2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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及川卓也氏(以下、及川):ちょっとここは、育成にトピックを移ったらと思ったんですけど、せっかく徳生さんに用意していただいているスライドがあるので、もうちょっとAPMについて紹介いただいてもいいですか。
徳生裕人氏(以下、徳生):(スライドを示して)左が2002年から始まったプログラムで、第1期のAPMの写真です。真ん中にいる金髪の女性がマリッサ・メイヤーという、後に Yahoo Inc. のCEOも勤めた人です。
横にいるのが全部APMで、その左側にいるブライアン・ラコウスキは、今まさにPixelの開発責任者になっています。そういう意味で、育成は非常にうまくいっています。「将来GoogleのCEOはAPMから出てくるかもしれない」と、かつてエリック・シュミットも言っていましたが、これは私自身も本当に思っているところです。
及川:先ほどOJTと言われましたが、私もGoogleにいた時にAPMプログラムに多少関わったことがあるので。私が言っちゃうと仕方ないので(笑)。どんなことをやっているか、徳生さんにぜひ言ってほしい。
2年間のプログラムだと思いますが、どんなかたちのOJTとか、どんなかたちで進んでいるかの紹介がもし可能であれば。
徳生:もちろんです。基本的には、先ほどお話したとおり、コンピューターサイエンスを勉強している、ピカピカの優秀な新卒を採ります。なぜコンピューターサイエンスかというのは、ビジネスなどほかのことはたぶん入ってからでも教えられるだろうと。ただ、コンピューターサイエンスだけはそう簡単に教えられないので、コンピューターサイエンスを勉強している人から採って、1年目にいきなりGmailであれ、検索であれ、プロダクトマネージャーとして現場に放り込むんです。
ただもちろん注意深く、非常に優秀なマネージャーを付けて、ちゃんとOJTができるようにします。ただ、新卒1年目で、やはり癖のあるエンジニアリーダーや広報とか、いろいろなファンクションとやり取りをしながらプロダクトを定義していくわけですから、ものすごく速修効果があるわけです。
それが1年終わったら、“APMトリップ”と言って、2週間で4ヶ国を回ります。世界はアメリカだけじゃないんだよと。いろいろな国を見て、いろいろな国の会社やテクノロジーに触れる機会を持って、視野を広げる。大名旅行をしても仕方ないので、VPも含めて全員エコノミークラスでホテルは相部屋です。
それが終わったら、また1年、別のプロダクトに放り込む。PM、ジェネラリストのスキルを養成するということで、別のプロダクトに2年放り込みます。
先ほどお話したとおり、Googleでもこれ以上の人数を採ったらきちんとした学習効果が得られないので、人数を40名に絞ってやっています。若干狭き門になってしまっているのがちょっともったいないんですけどね。そういったかたちで行っているプログラムです。
及川:ありがとうございます。
及川:ではちょっとまた採用(の話題)に戻りたいんですけれど。徳生さんの中で一番重要なのが「PMによる候補者に対する採用インタビューである」とお話いただいたんですが。実際、Salesforceとかでもそうじゃないかなと想像します。
今参加されている方がおそらくすごく知りたいのは、「そこでいったい何を聞いているのか」という話だと思うんですね。言えること、言えないことがあると思いますが、企業の方にも、実際に転職を今後考えるようなプロダクトマネージャーの方にも参考になる程度の内容を、可能な範囲で教えていただけると。ということで、Wakamatsuさん、お願いしちゃっていいですかね。
Ken Wakamatsu氏(以下、Wakamatsu):Salesforceは、やはりプロセスが長いですね。最初はだいたい電話インタビューから始まって、過去の経歴とかをインタビュアーもしくはマネージャーが聞いて。
僕はあまり日本の採用に関わったことはありませんが、日本の採用は人事がリードするようなイメージですが、アメリカはチームがリードするんですよね。マネージャーがハイアリングマネージャーで、その人がインタビューをするという。
だから“チームに参加する”という感じになります。やはり協調性が求められるので、まずほかのファンクションの人たちみんなとインタビューをしなきゃいけないんですよ。
エンジニア3、4人ぐらいにインタビューされて、デザイナーにもインタビューされて、ライターにもインタビューされて、マネージャーにもインタビューされて。あとは、その間にグループのヘッドとマネージャーからのインタビューを1日か2日ぐらいかけてやって。最初はそれだけで採用していました。
でも実際に働くと、やはりうまくいく人とうまくいかない人たちがけっこう出てきたので。実は私が入社する時も、その面接のプロセスにすでに入っていたものを実際に課題でもらって、それをスクラムチームにプレゼンしなきゃいけなかったんです。
「この新機能を作ってください」と、いわゆるプロダクトプランのテンプレートをもらいます。「これは何のために作って、どういうふうにメトリクスを測って、どういうテストケースが想定されますか」「さらに、それを作るのにだいたいどのぐらいかかると思いますか」といった、実践に最も近いプレゼンをさせられます。
(それを)2週間ぐらい準備をする期間があって、スクラムチームのメンバーの数人と最後のインタビューを行います。先ほどの徳生さんの話じゃないですが、Salesforceでも、下手したらもう入社して1週間ぐらい自分がインタビューをしていることがけっこう多くて。
反対側に立った時に何が求められているかというと、まず協調性。実際にコミュニケーションスキルが第1ですね。自分が責められた時にも、エンジニアとちゃんとコミュニケーションがとれるか、冷静に答えられるかとか。
あとはデザイナーとのコミュニケーションや、エンジニア以外とかテックリードとかQAとかを担当している人たちの突っ込んだ質問に対して、どれだけ冷静に論理的に説明ができるかをやはり見ています。
これは、Salesforceの中で非常に大きな理由が1つあって。実際に入社してPMになると、Co-Founderのパーカー・ハリスとかに、毎月自分がやっていること、プロセスを発表しなきゃいけないんですよ。
その時、パーカー・ハリス以外に先ほど言ったクラウドのGMの人たちがいて、「それってうちも似たようなものを作っているんだけど、うちのチームの人と話しましたか」「これってどうしていますか」を、実際にいろいろな人に突っ込まれたりするので、やはりそれに耐えることが本当にできるかというテストを実際にします。
それが自分の中ではすごくおもしろいというか。最初に自分がやらされた時に、「えっ、なんかこれって僕のアイデアを盗もうとしているのかな?」とか、そのぐらいのレベルの考え方で(笑)。Glassdoorとかを調べると、けっこうそういうコメントがいっぱいあったのですごく悩んだんですけど。
採用する側になってみると、本当に現場に一番近いインタビュープロセスの1つかなと思いました。
及川:ありがとうございます。私も採用インタビューは、「その人がもし採用されて社員になった時のシミュレーションする場にしましょう」と言っています。今のWakamatsuさんのお話は、社員になったらもっとタフな場があるので、それが本当に耐え得る人かどうかを確認するという意味で、やはり同じだなと。とても参考になりました。
及川:では、徳生さん。Googleはどんなかたちのインタビューの内容になるんでしょうか?
徳生:そうですね。Googleは昔、プロセスがすごく長かったので、一生懸命短くしようとしています。今はたぶん4回か5回のインタビューで決めるかたちを採っていると思います。なので45分×4回か5回をしのげばなんとかなるということになるんですけども。
やはりそこで見るのは、プロダクトインサイトもそうですし、もちろんWakamatsuさんもおっしゃったコミュニケーションもそうです。過去の仕事については参考程度には聞きますが、やはり聞きたいのは、「こういった事態が起きた時にどうするか」とか、「こういったプロダクトを作るとしたらどうするか」と。
そういった即興の問題に対して、どれだけクリアに考えて、戦略的なアプローチをちゃんと取って、データに基づいてアプローチを取って考えることができるか。プロダクトマネージャーとして、そうしたところは非常に見られると思います。
あとは英語のことを心配される方も多いかもしれませんが、ネイティブである必要は個人的にはないと考えていて。ただそれでも、ゆっくりでもクリアに答えられるか、ちゃんと要点を伝えられるかどうか。ダラダラ話していると45分あっという間に経ってしまうので、そういった部分できちっと答えられるかどうかが一番見られるところかなと考えています。
及川:先ほどのアナリティカルスキル云々を見るために、「プロダクトを具体的に作るとしたら」みたいなことを言われましたが、もし可能であれば、「こんなような質問ですよ」「こんなことを聞きます」という、もう少し具体的なものを言っていただくことは可能ですか?
徳生:そうですね。例えばGoogleマップで駐車場を簡単に見つけられる機能を作ったらどうするかとか、それをしようと思ったらフロントエンドの話だけではなく、どうやってデータを取ってくるかとか。それをさらに、どうやって段階的にリリースしていくかとか。プロダクトマネージャーの経験がある方なら、直感的に「簡単な問題じゃないな」とはわかると思いますが、そういったかたちで聞かれる場合もあります。
フェルミ推定みたいなものは、今はそんなに聞かれないと思いますが、実際にこういうサービスを作ったらどのぐらいのパフォーマンスが期待できて、どのへんにボトルネックができるかとか、そういったテクニカルな質問をされることもあると思います。
人それぞれですが、最終的には、その人たちの書いたフィードバックを見て第三者が決めるかたちで採用の可否を決めます。
及川:わかりました。
及川:徳生さんにはAPMのほうでちょっとお話しいただいたので、Wakamatsuさんにプロダクトマネージャーの育成はどのようにするべきか、していたかを教えてもらってもいいしょうか?
Wakamatsu:Salesforceの場合だと、入社して最初にブートキャンプみたいなものが3日間ぐらいあって。インフラからアーキテクチャとかそういったものをやって、あとはプロダクト作り、その仕組み、スクラムの回し方、オートメーションの作り方などを、バッと3日間ぐらいやります。
その後に、メンターというかバディシステムになりますが、みんな忙し過ぎて、僕は正直バディシステムはあまり稼働していないと思います。徳生さんの顔を見て思ったんですけど(笑)。たぶんGoogleも、みんな忙し過ぎて、自分でなんとかしなきゃいけないということは非常に多いと思います。
ただ、部分的なスキルトレーニングはSalesforceの中で行っていて。例えば、Salesforceはやはりコミュニケーションの部分が必要なので、パブリックスピーキングのクラスであったり、それ以外にもアジャイルのトレーニングであったり。そういったものが欠けている人たちであれば、そのトレーニングを行っています。
あと、Salesforceで一番おもしろかったと思ったのが、ディレクターぐらいになると、リーダーシップトレーニングがあります。その中で、例えば次にVPになる人たちとか、先に行ってリーダーシップを発揮する人たち。ITの人もクロスファンクショナルで集めて、Salesforceを会社として運営するシミュレーションを行うんですよ。
すごろくではないですが、「新機能を開発するようにアナリストから言われました。じゃあここにエンジニアを何人つけますか? QAを何人つけますか? マーケティングのバジェットの予算はいくらでつけますか? ITにどのくらい投資しますか?」ということをやって。
それで、「次にこういう事件が起こりました。どうしますか?」ということをやって、その中でどういうふうにコミュニケーションを取って、どういうリーダーシップスキルを発揮しているかを評価して。それを後に自分たちのキャリアラダーに使っている育成のツールの1つとしてやっていたのが、非常におもしろかったなと思いました。
及川:なるほど、わかりました。
徳生:及川さん、もし僕も1つ話してよければ。
及川:ぜひぜひ。
徳生:Googleはやはり大きな会社で、あるプロダクトでいろいろなプロダクトマネージャーと話さなくちゃいけない機会が多くて、これが大変だと言う人もいます。
私個人的には、これはGoogleみたいな会社の大きな魅力だと考えていて、ほかのいろいろな部署のプロダクトマネージャーやVPと働いて、どうやって自分のビジョンを正当化するか。どこからリソースを見つけてくるか、いつノーと言うか。そういうことを見ているのは本当に勉強になると。
なので、GoogleでもSalesforceさんでもいいと思いますが、どんな方でもそういったところで2、3年働いてみるのは、僕個人的にはものすごく学びのあることかなと考えています。それがある意味、PM育成がOJTでもなんとかなっている理由なのかなと。
及川:そうですね。私も育成的なところは、もし足りないところがあるならば座学で研修を社内でいろいろ用意したり、社外の研修を受けられるようにするというのはあってもいいと思います。
それは前提とした上で、実践力はやはりOJTであったり、バディとかメンタリングであったり、今徳生さんに言っていただいたように、いろいろな人と実際に関わることによって学んでいくところが大きいかなと思います。
(次回に続く)
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