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プロダクトマネージャーが身につけるべきデータ分析スキルとは? プロデザ!BY リクルートvol.4(全4記事)

「開発の前に分析」「仮説を議論してから進行」「リサーチも選択肢に入れる」 プロダクトマネージャーが日々データ分析で意識していること

リクルートの複数のプロダクト現場で活躍するプロダクトマネージャーが、それぞれの経験に基づいて、日々どのようなデータ分析業務を行っているか、どのようなスキルや経験が求められるか、個人として組織としてどのようにデータ分析スキルを身に付けるかを語る「プロダクトマネージャーが身に付けるべきデータ分析スキルとは? プロデザ!BY リクルートvol.4」。ここで加藤氏、永石氏、今井氏、松本氏が登壇。まずは各々がふだん実施しているデータ分析について話します。

「プロデザ!BY リクルート」について

加藤舞子氏(以下、加藤):本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。ファシリテーションを務める、株式会社リクルートの加藤と申します。本日は「PdM×データ」というお題で1時間お話ができればと思います。

リクルートのPdMがふだんどのようなデータ分析を行っているか、求められているスキルや経験、そしてそのスキルをどのように習得していったのか。よりリアルな話をしていくために、3人のPdMとパネルディスカッション形式で進めていきたいと思います。

(画面を示して)アジェンダはこちらの順で進行します。パネルディスカッションのあとは質疑応答の時間も取っているので、気になることや聞いてみたいことがありましたら、ぜひ質問をお願いします。

ということで、最初にこの取り組みについてお伝えします。「プロデザ!BYリクルート」とは、株式会社リクルートのプロダクトデザイン室による、プロダクトマネージャー、デザイナーに向けた、ナレッジ発信のイベントです。プロダクトマネジメントやプロダクトデザイン、デザイン組織運営に関するリクルートならではのノウハウを大公開しています。

毎回さまざまなテーマで開催しています。ハッシュタグは#プロデザです。みなさんどうぞよろしくお願いします。本日は4回目のイベントになります。

そもそもプロダクトデザイン室とはというところですが、プロダクトを生み出して、成長させるためのデザインをするチームです。プロダクトデザインに関わるさまざまな職種が所属していますが、本日はプロダクトマネージャーに来てもらっています。

登壇者の自己紹介

ということで、さっそく自己紹介からしてもらいたいと思います。では1発目に、永石さんどうぞ。お願いします!

永石陽祐氏(以下、永石):かとまい(加藤氏)さん、固くないですか(笑)?

加藤:やばい(笑)。

永石:ちょっとこっちまで緊張してきちゃったんですけど(笑)。

加藤:あ、ごめんなさい!

(一同笑)

永石:見ている人も、あまり緊張しないでゆるりと聞いてください。あらためまして、永石と申します。今はHRの領域でプロダクトマネージャーをしています。

現在は新卒採用における、オンラインや対面型の合同企業説明会のプロダクトマネジメント組織のグループマネジメントを担当しています。

本日はデータ分析についてのイベントということで、僕も含めてみんなですが、「私にとってのデータ分析」というテーマで一言書いています。

私の場合は「意思決定を円滑に行うための強力な武器」と置いています。僕らは大きなプロダクトを担当しているので、プロダクトの仕様を決めるにあたって多くのステークホルダーとの意思決定が必要になってきます。なので、その意思決定の効率をいかに高められるかの1つのアプローチとしてデータ活用があると思い、こう掲げています。本日は楽しくやりたいと思っているので、よろしくお願いします。

加藤:お願いします。続いてまーいー(今井氏)、お願いします。

今井隆文氏(以下、今井):今日はよろしくお願いします。今井と申します。自分は飲食領域で「ホットペッパーグルメ」というサービスのプロダクトマネージャーをしています。その前は学びの領域で「スタディサプリ進路」というプロダクトのプロダクトマネージャーをしていました。

入社以来、ずっとカスタマーサイドのサイトの体験設計に関わっています。

私にとってのデータ分析というところですが、「やりたいことを実現するためのもの」だと思っています。「こんな体験を作りたい」とか、「こうサイトを変えたい」と思うことはみんな多々あると思っています。

ですがそれを実現しようと思うと、説明責任を果たさなきゃいけなかったり、確からしさを説明しなきゃいけなかったりします。そんな時に幾度となくデータに助けてもらったと思っているので、こう書きました。今日はよろしくお願いします。

加藤:お願いします。続いてみきちゃん(松本氏)、お願いします。

松本美希氏(以下、松本):みなさんこんにちは。松本と申します。私はHR領域の「リクルートエージェント」というサービスで、プロダクトマネージャーを担当しています。

主に、カスタマーの方が利用するマイページの企画をするチームのリーダーをしています。

私にとってのデータ分析ですが、「仕事をする上での言語というもの」と置いています。言いたいことを相手に伝える時に、時に言葉だけでは不十分なところを補完してくれる、強力なツールだと考えているからです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

加藤:お願いします。そして私は本日ファシリテーションを務めます、加藤と申します。ふだんは「かとまい」と呼ばれています。

いつもは不動産ポータルサイトの「SUUMO」のPdMが所属する組織の部長と、その中に2つある分譲マンションプロダクトデザイングループ、戸建・流通プロダクトマネジメントのグループマネージャーを担当しています。

2021年まではまーいーと同じく、「ホットペッパーグルメ」や予約台帳アプリの「レストランボード」という飲食店向けのサービスのプロダクトマネージャーとか、グループマネージャーをしていました。

私にとってのデータ分析というところで考えたんですが、「正しい方針へ導くための便利ツール」だと思っています。今までの社会人人生で、何回もデータ分析に助けられてきているので、今日はそんな話ができればと思っています。ということで、「固い」と言われたのでがんばろうと思います(笑)。

永石:すみません(笑)。

加藤:私は部長なので、今の現場の中でやっているみきちゃんとまーいー、そしてグループマネージャーというところで、永石さんにいろいろと話を聞いていきたいと思います! 

松本氏が行っているデータ分析

では、パネルディスカッションのお題について話したいのですが、事前にもらった質問などから、3つのアジェンダを考えています。

1つ目、「ふだんどのようなデータ分析を行っていますか?」。2つ目、「データ分析スキルの重要性を感じる時はどんな時?」。そして3つ目が「リクルートのPdMとして働く上で求められるデータ分析スキル・経験は?」です。

ではさっそく1つ目です。ふだんどのようなデータ分析を行っているかを聞いていきたいと思います。

ふだんの業務内容を知らない方もたくさんいると思います。どういう業務をやりながらデータ分析が登場するのかを詳しく聞ければと思っています。じゃあトップバッターとしてみきちゃん! お願いできますか?

松本:私は先ほどの自己紹介でもお話ししたんですが、リクルートエージェントという転職サービスのプロダクトのマネージャーを担当しています。

転職を希望されるカスタマーと採用企業が出会いやすくなるように、マイページなどの改善を中心に担当しています。どんなシーンで分析をするのかというところで、実際の施策を紹介しつつお話ししてもらえたらと思っています。

リクルートエージェントでは、メールで求人を紹介することをしています。しかし、ふだんアプリを使っているカスタマーの方も、メール内のURLを押すとスマホサイトのマイページに遷移してしまうということが発生していました。これをアプリで開けるようにする施策を検討しました。

一見、「他のサービスでもよく見るUXだな。やったほうがいいんじゃないか」と思うような案件です。そう(いったもの)であっても、サイトに遷移してしまっているケースとアプリで開けたケースとで、どの程度コンバージョンレートに差があるのかや、そういうケースはどの程度のボリュームで発生しているのかを見ています。そして、きちんと効果が出ることを確認してから開発に踏み切ったりしていました。

開発する前にデータ分析を実践した方がいい理由

加藤:確かによく見るUXだと思っていて、「ぶっちゃけよくあるし、良くなるから開発しちゃえば!?」と思ったりもします。その前にデータ分析をしたほうが良いのはなんでですか?

松本:やはりきちんとビジネスリターンが得られるかを判断するためと、あとは他にもやりたい案件がたくさんあるので、その中で優先してやるべきものかを判断するためだと思っています。

「他のサービスがやっているようなこと」ということで安易にマネをしてしまっても、ユーザーが異なるので思うように効果が出ないことがあります。(また)やって改善はするけれどインパクトが小さい場合だと、他案件を先にやったほうがプロダクトの改善のスピードが上がると思っています。

この案件でも、アプリで開いた場合とスマホページで開いた場合で、どれぐらいコンバージョンレートが違うのか、ボリュームがどれぐらいあるのかなどを分析します。仮にコンバージョンレートが良くなるとしても、あまり(起こらない)ないケースで(コンバージョンを)上げても、全体へのインパクトは小さいので。そういうことをきちんと見てから、どれぐらい効果があるのかを試算しました。

加藤:みきちゃんはリーダーをやっていると言っていましたよね?

松本:そうですね。

加藤:メンバーの子が「データ分析をしないでもうやりましょうよ!」と言ってきたら何と答えるんですか?

永石:(笑)。

松本:……そうですね。

加藤:「絶対にやったほうがいいですよ! 普通じゃないですか!?」と言われたらどうするんですか?

松本:「なんで?」と聞きます。

(一同笑)

加藤:「そういうデータを持ってこいや」というわけですね(笑)。ちょっと今の「なんで?」の言い方がリアルでしたね。

(一同笑)

今井氏が行っているデータ分析

加藤:続きまして、飲食でホットペッパーグルメのまーいーはどうですか?

今井:「まーいー」と呼ばれた時は僕、というのを先ほどの自己紹介で言い忘れていたんですけど(笑)。

加藤:今井君だから「まーいー」ね。

今井:かとまいさんからは「まーいー」と呼ばれています。僕は自己紹介で言ったように、ホットペッパーグルメというサイトを通じて、飲食店を予約する人をどうやったら増やしていけるかを日々考えながらプロダクトマネジメントをしています。

先ほど松本さんが紹介してくれたような、案件を実際に推進することもありますし、中長期的に開発案件をどう計画していくかという仕事をやったりもしています。そちらの仕事の時は、サイトの利用者のログデータにとどまらず定量のアンケートを行ったりして、マーケットデータをちゃんと入れた上で、どういう案件を作っていくかというデータ分析を行っています。

(画面を示して)スライドに載せた機能は一例です。検索の軸の機能を1つ作るにしても、マーケットにはどういうニーズが存在していて、ホットペッパーグルメはどういう機能を作っていくべきなのかを、サイト上のデータとマーケットのデータを合わせて分析することが多いです。

加藤:マーケットの情報というのは、調査会社とかに依頼する定量データということ?

今井:そのとおりです。調査会社を通じてアンケートを行ったりしています。

加藤:それは何人分ぐらいのデータを分析するんですか?

今井:やる時にもよるんですが、だいたい4,000~5,000(人)ぐらいの定量データになるかと思います。

加藤:調査コストはどうなっているの?

今井:定量のデータを取ることをわりと重要視しているので、定常でコストを確保して、その中で定点調査的にやることもあれば、「こういう機能が受け入れられるのか」という設計をしてやることもあります。

定量分析をする時に大切にしていること

加藤:(定量データの数が)けっこう多いと思ったんですけれど、そういう定量分析をする時に大切にしていることはありますか?

今井:大切にしているのは、定量の調査を始める前に、どういう仮説を持って何を解き明かすためにそれをやるのかを、最初にちゃんと議論して決めてから始めることだと思います。

加藤:それはなぜ?

今井:やはり、定量調査の目的はただデータが見たいだけではなくて、自分たちが目指したい方向とか作りたい方向に行く上で、どういう手が最短で正しいのかを知りたくてやっているからです。

その仮説がないと、ゴチャッとリッチなデータが来て「わかった気がするな」で終わっちゃうことが多いと思っています。ちゃんと仮説を持って打ち込むことが重要だと思っているからですね。

加藤:まーいーもリーダーだっけ?

今井:そうです。僕もリーダーです。

加藤:じゃあ、メンバーの子が仮説なく定量分析を始めたら何と言うの?

今井「で、これで何が知りたかったんだっけ?」という感じですかね。

(一同笑)

加藤:嫌な言い方だなぁ(笑)。でも言いますね。

今井:でも、そこに気づいてもらうことが一番大事だと思っています。どんなに良かったり深掘りした分析でも、何が知りたくてやっているのかがないと、そんな技術を見せられても困るので。

(一同笑)

加藤:そうだね(笑)。確かに。

永石氏が行っているデータ分析

加藤:じゃあ、続いて永石さんにお願いできればと思います。

永石:僕は、リクナビのプロダクトマネジメントチームでグループマネージャーをやっています。ふだんはみきさんやまーいーさんがやっていたプロダクトマネージャーのメンバーのサポートだったりレビューをやりながら、自分自身も中長期の検討やプレイング系のミッションを同時でやっているような感じです。

2人と業務内容が同じになるので、ここでは僕が失敗した事例などを交えながら、自分の業務やデータ分析についてお話できればと思っています。

加藤:失敗話をして大丈夫ですか(笑)?

永石:そうですね。失敗のほうがいっぱいあるので話しやすいです(笑)。成功(談)のほうが話すことに悩みます。

加藤:いいですね。

セミナーの出席登録の数を増やすための施策

永石:僕は先ほど言ったリクナビのオンラインイベントのプロダクトなどをやっているのですが、オンラインイベントであるセミナーの視聴後に、出席登録という、いわゆるプレエントリーがあるんです。このボタンを押していない学生がけっこう多かったことがあって、実際にセミナーを視聴してから出席登録をする数を増やしていくのに、何かできないかと当時は検討していました。

もともと学生や企業の属性情報などをもとに、データをいろいろな角度から切って分析をがんばってみたんですが、大した傾向が出てこないことがあって、苦労してちょっと困ったことがありました。

やり方を変えて、実際に学生に「なんで出席登録をしていないのか」と聞いてみようと思って、デプスインタビューをいくつかしてみました。そうしたら、傾向値というよりは「出席登録って何ですか?」という回答が学生から返ってくることが多いということがわかってきました。

なので、方法というか思考を変えて、ボタンや画面を見やすくするデザインに取りかかるというよりも、学生が出席登録を行う価値を理解してもらうようにするという方針に変えました。

出席登録についての説明文を入れたところ、コンバージョンレートを大きく改善させることができた事例です。

加藤:学生さんに聞いてみたんですね。

永石:そうなんですよ。

データ分析ではなく定性インタビューに切り替えた理由

加藤:データ分析ではなくて、定性インタビューに切り替えようと思ったのはなんでですか?

永石:それこそまーいーさんが言っていたように、ある程度仮説を持ってデータに取り組むことをまずはやりました。例えば僕のところだと、学群情報とかサービスの利用率とか、そういったものを見るんです。けれど、どれを見てもあまり傾向値がないことがわかってきました。

これまである程度業務をやってきたところの肌感覚も含めて、「これは課題設定が間違っていたんじゃないか」と思うに至って、「聞いてみよう」と結局ヒアリングに切り替えたという経緯です。

加藤:けっこうデータがたまっているから、もうちょっとデータ分析をすれば傾向が見えそうだという、さじ加減があると思うんですけれど。そこでデータ分析をもう一段深掘りしようとは思わないで、変えたのはなんでですか?

永石:まず、「データ=たまっているデータ」とみんな思いがちだし、実際にそういうものを分析して、価値があるものにするのももちろん(必要)です。ですが、カスタマーの声(も)、リサーチも1つの結果として等しく1つのデータだと思います。

データから何かを見るとなった時に、手元にあってすぐに引っ張ってくることができるデータを自分でスケールして解析することも、いっぱいたまっているのでもちろん大事なんですけれど。

自分の手元にあるもので何とかしようという前提で考えちゃうと、けっこうロジックが甘くなっちゃったりします。(人に)聞いたりしないといけないので、調整とかも正直面倒くさいです。

でも、実際にフラットに見て、そちら側に解があるんじゃないかとか、糸口があるんじゃないかと思ったら、カスタマーインタビューをフットワーク軽くやっていくことも、選択肢にしっかり置いて検討するようにしています。

加藤:永石さんもグループマネージャーですよね(笑)?

永石:はい。あ、もしや……。

加藤:「あと1週間ください。あと1週間で、もうちょっとデータ分析の傾向が見えそうなんです!」とメンバーに言われて、もうすでに1週間データ分析をしていたとして、「もう1週間だけください」と言われたらどうしますか?

永石:「データに逃げるな!」って言いますね。

(一同笑)

加藤:今日はデータ分析のコーナー(ですが)(笑)。確かにね。

永石:逃げ道にもなりえてしまうので、「何もないところを掘り進めてしまうこともあるんだよ」と逃げずにしっかり伝えたいと思います。

加藤:ガツンと来ましたね。

(一同笑)

3人の話から、みきちゃんはアクセス解析で、まーいーが定量調査、永石さんが定性分析という、この3つのデータ分析を行っていることが見えてきたと思います。実際にSUUMOも一緒です。デプスもやるし定量もアクセス解析もやります。なので、けっこうどこの領域も同じ感じです。

(次回に続く)

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