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【地方創生×デザイン】創造的に暮らす未来のデザインとは?_GMOペパボ株式会社(全1記事)

「機能の提供だけではなく商いの多様性を支援する」ために GMOペパボのデザイナーが横断的にサービスに関わるわけ

社会課題×デザインをテーマに社会課題に取り組んでいる企業が登壇する「ReDesigner Social Impact Day」。各登壇者は、Design Action・Creative Actionの重要性が叫ばれている中、自社が社会課題に対してデザインの力でどのようなアプローチを取っているのか、その中でデザイナーはどのような役割を担っているのかを話しました。「地方創生×デザイン」では、GMOペパボ株式会社の山林茜氏が登壇。「カラーミーショップ byGMOペパボ」におけるミッション・ビジョンと取り組みについて話しました。

GMOペパボ株式会社のデザインリード

山林茜氏:私から、このテーマのトップバッターとしてちょっと元気に発表したいなと思います。「地方の価値をひろげ商いの多様性を支援するEC」というお話をします。

最初に自己紹介です。GMOペパボ株式会社、EC事業部でデザインリードをしている山林茜と申します。GMOペパボはあだ名文化があり、私はみんなから「りんちゃん」と呼ばれています。

私自身は、制作会社のデザイナーとディレクターを経て、2011年にGMOペパボに入社しました。入社当時はpaperboy&co.という社名で、デザイナーとして入社しました。現在は、サービスをご利用いただくユーザーさまに、一貫したブランド体験を提供するための仕組み作りや組織作りに取り組んでおり、時にはデザイナーの専門性を活かしてプロダクトマネジメントも行っています。

生まれも育ちも大阪で、ふだんはバリバリの関西弁です。最近三輪車にハマっている1歳と、宇宙にハマっている4歳の男の子の母です。2021年4月に育休から復帰して、日々育児と奮闘しながらも毎日楽しく働いています。ソーシャルでは「@getsukikyu」というアカウントで生息しているので、よかったらお友だちになってもらえればと思います。

GMOペパボのミッション「インターネットで可能性をつなげる・ひろげる」

私たちGMOペパボは、2003年に福岡で創業した会社です。「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」というミッションのもと、インターネット上で自己表現をする楽しさであったり、そこから生み出される物事をつなげ広げることで、クリエイターのみなさんが活躍できる環境を創造したいと考えて事業を展開しています。

レンタルサーバー「ロリポップ!」や「ムームードメイン」のホスティング事業、ハンドメイドマーケットの「minne」のハンドメイド事業。さらに簡単にオリジナルのアイテムを作成・販売ができる「SUZURI」や、このあと紹介するECプラットフォームの「カラーミーショップ」といったEC支援事業を行っています。

地方には都市部にはない魅力的なコンテンツが数多くある

カラーミーショップは、2005年よりサービスを開始した、ネットショップの作成・運営を行うためのECプラットフォームです。私たちカラーミーショップのミッションは、「商売をするすべての人々を支え、日本の商いをなめらかにすること」です。

ここ数年、世界は新型コロナウイルス感染症の拡大で、経済全般がやはり大きな影響を受けています。日本も例外ではないのですが、この逆境の中でも多くの事業者が新たな商圏確保やファンの拡大を目指して、ネットショップを開設しています。

また、近年はインターネットで商品を購入するのが当たり前の世の中になっており、EC市場がここ数年ですごく拡大しています。それでも日本国内のEC化率は、2020年の時点でまだ約8パーセントなんですね。なので、今後もEC市場は、成長余地のある市場だと思います。

そのような中で、私たちはECプラットフォームとして、オンライン・オフライン、都市部・地方、個店・モールなど、そういった垣根をなくして、あらゆる商いをなめらかにすることが重要だと考えて事業を行っています。

そのようなミッションを実現するために欠かせない取り組みは、地方のEC化だと考えています。カラーミーショップのブランドビジョンの中に、「多様性から生まれる豊かな文化を育む」というものがあります。

私たちは、ショップオーナーや購入者だけではなく、制作会社や、デベロッパーなどのネットショップの運営を支援されている方を含めた、商いに関わるさまざまな人たちをプラットフォームとして支援し、多様な価値や人との出会い、交わりを通した商いの発展に寄与することで、そこから生まれる豊かな文化を育んでいくことを目指しています。

地方には、特有の食文化や古くからの伝統工芸など、都市部にはない魅力的なコンテンツが数多くあります。それらの価値や、人・物などをインターネットを介してつなげることができるのがECです。

デザインの力で地域の魅力を伝える工夫をしている「SAVA!STORE」

ECが地方創生のためにできる3つのポイントを、具体的な事例とあわせて紹介したいと思います。

まず日本が抱える課題として、人口減少と、少子高齢化によって仕事を求める若者を中心に、東京への人口集中が起きていることで、地方の高齢化や過疎化が加速しているということが挙げられます。

ECは、購入者がいつでもどこからでもアクセスして商品を購入できるので、売る側は、商いをする場所を都市部に限らず自由に選ぶことができます。

その一方で、「売る物はあるんだけれど、ちょっと売り方がわからないんだよね」というショップオーナーさんもけっこういるので、そういった方へのコンサルティングやEC化の支援が必要だなと思っています。

(スライドを示して)これは福井県鯖江市にある「SAVA!STORE」というショップです。デザイン会社がデザインの力で福井県の魅力的な商品を全国に届けているスーベニアショップです。

鯖江市は、古くから物作りや工芸が盛んな地域で、高い技術力を持った職人や工房が数多くありますが、下請けがメインのため、発注状況によって売上が大きく左右されてしまうという状況がありました。

そういう状況から抜け出すために、自分たちで商品を作って売ることで、創造的な産地を作ることを目指して、デザイン事務所が地域の企業を支援しながらオリジナルブランドを立ち上げて、ネットショップやイベントを介して、作り手と全国の買い手をつなぐことをされています。

この事例のすごくいいところは、商品を作るだけではなく、その先の流通や、商品が手元に届いた先の体験までがデザインされていて、デザインの力で地域の魅力を伝える工夫がすごくされているところかなと思います。

スモールスタートして唯一無二のブランドになった「北欧、暮らしの道具店」

ECはスモールに始めることができるので、ビジネス的なリスクが少ないというメリットがあります。かつて、生産者やメーカーは、卸業者という中間流通業者を通じて商品を消費者に届けるモデルが一般的でしたが、インターネットの普及によって、今は生産者が直接、消費者に商品を届けるビジネスモデルが当たり前となってきています。

さらに、カラーミーショップのようなスモールスタートができるEC支援サービスがあるので、リスクを気にせずに商いにチャレンジすることができるような環境が整ってきています。

これまでは、実店舗をお持ちの方がECにも展開されるパターンが多かったのですが、今はまずネットショップを開設して、スモールにビジネスをスタートさせてから、成長に合わせて実店舗を展開されていくというショップが増えているように感じます。

小さく始めて大きく成長した事例として、みなさんもご存じかもしれませんが、「北欧、暮らしの道具店」さんをご紹介したいと思います。

こちらは、先日創業15周年を迎えられて、デザイナーの原研哉さんによるVIリニューアルを行った、クラシコムさんが運営されているライフカルチャープラットフォームです。北欧をはじめとした世界中の雑貨やオリジナル商品の販売や、暮らしに関するさまざまなコンテンツを展開しています。

創業当時は別事業をされていて、その事業が軌道に乗らず、残った創業資金を使って当時から事業を手伝っていた妹さんと一緒に最後の社員旅行に行こうと北欧に行かれるんですね。

その時に、せっかくだからと北欧ヴィンテージ食器を購入して、それを日本に送ったら半分ぐらい壊れていたらしいんですけど(笑)。残りの半分をなんとか販売したいと、カラーミーショップでネットショップを開設したのが最初のきっかけです。

当時、供給過少だった北欧ヴィンテージ食器を求める方が実は多くいたそうで、ショップの開店前から数十人のメルマガ会員がついて、そこから着実に事業が成長していきます。その後、スマホやSNSの普及に合わせて、コンテンツ施策に注力して独自の世界観を築くことで、現在唯一無二のブランドとなりました。

現在は、カラーミーショップを卒業して、自社で構築したシステムでネットショップをされています。最初は本当に小さく始めて、商いの熱意と興味というところから、自らマーケットを切り開いて成長されたすばらしい事例かなと思っています。

新たな文化やライフスタイルを作り上げた「陶らいふ」

3つ目に、ECによって伝統をつなげることで新たな文化やライフスタイルが大きくできるという事例です。

先ほどもお話ししたように、日本全国にはすばらしい文化や古くからの伝統工芸が数多く存在します。しかし近年は、伝統工芸の需要の低下や後継者不足がやはり深刻な問題となっています。そのような中で、若い世代の方がDXをうまく活用して、新たな需要や販路を創出する状況が生まれています。

こちらは、従来の伝統を守りながらも新たなチャレンジをしている、石川県能美市にある九谷焼専門店の「陶らいふ」さんです。

九谷焼も古くから続く伝統工芸ですが、先ほどお話ししたように需要の低迷があり、こちらも3代目が家業を継いだ当時は、業界全体が不況のどん底という状況だったそうです。周りの人たちにも、「よくこんな業界に来たね」と言われるほどだったそうです。

当時は、特定の取引先にすごく依存している状況だったので、そこから抜け出すために販売チャネルを拡大し、小売として成長するために実店舗以外の販路としてスモールスタートでネットショップを開設したのがきっかけです。九谷焼を、もっと身近な生活の中で気軽に使えるようなものとして認識してもらうために、オリジナルブランドでカジュアルな九谷焼の商品を開発しました。

前職は東京の広告代理店にお勤めだったということで、SNSのインフルエンサーと一緒に「Instagram」でプロモーションを展開するなどして、これまでにないような新しい取り組みを積極的に行ってこられました。

結果、卸が中心だった売上の半分以上がオンラインや海外からの受注になって、年商が2.5倍と大きく成長した事例です。

機能を提供するだけではなくBtoCの支援やDX支援をしている

このように、ECは地方の一助となっており、この先もより多くの方がECによって創造的に地方で暮らしていくために、カラーミーショップが取り組んでいることについてちょっとお話しします。

数年前までカラーミーショップは、主にショップオーナーや購入者に機能を提供する、いわゆるネットショップ作成サービスでした。そんな中、やはり地方のEC化を進めていく上で、先ほどの事例にもあったようなBtoCの支援やDX支援が必要だなと考えました。そこで、自分たちだけで取り組むのではなく、制作会社、デベロッパー、地方の支援企業、支援機関などと連携をして、各地のEC化を支援する取り組みを進めていきたいなと考えています。

カラーミーショップは、機能を提供するだけではなく、商いを行う人、またそれを支援する人たちをつなぐ場でありプラットフォームとなって、EC、BtoC事業支援、若い世代へのDX教育支援、共同セミナーの開催、その支援をするコミュニティの形成を現在行っています。

こういったプラットフォームだからこそ、より多くの人たちを支援でき、スケールさせていくことができるのではないかと考えています。

仕組み作り1 カラーミーショップが目指すビジョンの言語化

ここで重要となるのが、カラーミーショップとしてのブランド体験の一貫性をどう保っていくかです。ここからやっとデザインらしい話になりますが、私は全部がデザインだと思っています。

私たちが提供したい、いい体験というのは、機能とその使いやすさ、さらにそれがわかりやすいかどうかであると考えています。都市部と地方の情報格差やリテラシー格差がない、すべてのユーザーに平等にテクノロジーを提供することが重要だと考えています。

そのような体験は、プラットフォーム全体で一貫性を持って提供されるべきだと考えているので、事業部全体でそういったサービスデザインに取り組めるように、私たちデザイナーが中心となって仕組み作りを進めています。

まず、先ほども紹介したのですが、カラーミーショップが目指すビジョンの言語化をあらためて行いました。

これはデザイナーが主導して、カラーミーショップのエンジニア、ディレクター、カスタマーサクセスのメンバーなど、あらゆるメンバーを巻き込んで週に1回のワークショップや意見交換を行って進めて、約半年ほどかけて策定をしました。

策定後は各チームを回って、ブランドビジョンの理解を深めるための詳細な解説だったり、ワークショップだったりを行って、各施策がブランドビジョンの実現のどこにひもづいているのかを意識しながらサービス作りを進められる活動を行っています。

現在は、そのブランドビジョンの実現に向けて各チームが取り組んでいて、事業部として数年先の事業戦略ロードマップの策定も一緒に進めています。

仕組み作り2 ステークホルダーとの関係性を可視化

次にプラットフォームとしてサービス設計を行うところで、どのようなステークホルダーがいるのか、それらの関係性はどうなっているのかをあらためて可視化しました。

カラーミーショップはエントリー層から、流通が高い、成長した大きいショップまで幅広い層にご利用いただいていて、それらが商いを支えているので、ステークホルダーに対してユーザー理解を深めるためにインタビューやアンケートなどを積極的に行っています。

この下の写真は私が実店舗に訪問しているところなのですが、時にはプロトタイプを持って、実際の現場の業務プロセスを拝見しながら機能へのフィードバックをいただいたりしています。コロナもあり、今は近場のショップに訪問するぐらいですが、この先落ち着いたら遠方のショップにもぜひ訪問したいなと思っています。

そこから得たインサイトをまとめて、アプローチするべき問題を明確にして、解決策の提案や事業戦略への組み込みもデザイナーが中心になって行っています。

デザイナーが各事業部内のチームを横断できる組織体制に変わった

こういったことを実践しながらサービスの一貫性を保っていくというところで、2022年からデザイナーが各事業部内のチームを横断できる組織体制に変更しました。

GMOペパボでは、各デザイナーが得意とするエキスパートスキルが可視化されているのですが、サービスデザインのプロセスに合わせて、必要なタイミングでデザイナーがアサインされることで、コミュニケーション設計やプロダクト開発の質と速度を上げていきます。また、横断的な視点を持つことで、一貫したサービス体験を提供できるのではないかと考えて取り組んでいます。

私たちGMOペパボは、創業当時からインターネットの可能性を信じて、クリエイターを支えるインフラを提供してきました。カラーミーショップは、ECを中心とした多様な商いを支えるプラットフォームとして、地方の課題解決の一助になることができると考えています。

すべての商いや商品にストーリーがある

これはデザイナーとしての個人的な思いですが、先ほど紹介した事例のほかにもいろいろな事例があって、みなさん魅力的なショップばかりです。

先ほどのインタビューを掲載しているオウンドメディアの「よむよむカラーミー」というものがあるのですが、私はそのインタビュー記事を見るのがすごく好きで、たまに感動しすぎて読みながら泣きそうになっちゃう時もあります。すべての商いや商品にストーリーがあって、その一部分に私たちのサービスが関わっているんだなと思うと、本当にやっていてよかったなと感じます。そういう商いや商品というのが、私たち消費者の生活を彩ってくれていて、またそこから新たな文化が生まれているんだなと思います。

私たちカラーミーショップは商いの多様性を尊重して、これからもそういった方々を支援していきたいなと考えています。日本の商いをなめらかにすることに一緒に取り組んでくださるデザイナーを大募集しているので、採用ページをご覧いただくか、「カジュアル面談をしたい」とか「ちょっと気軽に話を聞きたい」という方は、SNSで私に直接お声がけいただければなと思いますので、よろしくお願いします。私からは以上です。どうもありがとうございました。

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