2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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辻広志氏(以下、辻):では最後のテーマで、今の話にもつながってくる部分がありますが、どうやってこういうものたちに付き合っていくべきなのかをディスカッションできればなと思っています。
(スライドを示して)これもまた主観なので書いてあることに異論がある人はまた後で言っていただければいいと思います。
やはりOSS(Open Sorce Software)、OSSだけに限らないですが、ソフトウェアはある程度ライフサイクルがあると思っています。
特にOSSの場合は、活発で成熟したソフトウェアはやはり2軸ぐらいに切って評価できるかなと私自身は思っています。OSSが生まれた時、それは今のFree5Gなどはそうかもしれませんが、まだ海のものとも山のものともつかないというか。
そういうところからたぶん誰かが「これおもしろそうだ」とか、あるいは「これが伸びるんじゃないか」とか、ビジネス的な意味合いの意図もあったりはすると思いますが、そういうのがあってどんどん活発になっていきます。
活発になっていくと人が集まってきて、お金も入ってきて、開発体制もできて、どんどん機能が拡充されて成熟していきます。成熟していくとだいたいみんなやることがなくなってくるので、活発度が下がっていきます。ちょいちょいコントリビューションは続いていくけれど、だんだん活発度が落ちていきます。
気がつくと誰もコントリビューションしないし、機能追加が入らなくなります。たぶんここまでくるとちょっと危なくなってきて、セキュリティの問題などいろいろ話が出てきたりして。あるいはそもそも機能追加がされないので陳腐化していきます。
そうすると、使われない領域、使われているけれどメンテナンスされていないかもしれない領域に入ってきて、最後は誰からも忘れ去られて使われなくなっていくような。そういう流れなのかなと思っています。
(スライドを示して)ここに適当にソフトウェア名をプロットしていますが、これがどうかは置いておいて、やはりLinuxは継続的に開発が入っていてみんなが使い続けているから、右上のところに恐らくずっとい続けてくれています。だからみんな安心して使えるよねという話だと思います。
Kubernetesは人によって目線、成熟度は変わると思うので、テレコム目線だともしかしたら足りない機能があるかもしれませんが、コミュニティはかなり活発だし、これからも伸びていきそうなところにいます。
OpenStackはたぶんもうひととおりはメインの開発が終わって、細々とと言ったら失礼かもしれないですがやっているということで。活発度はちょっと落ちるけど成熟しているよねというソフトウェアになっているのかなと思います。
もしかしたらFree5GCも右下の領域になってしまうかもしれませんが、なんとなくみんなやっているけれど、成熟度が上がっていかないということで。ずっとそのあたりに行ってしまうソフトウェアがやはりあるのかなと思っています。
(KDDIがコントリビューションしている)Tackerなんかはぜんぜん違っていて、地道にちょっとずつ登っていったかなっていうところです。右上に緑色でプロットしていますが、成熟度と活発度がある程度一定のレベル感にないソフトウェアを商用で使おうと思うと、やはりかなりハードルが高い。先ほど言ったように体力があって、自分たちで成熟度を上げられるという体制であればいいのですが、そうでない場合にはやはりけっこう大変なことだと思っています。
辻:ここが最近、私自身が常々思っていて、今日のモチベーションもここにあるのですが、「傍観しているだけでは自分たちの意図するところにはならないよね」ということです。
最初に言ったとおり、OSSが我々の中で非常に重要な立ち位置を占めてしまっています。それは良いことだと私は思いますが、流行り廃り、いつ終わるかどうかもわからないところもあるので、我々のビジネスにそれが重要なのだったら、やはりちゃんと関わっていくべきだというのは、私自身がちょっと思っていることです。
「自社にとってなくなったら困るOSSなんですか?」「OpenSSLです」という人もいると思われる中で、OpenSSLは最近までメンテナンスがなかったという話もあると思いますが、やはりそういう重要なところには、我々がきちんと投資をしていかなきゃいけないんだろうなと常々思ってます。
欲しいものは引き上げていく。成熟度を上げる。コミュニティの活発度上げる取り組みをしつつ、なくなってもらっては困るものは衰退から押し戻す動き。赤色で書いていますが、こういう活動をしていくことが、テレコムの業界として、テレコムだけじゃないと思いますがやっていくべきことなのかなぁと思っています。
辻:とはいえ、やはり先ほどの話じゃないですが、ソースコードをバリバリ書くことは、(CNTOM2022のキーノートでの発表があった)LINEさんみたいな会社であればぜんぜんできるなと思うのですが、我々の会社はソフトウェアエンジニアを大量に抱えているわけではなくて。これからそういう会社にならなきゃいけないのかもしれませんが、今は少なくともそうではありません。
そこで、「我々にとってできるコミュニティへの貢献ってはなんだろうな?」ということを、やはり考えていかなければいけないのかなと思ったりしました。このあたりは、ぜひこのパネルディスカッションに出てもらっているみなさんにも意見をもらいたいなと思います。
どなたかなにかありますか。ではマイクを持っているので津留崎さん、どうでしょうか。
津留崎彩氏(以下、津留崎):基本的に出せるのはヒトかカネかどちらかなので、どちらかをやっていかないといけないのかなと思います。とはいえ、みなさん知っているとおり、「携帯料金を下げなきゃね」みたいな流れがある中で、カネという観点においていくと、正直以前よりが払えないところも出てきているので、そう考えると、ある程度ヒトの面で貢献していくことを考えなければいけないのかなと思います。
ただ、そこに至るにあたって、ヒトもやはりお金がかかる話なので、どうやってそれを評価してくれるように会社の意識を変えていくかみたいなところが、やはり重要になってくるんですかね。
辻:ありがとうございます。そうですよね、やはり会社が評価してくれなければ誰もやるモチベーションは当然ないので。「お前は何を無駄なことをやってんだ」となってお終いになってしまいます。
今日どれぐらいマネジメント層の方が来ているか私は把握はしていませんが、やはりマネージャーの人たちにもこのあたりは理解してもらったうえで、どういう活動をしていくのがいいのかというところなのかなと思いました。ありがとうございます。
津留崎:今発言したら、課長は「やってもいいよ」と言うので。ちょっと失敗したなぁと思って。
辻:あはははは(笑)。ありがとうございます。小杉さんは一応マネージャーという立場だと聞いていますが、このあたりはどうでしょうか。
小杉正昭氏(以下、小杉):はい。何を貢献できるかというところでいうと、正直なところ割り当てるリソースがまだ弊社に(は)ありません(笑)。
辻:あははは(笑)。
小杉:難しいところではありますが、まぁ、なんて言うんでしょうね。仮想化やコンテナ化というところで、実際にもう我々は運用をしていて、いろいろな必要なもの・必要じゃないものがある程度見えてきて知見がたまっている状況なので、私がそれを出していいとは言える立場ではないんですが、なんらかのかたちでそういうフィードバックができるというのが、1つ貢献のかたちとしてはあるのかなと思っています。
辻:ありがとうございます。楽天さんは、新しい試みをすごくいっぱいされていると思うので、期待しています。ありがとうございます。渡邊さん、どうでしょう。
渡邊大記氏(以下、渡邊):貢献はいろいろなかたちがあると思います。「このキャリアがこのOSS(Open Sorce Software)を使っているよ」と言うだけでも、コミュニティとしてはうれしいと思います。開発に参加する体力(について)はなかなか難しいと思いますが、例えばソフトバンクが「Wiresharkを使っています」と言ってもぜんぜんインパクトはないと思いますが、「検証目的やローカル5G目的でこれを使っています」と言うだけでも「お?」って周りの人は思うと思うんですよ。なので、そういうところから貢献を始めたほうがいいなと思います。
どういう組織体制が必要かという話もそうなのですが、まずソフトウェアを自分たちで動かして、作り変えてフィードバックを送る文化がどこまであるのかはわからないですが、例えば小さい部門の中なら部門の中でもいいですが、それを広めていくことが必要かなと思います。
僕は自分の知識とかを基本的に組織の中では全部オープンにして、「こうやってやるとこういうことができます」「これはこうでした」と言っちゃうんですけど。コンピュータサイエンスの知識もいると思うので、そういうのも含めてみんなで知の高速道路を引き合うみたいな、そういう活動をせにゃいかんのかなと思います。
辻:ありがとうございます。時間もだいぶ押してしまっているので、ちょっと尻切れトンボみたいになったかもしれませんが、けっこういい議論ができたと思っています。
やはりこの活動といいますか、業界全体で考えていかなきゃいけない課題かなと私も思っているので、引き続きいろいろな場でこういう話ができて、ぜひ業界全体でOSSを支えていけるようなかたちにできたらなと思っています。
ではご清聴ありがとうございました。
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