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Generative AI × シリコンバレー (全5記事)

「ChatGPTのバズり方は、ものすごくWeb3と似ている」 シリコンバレーエンジニアが語る、生成系AIの盛り上がり

キリロムグローバルフォーラムが主催したパネルディスカッションのテーマは、「Generative AI × シリコンバレー」。シリコンバレーで働くエンジニアたちが「シリコンバレーの今」についてディスカッションをしました。全5回。3回目は、シリコンバレーにおける、ジェネレーティブAI系の盛り上がりについて。前回はこちら。

ジェネレーティブAI系のMeetUpやハッカソンが増えている

猪塚武氏(以下、猪塚):僕のFacebookの(友人の)中で、ChatGPTで一番成功しているのは中屋敷さんではないかなと思っています。この間、OpenAIのパーティーに呼ばれていましたよね。そのあたり、どんな感じ? 

あと、先週か先々週か、MeetUpがChatGPTオンリーになっているとも聞いていたんですね。そのあたりをちょっとお話ししていただけたら、とってもうれしいです。

中屋敷量貴氏(以下、中屋敷):ありがとうございます。いつかはちょっと忘れたんですが、1ヶ月前か数週間前かにOpenAIであった、けっこうプライベートなイベントやお祝いみたいなものに、何回か参加させていただけることがあって、ファウンダーの方々とも話せました。

YouTubeのサマリのやつがバズったからというわけではありませんが、知り合いの人のツテで呼んでもらえました。内部は、聞いた話ではやはりけっこう盛り上がっているということです。

最近シリコンバレーというかサンフランシスコでも、本当にジェネレーティブAI系のMeetUpや、ハッカソンがすごく多いです。ChatGPTを使ってハッカソンをやろうみたいなものがあったり、最近だとChatGPTのAPI、プラグインのAPI、GPT4のアクセスなどを使ってなにかできないかなという感じのハッカソンが増えています。

自分はけっこうな数のハッカソンに行っているのですが、そこでは毎回同じような人たちがいます。それぞれ「この技術で何ができるのか」と、まだ模索している段階ではある感じがしますね。

それこそ最近だと、OpenAIがChatGPTのプラグインのAPIを出したりして、そのアクセスが貰えた人だけが行けるハッカソンみたいなのがあります。みんな誰も答えがわからない状態なので、それを使って何ができるんだろうみたいな感じで、最近はエンジニアの方々でアイデアを探している人たちがいろいろやっている感じですかね。

Web3で盛り上がっていた人たちが今はAIに群がっている

猪塚:Y Combinatorのほうで、Web3.0(Web3)だった人が、みんなそっちのAIに行ってしまったと聞いているんですけど。みんなそこに群がっている感じですか。

中屋敷:そうですね。聞いた話だと、今回Yコンでデモした半分ぐらいが、なんだかんだOpenAIか、その話題関連のものだったみたいです。ネットの記事で読んだだけなのですが、そういうことが書いてありました。

あと意外とおもしろいミームがあって。「我々はAIスタートアップだ」と言っている企業がいて、でもマスクを取ったらOpenAIのAPIコールを叩いているだけだったみたいな、そういうミームもちょっとバズったりはしていますね。

猪塚:ジェネレーティブAI関係で、シリコンバレーはどんな方向に動きそうなのですか? みんなまだアイデアを模索している段階ですか? あと、ChatGPTがメインで来るんですか? それとも、なにか日本の人はあまり知らないような動きがあったりするんですか? Microsoftが勝つのかとか、Metaがなにかやるのかとか、Googleがなにかやるのかとかあるじゃないですか。

中屋敷:それで言うと、Amazonも生成系AIに手を出すみたいなニュースが出ていましたね。本当かどうかはわかりませんが、言っていました。

猪塚:MS(Microsoft)のやつのほうが性能良いとか、コーディングが要らなくなるとか。この前のセッションでコーディングの話はいろいろしていましたが、もうエンジニアは要らないんじゃないとか、プログラマーは要らないんじゃないかみたいな話もあったり。

実は僕は「G1サミット」に出ているんですが、2022年はWeb3.0一色で、2023年はChatGPT一色でした。なのでもう経営側も大騒ぎっていう感じでしたね。

中屋敷:それで言うとおもしろいのは、エンジニアの経験がなくても、GPT4やChatGPT Plusにアクセスして、GPT4を使ってコーディングして、本当にプロダクトを作ってローンチしたという人を何人か聞いています。

猪塚:いるんですか。

中屋敷:はい、ビジネスサイドでもそこまではできるっていうので。ただ自分は、エンジニアは絶対今後も必要だと思っています。アーキテクチャとか、本当にいろいろ複雑なものを作るんだったら、絶対必要だと思っています。でもそういうふうに、裾野が広がっている印象はありますね。

エンタープライズ向け企業は熱い

猪塚:河根さん、そのへんはいかがですか。きっと専門家の方にいろいろアプローチできると思うんですが。

河根拓文氏氏(以下、河根):うーん、範囲がめちゃくちゃ広いんで、何から話せばいいかなという感じはあるんですけど。

やはり、まずエンタープライズ向けは熱いですよね。エンタープライズ向けというのは、企業向けにサービスを提供する企業で、それにもいくつかパターンがあります。

今まではAIにタッチしてこなかったのに、そこにジェネレーティブAIをなんとか載せようとしているスタートアップ。あとは今まで普通にAI/MLを使っていたんだけども、変な話自分のモデルを放棄して、LLMをどう自分のビジネスに活用できるかを考えているタイプ。

あとは、エンタープライズ向けのサービスでもうかなり刺さっている大企業です。一番でかいのがMicrosoftで、これはLLM自体を持っているから別ですが、その他セールスフォースとか、そういうところがどう動くのか。Adobeなんかはそうで、この前出していました。そういうものが今有象無象出てきておもしろいです。

僕の友人がやってるのは2番目のパターンです。今までAI/ML、半自前のものでやっていたサービス。お金を払ったり、払われたりする時に使う契約書、サインされたドキュメントを自動で読み込んで、テーブルフォーマットに直して、正確性をチェックして他のデータベースとつなげるみたいなSaaSを提供していました。

エンタープライズSaaSを提供していて、自分たちのマシンラーニングモデルを使っていたものを、今はGPT4をマイクロソフトとして提供しているAzure OpenAIサービスかな? を使って、同じことをさらに効率よくできないか、みたいなことをやっています。そういうのが今すごいです。

エンタープライズ向けのところが熱いかな。それもコーディングのサポートはもうあるので、そうじゃなくて、今まであるワークフローを置き換えるとか、自動化する。それも、今までやっていたMLをやめて、GPTを使ってみるみたいな動きがすごくおもしろいな。

大変なのは、セールスフォースも同じようなサービスをすぐ作れちゃうので、そういうスタートアップは買収されるか、買収されなかったら「セールスフォースがサービスを作っちゃったからスタートアップのサービスを使う必要がないじゃん」みたいになって死んでいく可能性があることです。でも、いろいろなものが出てきていておもしろいですよね。

猪塚:そうかそうか。もうここまでくると、スピードよりもディフェンサビリティに集中したほうがいいんですね。

河根:有象無象出てきているのが楽しいところだと思うんで、両方じゃないですか。あまりディフェンスと言うとおもしろくなさそうなので、やはりスピードも。2ヶ月とか1ヶ月とかわかりませんが、今のスタートアップは、めちゃくちゃシフトして2、3ヶ月で新しいフィーチャーをリリースしていますからね。

ChatGPTのバズり方はものすごくWeb3.0に似ている

猪塚:酒井さんもUdemyでChatGPTの授業はやっているんですか?

酒井潤氏(以下、酒井):まぁやってもいいかなとは思ってはいるんですけどね。先ほど猪塚さんのお話であったんですけども、ChatGPTが出てきて、Web3.0からみんな移行していくみたいな話を聞いていると、やはり人間は、特に日本人はバズワードが出てくると一気に飛びつくところがあるのかなと思いますね。

Web3.0も、技術的にはブロックチェーンとかですごくおもしろかったんですけれども、バズったアプリは仮想通貨のビットコインとかですよね。ビットコインを持っていたら利益になるとか、大儲けできるみたいな話になると、みんなが飛びついて「わぁ、Web3.0がくる」という話になるんですけれども。

そのWeb3.0のブロックチェーンの技術を使ったアプリは、ビットコインやイーサ(イーサリアム)以外は、あまりまだバズっていないですよね。だからやはり技術も大切なのですが、そのアプリも重要だなとは思います。

最近ChatGPTが出てきましたが、AIと言ってもGPTのコアな部分は機械学習です。コアな機械学習の周りに表面的なチャットBotが出て、人と会話できるのでみんながAIと言っているのですが、そもそものコアな技術は機械学習です。その機械学習の技術は、もちろん進歩していますが、アルゴリズム自体はそんなに変わっていないんですよ。これは、AmazonのGPT関連の機械学習をやっている方もそう言っています。

なので、機械学習の研究者からしてみたら「え、今までもそれぐらいできていたんだけど、なんでそんなにみんなが驚くの?」みたいな感じだったんですよね。ChatGPTがBotにすることでみんながわかるようになって、一気にバズったというところがあると思うので、そのあたりのバズり方はものすごくWeb3.0に似ていて、すごいなと思います。

“人が働かなくてもいい世界”を目指したプロダクトを作ってほしい

酒井:ただ、機械学習の技術的にはもうすごく進んでいるので、私もけっこう期待しているところがあります。先ほど、量貴さんとタクさん(河根氏)から、未来はどうなるんだ? みたいなお話もあったと思いますが、私の勝手な個人的な意見として、みなさんに目指してほしいのは、GPTや機械学習の技術を使って、人がもう働かなくてもいい世界を目指したようなプロダクトを作ってほしいなと思っているんですよね。

なので、ChatGPTではいろいろなことができると思うのですが、もっと根本的に、例えば今人間が生きていくために必要なのは食事なので、勝手にご飯を作ってくれるみたいな。

機械学習はロボットとかに適応されていて、例えばロボットがここからここまで歩きますというのを機械学習でやってくれと言ったら、そのロボットに歩き方を教えないで、一歩一歩進ませて、「あ、これ駄目だよね。トライ・アンド・エラーで駄目。だったらこっちのほうがいい」みたいな感じで、どんどんどんどん駄目なものと成功するものを学んでいって、結局最後にいろいろなかたちになってロボットが(ゴールに)到達するみたいなところで使われているじゃないですか。

なので、そういった学習をしていって、勝手に人間の食を作ってくれるようなものを作るとか、人間が働かなくてもいいような方向に機械学習を使ってやっていくスタートアップなんかがどんどん増えていってほしいなというのが、私の個人的な意見ですかね。

ロボット弁護士が消費者のために戦う「Do Not Pay」

猪塚:今日は僕が質問するというよりは、みなさんお互いにいろいろ質問してもらったらいいなと思っているので、なにかあればいつでも。

河根:今の、人間の役に立つAIの話で、他に注目しているところを話すのはおもしろいと思いました。例えば僕は、使ったことはありませんが、ミッションにすごく共感しておもしろいなと思ったのは「Do Not Pay」というサービスです。ご存じの方もいると思いますが、確か、独自のAIでロボット弁護士を作るのを目指しているんですよ。

特にアメリカは訴訟社会なので、なんでも裁判所に行ったり、ネゴしなきゃいけなかったり、ペーパーワークがけっこういろいろあったりするのですが、消費者は今大企業や弁護士に騙されていると。それに対してロボットロイヤーはめちゃくちゃ安く消費者のために戦ってくれる。ほとんど自分ではなんにもしなくても、お金が返ってくる。

アメリカだと確か違法駐車のチケットは、ネゴったり裁判所に行くとチケットの額を払わなくていいことがけっこう多いらしいんですね。それをやる手間ややり方がぜんぜんわからなければ、このロボ弁護士、ロボットといってもAIでソフトウェアなのですが、これが全部やってくれます。

そうすると、高い確率でお金が返ってきたり、お金を払わなくてよくなるとか。そこから始まって、いろいろなユースケースにいっているんですけど、そういうのはすごいなぁと思うし、彼らは今、GPTも活用して確かプラグインも出しています。

全部ロボロイヤーがやってくれるから、チャットの画面だけでなかなか解約できないジムのメンバーシップやバケーションシェアリングの解約ができるようになるとかね。消費者のために戦うAI、正義の味方みたいなのはすごいなぁと思います。

(次回へつづく)

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