2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
営業出身PMがプロダクトチームの信頼をどう獲得していったか(全1記事)
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杉原達也氏:ちょっと(ファシリテーションに)かすめたようなタイトルで恐縮ですが、「営業出身PMがプロダクトチームの信頼をどう獲得していったか」という話でLTをします。
先ほど浪川さん(浪川舞氏)からもあったと思いますが、僕は登壇したあとにみなさんのコメントを読み返してニヤニヤするのが好きなので、ぜひ思ったことをいろいろとつぶやいてもらったり、チャット欄に投稿してもらえればうれしいなと思っています。
じゃあまず自己紹介から。私はPM歴2年で、営業上がりのPMです。2016年にSpeeeというWebマーケティングの会社に入社をして、4年間営業や営業企画に関わっていました。2020年に現職のクロスマートにセールス職で入社をして、紆余曲折あって半年後にPMになったという、そんな経緯があります。
今日お話しすることを細かく書いたnoteもあるので、こちらも見てもらえればうれしいなと思っています。
会社のことも少しお話をさせてください。今いるクロスマートという会社は、食品流通領域にサービス提供しているスタートアップです。
この食品流通という領域は、こんなにシンプルではないのですが、メーカー・生産者がいて、最後に飲食店がいて、今でも8〜9割は食品卸売業者というラストワンマイル、1店舗1店舗に食品を届ける中間業者がいます。なので、毛細血管のような役割を担っているのですが、今非常に課題を抱えています。
飲食店から受注を受けるのですが、1日数百から数千枚のFAXを受け、それを1枚1枚見て赤ペン先生をしながらシステムに入力をします。7年間の保管義務があるので、倉庫は紙でいっぱいというかたちで、非常にアナログで大変です。
これは実際の発注書です。黒でグリグリと塗っています。右側は、お肉屋さんへの発注の用紙です。上から豚バラスライス、三枚肉はギリギリ読めますが、7番目は何回読んでも読めない。マツッポなのかオロポなのか、でもそんな商品は扱っていないよねということで解読不能です。
読み取る班には受注スタッフが深夜でもいっぱいいます。人と同じだけFAXがいっぱいあるという、そんな現状だったりします。
これを今どういうふうに作業してるかというと、指先が異様に発達した事務のスタッフの方がパチパチと打ち込んで、はんこを押して、目視確認をして、問題がなければ次の紙にいくというのを、深夜の22時から朝の5時までずーっと繰り返している。これが令和の受注現場の実態です。
僕たちは、LINEとOCRを使って簡単に発注できますよというサービスを提供しています。
ちょっとだけデモをお見せできればと思うのですが、飲食店の画面からこんなかたちで「注文する」とやったら、今までFAXに載っていたような商品が上からズラッと並んでいて、そこに対して必要な商品を必要なだけ突っ込んで、「ちょっとお刺身に使うので大きめのものをください」みたいな、そんな備考も書けたりします。それで「チリメンジャコは2.5キロいただきましょうか」と。
問題がなければ確認に進んで、発注を確定する。そうするだけでLINEに通知が飛んできますよという、非常にシンプルなシステムを提供しています。今まで紙の山と赤ペンを使いこなしていた卸売業社の受注側の方は、確定するだけでCSVが落ちてきて、あとは請求管理・販売管理で使っているシステムに突っ込みますよという、そんなことをやっています。
リリースから2年半で、25,000店舗が使ってくださっていて、200社の利用があるのですが、まだまだ拡大余地が大きいと(思っています)。こういう領域にサービス提供をしています。
おそらく今日はいろいろな規模の会社の方がいらっしゃっていると思うので、「うちは」という話なんですが、先ほどお伝えした受発注のところで、20名強ぐらいの組織の開発チームのPMをやっています。
2年前、私が就任した当初はどうだったかというと、本当に大量の要求がいろいろなところにあるんですよね。だからまずスプレッドシートにまとめるところから始めたのですが、要求であって仕様じゃないと。
そこに優先度をどうつければいいのかがわからないし、そもそも言葉がわからないと。「モーダルってなに?」「非同期処理って同期処理とどう違うの?」「並列処理ってなに?」みたいなところで、どうやっていけばいいのかがわからないという状況から、ファシリテーションの話も含めつつ、なんとかやってこれているなと思っています。
これは信頼度の推移をグラフ化したものです。特に定量には基づいていないのですが、初期の頃と安定運用に至るまで、それぞれ変わったなぁと思うことがあるので、そこのお話ができればなと思っています。
「信頼獲得編」とありますが、とにかく初期はこの2つを意識していました。“ドラフト、たたき台を作るということ”と、“翻訳してすり合わせる”という2つです。
ドラフトを作るというところ。当時は、FigmaもMiroもNotionもぜんぜん使いこなせないイチ営業で、強いて使いこなせるのがGoogleスライドでした。その散在しているものや、営業ないしCSから聞いたことをとにかく自分なりの言葉にまとめるというのを最初にやって、パワポに落としながら「こんなことを実現したいです」というのを作っていました。
バーッとある要求が少し可視化されると、エンジニアの方も「こういうことをやりたいのかもしれないね」「これをやりたいのであれば、こういうのはどう?」「このユースケースはどう?」と、いろいろな質問を投げかけてくれるようになったんです。
なので、まずはこの「なにをやりたいか」を可能な限り共通言語を使って渡すことと、あとはひたすら翻訳してすり合わせるという作業をやっていました。
(スライドを示して)この左側は、今でもしている作業です。「これってこういうことですか?」「合っていますか?」と確認したり、言われたことに対して「ちょっとわからないのですが、おっしゃっているのはこういうケースだと、こういう動きをするということで、この画面と一緒ということで合っていますか?」と確認したり、「合っている場合、これをシステム的に見たらどういうメリットがありますか。もしくはやらないほうがいい理由があったら教えてくださいね」ということを、ひたすら自分の言葉で翻訳していくという作業を実施していました。
ここまで細かくマメにやる人があまりいないようで、相手の言葉をなんとか理解しようとして会話をしようとしているスタンスが、おそらく信頼獲得の初期にすごく役立ったんだろうなと、今でも大切にしています。
なので、半分はスタンスとして自分なりの言葉で言い換える作業は大事なのですが、半分はそれにお付き合いいただいたエンジニアの方にすごく感謝すべきだし、そういうチームでよかったなと思っているところでもあります。
じゃあ今どうやっているのか。「非同期に配慮すること」「逆に同期で話す時は同じものを見ること」、あとは「特に意見が出ない時とかに、どんなことを意識しているか」という3つをお伝えできればなと思っています。
非同期に配慮するのは当たり前のことではありますが、各会議体を主催することが多い場合、ゴール、決定事項、用件、前提、論点などを事前に準備しておくことで、短い時間できちんと目的達成ができます。ひたすらアジェンダを書くアジェンダおじさんになりつつ、その場にいない人、もしくは時を越えて過去を見返した時に「こういう意思決定をしたね」とわかるように、日々運用をしています。
逆に同期で話す時は、確実に同じ画面を共有しながらやっています。特にフルリモートなので、一緒にいる人がフルリモートでも、現場にいる人でも、基本的には全員Zoomに入ってやるようにしています。
意見が割れるような気が重い会議が僕にもあるのですが、そんな時ほどきちんとオープンな場でメリデメ(メリット・デメリット)を整理して、意思決定をする。もしくは意思決定までいかなかったら、できなかったことと次に話す場を設ける約束をして終わる、ということを意識しています。
やはりどうしても、非同期のコミュニケーションだと殺伐としてしまったりするのですが、そこまでの他意がなかったり、ニュアンスがわからないという時もあったり、あとはちょっと違う話に発展してしまうこともあったりするので、同じものを見つつ、同期でドキュメントを書きながらやっていくことが非常に大事かなと思っています。
先ほどのように同じものを見ながら意見がたくさん出てくればいいのですが、逆のパターンで、お通夜みたいにシーンとなってしまうシーンもあります。
その時はひたすら発言するハードルを下げるというのが大事かなと思っています。「意見をください」と言うと、なにかいいことを言わなきゃいけないんじゃないかと思ってしまったりするので、まず「感想でもいいので、コメントを〇〇さんいただいていいですか」と指名してみたり、フワッと投げてみたり。
指名した時は絶対に回収まで責任を持ち、「ちょっと難しいことを聞いちゃったので、僕だったらこういうふうに思うんですけど、これって賛成ですか」みたいな言い直しをして逆に振ってみたり、別の方を指名したりというふうにしています。
あと、今日も非常にワイワイと盛り上がっていそうですが、Zoomのチャット欄はフル活用できるかなと思っています。
意見が出なそうな時に、僕の中だと1番A案、2番B案、3番、それ以外みたいなかたちで、「1、2、3のどれかでもいいので、1回コメントをください」と言うと、意外と投稿が楽になったりします。その出てきた意見をもとに、「2番の人がちょっと少ないですが、これはなぜか教えてもらってもいいですか」というかたちで話を振ることはできるかなと思っています。
あとは、言い回しの引き出しを増やしておくというのは、かなり稚拙ですが、やはりなんだかんだ盛り上がるのは内輪ネタだと思っているので、前の会議で出たおもしろかったこととか、誰々さんの趣味とかを、なにかを表現する時にちょっと当ててみたり。お戯れぶりをすることが、なんだかんだ会議自体が活性化しているんじゃないかなということで、言い回しの引き出しを増やしておくというのをやっています。
チームビルディングというか、心理的安全性という言葉も流行っていますが、大前提としてそれは大事だと思っているので、弊社ではtimesを積極的に活用して、日常的な投稿から仕事の悩みなど、全員のものに目を通しながら、絡めそうなものは絡めるということをしています。
月1の1on1で、僕は絶対に「ポジティブニュース3つ」から聞くのですが、そういったプライベートでパーソナリティに関わるような情報を共有してもらったり。
あとは「野良飲み」という名前を付けているのですが、ビジネスチームを含めた飲みの場もセッティングしつつ、言いやすい空気を作ろうと努力をしています。
まとめです。信頼獲得編は、やはり土台が大事だと思うので、相手に興味を持ちつつ、まずわからないことはわからないと伝えましょう。ただし、その時に自分なりの言葉にして仮説ベースで話す努力は、けっこう言われる側には伝わるものなので、そこは絶やさないようにしたいなと思っています。
逆に意見が割れた時ほど、オープンな場でブラックボックスにしない、きちんとドキュメントを作るというところを意識しています。
意見を引き出す時は、とにかく発言のハードルを下げて、チャットを使ったり、言い回しを工夫したり、指名をしたり、軽くなるようなかたちでやっています。
あとはもう本当にコミュニケーションが大前提になりますが、相手に関心を持って、インプットを絶やさず、語彙を増やす。そういうことで最終的に明るく信頼獲得ができて、いいミーティングにもなるし、いいチーム運営にもなるんじゃないかなと思っております。
以上です。ご清聴、ありがとうございました。
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