2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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やまげん氏(以下、やまげん):せっかくなので、2020年にスペースマーケットさんのCTOになってから、どういったことにチャレンジしているとか、なってからどう変化してきたかとか、CTOの頭の中みたいなところもどんどん聞けたらなと思います。
(齋藤さんの)noteも読んで、最初の「こういった挑戦をしたいです」という(内容のものを)2020年ぐらいから、1年後もまた記事を上げているのかなと思うんですけれど。就任当初と今って、狙っていたかたちになっていたのか、それとも違った変化をしていったのか、なにかありますか?
齋藤哲氏(以下、齋藤):まったくではありませんが、やはり狙っていたかたちにはなってはいないです。記事に書いているところでいうと、基盤の移行とか、開発環境の課題の解決とか。開発環境のDXをどんどんよくしていくみたいなところとか。あとは、データ分析を活かしたユーザーの方へのアプローチというか、新しいTypeScriptみたいなところは当初から考えてはいました。
しかし、いざ実際に自分で推進しようとしてみると、DX改善と言っても、なかなか課題はいっぱいあったなあと振り返って思っていて。今もまだ、正直解決している途中ではあります。
ただ、データ分析については、2022年にデータを利活用したプロダクトサービスの提供みたいなところはどんどん進めていきたいなと思っています。そこに向けたデータ基盤みたいなところを、2022年1Q(1〜3月)は開発していました。
やまげん:そうなんですね。
やまげん:では今はそれを開発している最中ということですか?
齋藤:そうですね。もうそろそろ基盤はできあがるので、そのことで得たデータや知見を基に、バズワードみたいですごく嫌ですが、「AIを活用したプロダクト」みたいなところを提供できればと思っています。
やまげん:なるほど。そういったものの機能リリースは、数ヶ月でできそうなんですか?
齋藤:そうですね。第1弾は、まだまだデータ分析の精度をどんどん上げていきたいとも思っています。最初は利用者の体験に合わせた軸で、「こういうスペースどうですか?」みたいなものをまとめたリスティングを提供していますが、そこのセグメンテーションの精度を、まずはデータ分析を使って上げていきたいというのがとっかかりではあります。
ただ、最終的には、今はどのプラットフォームもだいたいそうかもしれませんが、やはりサイトとかアプリを使って、自分に合うところを徐々に検索して絞り込んでいくみたいな流れになっていると思います。最終的にはサイトとかアプリを使ってもらったら、自分に最適なスペースを勝手に提案してもらえるようなところを目指しています。
やまげん:うわあ、すげえ。やはりそういうのをやってみたいですよね。Voicyも最適な音声をパッとレコメンドできたらいいよなあと思いながら、今けっこう四苦八苦しているところではあったりします。
齋藤:ああ、いいですね。
やまげん:これも言える範囲でいいのですが、どういったデータを実際に活用されているんですか?
齋藤:エンジニアの方やったらたぶんわかると思うのですが、データベースに眠っているデータって、構造化されているデータと非構造化されているデータがあるんですね。
要は、生のテキストであったり画像であったりみたいなところです。そういったものの中に、実は利用の実態に合った、より最適なキーワードが眠っているなと思っていて。まずそこを掘り起こして、構造化できるようなところを考えています。それだけで、例えば弊社はスペースを扱っているので、スペースでできることにつながっていくのかなとは思うんですけれど。
そこからできることの、ある一定のクラスタリングみたいなことができれば、利用実績と合わせて弊社のレビューなどもゲスト、ホストの方にしてもらっているかたちなので。弊社で定義している利用目的を掘り下げた使い方みたいなところが眠っているので、そういったところと、より精緻な紐づけができるようになるかなと思っています。
やまげん:なるほど。でも確かに。
齋藤:Voicyもあるんじゃないですか? 音声データをどんどん構造化すれば、より最適なマッチングにもっていけるみたいな。
やまげん:やれると頭の中では思っていますが、音声で難しいのは、データがたまりづらいところにあるかなと思っていて。YouTubeだったりの動画のプラットフォームだと、ユーザーが選んで捨てて選んで捨ててみたいなデータがたまりやすかったりしますが、ザッピング、音声を探す行為自体が、Voicyのような音声コンテンツは難しかったりするので。
そもそも、「その人がこれを好き、こういう人がこういったコンテンツが好き」みたいなデータがたまりづらいところはあったりするのと、あとは「この人が好き」とか、そういうコンテキストがけっこう強く出ているサービスだったりもするので、行動のログからそこが出なかったりはありますね。
齋藤:じゃあ、いわゆるAmazonのレコメンデーションみたいなのも難しかったりするんですか?
やまげん:一応今トップページで出しているものとかは、Amazonと同じアルゴリズムを使って出しています。協調フィルタリングで。
齋藤:では、音声データまでは踏み込んでいないけれど、もうすでに運用というか、みなさまのつながりを基に最適化しているところではあるということですね。
やまげん:そうですね。そういったところの挑戦はしています。あと、「どの人がどのくらいまで音声を聞いたか」とかのデータも含めて作っていたりします。
あと、放送の内容を、文字で距離を測って、そこを協調フィルタリングのアルゴリズムに加えたり。細かいことはいろいろやっていたりはするんですが。
齋藤:それは技術的にはおもしろそうですね(笑)。
やまげん:(笑)。けっこう難しいところではありますね。
齋藤:うん、なるほど。
やまげん:でもスペマ(スペースマーケット)さんのレコメンドを考えると、なかなかその人の状況を理解するのは難しそうだというイメージがあります。それこそ協調フィルタリングとかは、ちょっと合わないアルゴリズムなのかなとも思うんですけれど。
齋藤:そうですね。とはいえ実は、弊社のレコメンドも協調フィルタリングを使っていたりするんですけど(笑)。
やまげん:ああ、なるほど。
齋藤:ただ、先ほど言ったとおり、利用者一人ひとりの軸をもうちょっと見極めたいなと思っていて。そういった意味では、データを構造化して、分析して、違う軸でまた提案してあげたいなとは思っています。
やまげん:では、今はそこの分析を深めていって、知るところに挑戦している段階なんですね。
齋藤:そうですね。みんなワクワクして取り組んでいます(笑)。
やまげん:(笑)。
やまげん:そういったサイエンスのチームみたいなところも組織にあるんですか?
齋藤:はい。2022年に徐々に形成していって、実際に2Q(4〜6月)からしっかりとチームとして発足してるような状況です。
もともとデータアナリストの方はいましたが、データエンジニアみたいな、データをパイプラインを組んでどういうふうに分析していけばいいみたいなところを組む専門のエンジニアがいなかったんです。でも、1人、そういったことに興味がある方がもともといて。
2020年ぐらいにジョインしていただいた方が、そこに対する知識、興味があって、そこから実際に進めることができたのは、非常に運がよかったなと。
やまげん:社内でも手を挙げて「やってみたいです」「じゃあやってみようか」みたいな雰囲気で進み始めたプロジェクトなんですか?
齋藤:そうですね。(その方が)興味を持っていたので、「じゃあぜひやってみましょう」とお願いしました。
やまげん:すごくいいですね。チャレンジを推進するというか、そういった雰囲気とかはすごく素敵だなあと思うんですけど。実際、全体だとエンジニア開発組織って何人ぐらいになっているんですか?
齋藤:今は20名と少しぐらいいます。モバイルが4名で、もう1人入社予定の方がいます。フロントエンド、バックエンドがだいたい8名ぐらいかな。あとSREが2名みたいな感じですね。
やまげん:じゃあ今はモバイルとか、バックエンドとか、チームで分かれて開発を進めていくようなかたちなんですか?
齋藤:実際にプロダクト開発をする時って、やはりエンジニアだけではなくて、デザイナーやプロダクトマネージャーなど、みんなで協力しながら作っていくことが多いと思うので、その横串のチームみたいなものを組んでやっていました。
やまげん:じゃあ、チーム内にモバイルの人とバックエンドの人とみたいなかたちでいて、開発がそのチームだけで完結するという。
齋藤:そうですね。何をやるかの企画は、別にプロダクトマネージャーじゃなくても、カスタマーサービスの方でもマーケティングの方でも、もしくはエンジニアでも企画はぜんぜん出してもらっていいです。
CXOのレイヤーとか部長のレイヤーで決めた企画の優先度を決めて、「じゃあやりましょう」となった後は、「チームでどうやって進めていきましょうね」とか「要件を固めていきましょう」みたいなところは自由にやってもらえるかたちで考えています。
やまげん:なかなか裁量があるというか、開発が楽しそうな雰囲気がありますね。
齋藤:そうですね。やはりエンジニアだけではないんですけれど、「自分たちで事業成長をけん引していっているんだ」という思いを持ってほしいなと思っているのと、実際にそういったところにも携わっていくことで、意識も変わっていくと思って。そこはまず大事にしたいなと思っているところの1つです。
やまげん:とはいえ、エンジニアの人がビジネスを理解して企画をするって、(そもそも)提案も生まれづらいのかなと思ったりするんですが、そういった提案も現場のエンジニアからはどんどん出てくるんですか?
齋藤:ビジネスを意識するのは、お話されたとおり難しいかなとは思います。例えば「こういう新しいテクノロジーがあるよ」みたいな観点から、「じゃあこういった機能に活かせないか」みたいなところでは、エンジニア発信の企画があったりします。
先ほどのお話の小さいところではありますが、検索の質問で、駅からの近さで検索するみたいなものは、以前のアーキテクチャだとちょっと難しいところがありました。しかし、新しいアーキテクチャのバックグランドに変えて、そこの機能をちゃんと使えば、パフォーマンスは保った上でできるみたいなところを検証してもらって、実際にプロダクトに取り込んだ例がわかりやすいかなと思います。
やまげん:いやあ、いいですね。とても素敵な例というか。そういった働き方をしたいエンジニアの方って、すごく増えているのかなと思っていたりはするので。自分で提案して実装するみたいなところを一方通行でできるというのは、すごくいい雰囲気の開発組織なんですね。
齋藤:ありがとうございます。そう言っていただけて幸いです。
やまげん:今後、開発組織をどうしていきたいというか、どう成長させていきたいみたいなところはありますか?
齋藤:そうですね。運営方針として、自律的イノベーションみたいなものを掲げています。エンジニア一人ひとり、エンジニアだけじゃなくてもそうですが、一人ひとりがご自身の知見や成長飛躍を持ってもらって、どういうふうにプロダクトや事業をよくしていくのかみたいなところに取り組んでほしいなとは思っています。
そこを阻害するような環境は作ってはいけないと思っているので、そこを下支えするような開発環境や働き方、チームの組成は意識的に改善していきたいなというのは1つあります。
もちろん事業をどんどん成長させるという観点で、組織をどうやってスケールさせるかはもちろんありますが、ベースは今考えているようなところですね。
やまげん:では、今後は開発組織からもどんどん企画が出てきて、事業を推進できるようなテックカンパニーみたいなかたちをより目指していく感じですかね。
齋藤:そうですね。テックミッションを今考えています。テクノロジーで当たり前をアップデートしていくみたいなところですね。
先ほど会社のスペースシェアを当たり前にするというお話をしましたが、「そこをどんどんアップデートしていくのはテクノロジーだよ」ということを今考えていて。そこの発想がどんどん生まれてくるような組織を目指せればと思っています。
やまげん:いやあ、いいですね。やはり僕もテクノロジーは未来を大きく変えるんだという気持ちを信じてやっているところはありますから。齋藤さんもそうだということですよね。
齋藤:そうです。
齋藤:記事にも書きましたが、僕は人生が終わるまでにテクノロジーで世の中を変えたいと思っています。
インターネットの出現とか、その後のインターネットを通じたサービスの提供みたいなところが僕にとってはすごく大きな影響やったんですね。先ほどお話しましたが、もともとコンピューターに触れたのがPC-98という(笑)。
当初のハードディスクなんか、40メガしかなくて、Windowsみたいなのもなかったので。そういったところから比べると、インフォメーションテクノロジーってすげえ進化しているなって。この時は学生でしたが、すごく思って。
さらに、社会の考え方の広がりもあったのかなと。そういったものがない時って、ローカルのコミュニティが当たり前だったなと思っています。
インターネットができて、いろいろなコミュニティに気軽にタッチできるようになって、その後、SNSの登場もあって、さらに加速しているのかなとは思います。その多種多様性みたいなのを知ることができて、そのトップを走っている人たちはどういうことをやっているのかも朧げながら見えてきて、そこを目指したいなと学生時代にぼんやりと思っていました。
そういった“この世の中の変革”みたいなものを体験して。では、スペースマーケットのテクノロジーを活用して、どうやってみなさんの生活をよりよく変えていけるのかなというところは、今後取り組んでいく命題かなと考えています。
やまげん:いやあ、そうですよね。僕ももうテクノロジーは未来しかないというか、音声とテクノロジーに共感してVoicyに入っているところはあって。五感をテクノロジーでハックしたいとか、新たなそんな気持ちもあります。
(次回に続く)
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