2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
司会者:AIによるコード生成は、先ほどわざと回避したんですが、ソフトウェアライセンスの話がやはりすごく関わってくるだろうし、今日の会場のみなさんもけっこうOSSを使われていたり書かれたりして、ライセンスの話題にすごく興味があるんだろうなと思います。
ここはやはりまずGPL(General Public License)の話が出てきますよね。「GPLを含むようなコードを学習したモデルから生成したコードがGPL汚染になるか」。そもそも「GitHub Copilot」の話題とかでも「知らない間にGPLが混ざってくるんじゃないの?」みたいな話がけっこうあったと思うんですが、そのあたりはどういうふうに見られていますか、上原先生。
上原哲太郎氏(以下、上原):いやもう(笑)。そもそもですよ。今でもGPL問題は一定の企業にとってはすごくリスクになっちゃっていて。特に日本はわりとソフトウェアを外注する文化が強いので、外注してわーっと作ってもらって、「じゃあ組み込んで動かしてみました。はい、動いたね」と言って、検収してOKを出したんだけど、よく見たら中にGPLのライブラリが入っていて、よそから怒られる事案は起こり得るわけですよね。
このタイプのものが、さらにもっとわかりにくいかたちでやってくる可能性があるとは思っていて。それこそGPL違反かどうかをチェックするAIをまず育てなきゃいけないなと思っています(笑)。
司会者:なるほど。宮脇先生は、このGPLのお話をどういうふうに(見ていますか)?
宮脇正晴氏(以下、宮脇):GPL自体が非常に難しいので。
司会者:難しいですよね。
宮脇:あれが契約なのかとかそういうレベルで難しい問題ですね。ただ、GPLを守っているのに権利行使されるというのは、それは権利濫用とかそれでいいんですが、違反していた場合にどうなるかはかなり難しいでしょうね。それがどういう理屈で許されないのか、許されるのかというのかはたぶんケースによるとは思うんですが、ちょっと僕もわからないです。
リスクがあるのは確かなので、それは避けたいでしょう。勝手に混ざっていたらやはりそれは酷いリスクになるので、なんとかしてGPLを除くとかを、それこそ先ほど言われたようにAIとかにやってもらうしかないでしょうね。
司会者:(笑)。GPLのコードを見つけてもらう。
宮脇:チェックをしてもらう。
司会者:そういう意味では、ちょうど「そもそもそのGPLのソフトウェアの強制力の法的根拠みたいなところって、どこから来ているんでしょうか?」という質問が来ているんですけど。先ほど「契約か?」という話もありましたが、そこの話題をもうちょっと掘り下げてしゃべってもらってもいいですか?
宮脇:強制力の根拠は著作権ですね。著作権の効力範囲にあることをすると権利行使ができるということなので、それ自体ははっきりしています。だから、ライセンス契約って結局「これをやったり、これをしてくれるんだったら権利行使しない」という約束なんですが、まずそれが約束なのかと。一方的に言っているだけだと。
司会者:READMEに書いてあったり、ファイルに含まれている……。
宮脇:そのあたりの土地に「無断駐車には罰金として100万円をいただきます」みたいな看板があったとして、じゃあ駐車したら100万円を払わなあかんかというと、そんなことはないわけですよね。「払わなあかんのちゃうか」っていう話だと思っています?
司会者:けっこう思っていました(笑)。
宮脇:(笑)。だから権利行使(というもの)は、土地の所有権があるから所有権の侵害にもちろんなるし、著作権侵害になる場合はあります。それに先立ってこういう行為をしているということの意味合いが、専門的に言うとちょっと不明確なところがあるんですね。
単に契約上課されている義務にすぎないんだったら、じゃあ「ソースコードを公開しなかったことだけはもうお金を払います」で済むのか、それとも「いや、せなあかん」ということになるのか、なんかそれもよくわからないという。非常に難しい。話し出すと長くなるんですけど(笑)。
司会者:上原先生(どうでしょうか)(笑)。
上原:せっかくこの話になったので、ちょっと平場で聞きたいんですが、昔、シュリンクラップ契約は日本で有効か否かという議論がありましたよね。
知らない方のために言うと、昔ソフトウェアがパッケージで売られている時に、パッケージの一番外側に透明なシュリンクラップというラップが貼られていて、そこから見えるような格好で契約条項が書いてあった。
それを使わせるために、そのシュリンクラップをペリッと剥がすと、「それを見た上で剥がしているんだから、お前は契約を認めたという行為になるだろう」という議論があって。だから「そのソフトウェアのライセンスに関する契約は有効である」という、そういう理屈だったと思うんですよね。
これに相当することがもしGPLにあり得るとすると、例えばGPLが含まれたソフトウェアのパッケージがあります。これがZIPか何かかでアーカイブされています。ほどくと真っ先にREADMEが書いてあって、GPLがボンと載せてあります。
「お前、それを読まないとこれが使えないよな。読んじゃったよな。だからお前は認めたことになるんだろう」というようなことがあり得るのかが一番気になっているんですよ。
宮脇:あり得るかあり得ないかでいうと、あり得ると思います。たぶんここにいるみなさんも、「それはあり得ないと困るだろう」と思っている人もいるんじゃないかと思います。
ただ、だからってなんでもできるわけじゃないというのが問題で、先ほど言ったように「じゃあそれで私的複製まで禁止ができますか」というと違う問題になりますし。
すごく高額なお金を払えという要求があった時に、「じゃあお前は、ラップを開けたから全部それを呑んだ」ということにはならない。なるべきじゃない。多くの法律家はそう思うので、そうならないような法解釈をするわけです。「なったら全部を認めなさい」はわかりやすいんですが、やりたい放題になっちゃうので(笑)。
上原:そこに一定のブレーキがかかっているのはわかる。ソフトウェアが厄介なのは、ソースコードが見られないバイナリになったものに関しても「もう適用されているよ」という理屈がまかり通っていて、しかもそのバイナリの状態のまま、さらに転々流通していっちゃう。「それでも契約は生き続けているんだろうか」というのが、一番の観点なんだろうと思うんですよね。
だから、見ていないものを「契約違反だろう」と言ったら、「いったい誰の誰に対する契約違反だったんだろう」とか、だんだんわからなくなってきちゃうというのが厄介なところかなと思っています。
司会者:なるほど。そうですよね。
(次回に続く)
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには