデータに投資するモチベーションが上がってくるんですね。
今日とある会社さんと話した時に、「データ基盤は基本的には踏み台なので、データサイエンティストにも踏まれて、データサイエンティストブームにも踏まれて、みんなから金食い虫と言われて踏まれてきたような人たちが、実はデータを集めていたことによって、フロントへのつなぎをしっかりやることによって、実はいきなり価値を持ってくるんじゃないかな」っていうことでした。「なので、もしかするとみなさんも長い闇から飛び出て報われるかもしれません」みたいな話をしていたんですけど。
山下:でも、本当にそうだと思いますね。今まで黙々といろいろな外圧というか内圧というか(というもの)に晒されながらデータの整備をコツコツとやっていた方々が、会社に対して収益を及ぼしてくれる(ようになる)という意味でいうと、すごく夢のあるというか、良かった話だなと個人的には思っていますね。
中野:データに対してコツコツ投資をしてきた会社は、果実を刈り取りやすくなるし、逆にいうと、そこをちゃんとやってこなくて、投資していなくて。各システム全部に入っていて、「もちろんAPIはCSVで(取得)可能です」みたいなシステムをバラバラに入れていて……。
いくら名寄せとかも得意とはいえ、「そもそも社員番号や社員コードが5個ぐらいあります」みたいな会社だと、「これから強く生きていこう」「来世でがんばろう」みたいな気持ちになりますね。はい。
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