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企画からリリースまで、新規サービス開発におけるPdMの立ち回りと成功・失敗(全2記事)

ペルソナが作りにくく、人数の多いプロジェクトで起きた課題 新サービス開発の企画・検証フェーズにおけるPMの立ち回り

開発PM勉強会の特別編として、noteメンバーシップの担当プロダクトマネージャーから、新規サービスの要件定義、開発、品質管理、リリースに至るまでの流れを聞く「note社に聞く!PMが新サービス企画からリリース・運用までにやっていること【開発PM勉強会ミニ】」。ここでnote株式会社の浅子氏が登壇。まずは、メンバーシップ機能の企画フェーズと検証フェーズの課題・取り組みについて紹介します。

浅子氏の自己紹介

浅子拓耶氏:これから自己紹介します。noteのPMの浅子と申します。今日は「企画からリリースまで、新規サービス開発におけるPMの立ち回りと成功・失敗」と、ちょっとタイトルが長いですが、話せればと思います。

noteは2022年7月13日にメンバーシップという機能をリリースしていて、(その)開発に足掛け半年ぐらいずっと携わっていたので、そこから得た学びや失敗みたいなものを共有できればと思います。

ちなみに、最初のスライドで「PdM」と書いてあったのですが、表記が揺れていたので「PM」に戻しました。どっちでもいいけれど、どちらかといったら僕はPMと呼ぶ派です。

(スライドを示して)自己紹介を詳しくさせてください。僕はPjM、スクラムマスター、Webディレクターみたいな感じで、プロジェクトマネジメント的な仕事を新卒から8年くらいやっていて、主に日本のお客さん向けの受託開発をしていました。

開発部隊がフィリピンやベトナムやバングラデシュにいたりして、ベトナムに住んで開発をしたり、チームマネジメントをしたりしていたこともあります。

noteには2020年11月くらいに入社したので、そろそろ2年になるのですが、最初はプロジェクトマネージャーとして入社して、2021年6月に組織が変わった時に合わせて、プロダクトマネジメントを担当している感じです。

noteのミッションとプロダクト

続いて、noteについてちょっとだけ説明できればと思うのですが、もう1回チャットの練習しますか。「noteを使ったことあるよ」「使っているよ」という方がいたら、チャットで反応もらえるとうれしいなと思います。使ったことがないという方は使っていなくても僕は怒らないし、誰もネガティブな感情は抱かないので、今日の晩御飯でも書いてみてください。

(チャットを見ながら)使っている方、ありがとうございます。すごいですね。毎日書いている人がいるんだ。社員でもなかなか毎日書いている人はいないので、純粋にリスペクトだなと思います。素直に「うどん」と書いてくれている人もいますね。その心意気が僕は大好きです。ありがとうございます。

では進めていきます。note、僕らはミッションドリブンな会社で、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」ということをミッションに掲げて、プロダクトを開発したり、いろいろな施策を進めている会社です。

「だれもが」というところと「続けられるようにする」というところについて、後でフィーチャーして話をするシーンがあると思うので、ちょっと頭に入れておいてもらえるとうれしいなと思います。

プロダクトに関しては幸い知っている方も多いのかなと思うので、あまり詳しくは説明しません。テキストを書くためのサービス、ブログのサービスだと思っている方も多いと思いますが、画像も音声も動画も投稿ができます。

あとは、今はやはり実態としてはテキストが多いですが、ほかの表現方法、創作はテキスト以外にもいろいろありますよね。いろいろな表現方法をしているクリエイターを後押ししたいと考えながらプロダクトを作っている会社です。

noteの“メンバーシップ”とはなにか

では本題に入っていきましょう。(スライドを示して)本日のお品書きは、こんな感じです。

まず「メンバーシップってなに?」ということを説明してからじゃないと文脈がわからなかったりすると思うので、前提を説明した後に、プロダクト開発のそれぞれのフェーズに合わせて「どんなことをしましたよ」とか、「どんなことがつらかったですよ」「こういうことがうまくいったよ、できなかったよ」みたいな話をしていければと思います。

ではまず前提です。(スライドを示して)「メンバーシップってなに?」ということで、これはLPのキャプチャーをそのまま持ってきたのですが、「だれでも月額サブスクをつくれる」と、小さいですが上に書いてあります。

メチャクチャ平たく言うと、ほかにもいろいろなサービスはあると思いますが、オンラインサロンやオンラインのコミュニティやファンクラブを簡単に作ることを、noteの上でも簡単にできるようにしましょう(ということです)。

今までnoteで活動をしている人や、日々、ふだん書いている人もいると思うのですが、そういったnote上の活動の延長線上で、継続的に収益を得られるようにしましょうというコンセプトのサービスです。

よくあるのは、会社としてお金を稼ぐフェーズに来たんじゃないかと邪推されることです。それは、僕らも会社なのでなくはありません。

しかし、どちらかというと自分たちがお金を稼ぎたいというのではなくて、クリエイターが創作を続けていく、続けるためにはどうしても自分の時間やお金を使わなければいけないというところで、「なにかしらリターンが得られないと、続けていくことはつらいよね」ということが課題感としてもともとありました。

先ほど紹介したとおり、「誰もが創作をはじめて続けられるようにすることを強化していきたい」という話を最近社内でしています。まず続けるための源泉、ガソリンとなるものを、お金というかたちでクリエイターのみなさんが得られる場を作れるようにしたいというところで始まったサービスです。

では、前提はこのあたりにしておいて、さっそく中身に入っていこうと思います。

企画段階で苦しんだ「関係者多すぎ、合意形成難しすぎ問題」

今、僕の説明を聞いて、「なんかフワッとしているな」とか「けっこう幅が広そうだな」と思った人も一部いるんじゃないかなと思いますが、けっこう幅が広いがゆえに苦しんだこともあったりします。その点については、後で詳しく紹介をしていきます。

(スライドを示して)まず企画編。「関係者多すぎ、合意形成難しすぎ問題」ということで、ちょっとネガティブなところから入っています。

note社の今の社員数がちょっとパッと浮かばないので、note社員で見ている人がいたら「何人いますよ」とチャットとかで教えてほしいのですが、今180人くらい社員がいて、業務委託やアルバイトの方も合わせると、たぶん200人くらいの組織になっているんじゃないかなと思います。

プロダクトも、幸いけっこう使ってくれる人が増えてきていて、コードベースもすごく大きくなっている状況なので、合意形成をしていったり、ほかのチームと連携していく難易度が、良くも悪くもかなり上がっている感じになっています。

(チャットを見て)PRチームの人が書いてくれました。社員は今180人くらい(登壇時点)だそうです。

(スライドを示して)最終的に関わったメンバーは、ここにも書いてあるとおり80人オーバーで、細々としたところも含めるとたぶん100人ぐらい関わっているので、社員の半分以上はいるかという感じです。キックオフする時のリーダーや経営陣や開発のメンバーに絞ったメンバーでも、18人くらいいる状態から始まっていました。

プロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメント、それ以外をしている人、誰にでも通じることだと思いますが、合意形成は大変ですよね。僕らもメチャクチャ大変で苦労しています。

よくあるやり方だと、「定例を設けてそこでシンクしていきましょう」みたいなのもありますが、これだけ人がいると限界があるということで、「まず大方針をみんなでしっかりと共有して、それを地図にした上で、羅針盤として同じ方向を向いて進んでいきましょう」というようなことをしていました。

「Backwards Press Release」を活用したアプローチ

(スライドを示して)具体的にどんなことをやったかというと、これは知っている方も多いと思います。AmazonがWorking Backwardsという方法をやっているという記事が何年か前に話題になったので、今みなさんの現場でもちょこちょこ話が出ることもあるかなと思うのですが、知っていますか?

僕は話題になった当時から知ってはいたけれども、実際にちゃんとやろうとなったのは、実は今回が初めてだったりします。(チャットを見て)反応ありがとうございます。

Amazonの場合は、プレスリリースを書いて、どんなものが世に出ていくかというところから逆算して、どんなサービスにするか、どんなコンセプトで打ち出していくかみたいなものを作っていくアプローチです。知らない方は、ワードをネットで検索すると出てくると思うので、ぜひ見てみてほしいです。

(スライドを示して)noteではプレスリリースも出しますが、下にも書いたとおり、ツイートをメチャクチャ出していたり、noteの記事を出していたり、あとはLPを作るようなところもあるので、想定しているユーザーや触れてほしい人に情報を届けるチャンネルがすごくいっぱいあります。

まず、どんなチャンネルでどんなことを発信して、それに対してどんなふうに興味を持ってほしいかとか、どんな反応をしてほしいかみたいなところから逆算してプロダクトを作るとか、要件をどこまで揃えるかを決めていました。

例えばツイートでもプレスリリースでもLPでもなんでもいいですが、それぞれに必要なタスクはなにがあるかという関連図を作成して、大枠はどんな方向性で、どの時期になにをすればいいかフワッとでもわかった状態で、それぞれのチームが施策を進めていけるようにとやっていました。

(スライドを示して)中身を見られないのがとても心苦しいのですが、いろいろと許可を取らなきゃいけなかったりするので、ちょっとぼやかす感じで表示しています。

まず現状、プロダクトマネジメントでいうと、要件整理みたいなことをした上で、誰にとってのどんなサービスであるべきか、どんな気持ちになってほしいかをまとめていて。リリースをする時にはツイートがあって、LPがあります。

スライドはちょっと見切れていますが、弊社の代表の加藤さんがメンバーシップを始めるにあたっての想いをつづった記事を書いてもらう感じで、加藤さんに時間を取って書いてもらったりもしていました。

ちょっと見にくいですが、実際のこれはツイート画像があります。「こんなツイートをしたら、例えば『メッチャ気になる』『私でもできそう』みたいな感じで反応してもらえるようにしたいよね」「そのためにはどんなメッセージングが必要だよね」みたいなことを書いたりして、みんなで「この方向性で間違っていないですよね。これで前に進んでいいですよね」という合意形成をしていました。

という感じで、今話したものが最初からきれいにバッとできていたかというと、けっこう行ったり戻ったりみたいな感じで苦労していた部分もありますが、ものすごくきれいに話すとこんなことをやっていました。

検証段階の「らしさ」の追求ゆえの苦難

次に検証フェーズです。「いやいや、企画する前に先に検証したほうがいいんじゃない?」というパターンもあると思いますが、今回、僕らは「企画がある程度バッと出た上で、ちゃんとさせていくためにどういうふうにしていくべきか」みたいな感じの検証をしていました。

(スライドを示して)「らしさ」を追求するがゆえの苦難という、またちょっとかっこいい感じのネガティブなワードが並んでいますが、最初に話したミッションのところに戻ります。

僕らは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」ということをミッションに掲げていて、この「だれもが」には個人も入るし、法人も入るし、NPOも入るし、インターネットに詳しい人もいるし、詳しくない人も入る。僕らのようなIT企業の人もそうだし、それ以外の業界もそうだし、究極はネットなんか触ったことがない、僕のおばあちゃんも「創作をはじめて続けられるようにする」ことをミッションに掲げています。

なので、スライドが区別されていませんが、特定のカテゴリや層に向けた機能や施策を作るというよりは、どんなクリエイターでも気持ち良く使えるような機能や施策を作っていくところを志向しています。

それゆえに、例えば一般的によくある、「ペルソナを作って機能開発をしていきましょう」みたいなことがなかなかやりにくかったりしているのが実情です。

(スライドを示して)「とはいっても」が続きますが、会社のリソースは限られていて、メンバーも限られているし、できることはいくつもはないので、どのカテゴリ、どの層に向けて施策を打っていくかという優先度付けは必須になっていきます。

検証段階で試したこと ターゲットの言語化

(スライドを示して)メチャクチャ広いターゲットに対してなにか施策を打っていくんじゃなくて、ちゃんとセンターピンを打ちましょうということです。

(スライドを示して)抽象化しているので2枚しか付箋を貼っていませんが、ダーツの的みたいなものを作って、ど真ん中になにを持ってくるか、外になにを持ってくるかみたいなところを言語化してピンを立てました。

究極的に言うと、noteが目指しているもの(の実現のために)は、潜在的なクリエイター全員がターゲットになるべきですが、そうすると、どうメッセージを打っていけばいいかとか、どういう機能が必要かとかがまったくわからなくなってきます。

なので、まず「メインにターゲットにしたいクリエイターはこんな感じだよね」というところで言語化して、センターピンを立てています。今回の場合は、「熱量があってクリエイター的な活動をある程度している人」をメインに据えています。

(チャットを見て)そうですね。チャットに書いてありますが、「デジタル庁は誰も置いていかない」みたいなことを意識しなきゃいけなかったりするので、そこも難しかったりしますよね。

(スライドを示して)これをやったことで良かったことを緑色、それでもまだうまくいっていないことを赤色で書いています。

まず、先ほどたくさんの関係者がいるという話をしましたが、ユーザーコミュニケーションやライティングやPRや、それからプロダクト上の文言など、チーム横断でアウトプットをなにか作らなきゃいけないとか、方向性やトンマナなどを完全に揃えるのはやはり難しいのですが、大方針は決めやすくなりました。

一方で、これぐらいの絞り方では「この人にぶっ刺さる」みたいな説明がしにくかったり、理解してもらうのに障壁があったりして、実は今でも僕はけっこう苦しんでいます。

「誰でも始められるよ、誰でも続けられるよ」と言っても、それは自分のことと関係があるのか否かはわかりにくいですよね。

「自分事化しにくいのかな」というところがあるので、そこはコンテンツを作って事例をメチャクチャ紹介しまくるとか、あとは説明会や勉強会を開いて、もうちょっと近い距離で理解してもらう場を作ることを、事業開発のメンバーと一緒にやって解消をしています。

検証段階で試したこと 既存クリエイターへの提案・デモ

あとやったことがいくつかあるので、淡々といこうと思います。検証フェーズです。

僕らの会社ではディレクターという、書籍の編集者みたいな立ち回りで、ふだんはクリエイターにかなり近い距離で仕事をしている人がいます。既存のクリエイターに提案したりデモしたりを、「メンバーシップというのを新しく始めるんだけどどうですか?」みたいな感じで提案していました。

「僕も極力同席させてくれ」とお願いをして、実際に僕が静的な画像を使ったり、開発が進んできてからは動くデモを使いながら説明をして、「どんな感じの使い方を想定していますかね?」「どういうことができるといいですかね?」「今まで、コミュニティ運営していて、つらいことありましたか?」みたいなことを聞いていました。

これは言わずもがなだと思いますが、ユーザーからの直接の声を参考にしてユースケースをイメージできた点で、機能の仕様を細かく詰めていくところでも、「いや、ここユースケースが足りていないから、こういうふうな考え方をしたほうがいいかもね」みたいなイメージがしやすくなりました。

あとは、既存クリエイターは潜在的に使ってくれる可能性があるユーザーなので、その人たちに利用イメージをしてもらいやすくなるようにできたなと思っています。

検証段階で試したこと 幅広いクリエイターへのユーザーインタビュー

次が、幅広いクリエイターへのユーザーインタビューです。これは、noteでコミュニティ運営を試してうまくいっている人、うまくいっていた人、あとはうまくいかなかった人の両面でやっています。

うまくいった事例とか、現状うまくいっている人から声を聞いて得られることは限られている感じです。なので、うまくいかなかったケースで「こんなことがつらかったです」「こんなふうに苦労したんですけど、結果こんなふうになってしまいました」みたいな声を聞かせてもらえるのは、すごく参考になったなと思っています。

今もまだ解消できていないものもたくさんありますが、具体的にどんなものがこれから僕らに必要になってくるかはかなりイメージできるようになったと思います。

検証段階で試したこと サービス面のフィジビリ検証

そして検証フェーズの最後です。サービス面のフィジビリの検証をしました。これは、“メンバーシップ”という名前がいいのか。あと候補(になに)があったっけな。“ファンクラブ”にするのか。あとは、最近Instagramでちょこちょこ見かける“ファンダム”はどうかとか、20個ぐらいアイデアがありました。

サービス名を聞いて「なにができそう」とか「どんなサービスかわからん」となると、やはり使ってもらえないというリスクがあります。

なので、「メンバーシップが良さそうだね」という話がベースにはあったのですが、メンバーシップと聞いてどんなことができそうか、どんなものかを、わりと幅広い年代、職種もITに閉じる感じで、社員の身内や身近な人に5分ぐらい(の)クイックなインタビューをさせてもらいました。

「こんな感じの質問項目を、こういうふうに聞いてほしいです。前提を説明してほしいです」みたいなことを僕らから社員に渡した上で聞いてもらった内容を、「Googleフォーム」だっけ? なにでやったかちょっと忘れちゃったんですが、溜めて、「“メンバーシップ”で大丈夫そうだよね」ということを確かめていきました。

すみません。資料がちゃんとアップデートできていませんが、サービス名からできることが想像できないことに起因して、初動でコケる可能性を潰せたかもしれないなという感じです。

しかし、まだリリースして2ヶ月なので、どれだけコケているか、どれだけうまくいっているかは、まだこれからかなというところです。

(次回につづく)

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