2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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宮坂学氏:このようにいろいろなことをやっているわけですが、今日の趣旨でいうと、「私たちが作りやすいものを作るのではなくて、都民が求めているものをきちんと起点にして作りましょう」と今やっています。
(スライドを示して)1つの取り組みが、今までユーザーテストをやっていなかったので、「テストしないものはリリースしない」を合言葉にして、ユーザーテストガイドラインを作って、必ず利用者にきちんと使ってもらってからリリースしようということをやっています。
(スライドを示して)最初にそれに近いことをやったのが、実はこの、「感染拡大防止協力金サイト」で、コロナで非常に苦労されていた飲食店の方に申請してもらうサイトになります。
これは最初非常に評判が悪かったんです。使い勝手が悪過ぎると、利用者からもメディアからも、かなり怒られました。
私たちは一生懸命やっていたのですが、いいものがなかなかできなくて、「じゃあどうしようか?」となった時に、「やはり実際に使って申請する人に話をきちんと聞いたほうがいいんじゃないか?」という話をして、申請者に会って使ってもらうことにしました。
それも、できれば都庁に来てもらうのではなくて、これは、写真がそうなっていると思うのですが、バーかなんかの写真がありますよね。実際に申請する場所に行って、そこで申請してもらって、そこを見ようじゃないかという取り組みを始めてみました。
それを受けて改善をするというサイクルを初めて回し始めてみて、実際に申請が終わった後の画面に、NPS(Net Promoter Score)みたいに「このユーザー体験、よかったですか?」と簡単に聞き始めました。
これは、やればやるほど良くなりました。この1つが手応えになって、ユーザーに会って、指摘されたことをきちん改善していけば、NPSのような数値もやはり変わるんだなという、体験になりました。
(スライドを示して)次はもうちょっと大きな取り組みについてお話しします。西新宿に「UPGRADE SQUARE」という、官民共創スタジオみたいなものがあるのですが、そこで「ビジネスチャンス・ナビ」という、中小企業のビジネスマッチングのサイトをやっています。右側の写真にスーツを着ている人がたくさんいますが、これは全部都の職員です。
初めて大規模に都の職員が集まって、実際の利用者が使うシーンを見る場でした。これはけっこう辛辣で、「本当に使いにくいな」とか、頭を抱えてしまうようなフィードバックも多かったのですが、それでも「こういう場をやること自体はすごく評価するよ」と後押ししてくれて、「まあ、よかったな」と自分では思っています。
(スライドを示して)最近やったものでは、オープンデータのカタログサイトがあります。左側にあるのが昔のサイトで、この時には、まったく利用者に会わずに作ったのですが、今回は一番のヘビー利用者であるシビックテックの開発の人に、何度も何度も見てもらってフィードバックをもらって、作っていって、さらに問い合わせをしたり、改善提案を受け付けたりするページも追加できちんと作りました。
(スライドを示して)もう1個似たようなもので、これは「UPGRADE with TOKYO」というサービスで、スタートアップのピッチイベントです。左側にあるのはもともとの画面で、これはまったく利用者に会わずに作ったもので、右側は実際に利用者にしっかり会って、フィードバックもらいながら改善したページです。
このように、やはり利用者に会ってきちんと作ろう、テストしてからリリースしようということを今どんどん始めているのですが、これをより大規模にやっていくために、今「東京都デジタルサービスの開発・運用に関する行動指針」というルール化を進めているところです。
(スライドを示して)ミッション、バリュー、そしてビジョンという、民間の方がよくやっているものを今定義していて、行動規範という価値観だけではなく、具体的な機能別技術ガイドライン、この中にUI/UXに関するガイドラインを今作っているところです。
今日は価値観について、企業だとバリューという言い方をしますが、行動規範をちょっと紹介します。これはできたばかりで、今浸透作業をやっているのですが、最初に掲げたのが、顧客視点でデザインをしようということです。
(スライドを示して)その詳細がここです。右側の「具体的な行動原則」のところに少し具体的に書いてありますが、初めに、「このサービスは誰のために作るのかをきちんと考えようよ」ということです。“誰のため”は、よくあるのが「利用者は都民です」といったざっくりしたものですが、そうではなくて最初に使ってもらいたい人は誰なんだというところまで解像度を上げて、ペルソナを考えて、決めてからやろうと。そしてその最初に使ってほしい人にきちんと会って話を聞いてから作り始めましょうということを決めています。
それを具体的に何をすればいいのかという、UI/UX技術ガイドラインを今、絶賛策定中です。
(スライドを示して)ユーザージェネレイテッドコンテンツという言葉が、インターネットの業界では昔からあると思うのですが、行政サービスは、すべからくみなさまの税金で作られたシステムです。
なので、その性質を考えると、すべての行政のデジタルサービスは、ユーザージェネレイテッドコンテンツじゃないといけないと私は思っています。
今までは、利用者に聞いて、利用者の声をジェネレートしてサービスするという発想があまりなかったのですが、これからは、サービスを作る前に聞いて、サービスをリリースする直前もユーザーテストで聞く。そしてリリースした後も、お問い合わせやログデータを見ながら、聞きながら改善していきます。
こういった双方向で作っていければ、いつの日か必ず、行政だって品質のいいデジタルサービスが作れる時代が来るのではと今は信じてやっています。
最後にまとめを話します。ユーザーテストはフィードバックですが、フィードバックは鏡を見るのと同じだと教わったことがあります。
鏡を見ない人は、絶対にオシャレな、センスのいい人になれないですよね。いいものを作りたければ、自分自身の前に鏡を置くことが大事で、それがユーザーテストだったり、ログデータを取って数字的にフィードバックをもらうことだと思います。
フィードバックをもらって「そんなはずはない」と怒る人も時々いるという話を聞きますが、それは鏡の中の自分に対して怒っていることになるので、非常に滑稽で、何の生産性もないので、フィードバックを受けるのに慣れることが重要です。
ちょうどこれは、僕が「ヤフオク!」の時に体験したことですが、フィードバックを恐れないことが非常に大事だと思います。
(スライドを示して)サービスの質を高めるために必要なのは、フィードバックをもらうことに尽きるのですが、実際のユーザーにきちんと会って、きちんと意見を聞くという、この当たり前のことをやれていませんでした。
私たちはまだデザイン初心者で、あまり難しいことをいろいろやると消化不良になってしまうので、その当たり前のことを当たり前にできるようになるというところから始めたいと思っています。
冒頭のタイトルで「行政もいいデジタルサービスが作れるのか?」という問いをしました。試行錯誤でこの2年ぐらいをやってきたのですが、都民向けではなく、豊洲市場の衛生監視をやっている職員向けのサービスに、ノーコード・ローコードツールを使って作った、業務アプリケーションがあります。
詳細は、このQRコードの「note」に書いてありますが、これが実は職員の方、利用者からものすごく評判がよかったんです。職員向けなので、みなさんはなかなか見る機会がないと思いますが、僕が都庁に来てから、一番評判がよかったプロダクトになったのではないかと思います。
「もうこの業務デジタルサービスなしには、仕事は考えられない」とまで言ってもらえたんですよ。これはもう本当に僕はうれしくて、このnoteも10回ぐらい読んで、コピーも作って配ったりしているのですが、本当にうれしくて、行政もやはりやれるんだなと思いました。
(スライドを示して)その秘訣は、たぶんこの写真に集約されています。この右側にいる手袋をしていない方が、現場の市場で働いている方で、左側で青い手袋をしている人が、デジタルサービス局のシステムを作る人です。
このように現地に行っているんですよね。現地で実際に使う人と横並びになって一緒に作っていけば、行政だって、使う人から「ないと困る」と言ってもらえるサービスが作れるんだという、最初の型紙ができたなと思っています。
あとはこれを、都民向けや企業向けにできるようにします。それも、まだ1個しかないので、これを100個とか1,000個とか1万個、量産できるように、今から挑戦していきたいと思います。
今日は、行政のデジタル化をするにあたって、いろいろなことを「リサーチカンファレンス」からしっかり勉強していきたいと思います。
以上、私のプレゼンでした。
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