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DeNA役員が考えるどこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術(全5記事)

「活躍できる人になりたいなら、常に期待を超えていけ!」 打席に立つチャンスを掴むために必要な考え方

技育祭は「技術者を育てる」ことを目的としたエンジニアを目指す学生のための日本最大のオンラインカンファレンスです。ここで登壇したのは、株式会社ディー・エヌ・エー 常務執行役員の小林篤氏。どこでも活躍できるエンジニアになるための3つの戦術について話しました。全5回。2回目は、エンジニア戦術その1「常に期待を超えていけ!」について。

エンジニア戦術1 「常に期待を超えていけ!」

小林篤氏:ちょっとここからは、ペースダウンしながら話をしていきたいと思います。だいたいこういう時は「○○の戦術」みたいなかたちで、「n個の戦術」「n個のtips」のような感じで言われると思いますが、お伝えしたい内容は本当はいっぱいあるんです。

でも、この短い時間ですべてをお伝えすることはなかなか難しいです。なので、今回は3つに絞りつつ、もちろん他にも大切なことはありますが、意識しながら取り組んでもらえると、もしかしたらなにかのためになるんじゃないのかと思ったものを3つピックアップして、お話をしていきたいと思います。

じゃあ、1個目からいきましょう。まず1つ目、この「常に期待を超えていけ!」が1個キーワードとしてあると思っています。これはどういうことか。エピソード含めてちょっとお話をしていきたいと思います。

実際、みなさん自身でちょっと想像してもらえるといいと思うのですが、人になにかをお願いする時のシチュエーションがあると思うんですよね。例えばそうだな……みなさんだったら部活だったり、サークルの活動だったり、ハッカソンだったりで一緒に開発をする時とかですね。一緒に仕事をしている人になにかをお願いする時。あれをやってほしいなぁ、これをやってほしいなぁとお願いする時。もしくは逆にお願いされる時、いろいろあると思います。

あとはバイトですね。バイト先の社員から「これをやってください」と仕事や作業を依頼されることがあると思います。こういった時に、どういうふうに考えて行動するかが1つ重要だと私の中では思っているので、ちょっとここの話をしてみたいです。

だいたい依頼する側には「この人ならこれくらいやってくれるだろう」という期待値があるんです。例えば、Aさんに対してこれをお願いする。Aさんはこの課題、タスク、作業を問題なくできるだろう。もしくは、ちょっとがんばってくれればクリアできるだろうと、お願いすることが多いと思います。

みなさんにもイメージしてもらいたいのですが、そのスキルを持っているかどうかもわからない、できるかどうかもわからない、そんな人になにかしらをお願いすることは基本的にやはりないと思うんですよね。みなさんもそうだと思うし、依頼する側もそうなんですよ。なので、「この人ならこれくらいやってくれるだろう」という期待値があるはずです。

期待値<成果=花丸になる

期待値と同じ成果を上げられたら○になるわけです。期待しているだけのアウトプットが出てくれば、この人はきちんとできたねという感じで、期待値=成果=○というかたちになると思います。

期待値よりも成果のほうが大きければ、○ではなくて◎、もしくは花丸になるはずです。この「期待値を超えていく」というのが、実はこれからみなさんが社会に出て、仕事をして活動していく中で、けっこう重要なポイントだと私は思います。

みなさんが、エンジニアとしていろいろと開発を任されているとします。例えばアルバイトしているとイメージしてもらって、社員から「ここの関数のこういうところがちょっとバグっているから修正しておいてください」と依頼されたとします。(スライドを示して)それを普通に修正するのは、言ったらこれ(○)なのですよね。「バグを修正してください」で「修正しました」。そして、「修正してプルリク送っときました」とやるのが、ここ(○)に相当すると思います。

それをやるのは当たり前なのですよね。それは期待値とイコールです。「これぐらいできるだろう」という期待値の中で淡々とこなしているので、期待値と成果がイコールになり、「まぁ、できるよね」と○になる。こんな感じですよね。

ただちょっと気をつけなきゃいけないのが、これはもしかすると△の可能性もあるんですね。言われたことだけをやっているというところで、「そこを超えてくることはしなかったんだなぁ」とか「期待を超えるアクションをしてほしかったなぁ」とか「言っていることの裏を理解してほしかったなぁ」とか、たぶん依頼する側にもいろいろな思いがあるわけです。この期待値=成果が○ではなくて、△になる可能性も実はあったりします。

ここは難しいところなのですけどね。「いや、だったら何を求めているかちゃんと言えよ」と依頼される側はちょっと思ってしまうかもしれませんが、往々にしてこんなものです。

期待値を超え続けることで打席に立つチャンスが巡ってくる

「このバグを修正しておいて」と言われた時に、じゃあどう考えればいいのか。他に同じ問題がないかを探す。それでもし同じ問題があったら、「ここの修正は終わっているんだけれども、ここにも同じ問題があったので、合わせて対応しておきました」という感じでプルリクをする。

こういうことをすると期待値を超える。(スライドを示して)これは成果が大きく超えて◎になります。みなさんの中でもイメージしやすいんじゃないのかなと思うんですが、こういうことが実際に起こり得ると思います。

仕事をしていく観点の中で、依頼されたことをやっていくのは当たり前なのですよね。依頼内容の本質的な部分をしっかりと理解して行動することができるかが、その人の期待を超える成果を出していけるかに大きくつながってくると思っています。

この期待を超えるということが続いていくと、いろいろなチャレンジの幅が増えるんですよね。これは本当によくわかると思うのですが、「この人にお願いするとすごく良いことをやってくれる」「自分が思い描いていなかった部分や自分が想像してなかった部分もきちんと見極めて対応してくれる」など、その人に対する期待値がどんどん上がっていって、いろいろなことを任せてもらえるようになるはずです。

私もいろいろな人と仕事をしている中で、まさにこれをすごく感じています。自分自身が仕事を依頼する時に、もちろん丁寧にこういうことを実現してほしいと伝えていくのはすごく重要なのですが、それを超えるアウトプットが出てくると、やはりこの人にいろいろなお願いをしていきたいと思います。

そうすると、その人たちがどうなるかというと、やはり打席に立てるんですよね。成長のための打席に多く立つことはすごく重要で、このチャンスが回ってくるのは実はそんなに簡単ではありません。成長のための打席に立つために、僕がよく言っているのは「素振りをきちんとしてください」ということです。

もちろん、1、2回ボールが打てないのは特に問題ないのですが、打席に立った時にずっとボールを打てなければ、やはりなかなか打席が回ってこなくなると思うんですよ。これはプロ野球のバッターと同じだと思うんですよね。

チャンスの時に代打を出しても、「ぜんぜんこの子は打ってくれないな」となったら、代打にすら出してもらえなくなると思うんです。でも、きちんと素振りをし、きちんと練習をしていて、きちんとその期待に応えるような、チームの期待に応えるようなアウトプットを出す、成果を出すということをすれば、自然と打席に多く立てるようになってくると思います。

なので、期待を超えていくことをやっていくと、打席に多く立つことができ、より自分自身が成長できるというところにつながっていくと思います。(コメントを見て)「打席に立てると運もつかめますね」は、まさにそうなのかなと思います。

先ほどの自己紹介の中で、DeNAの中でもゲーム系をやったり、オートモーティブ系をやったり、共通部門を見たり、最近だとメディカルの領域をやったり、いろいろな事業領域に関わったり役割を担ったりしてきていると話しました。

やはりこれも、「やるならしっかりと成果を出したいと思っている」「やるからにはより良いものを作っていきたい」「より良いアウトプットを出したい」と思って続けてきた結果、いろいろなことを任されるようになっていたので、僕は自分自身の体験としてそこをすごく実感しています。さらに、自分がマネジメントする人たちのことを考えた時も、やはりそこは相関するとよく感じています。

なので、なにかを任される、なにかにチャレンジをしていく時は、ぜひその人の期待を超えていく。もちろん、その人の期待を超えるためにというよりは、より良い成果を出すためにどうすればいいんだろうと考えて行動するということです。そこを意識してやっていくと、多くの成長につながるんじゃないのかと思います。

質問する人の立場になって「なぜ、この質問をしているのか」と考える

この話をするにあたって、このテーマを入れようと思った事例が先日あったのですね。別にエンジニアリングの話でもぜんぜんないのですが、ちょっと紹介してみたいと思います。

先日、DeNAの中である方が退職されたんです。その時に、上司のAさんが「そういえば、退職する○○さんって何を担当していたの?」と退職した方のマネージャーに質問していたんです。まさにこんな感じ、「何を担当していたの?」とだけ聞いていたんですよ。

これに対して質問された人は「△△の領域を担当していました!」と答えたんです。これは確かに質問に対する答えにはなっているのですが、本当に上司Aさんが知りたかったことは、どこの領域を担当していたかではなかったはずなんですよね。

僕もいる3人のDMでたまたまこのやり取りがされていたんですけど、僕はこれを見た時に「あ〜」と思って、「たぶん上司Aはこういうことを聞きたいんじゃないよ」と個別にBさんにDMを送りました。「これは最低限で、他のこういうことも聞きたいんじゃないの?」というのを伝えました。

この答えのどこに問題があるかという話なのですが、上司が何を聞きたかったかと想像すると、マネージャーに対しての質問だったので、その人が辞めることによってどういう影響があり、それに対してどう対処するんですか? ということを聞きたかったはずなのです。

「辞めたこの人は、この領域をやっていました。」というのは事実ですが、結局、その抜けた穴の影響を組織としてマネジメントとしてどう把握していて、それに対してどう対処するのか。もし対処する目処が立っているならそれでいいし、対処する目処が立っていないのであれば組織的に動かなきゃいけない、という背景があるはずなんです。

先ほどのこの背景を聞いてもらったあとに、(質問に対する回答が)「○○は△△を担当していました!」という感じだと、ぜんぜんこれに答えるアウトプットになってないことがなんとなく認識してもらえるんじゃないかなと見ていて思いました。

こういう感じ、本当にちょっとしたことです。これも、上司Aがもうちょっと丁寧に細かく聞いてもいいじゃんと思う部分もあると思いますが、やはりスピーディーに物事を進めていく時に、一定のコンテキストの共有だったりとか、一定のコミュニケーションの粗さみたいな中でやっていくことも、ある程度は必要だったりはします。

もちろん、わからなければ質問する。「なにか他に聞きたいことはありますか?」と聞いてもいいと思いますが、こういったところにきちんとアンテナを立てて行動できるかがけっこう重要です。

なので、先ほどのバグの修正の話と、今回のこのコミュニケーションの話を通して、期待を超えていくとはどういうことなんだろう、と少し意識してもらえるといいと思います。

どういう影響があるか、どういう対処をするのかというのが聞きたいはず。これ、僕だったらまったくそうなのですよね。「この人が辞めるって聞いたけど、何をやっていたんですか?」と聞いた時に、「△△をやっていました」だけじゃなく、もっと他の話を聞きたいはずなんです。そこをしっかりとできるといいと思います。

(コメントを見て)コメントで「本質を理解することにつながる部分ですね」「本質を理解するために必要なことなんですか?」と、ありました。これはいろいろな考え方があると思いますが、その人の立場になって「なぜ、この質問をしているのか」と考えるのは、1つのやり方としてあると思います。

自分の主観、自分の見ている位置、聞いている位置で物事を考えるのを、どういうことをどういう意図で聞いているんだと相手の位置に視点をずらす。自分のいる場所をずらす。それで考えるのは、けっこうポイントだと思います。

というのは、視野がやはりぜんぜん違うんです。なので、その視野を変えていく意味でも、たぶんこの人だったらこうなんだろうと意識しながらコミュニケーションを取れると、より良いと思います。

コミュ力……そう、コミュ力と言えばコミュ力ですが、やはり、複数人で事業とかチームを作ってやっていく時に、相手がどう考えているのかをある程度理解しながら進めていくのは重要だと思います。

(次回へつづく)

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