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パネルディスカッション DX時代に向けて ソフトウェアテストについてのエンジニアボイス (全4記事)

「AIを用いて」もあれば「紙をどうにかデジタルにしよう」もある 品質管理の専門家たちが語る、業界・企業それぞれのDX化

ソフトウェアの開発者・テスト技術者・品質管理/品質保証の担当者の方へJSTQBからの情報を届ける「JSTQB カンファレンス in 2022 Autumn」。パネルディスカッションには、独立行政法人情報処理推進機構の五味氏、株式会社コウェルの後藤氏、株式会社ProVisionの福原氏が登壇しました。まずは、業界・企業のDX化の傾向について話します。

パネリストの自己紹介

小林依光氏(以下、小林):五味さま、先ほどは貴重なお話をありがとうございました。これからはもう少し和気あいあいと、「じゃあ、実際どうなのよ」みたいな話を聞ければいいと思っているので、よろしくお願いします。

先ほど司会から紹介がありましたが、パネリストのみなさまには、あらためて自己紹介をお願いしたいと思っています。五味さま、先ほども自己紹介がありましたが、今から視聴される方もいると思うので、もう1度自己紹介をお願いいたします。

五味弘氏(以下、五味):先ほども講演しましたが、IPAの五味弘と申します。(スライドを示して)今、画面にいろいろと出ていますが、赤字のところがソフトウェア品質とDX(に関すること)です。

IPAでDXをやっていて、実は出向元ではソフトウェアテストをやっています。IPAで『ソフトウェア開発データ白書』というすごく売れたものがあるんですが、その後継の『ソフトウェア開発分析データ集』というものを担当して作っています。五味弘です。

小林:五味さま、ありがとうございました。続いて、後藤さま。お願いいたします。

後藤香織氏(以下、後藤):後藤と申します。私は株式会社コウェルというところに所属しています。簡単な経歴としては、昔はSIerで開発に従事していたこともありますが、その後の直近10年は、ソフトウェアテストや品質系に主軸を置いています。

前職の第三者検証会社では、Web系のドメインが多かったのですが、極端な航空宇宙みたいなところに携わったり、あと、最後はWebサービスだったり、自動テストのサービス事業の立ち上げとかに携わったりしていました。コウェルも開発の会社ではありますが、テストのサービス事業を立ち上げることをしています。

あと、私の日頃の仕事としては、1つの案件に深く入り込むというよりは、年間だいたい70〜100社ぐらいのお客さまの課題を聞きながら、営業マーケティングやコンサルのようなところを幅広くやっているかたちになります。

会社を少し紹介します。ビジョンは「世界をつなげて未来をつくる」と書いています。簡単に言うと、オフショア開発会社というカテゴリーになるかと思います。今でこそ、ベトナムにはオフショア開発とか、テスト(のサービス事業を)出しているお客さまがたくさんいる状態ですが、(弊社は)10年以上前から手がけているので、比較的老舗に当たると思います。

開発会社ですが、特徴となるのが、非常に優秀な人材を集めて日本語にも対応して(いるところ)。そこまではほかの会社さんでもあるかもしれませんが、(弊社では)とりわけテストにけっこう力を入れています。

今回のJSTQBという文脈で言うと、最上位のグローバル認定をいただいているということで、テストへの投資をかなりしている会社だという特徴があります。本日はよろしくお願いします。

小林:後藤さま、ありがとうございました。グローバルパートナーであることをしっかりアピールしていただき、ありがとうございました。あと、JSTQBの公認研修コースで(のスライドのお話ですが)、後藤さまはインストラクターもやっているということで。

後藤:ああ、そうですね。言いそびれましたけれど。定期的に講師を務めています。

小林:本日はどうぞよろしくお願いします。じゃあ、続いて福原さま、よろしくお願いします。

福原和紀氏(以下、福原):お願いします。株式会社ProVisionの福原と申します。ProVisionでは、ISI事業部のIS2部、主にエンタープライズ系の案件を受け持つ部門にて、主任を務めています。

主な来歴としては、2007年にProVisionに入社したので、もうかれこれ16年。気づいたら本当にだいぶ古株になっていました。2008年からは某携帯メーカーさまにて無線通信部、主にハードウェアに関する設計・開発・評価を担当していました。そして2014年から某ネットサービス系の企業さまにて、WebサイトのQAエンジニアとして業務を担当しています。

直近だと、2021年からは某物流企業さまにて、運用チームでQAエンジニアとして協力しているかたちになります。以上が自己紹介です。

福原からも簡単に会社の紹介をできればと思います。ProVisionは2005年に創設されました。2022年で19期目を迎えた会社です。従業員はプロパーで800名をすでに超えており、パートナーさんを含めると1,000人を超えてくるような企業になっています。

主な事業内容としては、各種ソフトウェアの検証業務を主軸としています。他にも、ソフトウェアの開発とかRPA(Robotic Process Automation)の導入支援とか。あと自社開発プロダクトの運営とか、テストをするということだけではなくて、「時代を築き上げるネットサービス企業への進化」に向けて、日々取り組んでいる状態になります。

拠点としては横浜に本社を構えていますが、その他にも各所に拠点があります。今期、ついに田町に新たにラボを開設することができました。ついに東京進出といったところで、弊社としては今期の大きな1つのトピックになったと思います。以上が会社紹介となります。本日はよろしくお願いいたします。

小林:よろしくお願いいたします。ありがとうございます。私はProVisionさんの高崎営業所に実は行ったことがあります。そこでおいしいおそばのお店を教えてもらったことを思い出しました。懐かしいと思いました。すみません、私事で恐縮です。

福原:いやぁもうぜひぜひ、いつか連れていってください(笑)。

小林:私がですか? はい(笑)。わかりました。ありがとうございます。

物流は「自動運転技術」、ECは「顧客育成の広範囲化」がDXのテーマ

小林:ではさっそくテーマに入っていきたいと思っています。先ほど、五味さまから貴重なお話をいただきました。例えば食品とか放送とかいろいろな業界があると思いますが、どこの業界が今DXに取り組んでいるのか、実際に仕事をしている肌感というか、もしくは実務を通じて感じることがあったら、お話を聞きたいと思っています。

まず福原さま、どうですか? 御社の中で「どのあたりの仕事で、こういうところが進んでいる」みたいなものです。会社名は言えないと思うので、言える範囲ギリギリでお願いしたいのですけれど。

福原:いろいろと伏せます。先ほどの自己紹介で触れた部分ではありますが、今福原は、某物流企業さまの案件を担当しています。こちらの企業さまにおいても、DX推進はしっかりとミッションを持って推進されているところがあります。

その中でもとりわけおもしろいトピックとしては、自律走行車を巧みに扱うオペレーションが1つ挙げられると思っています。近年はECサイトの普及があると思いますが、特にこのコロナ禍になって、さらに一気に普及してきた感があります。そんな中で、より高い配送品質が求められる背景もあると思うのです。

(その中で)キーになってくるのが、自動運転技術です。配送トラックの運転だけではなくて、倉庫内における商品の出し入れに関するオペレーションなどに対して、自動運転技術が導入されることによって、著しい効率化が望めると思っています。

また、ECサイトの運営を行っている企業さまにおいても、いろいろと長く経験はあるものの、膨大な顧客データ、つまりビックデータをいかに一元管理して活用していくかが大きな課題であり、取り組みになっていると肌で感じるところではあります。

そうしたところに対して相性のいい技術の1つとして、AIを用いたデータ分析があると思っています。例えば、一般消費者がいつ・どこで・どういう買い物をしたか。そういった情報を取得してAIで分析することによって、よりその方のニーズに合った商品をしかるべきタイミングで訴求することもできます。

これまで、コンバージョンが非常に高い消費者に向けてはけっこう確度が高く、質の良い販促ができていたと思います。これからはそこから漏れてきたような、漏れてしまっているような、見落としがちな消費者に対しても適切な販促が行えるよう、ビックデータの活用が求められてる感があります。顧客育成の広範囲化が、1つの大きなテーマになっていると感じられます。

小林:確かにこのコロナになって、物流分野はかなり変わったと思っています。昔聞いたことがあるのですが、運送の方たちが使うハンディーターミナルの開発現場で「30分ごと(荷物を届ける時間を選べるような)時間指定ができるように(システムを)改修する」という話を聞いた時に、「それでは配達員の人が死んじゃうんじゃないの」と思いました。

「配達員を殺すことになっちゃうから(どうにかしないといけない)」と思っていたら、時代が変わっちゃって、置き配が可能になってきちゃっています。「置いておけばいいんだ」となった瞬間に、もうその機能がいらなくなっちゃったように、どんどん変わっているイメージです。AIを使っていることは今日初めて聞いたので、ちょっとびっくりしました。

「紙からデジタルへ」の動きもある

小林:じゃあ続いて後藤さん、どうですか?

後藤:私はけっこう幅広く、産業を問わずいろいろ見ているとは思っています。今聞いたような「AIとかを使ってテクノロジーの力で新しい未来を」という文脈のケースもあれば、量として最近多いと思っているのが、建設だったり不動産だったりです。そのドメインの参入企業も非常に多いし、案件の量も多いと思っています。

背景としては、国交省とかが働きかけていることがベースにありそうです。建設系は人材不足という産業上のけっこう切実な背景がある中で、「i-Construction」とかのデジタルの力で、そこをどう効率よく解決していくかという話があります。

あと不動産系も国交省(の働きがベース)ですが、今まで「契約は紙ベースで残しなさい」と言っていたのを、数年前に「電子化していいよ」という話になったんです。そこで「それならば!」と電子化すると、データがデジタルとして残ります。

将来的にAIとかそういったものが出てくるかもしれませんが、デジタルのデータを活用するという、おしゃれなテックを使った産業に発展させていくための第一歩(になった)みたいな、けっこう泥臭いところが正直あります。

そのあたりも支援の範囲に入っています。DXはけっこう幅広いけれど、「テクノロジーの力でAIを用いて」というキラキラしたところもあれば、「さまざまなフォーマットで、持っている紙をどうにかデジタルにしよう」とやっているところもある。そんなふうに今は見ています。

小林:私もそれを体験したことがすごくあると思っています。Webとかニュースを見ていると、「建築機械に通信機器をつけて、稼働データを取って」と、すーごくかっこいい話がけっこうあります。

けれど、たまたまですが、今私が住んでいるマンションが(住み始めて)10年か12、13年目で大規模修繕工事をやるのですが、お知らせがほとんど紙で届くんです。

「来週は洗濯ができる/できません」みたいなことになっていて、「スマホにお知らせしてくれれば楽なのになぁ」などと思います。今のマンションを買う時も、銀行に行ってはんこを何枚も押しました。何にはんこを押したのかぜんぜん覚えていなくて、自信がなかったけどなぜか家が買えていた、みたいなことがありました。そういった意味で、まだまだペーパーの時代をどう乗り切るかはまさにあると感じました。

中小製造業のDX化はスピードが落ちている

小林:五味さん。「こんな分野で実はあるんだよ」みたいな、珍しい話は持っていますか?

五味:後藤さんや福原さんの言うように、いろいろな分野でDXがはやっているのは事実です。なので、逆に言えば、はやっていないところがあるのです。

小林:はやっていないところがある。

五味:そう。それが今やっている製造業なのですよ。大手製造業の(DXの推進スピードは)普通ぐらいですが、特に中小製造業は明らかにちょっと落ちているんじゃないかと思っています。

中小企業はもともとのベースが小さいので、一般的にどうしてもデータ化・IT化を始める人材がなかなかいないです。いっぱい古い機械があるので、なかなか(デジタル化は)難しく、中小製造業は(DX推進活動は)少ないです。

逆に、はやっているものをもう1つ言います。ちょっと宣伝させてもらうと、経済産業省さんがDX銘柄というものをやっています。中外製薬さんとかニチガスさんとか、だいたい大手がグランプリを取っています。もっと言えば、先ほど提起したAIが(大手の)キーワードになっています。(それに加えて)まだ(AIでなくその前段階)というので(グランプリを)取っていて。それ以外でも(グランプリ受賞の)分野がバラバラなので。(一方、)製造業は(AIはまだまだで、IT化もこれからということもあり)大変ということだけがあります。

小林:なるほど。わかりました。「どこのメーカー」とは言えませんけど、CMを思い出しました。「社長はどこにいるんだ」みたいな。ホワイトボードに書いてあるけれど、何週間も前に書いたものだから、(今は)どこに行っているかわからない。そんなCMがあるぐらい、小さい企業さまはまだまだです。

確かに五味さまがお話されたように、(中小製造業は)IT室とか情報セキュリティ室とかがあまりなくて、誰がやればいいのかわからない。総務系のちょっとパソコンに詳しい人が始めてみる。そんなイメージですが、まさにそんな感じなんですか?

五味:ええ、本当に。社長がやる気であればいいんですが、そうではなく丸投げしてしまうと、たぶんだめになると思います。

小林:難しいですね。中小企業では社長さんの意思が欲しいし、少し大きい企業であればDX推進委員会が立ち上がりますが、(DX推進委員会の)中身が何なのかという問題もあります。あまり言うと怒られちゃうので止めておきます。ちょっと課題を感じていました。ありがとうございます。

(次回につづく)

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