2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中野仁氏(以下、中野):今回はディスカッションなので、後半は(ChatGPTが)自分たちのキャリアとかにどんなふうに影響があるのかなみたいな話をつまんで話していきたいなと思います。
ちなみに、後半は相野谷さん(相野谷直樹氏)を加えた3名でお届けします。相野谷さんはScalebaseのシニアエンジニアです。最初に(相野谷さんにお会いした時)すごく印象的だったのですが、相野谷さんがChatGPTを見てちょっとぐったりしている感じだったので(笑)。
相野谷直樹氏(以下、相野谷):(笑)。
中野:「なんだよ、これ。やばいじゃないか」みたいな感じで、ちょっとぐったりしていたのが非常に良かったです。自己紹介がてら、アイスブレイク的に、相野谷さんにもその時の衝撃と感想みたいなものを聞かせてもらえると。
相野谷:わかりました。あらためまして、エンジニアの相野谷と申します。よろしくお願いします。ご紹介いただいたとおり、私はアルプ株式会社に2020年に入社して、メインではエンジニアをしています。
主な担当領域はインフラエンジニア・SREです。その関係でいろいろな開発基盤を作ったり、開発組織全般のマネジメントみたいなのを見たり。あとは組織の成長に従って新しいチームの立ち上げをしていて、その中でコーポレートIT部門の立ち上げや、最初のチームで何をすべきかみたいな設計をしていました。
コーポレートIT周りもかじったことがあるので、今日はなにかしら「こういうこともできそうだよね」みたいなアイデアも出せれば、みなさんの力になれるかなと思っています。よろしくお願いします。
今はR&D部門で、山下が言ったとおり新規の技術を使って、プロダクトとしてScalebaseにどのような付加価値を付加価値をつけていけるのかというところをエンジニアとして探っています。
相野谷:先ほどの衝撃的な体験をしたというところは、(私は)10年ぐらいエンジニアをやってきたんですが、なかなかないディスラプティブな技術ができました。インフラエンジニアでいうと、コンテナ技術とかはめちゃくちゃ破壊的な技術だったと思うんですが、それに次ぐとか、それを超えるようなかなりディスラプティブな技術ができてきたなというところです。
OpenAIのChatGPTは2023年の頭ぐらいに出たんですかね? それより前にGitHub Copilotがリリースされていたんですが、その時からそれの基盤技術となるGPTはできていて、コーディングする時に有効にしていると、エディタ上に自分の先にやりたいことがものすごい候補として出てくるようになってきているという体験をしました。
(これが)何に似ているかというと、携帯とかで文字を入力していると候補が出てくると思いますが、あれがめちゃくちゃ進化した感じで。「コードを書いていたら自分のコードを先読みして、書きたいことが先に出てきた」みたいなことが出てきました。
使い方がだんだんわかってくると、先ほど山下が見せたみたいに、コメントを書いただけでそれを読み取ってくれて、その後にどんどんコードを書いてくれるようになってきました。
Copilotのページにも「開発者の生産性50パーセント上げる」と書いてあって、「嘘でしょ」って思っていたんですけれど、使いこなしたらコードをタイピングする時間が本当にカットされるので、それは嘘じゃないなと思っています。
自分の生産性をかなり上げるという意味だと、これを使わないでやっている世界には戻れないなという不可逆な体験をしたのがまず衝撃でしたね。
2023年のはじめ、ChatGPTがリリースされてものすごく社会的(な)インパクトが出ているとなった時に、「やはりAPIを使って何ができるかをもうちょっとちゃんと考えていかないといけないな」とよく考えるようになりました。
最初の絶望的な雰囲気から、これをどううまく使いこなしてプロダクトとして価値を出していくかを、しっかり考えられるようになってきています。これが最近のメンタルコンディションです(笑)。
中野:動揺がいったん落ち着いて、心身の調子を取り戻してきているという……。
相野谷:我に返ってきました(笑)。
山下鎮寛 氏(以下、山下):その動揺からの戻りがかなりすごくて。もしよかったら相野谷さん、動画が見れるようにしてもらえるとうれしいんですけれど。
相野谷:はい。
山下:実際に相野谷がやっているのが、LLMの研究やユースケースを試していくというところで、(それを)メインでやってくれているのですが、それによって我々が今提供している販売管理のScalebaseに対して、新機能を、プロトタイプを1個作ってしまいました。それこそ先ほど出したように、ChatGPTの中で相談をしながらやっていくというものです。お、動画いっちゃいますか。
相野谷:はい。まずScalebaseのプロダクトでいろいろと適用可能性を探っているところです。開発中の機能について「こういったことができるようになりそうです」ということを伝えられればと思います。ちょっと宣伝で恐縮ですが。
まず、Scalebaseは販売・請求管理できるシステムで、特に月ごとに請求が出るところをすごく得意としています。BtoBのビジネスだと、「ID別にいくら出ます」といったものを管理したり、お客さまごとに「月額いくら」みたいなディスカウントをかけたりしていて、なおかつ従来ではそれをたぶんエクセルのスプレッドシートで無理やり管理していて。請求業務がなかなか大変です。
しかし、我々のシステムは全部一元で管理するので、そのあたりの請求業務がかなり楽になるというところを担うシステムになっています。
(動画再生開始)
というところで、システムの使われ方としては、まず「契約」があって、そこでサブスクリプションの契約が管理されていて、毎月ごとに請求が発生するモデルです。従来というか、既存で使っているお客さまは、ここの「新規契約」というところで、新規契約画面で手動で契約内容を入力していました。
請求業務を担当されている方は、契約書を営業の方とかから預かって、PDFと内容をにらめっこしながら画面に内容を入力していると思います。
その代わりに、先ほどの我々のChatGPTの技術を使ってPDFの内容を文章として読み取って、そこからScalebaseの契約登録に必要な情報を抽出して我々のフォームに自動で入力するところを補完するということを、全部自動でやるということをこのデモではやっています。
山下:こういったものを、落ち込んでいた相野谷が急に作ってきたんですよ、みなさん。
相野谷:修行から帰ってきたみたいな感じで(笑)。
山下:そうね。
中野:すごいですよね。ちょっと前だったら、OCR(Optical Character Reader)するだけでも若干面倒くさかったところですが、カテゴリで分類して入力していくみたいな話とか。
あと、Salesforceにも出ていたと思いますが、Salesforceはとにかくデータを入れさせるのがけっこうハードルが高いです。たぶんあれはプラグインかな。商談のところから自動的にある程度項目を読み込ませるような機能みたいなものを見かけたりもしました。
やはりデータの入力ですよね。オペレーションの部分とかを効率化していくところは、もうユースケースとしてけっこう確定してきているなという感じですよね。
(動画再生終了)
相野谷:そうですね。お話しされたとおり、契約書みたいに整形されていない、機械ではそのまま扱いづらいようなデータを、機械が使いやすいような構造、例えばJSON形式みたいなかたちに直すところは、人間が画面に入力している部分だったと思います。そこを全部この技術でカットできるのはかなり革新的だなというところです。
これは従来から機械学習エンジニアとかOCRの技術でやってきました。今回ちょっと違うのは、会社の中でそういったエキスパートを何人も抱えてチームでやらなければできなかった機能が、OpenAIのAPIを叩くだけで実現できることです。
いろいろな人がこの技術を使えるようになったというところで、そこが今までとかなり違うところなのかなと感じるところですね。すぐに試せて、こういうことができるというところです。
中野:そうですよね。
中野:開発効率みたいなものもガッと上がったという話をしていましたが、体感値で言うとどれぐらい上がったんですか?
相野谷:そうですね。体感……。いや、本当に……。例えば簡単なスクリプトとかでも「動きを見ながら実装して、バグっていたら直して」で2〜3時間は使っていたものが、コメントを書いて候補でバンって出して。だいたいバグって(は)なく一発で動くようになっているので、ベストでいくと、2時間でやっていたのが15分とかで終わるみたいな。
中野:しかもテストコードやテストデータもつくれる。
相野谷:圧倒的に書く時間が減ったという感じです。しかも、人間がエンバクするより、候補でパッと出したほうがバグっていないというか。もちろん出力されたコードをちゃんと読んで何をしているかというのを理解する必要はありますが、書く手間は人間が変に解釈してエンバクするのもカットできるので、そういったところの削減の効果も大きいなと感じましたね。
中野:コメントやドキュメントも文句を言わずに書いてくれるから偉いっていう。
相野谷:そうですね。
中野:コメントやドキュメント(について)は、「そんなものはソースコードを読め!」ってジュニアなのに偉そうにしていたエンジニアは皆殺しみたいな(笑)。
相野谷:「コードを読めばわかるだろ?」と言っていたことは、もう「ChatGPTは書いているのにね」って言われる(笑)。
中野:まあ「ChatGPTにコメントをつけさせりゃいいじゃん」みたいな考え方もあるし。これは実際、コーディングの生産性もそうだし、あとはそれの可視性もすごく大きいなというのがありますよね。
あとは、コンバートさせる能力もものすごくあって、1つの言語から別の言語に書き換える能力も非常に高いなと思っています。
中野:私が個人的にものすごいインパクトだなと思ったのは、やはりレガシーシステムのリプレイスです。前まで結局苦労しながら「SAP(System Analysis Program Development)に乗り換えましょう」とか「Salesforceはどうこう」みたいな話しかなかったんですが、場合によっては、例えばCOBOLで書かれたコードを、コンバートして出しましょう(という時に)……。
人類の見果てぬ夢で、ジェネレータという概念があるんですが、あれは機械上でコンバートしただけなので、リーダーブルな状態じゃありません。
でもこれはもしかすると、GPT上で黙々とコンバートしながらドキュメントを書いてやっていけば意外と書き直せちゃうし、そういうルートのほうが実は変にシステムを入れ替えるよりもいいんじゃないかなみたいな話になるのかなと、今、ちょっと予測しているんですが、どう思いますか? 山下さん、相野谷さん。
山下:いや、まさにお話しされたとおりのことができるんじゃないかなと思っています。レガシーなところとはちょっと外れるかもしれないんですが、私と相野谷の共通の友人で個人でアプリ制作をしている人間がいて、彼はAndroid、KotlinとSwiftを両方書いていたんですが、最近は片方しか書きません。
片方を書いたらあとはChatGPTに「これKotlinにして」と言って、あとはチェックすればもうOKみたいなところで。別の言語に対する移行はもうほとんどそれができているので、単純に自分の効率がほぼ2倍になったというような話をしています。
今お話しされていたのはまさにその部分だろうと思っています。古い言語やレガシーシステムの部分は、(ChatGPTに)書き直してもらったり、あとはひたすら全部を読み込んで解読してもらうような作業を(ChatGPTで)できるようになっていくというのは、かなり古いシステムを使っている会社さんや移管したいなと思っている会社さんからすると、インパクトが大きい話なんじゃないかなと思うんですね。
相野谷:先ほどUIの話も見たように、基幹システムはチャット、今入力フォームがいっぱいあるかたちから、自然言語、人間のメールを解釈してUIに入力する面倒くささなく、一気にシステムに情報を突っ込めるということになるので、かなり変わるだろうと思います。
もちろんレガシーシステムの乗り換えもものすごく加速するでしょうし、情報の出口、取り出しもすごく変わりそうだなというところで、情シス、コーポレートITで担当しがちな基幹システムのあり方もすごく変わりそうだなというのはものすごく感じますね。
(次回につづく)
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