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非連続な環境、変化、プロダクトに対応していくためにPdMが習得するべき7つのシコウ(全1記事)

PdMの育成・成長における「7つのプロダクトシコウ」 熟成途中のジャンルだからこそ必要な“学ぶための心構え”

「プロダクトマネージャーカンファレンス 2021」は、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨することを目的に開催されるイベントです。エムスリー株式会社からは山崎氏が登壇。プロダクトマネージャーの育成・成長のための「7つのプロダクトシコウ」について話します。

山崎氏の自己紹介、エムスリーの紹介

山崎聡氏:全国のプロダクトマネージャー(PdM)およびプロダクトマネジメントファンのみなさま、こんにちは。エムスリー株式会社で、執行役員 VPoE プロダクトマネージャーをやっている山崎聡です。今日は「非連続な環境、変化、プロダクトに対応していくためにPdMが習得するべき7つのシコウ」という話をします。よろしくお願いします。

もともと8歳からプログラミングを始めたエンジニアで、VPoEをやっています。今はアプリのプロダクトマネージャーをメインに、その他のSaaS製品も扱っています。デザイングループも統括し、2020年10月より初代のCDOをやっていましたが、今は2代目に交代したところです。エンジニア、プロダクトマネージャー、QA、デザインのプロダクト職種をすべて統括しています。

エムスリーは、「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」をミッションにしている東証一部上場会社(登壇時点、現 東証プライム上場会社)です。2000年9月に創業し、550名程度でがんばっています。日本の医療従事者に対して「m3.com」というサイトを中心に運営を行っています。

今、日本には32~33万人の臨床医師がいると言われていますが、m3.comはそのうちの9割の30万人以上が会員になっている、日本最大級の医療情報プラットフォームです。医師だけでなく、たくさんの薬剤師や看護師などへの情報提供が中心のサービスです。

医療従事者だけではなく、患者向けのサービスも多数展開しています。最近では「デジスマ診療」というクリニック向けのキャッシュレス決済サービス、クリニックの会計がとても便利になるサービスを開発しています。このメインプロダクトマネージャーも私がやりました。

「エムスリーは医療業界の人がITにチャレンジしているんですか?」と聞かれることがありますが、まったく逆です。IT業界の人が、医療にチャレンジしているような会社です。業績は絶好調で、今は1,690億円の売り上げに対して570億円くらいの利益が出ている、非常に優良な企業だと思っています。インターネット時価総額でも1、2位を争っている会社だと理解してもらえれば幸いです。

プロダクトマネージャーは0から1を生み出す

ここまでは会社の宣伝で、ここからが本題です。今日の「プロダクトマネージャーカンファレンス2021」は、テーマが本当に素晴らしいと思いました。これは、昨今の世界や日本が置かれている環境そのものだと思っています。非連続な環境や非連続な変化、そして非連続なプロダクト。特に医療業界はコロナ禍で本当に様変わりしています。

非連続な環境変化やそれに伴う非連続な組織の成長、さらにそこに現れる非連続なプロダクト。(スライドを示して)こういった環境に適応していくために私が一番重要だと思っているのがこちらです。プロダクトマネージャーの育成や成長がより求められる時代に入っていくのではないかと考えています。

環境の変化、組織の変化、プロダクトの変化に新しいプロダクトや価値観を投入していく。まさに0→1を生み出すプロダクトマネージャーの仕事だと思っています。プロダクトマネージャーは0から1を生み出す。何もないところから新しい価値を生み出す。それに向かっていくためには、プロダクトマネージャーの育成や成長が重要だと考えています。

プロダクトマネージャーの育成・成長のための書籍はたくさん出版されている

そのための素晴らしい書籍が、すでにたくさん出版されています。以前のプロダクトマネージャーカンファレンスで基調講演したマーティ・ケーガンさんの『INSPIRED』。私はえんじ色の第1版から大好きですが、素晴らしい書籍です。これにはプロダクトマーケティングマネージャーとの関係性など、第1版は第2版とは少し違うことが書いてあります。第1版もぜひおすすめします。

最近では『EMPOWERED』、Ordinary People, Extraordinary Products(並外れていない人たちが並外れた成果を出すためにはどうしたらいいか)という素晴らしい議論もあります。

日本からも素晴らしい本が出ています。及川さん(及川卓也氏)、曽根原さん(曽根原春樹氏)、小城さん(小城久美子氏)が書いた『プロダクトマネジメントのすべて』。私も全部読みましたが、たいへん素晴らしい。日本語書籍としてはよくまとまったトップレベルの書籍だと思っています。

ほかに、freeeの宮田さんが書いた『ALL for SaaS』。SaaS立ち上げをイチから順に書いてある、「競合が読んでも大丈夫なのか」と心配するくらいよくできた本で、私や私のチームでも読んで参考にしています。

これらの素晴らしい書籍が出てきたことは、昨今のプロダクトマネジメントの素晴らしい進化です。

書籍から学ぶ時の心構えとしての“プロダクトシコウ”

今日ご提案したいのは、それらを学ぶための心構えです。プロダクトマネージャーを育成・成長させていくための素晴らしい書籍は出ていますが、書籍から学ぶにもスキルが必要なのが、プロダクトマネジメント業界の現状だと思っています。

プロダクトマネジメントはまだ熟成途中のジャンルで、例えばエンジニアリングやデザインと比べても、教育の方法論はまだまだ確立の途中段階にあると思っています。なので、こういった本を読んだとしても、その中から何をどこまで学べるかは、どうしても経験に依存するところが大きい。

書籍から学ぶためにも、心構えとしての“プロダクトシコウ”がすごく重要になるのではないかと考えます。具体的には、“シコウ”の部分がカタカナになっているのがポイントで、これについて説明します。

(スライドを示して)すばり、これが結論です。「プロダクトマネージャーの育成における『7つのシコウ』」は、この①から⑦の7つだと考えられます。こちらは、エムスリーのプロダクトマネージャー陣やプロダクトチームのメンバーと一緒に議論する時にも非常に役立っています。

定期的にこの説明をすることによって、プロダクトマネージャーが何を考えて、どうやってチームを率いているのかを、そのプロダクトマネージャーにもプロダクトチームのメンバーにも理解してもらう。それによって先ほどの本や我々の共同の経験を深く理解したり、振り返りに使ったりできるという概念です。これらを1つずつ説明しながら最後のまとめに向かいます。

7つのプロダクトシコウの詳細

まずは出発点。①から⑦は時系列的にプロダクト開発のプロセスに使えるようになっていますが、①が一番中心となる概念で、考えるということです。

辞書にも「考えること」「思考を巡らせる」とありますが、プロダクトマネージャー育成における意味は、プロダクトや顧客、そしてチームの3つです。それを率先して考えられているか、学べているかというとこだと思います。プロダクトマネージャーが一番考えなければならないという点が重要で、それらを思考していくことが一番の中心になります。

②は指向です。ある方向や目的に向かう、方向性を指し示す指向という意味です。③の志向と迷うかもしれませんが、我々はまずゴールを指し示すことが非常に大事だと思うので、その点でこちらを②に選びました。プロダクトが達成すべきゴールや、チームへのリーダーシップが発揮できているか。自分が指し示して先頭を歩けるかが②です。

③の志向は、先ほど言ったように②と似ています。辞書にも「指向」とも書いてあるとおり、②と③は似通っていますが、私はどちらかというと「高い志」という意味で捉えています。プロダクトマネージャーとして志を持って、それをチームにも伝搬できているか。志を持って伝搬するという2つのセットであることから考えて、まずはゴールを目指し、チームを動かしていく。こちらを③としました。

チームに対して「行くぞ!」と、志を持って医療の問題を解決していく。それをチームに伝搬した上で次の“シコウ”、④の試行が始まります。

これは試しにやってみること、試みること、トライすることです。これは昨今のプロダクト開発で非常に重要だと思っています。リーンやアジャイル、仮説検証などもすべてこの文脈に入ると思います。

プロダクトが顧客の真の課題を解決できるように素早く仮説を検証できているか、そういった試行ができるか、ウォーターフォールになっていないか、決めつけになっていないか。それらも含めて④の試行というプロセスが大事です。

その上で大事なのが⑤の施行、実際に行うことです。我々はアイデアのコンテストをやっているわけではないので、最終的には世の中の困りごとを解決する、顧客の困りごとをうまく解決する。そのためのプロダクトを生み出すまで持っていかなければなりません。そのために「作っていく」ことが非常に大事です。

プロダクトマネージャー育成における意味は、プロダクトを素早く作るための開発プロセスを理解して、チームで実践できているか。ビルドする施行も必要です。エンジニアリングバックグラウンドのプロダクトマネージャーはこういうノウハウを持っていて、それらが活きる分野だと思っています。

その上で⑥の嗜好です。あるものを好み親しむという、嗜好品などのことです。プロダクトマネージャー育成における意味は、顧客から見た場合の意味だと考えています。

プロダクトや、プロダクトチームプロダクトチームに対するファンという意味でもそうです。顧客から愛されているか、そして自分たちも好きか。そのプロダクトが好きだし、それを生み出しているチームが好きなのはよくあるケースだと思うので、昨今のAISAS(Attention、Interest、Search、Action、Share)のような、最後にシェアされて口コミで広がっていくようなプロダクトにとっては、非常に重要だと考えています。

その上で、最後は⑦の至高。この上なく優れているさま、最高ということです。プロダクトマネージャー育成の意味として、プロダクトチームの全員が協力して最高のプロダクトを目指しているか。本当に磨き上がっているかが重要だと考えます。

この①から⑦までのシコウは、そのプロダクト開発プロセスにおいての順番になるようです。これを1つずつ、みんなで話してみる。イベントのあとに、スライドを私のSpeaker Deckに上げるので、みなさんのプロダクトチームでエンジニア、デザイナーを含めて一度これについて話し合ってみると、すごくおもしろい議論ができるのではないかと思っています。

“7つのシコウ”の対角要素

この7つのシコウが中心になりますが、対角要素もおもしろいです。(スライドを示して)例えば、②のプロダクト指向と⑤のプロダクト施行は、バランスを要求される状況です。②の指向は、プロダクトが達成すべきゴールやチームへのリーダーシップを発揮することが大切な一方で、チームメンバーを信頼・尊重してみんなで力を合わせてプロダクトを作り上げていくこともまた大切。

プロダクトマネージャーが「こっちだ!」と言うことも大事ですが、みんなで「こっちだ」と言って作っていくこともまた大事。意見が分かれた時に、どうやってうまくチームをまとめるか。

特に、プロダクトマネージャーの着地の方向性に持っていけるかが非常に重要です。メンバーの「やりたい」という自由に任せて「そっちでもいいよ」と言ってあげたい場面もたくさん出てくると思いますが、最後の最後でプロダクトの売り上げに責任を持つのがプロダクトマネージャーの仕事なので、そこにビシッと指差しできているかがすごく重要です。

(スライドを指して)③(志向)と⑥(嗜好)でも、プロダクトマネージャーとして志を持ってチームとともにそれを伝搬することももちろん大事です。チームで「こう行きたい」と言うことが大事な一方で、顧客が求めるものに寄り添って顧客から愛されるプロダクトを作っていくこともまた大切。バランスが必要です。

(スライドを指して)④(試行)と⑦(至高)でも、プロダクトが顧客の真の課題を解決できるように素早く仮説検証して、どんどん試していくことも大事ですが、プロダクトチーム全員が協力して最高のプロダクトを作っていく、試しながら完璧を目指すという帯域も、またバランスが大事です。

“7つのシコウ”で隣接する三角形

隣接する三角形もおもしろいです。(スライドを示して)①の思考、②の指向、③の志向は、プロダクトチームのチームビルディングに深く関連しています。

同じように①(思考)と③(志向)と④(試行)はペーパープロトタイピングです。とにかく作る前に試して高速でプロセスを回す。「これを作るんだ」というみんなの志を統一するために非常に有効な、スピード感のある考え方です。

①(思考)と④(試行)と⑤(施行)は、まさに試しながらものを作っていくMVP(Minimum Viable Product)開発に相当します。

さらに①(思考)と⑤(施行)と⑥(嗜好)は、作りながらユーザーが本当に求めるものに合わせていく。これはまさにプロダクトマーケットフィットの考え方です。

そのあとで①(思考)と⑥(嗜好)と⑦(至高)は、思考しながらユーザーに合わせて完璧を目指す、グロースハックです。

最後は、①(思考)と⑦(至高)と②(指向)のジャンプ。最高のものから次のステージへ向かう。プロダクトマネージャーが「こっちに行くぞ!」「次はこれだ!」と。「Jump The Next Curve」などと言いますが、次のカーブに当てに行くことも非常に重要です。

プロダクトシコウをインストールすることで育成・成長が効率的になる

まとめます。たくさんの書籍がありますが、『INSPIRED』と『EMPOWERED』は本当に素晴らしい書籍です。その上、日本からも素晴らしい書籍が誕生しています。『プロダクトマネジメントのすべて』の及川さん、曽根原さん、小城さん。さらに宮田さんの『ALL for SaaS』。このような素晴らしい書籍が出ています。

これらの真髄を学ぶための心構えとして、「プロダクトシコウ」をプロダクトマネージャーやプロダクトチームにインストールすることによって、各段に効率的な育成と成長が期待できるのではないかと思っています。

私は、7つのシコウをプロダクトの夢を叶える「ドラゴンボール」と勝手に呼んでいますが、ドラゴンボールを集めて成長していけたらいいと思います。

少し宣伝をさせてください。エムスリーでは「M3 Tech Blog」などでプロダクトチームの奮闘を日々綴っています。Twitterも運用しているので、フォローしてもらえればあらゆる情報が手元に届きます。YouTubeもやっていて、採用情報も届きます。

プロダクト関連の採用職種のページもあります。一緒にやりたい方がいれば、ぜひ「The Power of Medical Innovation Better Life, Better Together」にアクセスしてください。

スペシャルサンクスです。プロダクトシコウをどのように発見したかというと、Google日本語入力で「プロダクトシコウ」と入力したら、「シコウ」がいっぱい出てきたんです。この①から⑦までがそうですが、⑨の歯垢は違う(笑)。メディカルではありますが⑨は少し違うと思いつつ、⑧の施工もなんか違う。⑤と⑧は似ていると思いながら、①から⑦を採用しました。

これらの発見のきっかけになりました。及川さんがGoogle日本語入力のエンジニアリングマネージャーをやっていたと聞きました。いつも素晴らしいプロダクトのお世話になっています。

みなさん、ありがとうございました。

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