2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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酒井潤氏:今日は、シリコンバレーのプロジェクトマネージャー(PM)で私がけっこう優秀だなと感じる人についてちょっとお話ししようと思います。今回は私が考える「プロジェクトマネージャーとして優秀な人」なので、私の経験談から話します。
よくネットでは「プロジェクトマネージャーとしての5つの必要な条件」といって、例えば社員のモチベーションを考えられて、リーダー的な発言ができる人がいいとか言われるじゃないですか。そういうことはネットで見てもらえればいいので、私が直感的に「この人、優秀だな」と感じる人についてお話ししていこうと思います。
どんな人が優秀かと考えると、ビジネス判断をする時に、あまり私情や相手の気持ちを考えないと言ったらアレですが、それよりも会社の利益となるビジネス判断を合理的にできるような人は、見ていて優秀だなと思うんですよね。
例えば、アメリカの元大統領のトランプさんがイメージしやすいかもしれません。トランプさんって、ほかの人の気持ちや、ほかの国の人の気持ちをあまり考えずに、けっこう強気な発言をバンバンしますよね。でも、やはりアメリカにとって利益になるビジネス判断をしているということなので、アメリカ大統領としても当選して、その後も支援をされているところがあるんですよ。
なので、トランプさんを「しゃべり方や態度が横柄だからあまり好きじゃない」という人はいるかもしれませんが、ビジネス判断においては、けっこう合理的なので、そこを好きな人がアメリカでもけっこういるんですね。
そういうタイプのプロジェクトマネージャーが、会社でも生き残っていくというか、やはり会社の利益を上げていくんですよね。なので、私はそういう人を優秀だなとは思います。ただ、私生活で一緒に過ごしたいかというと、もちろんまたそれは別の問題です。
とにかく合理的な判断をバシバシしていく人は優秀で、その人が会社の利益を上げることによって、その部署で働いている自分の給料もどんどん上がるんですよね。合理的な判断をしないと、やはりアメリカでは生き残っていけないという意味で、そういう人は優秀です。
なので私は、人間的にいいかどうかは置いておいて、そういった判断ができる人はかなり優秀だと思うんですよ。
新入社員などの新人はメチャクチャがんばって仕事をするじゃないですか。でも、どれだけ朝早く来て夜遅く帰っても、パフォーマンスが出なければやはり評価はされないんですよね。プロジェクトマネージャーは、がんばっている様子を見ていても、結果が出ないと評価はしないんですよ。
日本でがんばって残業している新人がいたら、「おお、お前はよくがんばっているな。少ないけどもボーナスを5万ぐらいやるよ」みたいな感じになるかもしれませんが、こっちのプロジェクトマネージャーはそんなところはあまり気にしないですね。
ほかの例をお話しします。システムをモニタリングするテレビが置いてある部屋があって、ある一定の閾値を超えてアラートが鳴ったら、オンコールで対応する人が夜中に起きて対応しなければいけないというケースがありました。
通常の時は、閾値に達するまで緩やかにログインアクセスがあるから別に問題はないけれど、たまたま、その日はDoSアタックみたいな感じでログインのアクセスがメッチャ上がったんですよ。閾値には達しなかったのでアラートは鳴らなかったのですが、やはりちょっと異常だということがあったんですよね。
その時に、かなりやる気がある新人が、「おっ、なんか問題があったんじゃないですか?」「調査をしたほうがいいですよね」とプロジェクトマネージャーに話を持ちかけていたんですよね。
時々ほかのチームがQAのテストでバンバンAPIアクセスをする時にも起きるので、「そういったことをやめてくれ」とほかの部署に言う時もあるのですが、一応ちょっとした異常だったんですよね。
例えば日本のマネージャーだったら、がんばっている新人に対して「おお、よく見つけてくれて、チームのためになりそうなことを提案してくれたね」「だったら、ちょっと君、30分ぐらいそれを調査してみてよ」と、その新人のモチベーションを考えて、そういったことをさせると思うんですよ。
でも、こっちのマネージャーは「そんなのは今やる必要はない」「アラートの閾値までいっていない。そんなことをいちいち気にしていたら自分の作業が進行しないだろう。そんな調査は一切しなくていいから自分の仕事をしなさい」とバシッと言えるんですよね(笑)。
日本だと新人のモチベーションや気持ちを考えたほうがいいという文化ですよね。要は日本は、新人が長期的に辞めずにずっと働くので、その人のモチベーションを上げたほうが会社の利益になるんじゃないかとモチベーションをけっこう優先するのが日本式だと思うんですよ。
アメリカは、新人が入ってきても1年や2年で辞めちゃうこともあるので、それよりも「とにかくパフォーマンスを出せ」「それに注力しろ」と、モチベーションよりも会社の利益を優先する判断を合理的にできる人が優秀なのかなと私は感じます。
あとは、解雇がきちんとできる人ですね。私も日本文化で育っているので、解雇するのはあまり気が乗らないのですが、アメリカの会社だとそれをしないといけないところがあるんですよ。
例えば、チーム内にあまりできないエンジニアが入ってきますよね。そうするとやはりみんなの足を引っ張っちゃうんですよ。
その人が書いたコードのせいでトラブルが起きたら、ほかのチームメンバーが一緒になってトラブルシューティングをしなければダメだし、その人が書いたコードはやはり不安なので、かなりチェックしなければダメだし、その人の教育にもけっこうな時間が取られます。
スキルがない人がいると、そのチーム全体のパフォーマンスが落ちちゃうんですよね。日本だと、「どうやって働く人の生産性を上げればいいか」というふうに議題に上がることがけっこうありますが、それは簡単で、できない人を解雇すれば生産性はメチャクチャ上がるんですよね。
「日本文化ではそれができないからどうすればいいんだ」みたいなことになってしまいますが、アメリカの場合は、生産性があまりよくないのであれば、その原因をけっこうバサッと遮断しちゃうんですよ。
マネージャーの性格にもよるかもしれませんが、その判断をバサッとやってくれると、やはりチーム内のモチベーションもぐっと上がるし、チーム内で作っている製品の利益を上げやすくなるので、みんなの給料も伸びるんですよ。
自分のことしか考えていないというわけではありませんが、アメリカ企業だと、「かわいそうだから」という気持ちを挟んでしまうとなかなか解雇できないので、そこはバサッとやってくれるマネージャーのほうが優秀だと思われるでしょうね。
私にも経験があって、かなり優秀な大学を出た新人が入ってきたことがありました。ハーバードだったかスタンフォードだったかは忘れましたが、メチャクチャすごい大学を出たエンジニアが入ってきたんですよね。
私がそのエンジニアに対して教えることになったのですが、その方は確かに学習能力はメチャクチャ高かったのですが、なにか障害が起きたりわからないことがあった時に、私にすぐに聞いてくる方でした。要は、問題解決能力がかなり低かったんですよ。
そしてそれをやはりマネージャーもしっかり見ていました。私と1対1のミーティングをした時に、「ちょっと彼、聞き過ぎじゃない?」と。「潤がけっこう時間をかけて教えてダメだったらダメだから」と。
「教えてそれで育つのであればいいけれども、教えているのに何回も聞いてくるのであれば潤の時間が無駄になっちゃう。そうするとパフォーマンスがチーム全体で落ちるから、こちらとしても解雇せざるを得ない」という感じのことを言われたんですよね。
私が「ちょっとあの人は使えないな」みたいなことを言って解雇になるのはかわいそうだから、私は「もうちょっと様子を見て、私ががんばって教えてみます」という感じにしたんですよ。そうしたらやはり自分の残業時間がけっこう増えちゃったんですよね。私はそれを隠していたわけではなかったのですが、マネージャーはそれを察して、「やはりダメ」みたいになったこともありました。
私は、解雇は起きないほうがいいなと努力はしていたのですが、やはりマネージャーは合理的に見て、チームのパフォーマンスが落ちていることがあれば、その原因をすぐに省くことができるんですね。
なので、私は先ほどトランプさんみたいな人という表現をしたんですよ。自分がもしアメリカのプロジェクトマネージャーになって、解雇をしなければいけない立場になったら自分はできるのかな? と、けっこう不安になることはあります。
そうせざるを得ない状況にみんな追い込まれているとは思うんですよ。要は、みんなだって解雇はしたくはないけれど、会社に利益をもたらさなければ自分も解雇されてしまう。
そのあたりが日本の優秀なプロジェクトマネージャーと、アメリカの優秀なプロジェクトマネージャーの違いで、どこを視点にするかで変わってくることはあるかもしれませんね。
(次回へつづく)
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