2024.10.10
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リモートファシリテーションとメンタルヘルス(全1記事)
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岡本リリー氏:私からは「リモートファシリテーションとメンタルヘルス」という内容をお話しします。みなさんけっこう、どのようにしたらいいファシリテーションができるかというテクニカリティな部分をお話しされていたので、ちょっと違う角度からお話しできたらなと思って、このようなタイトルにしてみました。
まず自己紹介です。リリーと申します。私はプロダクトに関わり始めて約6年ぐらいになりますが、基本的には、B2B SaaSの100人いかないぐらいのスタートアップでずっと働いてきています。
最初にプロダクトに関わり始めたのは2016年で、その頃は本当にプロダクトマネジメントがなにかもわからない状態で、あとから「あっ、よく考えたらプロダクトマネジメントをやっていたんだな」という感じで、気づいたらプロダクトマネジメントをやっていたというのが私の経歴です。
日本の千葉県柏市にあるフラー株式会社というテック企業で初めて働いて、その後、ちょっとリモートで働きたいというのもあって、コロナの前だったのですが、カナダのバンクーバーに行ってフリーランスでプロダクトのコンサルティングをやっていました。
その後は、2021年1月から日本の飲食系のSaaSビジネスの会社でPM(プロダクトマネージャー)をやって、ちょうど先々週ぐらいに辞めて、今はフラフラしています(笑)。
来月ぐらいから一応、「General Assembly」というプロダクトマネジメントのイントロダクションコースみたいなもののティーチングアシスタントをしたり、「Product Camp」という、スクラムプロダクトマネジメントの新しいコースにメンターとして参加する予定です。あとは、「PM先輩」というプラットフォームでメンタリングをしています。
ファシリテーションの経験としては、いろいろなものがあるなと思っています。以前は開発チームとも一緒に行動していたので、デイリースタンドアップをファシリテートすることがほぼ毎日でした。
あと、ビジネス事業部とテック側のステークホルダーをまとめ上げるミーティングも、隔週でやっていました。ほかにも、ユーザーインタビューだったり、PRD(Product Requirements Document)、スペックのレビューのようなものを大きくエピックが出てきた段階でやったり。
過去にはGoogleデザインスプリントやコンサルティングをする中で、「いったい、なにをなんで作りたいんだっけ?」みたいなことを定義する時に、ブランディングスプリントのファシリテーションをしています。仕事の外では、ワークショップもしています。
いろいろなタイプのファシリテーションがある中で、頻度が多いものだったり少ないものだったり、参加する人もさまざまで、頻度が多ければ多いほど、やはり仲よくなりやすいという部分もあります。
違う部署から参加していたりすると文化が違ったり、オブジェクティブが共有できていなかったり、落とし込みができていなかったり、無意識に対立構造ができてしまったりすることがけっこう多いのかなと思っています。
いつも準備不足だと感じてしまうのが現実だし、やはり、みんなにとって本当に有益な時間を提供できているかがすごく不安というのが、いつも私の中でうっすらとある感情です。
みなさんが本当にこのように感じているのかはわかりませんが、私はこの2つをすごく感じることが多いんですよね。
「なんでなんだろう?」というところで、やはりエンゲージメントを増やしたいとか、声が大きくない人の意見も取り入れたいとか、短時間で最高のアウトプットを出したいから、というところが大きいのかなと思います。
それに「これを解決するためにこうしてほしい」「参加者にこうしてほしい」というのがいろいろ乗っかってきますよね。カメラをオンにしてほしいとか、マイクをオンにしてほしいなとか、怖い顔をしないで参加してほしいなとか、車を運転しながら参加しないでほしいとか、営業の人が電話に出ちゃったとか、そういうものがいろいろ出てきます。
自分の中でコントロールできない外部要因が出てくると、自分の中で不安感がどんどんどんどん大きくなってくる。(自分が)準備できていなかったからとか、車を運転しながら参加しているだけで、みんなにとって有益な時間を作れていないとか、自分の責任をすごく感じてしまうことがやはりあります。
みなさんも、そういうことをどこかでファシリテートしている自分の責任だと感じてしまって、不安感が出てきちゃうことがあるんじゃないかなと思います。
このAnxiety、不安って脳みそを乗っ取っちゃうんですよね。これはよく聞くフレーズなんですが、「Status」「Certainty」「Autonomy」「Relatedness」「Fairness」の頭文字を取って、「SCARF」と言います。
例えば、「Status」。自分がファシリテートするという「Status」を持っていて、ファシリテートしたあとに、こういうオブジェクティブを達成したいという「Certainty」、確実性があります。
それを、自分のコントロール「Autonomy」の中で達成したいとか、私が用意してきたものに対してみんなにコントリビュートしてほしいという、こういうSCARFを満たせない状況が起こってしまった時に、脳みそがそれを危険だと感じ取ってセルフコントロールが利かなくなる状態に陥るんですね。
そうなると、やはり不安になって緊張してしまったり、誰かがなにかを言った時に怒って反応してしまったり、脳みそがコントロールできない状態を作り出してしまうことがファシリテートしている時でもけっこうあるんじゃないのかなと思っています。
ここに加えて、リモートでの難しさが加わってきます。オフラインの時も難しさはけっこうあったと思うんですよね。例えば5日間スプリントの途中で「お腹空いた」と言ってご飯を買いに行っちゃう人がいたり、電話に出ちゃう人がいたり、「ちょっと早く帰らないと」と言って帰っちゃう人がいたり。
その部分に加えて、リモートでのファシリテートで出てくるのが、ノンバーバルな合図を探してしまうということです。やはり感じ取れるものが少ない。頭から上半身だけを見てファシリテートしているので、手の動かし方だったり表情だったりを、いつも無意識に探してしまいます。
あとは、自分がどう見られているかをすごく気にしてしまったり、アイコンタクトを無駄にスクリーン上から求めてしまったり。ほかにも、すごくカメラが近い人。そんなことはオフラインではなかなかないので(笑)、すごく不自然で疲れてしまったり。
こういうものがAnxietyを引き起こす原因となっています。そこに加えてテクニカリティ、カメラの画質が悪い、オーディオの画質がブチブチ切れる、キンキン言って疲れてしまう、Wi-Fiの接続が悪いなど、こういうものが無力感につながって、先ほどの脳みそのSCARFの状態を作り出してしまうというのが、やはりリモートファシリテーションの難しさかなと思います。
ソリューションは、本当にいろいろあると思うんですよね。例えば、他の人に時間を計ってもらう。Miroを使っているのであれば、Miroのボードをきれいにするのを誰かにやってもらう。そういう役割を与えるというのは、解決策としてあります。
ほかにも、表情を読み取ろうとしてしまうというのが、メンタルにとってすごく負担になっているのであれば、アバターを使ってみる。自分が使ってみたり、使ってもらったり、「みんなで使ってみよう」とやったりできます。あと、ビデオをみんなで消して、1回ミーティングをやってみよう、ファシリテートしてみようというのもできるのかなとは思います。
ソリューションはいろいろあって試せるとは思いますが、やはりみんな違うことに対して不安感を覚えるというのが、すごく大きいのかなと思っています。
以前働いていた会社でもけっこう「ビデオをオンにするかオフにするか問題」があったり。リモートで働いている人とオフィスに来ている人がいるので、やはりオフィス陣は「顔を出して会話したいよね」という感覚がありました。
一方、海外のテックワーカーたちは、基本的には「ビデオいらなくない?」「アシンクロナスなやり方でいいんじゃない?」という、すごくポラリティのある文化が会社内に2つ存在していた時に、すべての人を幸せにしようとするのはすごく難しい。
最終的に1つの解決策に導くことがすごく難しいというのが、私の中で問題としてけっこう顕在化していて、Anxietyを引き起こしていました。
究極の処方箋として私がみなさんに伝えたいのは、ファシリテートするのは、すごくイニシアチブがいるということです。
ここに来ているみなさんは、ファシリテーションを良くしようと思っていて、時間を使ってわざわざ学んでいる。もうこれだけですごくプラスなことで、それだけで他のチームはすごくありがたく思うべきことだと思うんですよね。
感謝されなかったり、感謝されていても表面化されなかったり、自分がうまくできているのかできていないのかがわからなかったり、いろいろな人からのフィードバックがあって全部をうまく汲み取れなくて、「自分のせいだ」と思っちゃったりすると思うんですけど。
民主主義的にみんなのことを幸せにしたいと思ってしまうとは思うのですが、そんな気持ちがAnxietyを引き起こしてしまうので、やはり周りのことを考え過ぎない。完璧を目指さない。感情を無理に読み取ろうとし過ぎない。
あとは、先ほども言ったように、自分の脳みそがどういうふうに状況に対して反応しているのかを学ぶことが、けっこう自分の大きなツールになると思っています。Anxietyについて学ぶことは、私はすごく役立っています。
SCARFという、「自分の『Status』が侵されているな、今」と客観的に見られるツールを持っているだけで、こういうAnxietyが起こった時に、「あっ、今Anxietyを感じている。なんでだろう?」という評価ができるようになる。
それに対して解決策を導くことができるので、Anxietyについて少し学ぶ機会になればなと思っています。
あと、Anxietyを感じるということは、少なからず生きているということなので、「ああ、生きているんだな。人間なんだな」と、すごくベーシックなところですが、そういうふうに感じるだけでもすごく大事なのかなと思います。
リモートで人となかなか直接つながれない今の時代だからこそ、自分の心を大事にしてあげられるのは自分だけというところを忘れないでほしいなと思っています。なので、自分ができることを限られた時間を使ってやった自分を、ぜひみなさん褒めてあげてください。
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