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DXに求められるソフトウェア品質とその計測(全4記事)

DXに取り組んでいる会社の典型的特徴とは IPAが調査した、組み込みシステム産業・IoT産業の動向把握

ソフトウェアの開発者・テスト技術者・品質管理/品質保証の担当者の方へJSTQBからの情報を届ける「JSTQB カンファレンス in 2022 Autumn」。ここで五味氏が「DXに求められるソフトウェア品質とその計測」をテーマに登壇。ここからは、組み込みシステム産業・IoT産業のDXに関する動向変化について話します。前回はこちらから。

1,108社に聞いたDXの取り組みの経年変化

五味弘氏:ということで1番目が終わりました。3番目は軽くしようと思っているので、次に2番目のネタです。

(スライドを示して)ここは分野が組込み動向調査、つまり組込みソフトウェア、組込みシステムに特化しています。IoT産業も含んでいますが、そこにおけるDX・ソフトウェア開発の関係を、これも統計を使って調べたので報告したいと思っています。

下に書いてありますもので検索してもらえれば私たちのものが見つかるので、ぜひやってください。『2021年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査』で、1,108社のアンケート回答からDXの取り組みや技術動向を分析しました。

最初に結論を言うと、DXに取り組んでいるかを5段階ぐらいで聞いて、ポジティブ系とネガティブ系で分けてやったところ、もう明らかに増えています。特に2020年度調査と2021年度調査で急に増えています。

(スライドを示して)上はDXの影響、下がDXの取り組みです。影響は急激に増えていて、取り組みはなんとなくシーケンシャルに増えています。それからもう1つおもしろかったのは、「DXに取り組んでいるかどうか?」「DXの影響があるかどうか?」「DXが必要であるかどうか」という質問に対して、「わからない」と答えていた会社が昔はだいぶあったのですが、それが急激に減ってきて、「DXが何か」ということが、それぞれの会社で認識されてきています。

会社規模とDXとの関係性

(スライドを示して)それから、会社規模とDXとの関係性を調べてみました。そうするとおもしろい結果が出ていて、規模が大きくなればなるほどDXの影響と必要性は増えていて、これは年間件数で調べても増えています。

しかし、実際の取り組みは(スライドの)左下で、目視的には増えていますが独立性検定をやったところ5パーセントを超えたので、増えているのは偶然かもしれないということで、有意な差は出ませんでした。

ということで、大企業(として)は影響もある、必要である。しかし取り組んでいるとは限らないという結果が出ています。ということで、まだやれていない中小企業のみなさま。大企業もこうなので、これから取り組んでいただいてもぜんぜん間に合うというメッセージになっています。

DXの取り組みと開発スタイルの関連性

次のアンケート分析は、DXの取り組みと開発スタイルの関連を調べました。「DXに取り組んでいる」と答えた会社と「取り組んでいないよ」とネガティブに答えた会社で層別してそれぞれ年間件数を調べたところ、アジャイル開発・DevOpsは0.17・0.19で、あまりにも低いのですが、やさしめに0.1以上あれば関連があると取り上げました。

ここでの結論は、DXをやっている会社はアジャイル開発、DevOpsをやっている。ニワトリと卵の関係かもしれないので逆を言うと、アジャイルをやっている会社、DevOpsをやっている会社は、DXもやっていることが弱いながらも言えます。ノーコード開発はまだサンプル数が少なくて、(独立性検定のP値で)5パーセント有意(が)なかったので、ちょっと低くしています(つまりDXとの関係は不明)。

アジャイルガバナンスの重要技術との関係性

次に、ソフトウェア開発ではなく、アジャイルガバナンスの重要技術との関係性も調べました。アジャイル手法を用いたガバナンス統治は(クラメールの連関係数は)0.29。データの企業間共有は0.22。運用データの活用は0.23です。

対象増加・利用形態多様化・時間短縮という要求があったところと、DXをやっている会社は関連があります。(スライドの)下の3つの対象増加や利用形態多様化や時間短縮は、求められたからDXをやったのか、DXをやったからそういう要求に応えられたのか、どちらかはわかりませんが、そういう関係性があることがわかっています。

DXに取り組んでいる会社の典型的な特徴

DXに取り組んでいる会社の典型的な特徴を調べました。先ほどの連関係数を、各項目の一番上のものをピックアップしたところ、DX会社のペルソナ、典型的な特徴としては、開発スタイルはアジャイル開発・DevOps。要件変化に対してはデジタルツインをやっている。アジャイル開発やDevOpsもやっている。

それから、競争優位性の項目からは、対応力を強化している、技術開発力を強化している。システム要件の変化に対しては、アジャイルガバナンスをやっている。DXの取り組みの施策としては、ビジョン共有やトップコミットメントをやっている。

(スライドを示して)つまり、「DXを取り組んでいる会社の典型的な特徴はこういうふうなかたちになっている」ということが、p値、独立性として5パーセント未満で、かつ、すみません、弱いですが0.1以上あるものを集めたものがこのようになります。正確には、0.1以上ある中の一番上のものを取り上げたものがこういうものになっています。

だから、DXをやっていない会社は、こういうことから始めればいいです。DXをやっていると宣言している会社は(こういうことをやっているので)、これは曼荼羅図ですが、周りの曼荼羅をちょっと取り組んでみてはどうでしょうかということです。

組込み/IoT産業の技術動向の経年変化

(スライドを示して)そろそろ時間がないですね。開発スタイルにはこういうおもしろいデータがあるので、ぜひ見てもらえればと思います。

ここで1つだけおもしろいのは、クラウドやIoTシステム構築、AIなどの重要技術は経年変化として増えていますが、減っているのは専用ハードウェアということになっています。だいたい1,000件レベルのアンケートをやっていますが、組込み屋さんにはたぶん「うんうん」と言ってもらえるんじゃないかなと。そういう傾向が結果に出ています。

(スライドを示して)組込み間の関係、連関を、矢印で表現してみました。

それから、組込み/IoT産業の技術動向を全部やるとこのようになっています。今は詳しくやりませんが、ダウンロードしてもらえれば技術間の関連性が載っています。先ほどのものの詳細な図になっています。

(スライドを示して)もう1つ、ライフサイクル分析というものをやっています。現状使っている技術と、これから使う技術をアンケートしています。

「今の現状は少ないけどこれから増える技術」を発展期と呼んでいて、「現状も多いし将来もまだまだ増やしますよ」というものは普及期、「現状は多いけど将来はそんなに増えませんよ」というものは安定期、「現状も少なく将来も少ない」というのが衰退期と分けています。

だいたい発展期から始まって、ぐるぐる回る。衰退期から発展期へは何かのエポックがないと進みませんが、このようなライフサイクルになっています。

結論を言うと、ノーコード開発、ローコード・ノーコード開発は発展期です。ほぼ数はありませんが、今後やりたい企業・会社は多かったです。アジャイルは完全に普及期になっていて、現状も多い。(ここで数が多いというのは)平均より多いという意味ですね。将来も平均より多い。

安定期は新規開発・派生開発でまぁ普通。ソフトウェアファースト、プラットフォームなどは安定期で、スクラッチ開発は衰退期になっているということが(結果で)出ています。

(スライドを示して)これは技術動向です。AIとビッグデータはだいたい対に関連がありますが、AIとビッグデータは普及期。設計や要求定義は、残念ながらと言うべきかどうかわかりませんが、安定期です。

つまり、現状そういう「設計技術を持ってます。強みになってます」という会社は多い。(現在は設計技術に対する)要求も多いけれど、将来はそんなに増えないことになっています。そういうのがいろいろ載っているので、見てもらえればなと思います。

(スライドを示して)ここがこの動向調査のまとめです。ここで2本目が終わるので、何か質問ある方いませんでしょうか? 

いっぱい来ていますね。ありがとうございます。今ネットワークのほうの質問を調べています。(質問を見て)質問はありません。

コメント、反論があるかというのは難しいですけれど、ありませんでしょうか? では、3本目にいきたいと思います。

(次回につづく)

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