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エンジニアキャリア、特にChatGPTやLLMによって変わっていく開発とその未来(全3記事)

未来が不確実な時代は「キャリアを投資家的に考える」 意思決定の連続だからこそ考えたい“リスクとリターン”

Qiita Conferenceは、ソフトウェア開発者が集まり、最新の技術や最先端の挑戦・ソフトウェアの未来についての考えや知見を共有し、つながる場を創出する、「Qiita」が開催するオンライン技術カンファレンスです。ここで松本勇気氏が登壇。続いて、キャリアに対する考え方について話します。前回はこちらから。

ChatGPTは大きな衝撃だが、これまでの大きな変化はあった

松本勇気氏:今後を見据えていこうとすると、少なくとも我々の仕事のあり方はとても大きく変わる可能性があります。僕は2010年、2011年かな。その頃から開発者をやっているんですが、ちょうどその頃がオンプレからクラウドに切り替わり始める時期でした。なので、この10年ほどでオンプレのハードウェアを触るエンジニアはだいぶ減りました。

もっというと、ハードウェアを触るエンジニアは減ったんですけど、インフラを触るエンジニアの幅は広がった。ソフトウェアエンジニアが自分たちでクラウドの基盤を構築するのがわりと当たり前になってきている。

この頃から、インターフェイスも大きく変わってきたんですよ。ガラケーからスマホになったり。その頃はまだMLというと簡単なアルゴリズムしかなかったのが、ディープラーニングが来て、この10年でだいぶ違う時代になりました。ChatGPTは大きな衝撃だと思ったりもしますが、「いや、それ以外にもけっこう変わってきているんだよ」と。なので、あり方は今後もどんどん変わると思っているんですね。ちょっとそれが(今までよりも)速くなっているかもしれないけれど。

GPT-4などの民主化で必要なスキルは変化していく

今後、ChatGPT、GPT-4とかがどんどん民主化していくと、必要なスキルがどんどん変わってくるとは思うんですね。

まず必要なスキルとして、関数の中身、スニペットレベルの記述は、もう機械ができるかもしれない。テストも書けるかもしれない。僕はテストをけっこう任せて書かせてみて(としたことがあるんですが)、ちょっと間違うこともあるんですが、(大規模言語モデルが)8割書いてくれたら(自分1人で書く時と比較して)だいたい5倍ぐらいのスピードでテストが書けることになるので、メッチャありがたいんですよね。スキーマ設計もSQLで書けたり。

あとユーザーの使うものの変化も出てくるかもしれないので、僕らが向き合わなきゃいけないものは変わってくるかもしれないんですよね。

特に僕の見ている範囲で、ちょっと大きめに「おっ」と思った変化で、コーディングの試験のあり方も変わってきたなと思っています。これは以前「note」にも書いているので、興味がある方は「y_matsuwitter note」で検索してもらえれば出てくると思います。

僕らのコーディング試験、アルゴリズムとかを答えるのって、もはやもうその能力は本当に必要なのか。もちろん知っていないとそれが正しいか判断できないんですが。

でも、それが書けることよりも「いや、正しくググッてくれればそれでいいよ」と。ググッて、書くこともChatGPT、GPT-4がやってくれる。だから、そこを問うて意味があるのかみたいになってくる。もちろんそこの能力・知識は必要なんだが、優先度が下がってしまったような印象を受けています。

キャリアに対して不安がたくさん出てくる時代になった

その中で僕らのキャリアを考えていこうとすると……。キャリアというのはどこか目指す先を作って、現在地からギャップを埋めていくという戦略のことだと思っていますが、僕らのここからの5年、10年でどんどん変化していきます。

明らかに先がよくわからないけど、大きな変化をもたらし得る技術がすでに登場しているので、もうこの変化はヤバい。AIに従ってコードからインフラまで構築できるかもしれない。プロダクトのあり方がガラッと変わるかもしれない。

そういった変化があると、現在地から目指す先、例えば「CTOになりたいです」とか「プロダクトマネージャーになりたいです」とかいろいろあるかもしれないんですが、目指す先に対して、「今まさに必要な身につけるべきスキルって何だっけ?」「これまではこうだと思っていたけど、実は違う」とか(が出てくる)。

例えば目指す先でいうと、「そもそもこの目標って正しいの? この未来は来るの? 本当にやりたいことなの?」みたいなことが出てきて、しかもその2つが定まっても、「世の中メッチャ変化していくよね。どうしていけばここにたどり着けるんだろう?」と、不安がいっぱいやってくる時代になったなと思っています。

キャリアを考えていく時の起点

(スライドを示して)ちょっと線を太く引いているんですけど、キャリアを考えていく時の起点は、まず「自分が本当にやりたいことか」にあるべきかなと思っています。

それが本当にやりたいことで……。例えばコーディング自体が好きだと。僕もコーディングがとても好きです。「機械がコーディングをうまくできるようになっても、私は趣味であってもコーディングを続けられることを優先したい」と思うんだったら、それはすばらしい目標だと思うんですよね。

なので、本当にやりたいことをまず考えておくことが第1なのかなと思っていて。その中で、こんな不安な時代にエンジニアとして何を考えておこうかなという枠組みを、ここから終盤にかけてお話ししたいなと思っています。

キャリアを「投資」として考える

僕はちょこちょこ他でもこういった話をしているんですが、キャリアに対して投資家っぽく考える。これは仕組みっぽく考えるきっかけにもなるのでおすすめなんです。僕はキャリアをいつも投資家的に考えようということをみなさんにおすすめしています。

投資というといろいろ考え方があって、その中の要素が、リスクとリターン、バランスシート、探索、ポートフォリオ、レバレッジ、こういった概念を組み合わせて、キャリアってどうあるべきかなというのを考えていくことです。

投資とかも一緒なんですよ。投資ってすごく未来が不確実な中で、「どこが成長する会社なんだろう」とか、「どの資源が必要とされるんだろう」とか、「どの建物が、どの土地がより人のニーズを得て、どの建物がよりニーズがなくなっていくのか」。そういったことを考える取り組みだと思っているんですね。

それで「平均的にはみんなこう思っているけど、私はほかの人よりもこうだと思っている」。その差分で儲かる。それが投資だと思っていますが、キャリアもそのまま同じだと思っているんですね。

キャリアにおける「リスクとリターン」

一つひとつ要素を見ていきたいんですが、1つに「リスクとリターン」という考え方があります。例えば将来のキャリア。そのキャリアの中でも、明日やること、1ヶ月後やること、3ヶ月後やること、1年後やること。そういった意思決定全部において、我々はすべて正しいかどうかわからないことをやっている。

意思決定をするというのは、算数で決められる物事だけじゃ決まらない時にやるものだと思っているんですね。算数で決まることだけで意思決定をするんだったら、それは意思決定じゃなくて、単に問題を解いているだけです。解こうとしたけど、最後に要素がそろわなかったり不確実だったりして、「AかBか、2つ案があるよね。どっちにするんだっけ?」。これを決めるのが意思決定。

キャリアというのはその意思決定の連続で、その結果として得られるものだと思っています。その意思決定は、なにをやるにしても絶対にリスクがあります。なんらかのリスクがあって、そのリターンがある。

リスクが大きいほどリターンも大きいとよく言われます。たまに間違って、リターンがあまりないのにリスクが大きいものをやっちゃう人もいたりするんですが、基本的にはリスクとリターンは比例すると考えてください。

リスクというのは何かというと、単に儲かる・儲からないというよりは、自分が「こうだ」と思っていること、(つまり)予測ですね。「こうなるはずだ」と思っていることと実際のズレ。これを引き起こす不確実性とその影響の大きさみたいなもの。

そこから何を得ようとするかというリターンの話があります。僕はよく、リターンを得る時に、「積み上がっていく指標、技術力とか資産とかそういったものをリターンに設定しよう」と言っています。

キャリアでいうところのリターンって、「楽しい」とか、いろいろあっていいと思うんですよ。ですが、(とにかく)「何を欲しいのか」は定義しよう。「私は今、このキャリアに向かって何を重要なリターン指標としているのか」を考える。そこからリスクを取っていこう(ということです)。

「知識量」でリスクを小さくしつつリターンを維持できる

一般的にリスクとリターンは比例するんですが、実はリスクを小さくしつつリターンを維持する方法はあって。それは知識の量です。例えば先ほどの「みんなは知らないけど私だけが知っていること」。これによって、ほかよりも良いリターンを得やすくすることができると思うんですよ。

究極的なことを言うと、タイムマシーンを持っている人は、ほかの人と違って当たりくじの番号を知っているから、当たりくじを買う(ことができる)。そうすると、リスクゼロでリターン無限大みたいなことができちゃうんですよね。

なので、知識量で変わってくる。そういった原則があるので、リスクとリターンの考え方はまず頭に入れておいてください。

(次回に続く)

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