2024.10.10
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粕谷大輔氏(以下、粕谷):ではお時間になりましたので、「だいくしーのスクラムBar #5」を始めていこうと思います。よろしくお願いしまーす。
藤井善隆氏(以下、藤井):お願いしまーす。
粕谷:スクラムBarは、ブラッと立ち寄ってスクラムについてよもやま話をみんなで仲良くワイワイ話す、本当にバーのような雰囲気を目指しています。
Chatworkのことを知ってもらって、僕らの採用とかに興味を持ってもらえればなとは思っているのですが、そういう話はちょっと脇に置きつつ、スクラムや開発手法についてなんでも気軽に相談し合って、ワイワイ話す場にしたいなと思います。
ゆくゆくは「リアル店舗でしたいね」なんて言っていて、そのうちどこかバーを借りてやったりしたいなぁと思ったりもしています。
今日の前半は、僕から少しスクラムマスターのキャリアについてお話をして、後半は同じテーマでLAPRAS株式会社の遠藤さんをゲストにお招きして、お話をうかがっていければと思っています。
スクラムBarの店主は私、粕谷です。「だいくしー」といいます。Chatworkでエンジニアリングマネージャーをしています。
店主が酒を飲んでいるのもおかしい話ですが、バーっぽい要素を出すために、今夜いただいているお酒を紹介します。今日は、暑いのでスカッとサッポロクラシックをいただいています。
これ実は北海道でしか売っていないんですよね。地元のスーパーで北海道物産店をやっていたので僕はそこで買いました。意外と北海道に行かないと飲めなくて、まあまあレアなお酒だったりするらしいです。はい、いただきます。
粕谷:いつもおなじみの常連客がすでにカウンターの隅っこに座っておりまして……じゃあ常連の藤井さん、お願いします。
藤井:Chatworkの藤井と申します。今はプロダクトオーナーをやっています。最近登った山は槍ヶ岳という山で、山を始めた人がたぶん最初に憧れる山だと思いますが、登山を始めて4年目にして初めて登ってきました。
粕谷:すごい。
藤井:今日いただいているお酒は、六甲山ピュアモルトウイスキーです。前回もこれを飲んでいましたが、まだ飲み切っていないので、今日久しぶりに開けて飲んでいます。おいしいです。
粕谷:槍ヶ岳から帰って以来、藤井さんはなにかにつけて「槍をやりました」っていうダジャレを(笑)。
藤井:そうですねー。
粕谷:1日1回くらい言っている(笑)。
藤井:あはははは、1日1回(笑)、確かに言っているかもしれない。
粕谷:ということで、この2人のレギュラーメンバーでお送りしようと思います。では最初に少し、今日のテーマのスクラムマスターのキャリアについてお話ししようと思っています。
僕もスクラムマスターの採用をオープンにしていて、いろいろな人とカジュアル面談とかをしているんですよ。「なにかご質問ありますか」って聞くと、ほぼ9割キャリアについて聞かれるんですよね。
僕が考えるキャリアでしかないのですが、そのあたりの話をよくしているので、ちょっと簡単にお話ししてみようかなと思います。
粕谷:スクラムマスターのキャリアってけっこう難しいんですよね。スクラムマスターの上位互換はプロダクトオーナー? みたいなことをパッと思いついてしまったりしそうなんですけど。
これはぜんぜん関係ありません。役割がぜんぜん違います。昔でいくと、プログラマーはそのうちマネージャーになるとか、そういう上下関係をなんとなく意識してしまうんですよ。
スクラムマスターの場合は、意外とそういうのがなくて。スクラムマスターが成長してポケモンみたいに名前が変わるということは、あまりないと思っています。
じゃあどういうふうにスクラムマスターのキャリアを考えていけばいいのかというと、やはりスクラムのスキルを軸に置きつつ、パラダイムを追いかけていくという雰囲気になるんだろうなと思っていて。
この質問をされた時に、僕がよく手がかりにしているのは翔泳社さんから出ている『SCRUMMASTER THE BOOK』という本です。原題は『THE GREAT SCRUMMASTER』ですね。
そこに「ScrumMasterWay」という考え方が出てきます。日本語だと「スクラムマスター道」と翻訳されていたりします。「#ScrumMasterWay」と本には書いてあるのですが、これをベースに僕はよくスクラムマスターの成長プランを考えます。
#ScrumMasterWayは3段階のレベルがあると言われていて、レベル1が「私のチーム」、レベル2が「関係性」、レベル3が「システム全体」と定義されています。
それぞれがなにかというと、レベル1は、私たちが一般的にイメージするスクラムマスターの最初の姿です。責任を持って、自己組織化・自己管理化するチームを作って、スクラムの原則をチームにもたらして、ゆくゆくはスクラムマスターがいなくても自律的に動けるチームを目指す。自分のチームにしっかり責任を持って活動するのが、スクラムマスターのレベル1になると思います。
これがレベル2になると、「関係性」になると言われています。チームは基本的にはクロスファンクショナルで、1つのチームで仕事を完結するように作るのですが、とはいえ、やはり会社の中で仕事をしているとチームだけで完結できない部分もあるんですよね。
例えば開発チームの外側にカスタマーの人たちがいたり、セールスの人たちがいたり、ボードメンバーがいたりするかもしれません。顧客やステークホルダーもそうですよね。
そういった外側との関係性みたいなのはやはり切り離せなくて、そこの関係性を整えるのがレベル2のスクラムマスターなのかなと思います。顧客、マーケティング、サポートなど、他のチームとの連携もあるかもしれません。
関係する人々に自己組織化を拡げていって、自分たちのチームの外側に影響力を及ぼして、そこも巻き込んで自己組織化していくぞというのを作っていくのが、レベル2のスクラムマスターです。
レベル3になるとどうなのかというと、これはもうシステム全体です。要は自分が所属しているシステム全部、組織とか社会とか、もっと大きくなると国とか。さらに大きくなると地球、全人類とか。概念としては、無限に拡げていける。まぁシステム全体について影響を及ぼせるようになればいいと。
具体的にはアジャイルのマインドセットを企業レベルに持ち込んで、会社全体をアジャイルマインドで満たしていくみたいな、そういうことができるといいのかもしれません。要は自分が関わっている、自分の影響力が及ぶシステム全体について、影響力を発揮するのがレベル3なのかな、と思ったりもします。
粕谷:図にするとこんな感じで、チーム、関係性、システム全体と外側にどんどん拡げていくんですが、これがすなわちスクラムマスター自身のキャリアになってくると思うんですよ。
チームを見ているのはスクラムマスターですが、例えば関係性を作っていくとか、システム全体とか、どんどん自分の外側の領域に影響力を拡げていく、自分の影響力が及ぶ範囲を拡げることを意識していくと、システム全体に影響力を及ぼしているスクラムマスターは、もはやスクラムマスターと呼ばれていないと思います。
場合によってはCTOかもしれないし、VPoEかもしれないし、違う名前で会社の中で呼ばれているんだと思います。
それがなにかは会社や自分の所属するコンテキストによって異なるかもしれませんが、そうなってくると、キャリアとしては1つ2つステップアップしていると考えることができます。
スクラムマスターのキャリアの中では、関係性を作っていくために本当にいろいろなことを勉強しますよね。スクラムだけに限らず、場合によっては心理学とかコーチングとか、組織作りとかマネージメントとか、いろいろなことを勉強します。そういったスクラムマスターとして学んだスキルをどんどん拡張していきながら、外側外側に影響力を拡げていくと、それがそのままスクラムマスターのキャリアになっていくと思うんですよ。
なので、いつかのタイミングでその人はたぶんスクラムマスターと呼ばれなくなっていると思うのですが、それがスクラムマスターとしてがんばっていこうと思っている人たちが目指す1つのキャリアの方向性なのかなと思っています。
例えばChatworkでスクラムマスターを募集していて、入社した方に「今後社内ではどのようなキャリアがあるんですか」と聞かれた場合、僕はだいたいこういう話をしています。スクラムマスターの名前が変わった先がどうなっているかは僕もまだわかりませんが、イメージはたぶんつきやすいんだろうなと思っています。
僕が今、自分のことをエンジニアリングマネージャーと名乗っているのは、自分はレベル2と3の間ぐらいのスクラムマスターかな? と自己認識をしているからです。そんなふうにキャリアを考えていけるといいのかなと思っています。
これは僕が考えたものですけど、そんなことを前提に置きつつ、今日はゲストの方をお招きして、Chatwork以外の会社も含めて、キャリアのことをいろいろざっくばらんにお話しできればなと思っています。
(次回へつづく)
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