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株式会社FLUX(全1記事)

CTOは“プロダクトと事業の高速成長”をどう支えるか 技術的優位性・人材獲得・成長環境に対する技術的アプローチ

経営と技術の融合を加速するスタートアップCTOの挑戦を讃える「Startup CTO of the year 2022 powered by AWS」。スタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、技術課題の解決を通じた経営・事業成長への貢献度や組織開発力などを評価指標に、2022年最も輝いたCTOの挑戦を讃えました。ここで登壇したのは、株式会社FLUX CTOのEdwin Li(李然)氏。「高速成長を支えるCTOの役割」をテーマに、CTOとしての取り組みを発表しました。

数学、物理、科学、天文学のオリンピックに出場経験のあるFLUX CTO

Edwin Li氏(以下、Li):FLUXのLiです。いよいよ後半戦なので、みなさんが楽しめるようにしていきたいなと思っています。では、スタートします。

プロダクトの話をいろいろ聞いてきたと思うのですが、私が今日話していきたい話題は、「高速成長を支えているCTOの役割とは」です。私個人をケーススタディにして、実際何をしてきたかを、みなさんに紹介したいなと思っています。

(スライドを示して)まず、私たち株式会社FLUXは、「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」というミッションで、AIを使ってマーケティング領域のソリューションを展開しています。

そして、私自身は実はいろいろやっていて、出身は中国ですが、もともと数学、物理、科学、天文学のオリンピックに出場していました。そのあとケンブリッジ大学に入学し、1年で辞め、東工大に入って、同じくコンピューターサイエンスを勉強し続けながら塾を経営してきました。実はFLUXを共同創業した時は、初めてのエンジニアであり、初めてのCTOでもあったので、私個人はこういった、いろいろなタグが付いている感じでした。

FLUXとは、どういった会社なのか。ミッションでも答えているように、「テクノロジーをカンタンに」している会社です。では、何のテクノロジーを簡単にしているのでしょうか? それは私たちが向き合っている課題にあります。簡単に言うと、「日本のデータ活用を簡単にしていく」というのが、私たちが解決していきたいものになっています。

(スライドを示して)なぜ、簡単にしないといけないのかというと、今までのデータ活用は、データを収集して、分析して、可視化して、最後に施策に導いていくという、それぞれのステップで、それぞれのツールを学ばないといけないという課題がありました。

私たちが提案しているのは、それらのツールというよりも、データ収集から最後の施策まで、すべてほぼ自動で実現するものがいいのではないか、というところです。(スライドを示して)その結果、私たちのサービスは、ローンチから3年ぐらい経っていますが、非常に高速な成長を遂げていて、複数のプロダクトの高速グロースを実現してきました。

高速成長を支えているCTOの役割1 技術優位性の確立

では、こうした高速成長の中で、CTOは何をしているんでしょうか、というのをみなさんに問いたいと思っています。実は私は創業した当初、HTMLでホームページを書いていたり、GoogleワークスペースでGmailを登録していたりしていました。

ただし、「テクノロジーをカンタンにする」というのは、やはり、テクノロジーの難しさを私たちが吸収しないといけないという話でもあって、それを解決するために主に3つの方針に取り組んできました。

(スライドを示して)それは、技術優位性の確立、そして、人材の獲得。最後に成長環境の整備です。

まず、ここ(技術優位性の確立)ですが、私自身の強みを活かして、「W3C」(World Wide Web Consortium)、「AMA」(American Marketing Association)、「IAB Tech Lab」といった、国際最先端の技術ディスカッションに創業期から常に参加しています。特にみなさんご存じの、例えば、プライバシーサンドボックスや、Webキー等の修正を、私自身がGoogleやインテルの方とディスカッションして、未来をつくってきました。

(スライドを示して)ただし、そういったインプットをインプットのままにしてはいけません。私たちは、こういったインプットに基づいて、高速にプロダクト、MVP(Minimum Viable Product)をローンチする体制をビジネスサイドと一緒に組んでいました。ユーザーのペインを解決できるコアを見つけ出し、3ヶ月というスパンでテスト、セールスを繰り返してきました。

高速成長を支えているCTOの役割2 人材の獲得・成長環境の整備

こうした高度なことを実現するために、既存の戦略の採用だけでは、足りません。その中で、ブルーオーシャン戦略として、私のアカデミックな強みを活かした「大学との連携」と「外国籍のエンジニアの採用」という2点に取り組んで、早期の人材の育成と、言語にとらわれずにスキルを発揮できる組織を作ってきました。

先ほど自己紹介でちらっと出てきたのですが、私自身、実は先生をしていた時期が非常に長かったので、それを活かしました。私たちの業界では英文字3単語、英文字4単語の略称からなる、業界ナレッジと言われているものが非常に多く存在しています。

普通のエンジニアはそういったところをあまり勉強したがらないのですが、私はそれを資格試験みたいに設計して、レベル1からレベル5まで設けて、それを評価にもひもづけてきました。そういったところで、みなさんのモチベーションを維持していた感じです。

では、私たちがこういった施策のもとで、これから何をしていきたいかをみなさんに紹介します。(スライドを示して)私たちは、「マーケティング領域のテクノロジーを簡単に」を徹底したいです。次に、マーケティング領域だけではなく、この「テクノロジーをカンタンに」、ツールを学習するのではなく、そのメリットを享受するという考え方を、他の分野にも展開していきたいと思っています。

最後に立ち返ってみますが、「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」というのが、私たちが今日言いたいことです。ありがとうございました。

(会場拍手)

海外人材を獲得することで得られるリターンとは?

司会者:ありがとうございました。それでは質疑応答に移ります。審査員のみなさま、いかがでしょうか。

竹内真氏(以下、竹内):ありがとうございます。人材のところで、ブルーオーシャン戦略として、海外の人材を獲得すると書いてありましたが、一般的に言語の壁があると、管理上、マネジメント上のコストがやはり増えるのではないかと思います。

一般的に日本向けのサービスを日本人で作るより、コストがかかるということなので、そのコストに対するなにかしらのリターンがあれば、もちろん取れる戦略だと思うのですが……何を手に取りたくて、そういう戦略を取ったのでしょうか。

Li:ありがとうございます。先ほどのスライドにも書いているように、もちろん管理するコストは普通の日本語が流暢な方よりは高くなります。なので、私たちは、「多言語のマネージャーを育成して採用する」と「多言語でもアウトプットが可能、コミュニケーションが可能な管理システムを作る」という2つを徹底してきました。

例えば日本語だけではなく、英語も中国語も堪能なマネージャーだったり、それに基づいたレビュー体制であったり、アウトプットも英語でできるようにするというところは、けっこう力を入れて作ってきたので、そういったところでできるだけ管理コストを下げてきました。

あとは単純に、実は日本のエンジニアと比べて、海外のほうが若干高いという現象もあります。そういったところは、先ほどお話ししたように、大学に行って実際に彼らと話して、私たちがいかに成長できる環境を用意できるかを説得しているので、そういったところで採用のコストとマネージのコスト、両方を下げにいっているのではないかなと思っています。

竹内:ありがとうございます。

アカデミックとビジネスはどう折り合いをつけているのか

Li:(挙手するのを見て)お願いします。

山本正喜氏(以下、山本):ありがとうございます。アカデミックなコンピューターサイエンスを中心とした強みがあるというところが、すばらしいなと思いました。アカデミックは、わりと真理を追求する基礎研究みたいなところがあると思っています。それとビジネスにおいて、スピードが大事というところは、絶妙に妥協していかなければなりません。

技術的負債をあえて一時期抱えたまま走っていくことも必要だと思うのですが、どうしてもそのアカデミックな素養と、スピードを優先していくことのトレードオフになると思います。そこの折り合いをどのようにつけているかをお聞かせいただけますか。

Li:実はアカデミックのものは、実用に至るまでどうしても数年かかったりするので、そういったプロダクトを形成していくというところは、ビジネスやクライアントのペインを優先しなければいけません。

私たちがやっている領域、特にWebの技術の規制が今非常に走っており、3年後、4年後、私たちのプロダクトが愛用されたとして、規制によって消えましたとか、新技術によって完全に代替されましたとか、そういったリスクを回避するという意味では、(ビジネスやクライアントのペインを優先)することは現時点で非常に大事な意味があるんじゃないかなと思っています。なので、2、3年後を見据えて、あえて今はそういう選択肢をしないということを、プロダクト開発ではけっこう踏んできました。

山本:ありがとうございます。

Li:ありがとうございます。

機械学習の力でKPIそのものを改善していく

司会者:残り1分少しです。いかがでしょうか。

塚田朗弘氏(以下、塚田):プロダクト自体を少しイメージしたいのです。マーケティングにおけるデータの活用という話ですが、先ほどのスライドにもあったブラウザなどがデータの発生源になるという、理解で合っていますか?

Li:そうです。基本的にはGoogleアナリティクスのように、私たちのタグを1行埋めていただくかたちで、データ収集を実現しています。

塚田:ありがとうございます。私の理解だと、大量のデータが後ろに入ってきて、それをいろいろ加工して、最後にアウトプットとして、わかりやすいようなかたちで出す、ということなのかなと思います。

Li:そうですね。可視化の話であれば、アウトプットとして出すのも一部あるのですが、私たちはどちらかというと、KPIそのものの改善に着目しています。

例えば、広告を打ちたいという場合、より安い単価で、ピンポイントで、正しい人にアプローチしたいというのが目標だと思うので、それをそのまま機械学習の力で実現します。私たちが分析した本当にいいユーザーを、そのまま広告とプラットフォームに送信するという流れで実現しているので、途中で可視化して、いろいろ仮説を立てるというよりは、最初から最後まで一気通貫というのを、実現しようかなと思っています。

塚田:ありがとうございます。そうすると、すごくいろいろなスタッフの技術で成り立っているんだろうなと思います。エンジニアチームの構成とか、どのあたりが一番コアになっているのかとか。それから、Liさん自身がその中で今はどう携わっているかなどをおうかがいしたいです。

Li:実は私自身、主にこの新規事業でもある機械学習や、マーケティングソリューションを担当しており、そこの人材の育成、発掘を担当しています。

AI人材はやはり少ないので、彼らを早期に発見して、私たちのサービスと一緒に成長できるようにするというところに非常に力を入れています。

塚田:わかりました。ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。ここまで、Liさん、ありがとうございました。拍手でお送りください。

Li:ありがとうございます。

(会場拍手)

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