2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中邦裕氏:ソフトウェア協会とは何かについてお話したいと思います。昔からこの業界にいる方は、「パソ協(日本パソコンソフトウェア協会)」という協会を知っているかもしれません。孫さんが40年前に立ち上げた協会ですが、当時、ソフトウェアに著作権はなかった。
要するに人権がなかったわけですが、著作権を得て、コピーがだめになって、ソフトウェアは作ったパッケージソフトに関して売れば売るほど儲かるという仕組みを作ったのが、まさしくこのソフトウェア協会の前身のパソ協です。
みなさんに関連が深いところでは、IT健保もこの団体が設立の母体になっています。ほかに「コンピュータソフトウェア著作権協会」という、“コピーはだめ”というキャンペーンをやっている会社も、昔ソフトウェア協会が母体になって始めた団体です。
重要なのは、昔のソフトウェアはハードウェアの添え物だったことです。その頃は“オフコン”や“メインフレーム”や“大型計算機”なんて言われていましたが、ハードウェア(パソコン)を買うとソフトウェア(OSと言われるもの)がついてきました。
でも、1970年代にビル・ゲイツさんがOSだけを作りました。パソコンに付属するものではなく、OSだけを売り始めた。これはなかなか斬新なことです。もともとコンピュータを売ることがメインのビジネスだったのに、ソフトウェアを売るというビジネスが生まれた。
コンピュータは材料を集めて組み立てないといけないのでそれなりに原価もかかりますが、ソフトウェアは作ってしまったら、フロッピーディスクにコピーするだけなので、当時ビル・ゲイツさんは相当無断コピーされたみたいです。「コピーは泥棒みたいなものだ」とワアワア騒いでいたそうですが、著作権という権利はなかったので、非常に苦労したと聞いています。
1980年代には、日本でも「一太郎」やゲームなどがありました。例えば『信長の野望』というパソコンのゲームが不正コピーされた。そもそもコピーしちゃいけないという法的な根拠もなかった。
そんな中、1982年にパソ協ができて、1986年だったと思いますが著作権法の中でソフトウェアの著作権が認められます。当時は「文化庁が所管している文化芸術に対する権利なのに、産業製品に対して著作権を付与するのか」と、かなり喧々囂々とやっていたと聞いていますが、「ソフトウェアはコピーしてはいけないものだ」という法律が作られたわけです。
その後、1990年代は受託開発がすごく膨らんだ時期でもありました。パッケージソフトはもちろん、ソフトウェア協会の設立者でいえば「一太郎」のジャストシステム(株式会社ジャストシステム)、マイクロソフト(日本マイクロソフト株式会社)やコーエーテクモ(株式会社コーエーテクモゲームズ、当時の株式会社コーエー)。
ほかに、「勘定奉行」のOBC(株式会社オービックビジネスコンサルタント)や会計ソフトなどが最初にこの団体を作ったわけですが、とにかくソフトウェアは一つひとつ作るものではなく、1つ作ればたくさんの人が使えるようになる。それを普及させようとしていました。
時を経て、なぜあのクラウド屋の社長がここの会長をやっているのか。みなさんも知っているとおり、ソフトウェアは今までパッケージで流通していましたが、最近はオンラインで流通しています。先ほど話したSaaSやPaaS、IaaSという分野です。
みなさんも「さくら」を使ってくれているかもしれない。AWSやGCPやインフラを使って、その上に自分たちでインフラのソフトウェアを構築して、その上でソフトウェアを開発したり、場合によってはHerokuでもPaaSの上で使っているかもしれません。
いずれにせよ、ソフトウェアはヨドバシカメラやビックカメラで買ってきてインストールするのではなく、ネット経由で使うように変わっているわけです。
ソフトウェアをパッケージで売るのではなく、クラウドでやっていく。会長の私と、副会長のサイボウズの青野さんと、PSC(株式会社ピーエスシー)の鈴木さんがクラウドを提供している側です。
私自身は、デジタル庁ができて、クラウドでこの世の中は大きく変わると思っています。実際、ソフトウェア協会がロビイングをしてどんどん啓蒙した結果、実際にデジタル庁が出来たわけです。
「こういう世界になればいいな」と思うだけではなく、実際に志が同じ人たちと発信し続ければ、いつかは世界に届くということをぜひお伝えしたい。重要なのは、我田引水にならないことです。
いいことを言おうと思っているわけではなく、私は26年経営をしていますが、自分たちの利益を優先すると、周りの人は共感してくれない。1年か2年は儲かるけれど、10年や20年は儲からないことを痛いほど感じてきました。
クラウド化したら便利だし、デジタル化したら便利だし、もちろんデジタル化についてこられない人がいたらそれを助けることも重要。ということで、デジ庁を作りましょう、GIGAスクールをやりましょう、プログラミング教育をもっと強化しましょう。そういうことをずっとこの団体で言い続けて、一つひとつ解決してきたのが今です。
この団体が掲げているのが、将来ソフトウェアに関わるすべての組織(チーム)・人をサポートすること。もちろん健康保険組合もやっていますが、初任給が上がるとか、開発の人がもらえるお金が増えるとか、金銭的なものだけではなく、労働環境がよくなるとか、会社のビジネスモデルが変わって会社が大きく伸びる。最近はそういうことを一緒にやっていきたいと思っています。
背景にあるのは、「やりたいこと」を「できる」に変えるというさくらインターネットの企業理念です。私は学生の時に起業したので本当に何もできない人間でしたが、インターネットのおかげと、熱量をもってやるたくさんの友だちや仲間と出会って、いろいろなことをかなえてきました。
実に「さくら」の中でも、いろいろな人が「これをやりたい」「あれをやりたい」といって、やり始めています。
例えば、ビジコン(ビジネスコンテスト)を始めて新しいことをやりたい人に応募してもらおうとか、スタートアップに「さくら」の社員が出向したり、逆に大手企業の社員が「さくら」に出向してきたり。「さくら」の社内にはSREやインフラの人間がすごく多いので、そんな人たちのおもしろさをもっと世の中に発信する活動もやっています。
これは「さくら」の宣伝というより、「業界がこうなったらいい」というものなのですが、最近では、どの会社も自分たちで開発ができるようになったほうがいいと思っています。例えば何か新しいことをやりたい時、今まではパワポで資料を作っていましたが、最近ではモックをデザインしてそのまま出す。なんなら、ある程度動くものまで開発して持っていったほうがいい。
実際にスタートアップのピッチコンテストを見ていると、ある程度開発した状態で持ってきてくれます。それを考えると、自分たちで作れるようになることがすごく重要だと思っています。
今回はエンジニアの方が多いと思うので、ぜひお伝えしたい。やはり自分たちで何かが作れるのはすごいことだと思います。私自身、「さくらのクラウド」というサービスは、最初自分でコードを書いていました。例えばVMを立ち上げるとか、VMが落ちないように監視するとか、それをUIからコントロールするとか。フロントエンドからバックエンドまで1人でポチポチ開発していたのが12年くらい前です。
社内ではレンタルサーバーやデータセンター全盛の頃で、そういうサービスを作れる人がまだそんなにいなかったので、1番暇だった社長がやろうということでやってました。ただ、自分たちで作れたのでその先すごく発展できたと思う。誰かに言わされて作るのではなく、社員のみなさんと一緒に自分が作りたいものを作れたことが「さくらのクラウド」のすごくいい思い出です。
少しさくらインターネットの宣伝をします。最近では、働きやすさを強化しようとしています。
例えば、リモートが前提なので、今エンジニア以外も含めて社員は1割も出ていません。今話しているのも私の沖縄の家からで、実は那覇市民です。大阪が本社で東京メインにやっていますが、社長は那覇でもやっているという会社です。
ですので、リモートで働く、時短にする、シフトにするといったこともすごく柔軟に対応しています。これは、私がすごく痛い思いをしたからです。ぶっちゃけて言うと、社員は自分の仕事を肩代わりしてくれる、作業してもらう感覚の時期が以前ありました。17~18年前に上場した頃です。そうなると、みんなすぐ辞めていくし、「給料が安いならもう少し上げようか」「いや、そういうのが嫌なんです」と言って辞められたりもしました。
やはり仕事が楽しいことも大事だし、社員自身が大切にされることも重要なので、人事制度を見直さないといけないと思いました。「採用するほうが便利だからちょっと増やそう、変えよう」ではない。やっているうちに、「こういうやり方をしていたら社員に逃げられても仕方ない」と思うようになり、自由に働けるようにしようと「さぶりこ」という制度を始めています。以上が「さくら」の話でした。
(次回に続く)
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