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Generative AI × シリコンバレー (全5記事)

「Web3はバズり終わっただけでまだ死んでいない」 シリコンバレーエンジニアが技術スタックの視点から見る現状

キリロムグローバルフォーラムが主催したパネルディスカッションのテーマは、「Generative AI × シリコンバレー」。シリコンバレーで働くエンジニアたちが「シリコンバレーの今」についてディスカッションをしました。全5回。4回目は、Web3の現状について。前回はこちら。

AIエージェントも盛り上がってきている

河根拓文氏(以下、河根):人類のためのAIやGPTで、他に注目しているものはありますか? 

中屋敷量貴氏(以下、中屋敷):AIエージェントと言われている、Autonomous Agentsという領域はけっこう前からあります。最近それこそ「Baby-AGI」や「Auto AGI」というもののGitHubのリポジトリのスターが5万を超えたとか、すごくうなぎ上りなのを見たことがある方もいるかと思います。

GPTは結局リースリングエンジンと言われているぐらいなので、そういうちょっと頼んだらエンジンとして動いてくれて、次こうしたらいいんじゃないか、じゃあこうしたらいいんじゃないか、じゃあこういう答えが来たらこうやってやろうという感じで、いろいろタスクを与えたら、解決するまで自分で考えてやってくれます。

方向性としては、最近すごく盛り上がってきているかなと思います。個人的には、2022年10月ぐらいからちょこちょこ見ていたのですが、最近になっていろいろな方がオープンソースにしたりしていて、すごくそこで盛り上がってきている印象があります。

酒井潤氏(以下、酒井):先ほどの弁護士のロボットの話はおもしろいですよね。やはり機械学習は、大量の膨大なデータがあって初めて成り立つというか、データを学習させてアウトプットがこうなりますよ、こうなることが予想できますよというかたちなので、機械学習にとってはやりやすいというか、めちゃくちゃできるんですよね。

医者のカルテでも患者さんのデータを集めたら、ある程度は病名がわかるとも言われているので、そういったところでどんどんどんどん使われていって、一般の市民の支払うお金が減ってくれば生活も楽になってくるので、そういったところで使われていくのはすごく良いとは思いますけどね。

ただ、人間社会には例えばソニーの犬のロボットのAIBOもあったじゃないですか。確かにあれもすごいし、タクさんがMeta社に行ったのもあるんですけど、SNSとかもあるんですけど、ああいう娯楽系のほうが先ほど言ったようにバズりやすいので、お金になるので、みんなそっち系のほうに流れちゃうのが残念だなと思うところはあります。

なので、弁護士にしろ医者にしろ医療にしろ、先ほど私が言った食にしろ、もうちょっと人間の、もっと根本的な楽なところへみんな行ってほしいです。しかし、お金になるほうにみんな飛びついてビジネスをやっちゃうので、そういった人間の、先ほどタクさんが言ったようなところをもうちょっとやってくれる企業が増えたらうれしいなとは思います(笑)。個人的な意見ではそんなところです。

猪塚武氏(以下、猪塚):Baby-AGIでしたっけ、これは中島さん(中島聡氏)の息子さんが作ったと聞いたんですけど。

中屋敷:そうですね、中島洋平さんという人が。

猪塚:シアトルのあの有名な中島さんの息子さんだと。日本人が作ると平和なAIになるんですかね、と今一瞬思いました。

中屋敷:日本人が作ったからかどうかはちょっとわかんないですが、業界としてやはりバイアスとか暴走しないかとか、いろいろときちんとチェックしないといけないところは多いと思うので、そこは今後もすごく細心の注意を払わないといけないところかなと思っています。

そういえば、先ほどの酒井さんの話で思い出したのですが、けっこうハッカソンに行っていて、おもしろいなと思ったアイデアがあって、OpenAIが「Whisper」というのを出していて、オープンソース化されているのですが、これはしゃべったことを書き起こししてくれます。

それをかわいい子ども用の人形の中に埋め込んで、子どもが人形に話しかけるとWhisperでtranscribeして、GPTで裏側で回答して、物語を語ってあげるみたいなのがあります。子ども向けのちっちゃなぬいぐるみでそういうやり方があるんだなと思ったり。

もうちょっと人の生活に寄り添った用途もあって、ハッカソンなのですごくシンプルなユースケースですけど、おもしろいなと思ったりしました。

Web3ブームはどうなってしまったのか?

猪塚:先ほど、Web3(Web3.0)の人がみんなAIに行っちゃったという話がありました。この間シリコンバレーに行った時はWeb3ブームだったなと。あれはどうなっちゃったんだろうっていう。クリプトウィンターだなんてみんな頭抱えていたのが、ねえ。そのあたりはどんな感じですか?

酒井:そうですね。私の個人の意見になっちゃうかもしれませんが、ブロックチェーンは中央集権じゃなくなるというところがあったので、ビットコインでもそうだと思うのですが、法的な金融を破れるところがあると思うんですよね。

なので、そういった技術でバズるのはビットコインなのですが、それ以外でブロックチェーンじゃないとできないアプリがなかなかまだまだ出てきていないのかなと思うところはありますかね。

猪塚:じゃあ、シリコンバレーでは落ち着いちゃった感じですか。

酒井:いやぁ、まぁやっているところはまだまだあります。

猪塚:この間、ここで平井さん(平井卓也氏)とセッションがあったのですが、一応日本政府は、これはチャンスだと。世界は凹んでいるから、日本はWeb3で勝つんだと。DAOをこんな使い方している国は日本しかないんだとか。ヤバいやつが多いから、政府は応援はしないけれど、みんなが自由にできるようにすると言っていましたね。それが本当だったら、意外といいなと思ったんですが、どうなのかなとちょっと思っています。

酒井:そうですね。なにかあればいいですけど。NFTがすごくバズったじゃないですか。

猪塚:はいはい。

酒井:でも、NFTも結局画像を実際にスクリーンショットしてコピーしたらできるじゃんとか。じゃあなぜNFTがこんなにバズったかというと、やはりNFTで数億円儲けた人がいたからで、そのバックグラウンドでやっているサービスは、今までとそんなに変わらないんですよね。

Web3だから日本が力を入れていくというのもあるんでしょうが、やはり技術上で合ったアプリを思いつかなければ、なかなかうまくいかないとは思います。

猪塚:でも日本政府はかなりエンジンかかっています。僕はこのクリプトウィンターで、もう次の春や夏のために準備しています。

河根:そもそも、どう思います? Web2.0というのがありましたが、技術スタックだったんですよね。Web3も基本的には技術スタックで、それが可能にする世界というだけなので。

10年ぐらい前に読んでなるほどなと思ったアナロジーは、Linuxとか、ブロックチェーンとはLinuxみたいなもんで、世界を根本的に変えているようには見えないけれど当然の技術要素として使う人がどんどん増えているよねみたいな。オープンソース技術というものであって、Web3は、そもそも業界ではないんじゃないかなと個人的には思います。

なので、お金儲けとかでバズったものの、それはいわゆるハイプ・サイクルでもよくあるもので、ブロックチェーンゲームも今まではハードルが高くて、最初にお金をすごく払わなければできなかったようなブロックチェーンゲームが、フリー・トゥ・プレイになってきて、ようやくゲームの本質を捉えたブロックチェーンゲームが出てきていたり。

NFTでもお金儲けのためじゃなくて、いわゆるトレードのために、きちんとしたオーナーシップという所有権があるからこそ意味があるNFTが出てきていたり、きちんと地に足が着いてきたかなと。冬があるから春があるみたいな感じに捉えています。

あとおもしろいのは、レイオフされて無職なので、ここはどうですか? みたいな就職の話がLinkedInというサービスからちょこちょこ来るんですよね。実はブロックチェーンやWeb3系のスタートアップにいたこともあって、ちょこちょこそういう話が来るんです。

なので死んでいないというか、引きがあるぐらい業界はまだまだ活性しているかなぁと思いますね。バズのところがなくなっただけで、きちんとやっているところはまだまだ人も採用しようとしていて、こういうエンジニアじゃない人にもコンタクトしてきているし、たぶん良いんじゃないかなと思いますね。

「Horizon」はうまくいかない可能性が高い

猪塚:Metaのメタバースはどんな感じですか。

河根:まぁメタバースとは何かというところからですよね。抽象的な話になっているんですが、要は「Horizon」というサービスがあって、Horizonが良いかどうかというのと、メタバースがどうなるかというのはたぶん別だと思います。Horizonというプロダクトがいいかどうかは、個人的には実はけっこういいと思っているんですけど。

猪塚:あ、いいんですか。

河根:うん。けっこうよくできているけど、でもなんか、ああいうのが流行るには、そもそもVRという制約が今は大きすぎると思います。VR系スタートアップをやる人はアーリーアダプターなので、バイアスがかかってるんですね。私も流行りもの好きの一員で、VRとブロックチェーンとMetaと、ぜんぶやっているんですけど。

何が言いたかったかと言うと、Horizonはうまくいかない可能性が高いです。よくできたプロダクトかもしれませんが、どんな問題を解決してくれるかがちょっとわかりにくい。抽象的ですが、メタバースみたいな、人がバーチャルのアイデンティティを持って活動する世界というのは、今いろいろなところですでにあるし、人間の人生視野がどんどんどんどん増えていくのは確実だと思います。

それがVRなのか、Minecraftなのか、Discordなのか、リアリティなのか、それらが統合された相互利用ができるようなプラットフォームが遂にできるのかはわからないものの、バーチャルな世界で活動する時間が人間世界で増えるかどうかというと、僕は増えると思っているんですよね。

ビジョンとしてあって、Metaはそこにベットしているけれど、たぶんあと5年以上はかかるベットなんじゃないかなとは思っています。ベットした先でHorizonがしくじったとしてもしょうがない。プロダクトを出したうちのほとんどは、しくじってしまうから。

あと、Web3やメタバースというバズったものに飛びつく人でありがちなのは、僕のスタートアップも半分そうだったのですが、Solution Looking For A Problemみたいなやつですよね。

つまり乗る馬車を馬の前に置くという。つまり、解くべき課題がないのにソリューション技術だけがあって、なにか作ったけれど誰も使ってくれないみたいなことに陥っているところは、確かに多かったなとは思います。先ほども言ったように、技術スタックとして活用して、だんだん地に足が着いた本質的な課題を解決しているところが少しずつ出てきている時期なのかなと思っています。

猪塚:なるほど、ありがとうございます。

(次回へつづく)

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