2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
プロダクトチームをリードする人材育成(全1記事)
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Ken Wakamatsu氏(以下、Wakamatsu):CPO協会のためにお時間をいただき、ありがとうございます。自己紹介をお願いします。
マーカス・トーレス氏(以下、マーカス):マーカス・トーレスと申します。ServiceNow(ServiceNow, Inc)で副社長兼プラットフォーム製品管理担当GMをしています。また、「IntegrationHub」のビジネスの責任者も務めています。
Wakamatsu:ServiceNowのような規模の会社では、アイデアやリクエストがものすごく多いと思います。どのようにアイデアをトリアージして優先順位を付け、次に何に注力すべきかを考えますか?
マーカス:すべてのプロダクトの根底には、私が本当に大事にしている原則があると思っています。それは、顧客を大切にすれば、顧客もあなたを大切にしてくれるということです。そうすれば、顧客はプロダクトを使い、あなたのビジネスは繁栄します。その原則に集中するだけで、市場、顧客、開発者などと公正な価値交換を続けられます。それがプロダクトマネジメントの極意です。
本を読めば、優先順位付けのフレームワークやビジネスモデルを学べますが、それらのさまざまなデータをすべて取り込み、優先順位を付け、市場を刺激し、顧客に価値をもたらすようなロードマップを提供することが重要です。私は、多くの要望に対してアプローチすることを心掛けています。
それがビジネスをサポートするための機能を求める社内のチームであれ、あるいは顧客の声であれ、顧客に根付かせることができれば、少なくとも同じ方向を向くことができます。
Wakamatsu:非常に大きなチームを管理していると思いますが、チームとの連携や評価、成長の手助けについてなにかアドバイスをいただけますか?
マーカス:チームは人で構成されており、みんな個人であり個人主義です。ある人は他の人とは違うモチベーションを持っています。私は、チーム全員が共通の目的を持つことが、適切な文化やチーム環境を生み出すと感じています。
ミッションやビジョンがなんであれ、それぞれのチームで共有し、調整していくことで、全員が目的意識を持って行動する文化が生まれます。
この規模の組織を率いる上では、全員に適切な指示、適切なコーチング、適切なメンターシップを提供することが重要だと思っています。ビジョンや目的を越えて、組織内のすべての人のさまざまな視点に耳を傾け、自分のキャリアや担当するプロダクトをどのように発展させていくのかを考えることが大切だと思います。
大規模なチームを持つことの良い点の1つは、多様な視点を持てることです。私は常にチームに共通して「チャレンジしてください」と伝えています。私の思い込みを疑い、私の意見に反対する。恨みっこはなしです。
シニアリーダーに逆らうことには恐怖があると思います。組織では、挑戦するのが安全なだけではなく、敬意を払って行う限り奨励される場所にしたいと思っています。全員がチームであることに変わりはないし、私がやろうとしていることでもあります。
Wakamatsu:最初におっしゃっていた「文化」の話に戻りたいと思います。その文化を築くためにどのようなことをしていますか? いくつかを紹介していただけますか?
マーカス:私が心掛けていることの1つは、「2つの異なる視点でアプローチする」です。今年のビジョン、目標、優先事項を話し合う時には、個々の貢献がどのようにしてそれに結びつくのか、そして私たち全員がこの大きなミッションの一部であるということを確認しています。これは非常にプロセス中心のアプローチです。
第2のポイントは、「自分自身、自分のチーム、そして組織内の誰もがどんな会話にも対応でき、オープンで安全だと感じられるようにすること」です。私は「なんでも質問タイム」というのをやっていて、30分ほどの時間帯に人が集まってきます。ただスポーツの話をしたり、ビールやお酒、料理の話をすることもあります(笑)。
また、彼らが影響を受けていることや、彼らがどのように感じているかなど、組織への帰属意識について話すこともあります。時間を作ってなんでも相談できるという信頼感を持たせることが、文化の一部だと思います。これは組織全体で文化的に推進しようとしていることです。
私たちのチームには困難な時期もありましたが、お互いに心を開くことができたからこそ乗り越えることができたのだと思います。それこそが人にとっても組織にとっても生産的な文化だと思うのです。
Wakamatsu:多様性のあるチームを作るために、どのようなことをしていますか?
マーカス:技術や企業におけるダイバーシティを考えると、10年前かそれ以上前にダイバーシティの意味を進化させるための波がありました。ダイバーシティの根底にあったのは、「技術者の中に女性がいること」と「より多くの女性が技術者に含まれるようになること」でした。しかし本当の意味で、多様な文化、チームを作るために必要なのは、思考の多様性、経験の多様性、そして自分以外の視点への共感です。
なぜなら、想像し得る限りの多様性を備えたチームを作ることができても、そのチームのメンバーが視点をオープンにし、聞くだけでなく、相手の視点に共感しようとしないのであれば、多様性が組織にもたらすメリットを実際に得ることはできないからです。
私の組織では、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を適用して、さまざまな背景を持つ人たちをチームに加える方法を探しました。ある人は、アイビーリーグの学校には行っていないかもしれませんが、良い仕事をしてきたかもしれません。多様性をもたらすさまざまなシナリオがあることを認識すべきです。それは、私たちにとって本当に役に立っていると思います。
Wakamatsu:多様なチームがあることで、より良いプロダクトを作れる具体的な例はありますか?
マーカス:プロダクトマネージャーは「80:20の法則」のように、80パーセントはその機能に優先順位を付け、それを実行しようとします。それは間違いではありませんが、多様なケースや例外的なケースを想定して構築すれば、大多数をカバーすることができます。例外を管理できるプロダクトを設計・構築すれば、ルールも管理できるようになります。これは私のプロダクト思考の中で進化していったものです。
それから、ローコードプラットフォームやノーコードツールについて話す時、私がチームに言っている1つのルールとして、「私の9歳の子どもがこれをできるようにしてほしい」というものがあります。
私の9歳の子どもは、企業におけるローコード・アプリケーション・プラットフォームのターゲット市場には入っていませんが、もし彼女ができるのであれば、企業の幅広い層がもっとうまくできるはずです。
Wakamatsu:プロダクトマネージャーにはどのような資質を求めていますか?
マーカス:良い質問でもあり、難しい質問でもありますね。プロダクトマネジメントは誰もが望む……少なくとも人々が望む新しくホットな職種ですが、それには理由があります。人々が時間と労力、そして人生の大部分を費やして仕事に就く時、自分がやっていることにオーナーシップを感じたいと思うものです。プロダクトマネジメントは「これは自分のものだ」と実感できる素晴らしい分野です。
その結果、プロダクトマネジメントを志す人が急増しています。私が知る限り、MBAを取得している人で、プロダクトマネージャーになりたいと思っている人は非常に多いです。エンジニアたちはただ作るだけでは飽き足らず、「何を作るか自分で決めたい」と言い、プロダクトマネージャーになります。
彼らはさまざまな種類の部門、役割、機能からプロダクトマネジメントを見ています。そこにはさまざまな種類の責任があります。プロダクトマネージャーとして採用する人材に関して言えば、プロダクト・マインドセットを持っているかどうかがあるでしょう。
それを体現している話をしましょう。カリフォルニア州サンディエゴのハードロック・ホテルのスイートルームに宿泊した時のことです。部屋は美しく、豪華なバスルームがありました。(しかし)バスルームのシンクでは水の出し方がわかりませんでした。それはちょうど棒のような形をした逆さのロリポップのようなものでした。
温かいのはどっちなのか、冷たいのはどっちなのか……「うーん」という感じでした。どちらにすると水圧が強くなるのか。文字どおり360度回転するだけで、なんの印もありません。その瞬間、私は自分がプロダクト・パーソンだと思いました。なぜなら人が使いこなせないものを部屋に入れられないと思ったからです。おかしなことにぴったり真ん中に合わせないと、一晩中水滴が垂れてきて気が狂いそうでした。
携帯電話のアプリケーション、企業のソフトウェア、入口のドアなどにおいて、これはプロダクト・マインドセットを持っている人がプロダクトを見る場合によくあることです。プロダクト・マインドセットを持って物理的な世界を見ると、世界の見え方が変わってきます。あれは何だ、それは何を達成しようとしているのか、その製品の目的は何か。それは仕事をしているのか。仕事をしていないのであれば、どうすればもっとよくなるのか。
実際にこれを面接するすべての人に尋ねています。「世の中にある物理的な製品を教えてください。製品の観点から、それが好きか嫌いか教えてください」。答えを聞いたあとに、私は「では、あなたならどうやってそれを改善するか教えてください」と聞きます。
これは私がよくする質問です。製品に対する考え方を持っているのか、それとも製品(管理)はちょっとしたものだと考えているのかどうかを理解するのに役立ちます。(プロダクトマネージャーは)本当にクールでかっこいい仕事だと思います。正しく製品について考えてくれる人に来てほしいものです。
Wakamatsu:もし、あなたがプロダクトマネジメントに興味がありながら、まだプロダクトマネージャーではなかったとします。先ほどお話しされていた、ハードロック・ホテルの蛇口など、ビジネスニーズやゴールと、エンジニアリングやデザインのバランスをどのように考え始めたらいいのかという点で、何か良い原則がありますか?
マーカス:自分がよく知っている製品、自分が情熱を注げる製品を選び、何を変えるか、何を直すか、どうするか、プロダクトマネージャーとしてリズムを確認していきます。
そのあとはそれに賛同してくれる人たちを集めるのです。それは友人かもしれないし、同僚かもしれない、エンジニアリングチームかもしれません。
日常生活の中で、私たちは「もっと効率的にできるのでは」とか、「ツールやアプリや製品があれば本当に助かる」と思います。実際にこのようなことは、さまざまな分野でさまざまな人によって行われてきました。
しかし、それをした途端、「製品をとても複雑にしてしまった」と気づくんです。結果的に、市場性の観点から誰も欲しがらないようなものになったりします。あるいは、「自分たち自身があまり楽しんでいない」と気づいたりもするでしょう。だからこそ、私は自分が情熱を傾けられる身近なものを選ぶようにしています。
何かに情熱を傾ける時、プロダクトマネージャーとして、時にはとても難しい決断をしなければならないこともあります。そしてその決断は、理想のプロダクトを傷つけることになります。なにかに熱中している人の中には「このままではいけない」と思う人もいるでしょう。これではダメだ、こういうことをしなければならない。
最終的にプロダクトラインを効果的に管理できるかどうか、それを見極めるのが始まりだと思います。必要なスキルの第一は優先順位を付けなければならないことで、時には非情になることもありますが、しなければならないことなのです。
Wakamatsu:プロダクトマネジメントの仕事に興味を持っている人へのアドバイスはありますか?
マーカス:プロダクトに顧客を集中させるのは、マーケティングでもマネタイズでもありません。多くの人が大学院や経営学修士課程からプロダクトマネジメントの世界に入り、すぐに「10億ドルを稼ぎたい」と言い出すのですが、本当に顧客のニーズにフォーカスしているのでしょうか? 顧客のニーズに応えているのでしょうか?
そこから先は、エンジニアリングとのパートナーシップ、デザインとのパートナーシップ、そして組織内の市場参入部門とのパートナーシップによって、コンセプトを実現し、顧客のニーズに応え、それを市場に送り出し、自社が成長し続けることができるようにすることが重要です。
プロダクトマネジメントには多様な役割がありますが、常に顧客のニーズや、なぜその製品を作るのかという大前提に根ざしていなければなりません。そしてそれを実現するために、さまざまな組織を横断して仕事をするスキルを身につけていくのです。
Wakamatsu:日本のエンジニアから「プロダクトマネージャーに何を期待すればいいのか」「プロダクトマネージャーとうまく仕事をするにはどうしたらいいのか」という質問をよくされます。
マーカス:プロダクトマネージャーがエンジニアリングチームに与えるべきことは、「自分たちが作っているものは何か」「その結果は何か」を明確にすることです。「何か」と「なぜ」です。私はかつてエンジニアだったので、常にHowに潜っていました。「どうやって作っていくのか、どのように設計するのか、これをした場合はどうなるのか」。これらはプロダクトマネジメントの役割ではありません。
プロダクトマネジメントの役割は、「なぜこれを作るのか」「その理由を満たすためには何を作らなければならないのか」です。それができれば、エンジニアリングが何をどのように構築するかが明確になり、顧客の成果を確実に達成できます。
この質問に少し付け加えて答えると、エンジニアの場合、プロダクトをプロジェクトマネジメントとして見ることがあります。
「私が必要としているドキュメントをすべて記入しましたか?」と聞くのがプロダクトマネージャーの価値ではありません。プロダクトマネージャーの価値は、市場でのリサーチを行い、デザイナーと協力してユーザーエクスペリエンスが正しいかどうかを確認した上で顧客と会話をして、プロダクトの修正点を把握することです。それが価値です。PM(PdM)がインサイトで伝えていることなのかどうかを確認してください。
プロダクトマネージャーがエンジニアリングチームに理由も知らせずに「これをやってくれ」と言っても成功はしません。プロダクトが何であるかをエンジニアが俊敏に把握できません。プロダクトは時代とともに進化していきます。成長し、変化し、モーフィングしていくのです。時には逆行することもあります。
エンジニアやデザイナーなど、チーム全体に「何を解決しようとしているのか」という目的を説明しなければ、それはできません。それがプロダクトマネジメントの役割であり、エンジニアリングやプロダクト全般に対する役割でもあると思います。
Wakamatsu:デザインの話をしたいと思います。デザイナーがプロダクトマネージャーと仕事をする時、両者はどのように相互作用するのでしょうか?
マーカス:私自身のデザインの経験が、時間とともに進化してきました。私がデザインの仕事を始めた頃は、デザインといえば「美しく見せること」でした。しかし、それはデザインの機能ではありません。
ユーザーエクスペリエンスとは、この製品がどのような流れで使われるかを理解することです。最初から最後まで、誰がどうやってこの製品を消費して、この製品を使い、この製品を愛するのか。
その中に、デザインの美しさとシンプルさがあります。見た目はもちろんのこと、流れもです。さまざまなプロダクトの中で、ユーザーを実際に案内している流れはなによりも大切です。旅に連れて行くのであれば、課題や障壁のあるデコボコした道にはしたくないものです。シームレスな体験をしてもらいたい。
デザイナーは、デザインそのものだけではなく、旅を自分のものにして、その途中で人々にインスピレーションを与えながら旅を続けることが大切だと思います。
すべてのプロダクトに共通して起こる最大の問題は消耗です。使うようになって、そのあと使わなくなる。使い始めたものの、何度も使い続けることはない。
プロダクトマネージャーが最終的にデザインとプロダクトを横断するチームとして理解し、活動する上では、この完全な旅と、旅の繰り返しを理解して受け入れることが本当に重要です。
Wakamatsu:経験と知恵を共有していただき、ありがとうございます。近いうちに直接お会いできるといいですね。
マーカス:ぜひお会いしたいですね。
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