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DeNA役員が考えるどこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術(全5記事)

「すごい人は中身が詰まった引き出しをいっぱい持っている」 経験すべてを未来につなぐ“エンジニア戦術”

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社ディー・エヌ・エー 常務執行役員の小林篤氏。どこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術について話しました。全5回。4回目は、エンジニア戦術その2「すべては未来につながる!」について。

エンジニア戦術2 「すべては未来につながる!」

小林篤氏:これは先ほどいただいた質問にもつながりますが、「すべては未来につながる!」というお話をちょっとしてみたいと思います。

「今、自分のやっていることが将来の何に活かされるのか」と、みなさん疑問に思うことがあると思います。例えば、学校の勉強をしていて、「これは社会に出たら何に使われるんだろう?」などとたぶんみなさん思っていると思うんです。僕もずっと思っていました。

サークルで自分が良かれと思ってやっていることが何に活きるんだろうとか、これが、自分のためになるんだろうかと不安になったり、疑問に思ったりしている人もいると思うんです。そこはまさに、未来につながっていると思ってもらいたいと思っています。

これはまさによく言われる、点が線になって線が面になるというのにすごく近いと感じています。無駄なことは基本的には本当になにもないんですよね。先ほど言った自己犠牲とか、明らかにこれはやらなくていいよね、みたいなものが明確にあるんだったらそれはやらないほうがいいと思うんですけれども。自分がこれをやらなければいけない、面倒くさいけれどもこれはやるべきだと思ってやることについて、無駄なことは本当になにもないと思っています。

言い換えちゃうと、すべては経験値みたいなものなのです。経験値を積むことによって、より無駄なことが理解できる。それをやらないで済んだり、そういうことができるようになると思います。

点を増やす作業が苦痛であることはなんとなくわかります。たぶん、点の増やし方をちょっと工夫してみるといいかもしれないですね。自分がおもしろいと思ったところだけをやるとか、本当に必要最低限のやらなきゃいけないところだけをやるとか、そういったことから徐々に増やしていけばいいと思います。打席が増えてくる中で、これもやらなきゃいけないんだよなというものが増えてくると、必然的に自分に必要な点になってくるはずなのですよ。

すごい人は引き出しがいっぱいあるし、中身もすごく詰まっている

いきなり点を増やすことは相当難しいです。例えば、開発がすごく好きなんだけど、セキュリティのことにはぜんぜん興味がなかったと。でも、やらなきゃいけないからがんばって本を読む。それはそれで重要ですが、興味がない中ではやはり読んでもけっこう苦痛だと思うんです。

でも、自分がやっているサービスを多くの人に安全に使ってもらうために、やはりセキュリティを学ばなきゃいけないという動機づけがあってセキュリティを学ぶのは、ぜんぜん違うと思います。そういったところで、自分の中でうまく動機づけを見つけてみるといいんじゃないのかと思います。

あと、すごい人は引き出しがすごくいっぱいあるし、中身がすごく詰まっているんですよ。たぶんみなさんの先輩にもすごい人がいると思うんです。今後も社会に出ていろいろな人と話をする中で、この人は本当に引き出しがいっぱいあって、中に道具がいっぱい詰まっているなという人がこれから見つかって話をすることがあると思います。

そういう方たちは、やはり引き出しを作る、かつ、中にきちんと道具を入れるということをふだんからけっこうやっているんです。まさに、点がいっぱいある状態です。みなさんにもぜひここを目指してほしいと思っています。

新しい取り組みをする時に学ぶのはある意味当たり前のことですが、勘所があるというところまで持っていけるというのが良いかなと思います。「まったくやったことがないけれど、おそらくこういうかたちでやると、こういうことができるんじゃないのか」「ここは学んだことがないけれど、過去他にこういう事例でこういう学び方をしてうまくいったから、今回もそれでやってみよう」など、そういうところにつながってくると思います。

エンタメ会社から医療系ICTベンチャーに転身した株式会社アルム

いきなり会社の話になりますが、アルムという医療系ICTベンチャーがあります。2022年10月1日付で、DeNAがこの会社を連結子会社化しました。まさに医療系のことをやっている、メディカル系のことをやっているICTベンチャーで、(スライドを示して)「Join」というプロダクトがあります。

これはみなさんがふだん使うものではなく、お医者さん同士がコミュニケーションを取るために使うツールだと思ってください。Doctor to Doctorのプロダクト。Doctor to Doctor、もしくはDoctor to 医療従事者、看護師さんだったり救命救急士だったり。そういう人たちをつなぐソリューションになっています。

(スライドを示して)こんな感じで、例えば脳のCTなどをチャットしながら共有したりします。さらに、CTは輪切りになっているので、スクロールすることによってCTの画像を変えて、どこに問題があるかをこうやって見ることができます。こういうことをやっている会社が実はあります。

いきなりなんでこの会社の話を出したかというと、アルムはもともとエンタメの会社なんです。映像配信系をやっていた会社で、ケーブルテレビとか、最近だとネットのストリーミング配信とかがあると思うんですが、いろいろな会社のバックボーンを作っている会社でした。

そこから、エンタメではなく社会課題へ。医療系の領域にやはりITがぜんぜん浸透していないと。今のアルムの社長にちょっとした思いがあって、医療を変えていきたいと、医療の会社に変革したということがありました。

ちなみに、エンタメの会社がいきなり医療にいくとなった時、そこで働いていた人たちは「殿がご乱心した」となったらしいですが、今はみなさんすごくモチベーション持って医療系に取り組んでいる、おもしろい会社です。エムスリーとはちょっと違いますかね。もっと医療機関で使ってもらえるプロダクトだと思ってもらえればと思います。

もともとアルムは映像配信の仕組みを作っていました。医療系ICTベンチャーに転身したことで技術力がそのまま医療領域に活かされている。それが実は今のアルムです。

映像配信の技術をそのまま医療領域で活かし、強みとしている

例えば、配信系はカメラから効率よくストリーミングして相手に見せるということをやると思うのですが、その時の配信の技術も、いろいろなテクノロジーを駆使してやっているんですね。それが医療系にどう活かされてるかという話をします。

例えば、手術室にいろいろなモニターがあると思います。脈を測っているモニターだったり、最近だとカメラを付けていろいろな角度から患部を映して見たり、記録に残したり。

特に、最近はコロナ禍で発生している問題があります。昔だと研修医や学ぶお医者さんが手術室に入って、手術をやっているところを横から見るという研修がありました。ですが、最近はやはりコロナでそれができなくなったらしいんですよね。人を密にできないから。「入ってくるな」というかたちになって。

そうなった時に、カメラで撮っている患部や処置をしているところをストリーミングで配信する。その時にバイタルのデータも同時に配信するというのがすごく重要になってくるんです。

そこで活きてくるのがもともとアルムが持っていた配信基盤の技術で、例えば画角の問題でそれを台形補正しながら見せたり、バレーボールのバボビジョンのように1つの画面でコマ割りのかたちで同時にいろいろな情報を出したりできます。実はエンタメの領域で獲得してきた技術が、そういったところで医療領域に活かされてるということが一例として挙げられます。

ぜんぜん違う領域で築き上げてきた技術が、今、メインでやっている医療領域において活かされているというのは、まさにこの事例としてあると思います。

というところで、「すべては未来につながる!」に戻ります。例えばアルムの話でも、医療系をもともと目指していたわけではないんですよね。でもそこで獲得した技術が、事業をピボットした時にそのまま活かせる。むしろそれが強みになって活きてくる、そういったことがけっこうあります。

もちろんみなさんが今やっている、学んでいることがあった時に、それが直接的に活かせるのが一番いいと思います。ですが、なにかしら自分自身のキャリアを変えていく、役割を変えていく、会社を変えていくという時に、今まで経験してきて「これは何に活きるんだろうな?」と思っていたことが実はどんどん次に活きてくるというところにつながります。

なので、「これはなんのためにやっているんだろう?」と思うのではなく、将来、自分に活きるためにやっていると思いながら取り組んでもらえるといいんじゃないかなと思います。

という感じで、2点目についてお話をしました。残り10分程度なので、最後のテーマについての話もしていきたいと思います。

(次回へつづく)

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