2024.10.01
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【半導体対談】未来の産業を変えるのはモーター!?/台湾・TSMCの思惑/ロボット、自動車も(全1記事)
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大幸秀成氏(以下、大幸):おそらく、日本にはあともう1つ2つ強みがあって。それはやはりモーター産業が強いということなんですよ。
ものづくり太郎氏(以下、ものづくり太郎):そう! あっ、そうとか言っちゃった。
(一同笑)
だって、モーターね、オリエンタル(オリエンタルモーター株式会社)、マブチ(マブチモーター株式会社)、山洋(山洋電気株式会社)。いろいろありますもんね。パナ(パナソニックホールディングス株式会社)も強いし。
大幸:いろいろあります。あとロボットメーカーも強いですし。
ものづくり太郎:ハーモニックシステムドライブ(株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ )も開発しちゃったし。
大幸:モーターを制御するという意味で言うと、先ほど言ったTSMCのチップなんかもたぶん合致するんですよ。だから日本産業で、車やスマホというカテゴリーではなく、モジュールとしてなにが強く打ち出せるのかというと、例えばモーターを制御するプラットフォームがあります。インとアウトはパラメーターがあてられるようになっていて、モーターはDCブラシレスというのが今一番増えているのですが、それを対象にしたインとアウトのセッティングをプログラミングで変えて合わせ込めるみたいなもの。
ものづくり太郎:だから、永守さん(永守重信氏)はすごいですよね。彼はそこらへんが見えているわけですから。
大幸:見えている。
ものづくり太郎:日本電産の名前を出さなくてごめんなさい。
(一同笑)
彼は、「半導体メーカーが欲しい」「興味がある」と言ったわけじゃないですか。だからそこらへんが見えているし、eAxle(イーアクスル)をやっているわけですから、業界が見えているんですよね。
大幸:見えているんです。
天野眞也氏(以下、天野):日本はモーターメーカーさんが本当にメチャクチャありますもんね。
ものづくり太郎:東芝(株式会社東芝)もそうだし。
天野:すべてのサイズありますし。
ものづくり太郎:そう言われてみれば、モーターは超強いわ。
大幸:ドイツと比べると、ドイツにもモーターメーカーがあるんですけれど、世界で通じるところは1社か2社です。スイスの強いメーカーでmaxonがありますが、ドイツだとFAULHABERとか、まだ何社かなんですよ。日本だと、もう数えられないぐらい(あります)。
ものづくり太郎:いっぱいあるもん。
天野:日本の場合、メジャーどころではない特殊モーターもメチャクチャ多いんですよ。
大幸:多いからこそ、それを使いこなすエンジニアがこれから出てこない可能性があった時に、先ほど言ったバーチャルシミュレーションでどうするのかというのは、たぶん今から考えておかないといけないです。
ものづくり太郎:確かにね。モーターの時代だわ。
大幸:そう、数が出なくて物件ものは別ですよ。そうじゃなくて、世界に向けた提案が出せるモーターシステムって何だろうといったら、そういうバーチャルシミュレーションになる。
天野:もう、モーターの時代だね。だって、今は乗り物に限らず、家にしてもなんにしても、モーターの数が減っているところがないからね。
大幸:ないですね。
天野:すべてモーターが増えているからね。
ものづくり太郎:僕……ここに「ピー」を入れてほしいんですが、実はコンサル頼まれたことがあるんですよ。どこかというと、○○(※以下、○○という文字はピー音)からコンサルを頼まれたんですね。その○○に行った時に、企業の戦略を僕に説明してくれたんです。彼らがなにを言っていたかというと、「これからはエッジだ。エッジを全部押さえる」。
それが彼らの戦略なんですね。アメリカの企業でさえ、最終的に産業はエッジがキーパーツだと思っているわけですよ。だから、日本がモーターというエッジを握れたら、おもしろいですよ。
大幸:そうですね。そのとおりです。
天野:自分が保有しているモーターの数は年々増えているもんね。だって電動歯ブラシから電動ソファーまで、家中がモーターだらけじゃないですか。
大幸:空気清浄機もそうだし。掃除機もそうだし。何個も入っているし(笑)。
天野:ドライヤーもそう。とにかくとんでもないね。
大幸:これから増えるのはロボットですよ。
天野:ロボットは全部モーターですからね。
大幸:それも産業用ではなくて、サービスロボットみたいなものが出てきて、作業するから多関節のアームが付くとなると、いったい何個モーター使うんだと。
ものづくり太郎:人間と同じだったら6個は必要。
大幸:日本はロボットも強いじゃないですか。産業用ロボット、つまり工場で使うロボットは日本が強い。
そして移動型の車、乗用車も強い。両方ともロボットみたいな自動運転に行くわけじゃないですか。だけど、移動型のロボットとなった途端に(大企業が)いないんですよ。みんなベンチャーなんです。一部、豊田自動織機さんとかはフォークリフトをやっていて、もっと小型のトレンドをやるメーカーは一部ありますが、大半はノーチェックなんですね。
移動だけするのはまだある。移動プラス作業。今まさしく中国が、「中国製造2025」とかで、とにかくいろんな形のロボットをどんどん出しているんですね。レストランであろうが銀行であろうが病院であろうが、全部投入して実証しているわけです。
天野:そうなんですよ。そもそもAGV、AMRは中国が今世界最強になっているじゃないですか。そこにロボットも世界最強で乗っけられちゃったら、ちょっと太刀打ちできないな。
大幸:できないですよ。
ものづくり太郎:「2025」の怖いところは、ロボットがしっかり明記されているところですよね。
大幸:でもまだ日本は強いので、今のうちに手を打っていかないといけない。
天野:確かに移動型のロボットはみんなベンチャーですよね。僕らもたくさん作っているんですが、それこそ僕らもベンチャーです。
ものづくり太郎:THKも作っていますよね。
天野:作っています。THKはすばらしいですよ。双腕でちょっとした作業ができるものを作っています。
大幸:私はずいぶん前からそれにフォーカスしていたんです。なんでこれをやらないんだろうって思っていました。
大幸:ロボットがなぜそういう脇道に行かないのか。これは車産業がなぜEV、それも小型モビリティに行かないのかとよく似ています。求められているものが違うんですね。
まず日本メーカーが軸足に置いているのは、やはり厳しいスペックのもので、素早く動いて精度が高くてすり合わせ技術で投入できる性能や品質に拘るお客さま目線という点で、ロボットも車も同じなんですよ。
ところが、これから成長するロボットや車は、その分野とはちょっと違っていて、例えばマテリアルはソフト、柔らかいものでいいとか、金型を使って作っていくものでなくていいとか、そういうものになります。
また、安全走行を保証する時に、当然車メーカーさんは、時速0キロから100キロぐらいまで出る車を考えるんですが、ベンチャーは違って「時速6キロで走る車を作ります」となるんですよね。
すると、なんのルールもないんですよ。安全に作れているかどうかは、人にぶつかった時にケガするような鋭利な突起が出ていないかということだけで、あとは走行実験の時間データだけあれば、市場に出せるんですよね。
「じゃあ次は?」というと、例えば時速40キロ未満。そして、高速道路を走るやつ。実は3つぐらいカテゴリーに分かれているんだけれども、そこを分けて投入していますか? 考え方を持っていますか? というと、まだ十分持てていないのが車メーカーさんで、ロボットメーカーも同じです。
精度の高い、車の製造工場に入れるロボットと、物流倉庫で働くAGV、このへんはある程度マーケットとしてある。だけど、サービスをするロボットはどうなんだと。
例えば、コロナ禍において消毒するロボットだったり、レストランで食べ物を運んでくれるロボットだったり、キッチンで調理の手伝いをしてくれるロボットだったりはどうなんだと言った時、もうノーアイデアなんです。というか、「出しても金にならないよね」という感じになっている。
ものづくり太郎:市場がそういう価値観になっていないですよね。
大幸:そこです。だからドイツとか海外ではSTEM教育とよく言いますが、そういうものをやはり日本の中で根付かせていかないといけなくて、まだ産業が残っているうちに、我々がそこを喚起しないといけないのかなというのはちょっと考えています。
天野:そうですね。そういう目線で見ると、まだまだ移動式のロボットはいろいろなルールが明確じゃない=自由度が高い領域はいっぱいありますよね。
本当にラストワンマイルの配送ロボットから考え出していくと、アグリテック、つまり農業系の部分だったり、いろいろな人を補助するものが必要なところはたくさんありますよね。
僕らは建設業界さんからも開発依頼が多く来るんですが、例えばちょっと物を持っておいてくれるとか、天井のパネルを押さえておくのが大変だから、そこだけ押さえてくれるとか、けっこう手が痛くなる作業がいっぱいあるので、そういうものを開発してほしいなという話はいっぱいあります。一部で、少しずつそういうものが開発されているようですが、まだまだ余地は大きい。
大幸:大企業は、そこがリスクになっているからやらないんですよね。なぜリスクになるかというと、さっき言ったように、部品を集めてきて、性能出しをハードウェアでほとんどやっているので、ヒト・モノ・カネがかかるんですよ。そのわりにリターンが少ない、見えないからやれないということになっているんですね。
大幸:機電一体モーターという言葉をぜひ覚えておいてほしいんですが、機電一体モーターというものが、ロボット産業を変えると言われているんですよ。要するにこれはモーターとセンサーと減速機とコントローラーが一体になったモジュールです。
それを関節ごとに入れていく。もしくはインホイールモーターとして車に入れて、制御をソフトウェアでプログラムしてチューニングすれば、出せるということなんですよ。
ものづくり太郎:なるほど。だから車だったら4つ入れちゃえば。
大幸:そう、4つ入れればいい。
ものづくり太郎:しかも、車はおそらく軽くなりますからね。
大幸:なります。
ものづくり太郎:電池も減らせるし、航続距離伸ばせるし、回生でまたエネルギー取れちゃう。
大幸:取れちゃいます。「4輪はいらないよ、3輪を作りたい」という時は、その3つだけ使えばいいし、6輪にしたい時に6つにすればいい。建機(建設機械)みたいにもなります。
それがロボットの多関節。例えばこういう5本指を作る、この1つのモジュールを機電一体にしている日本のモーターメーカーもいます(アダマンド並木精密宝石など)。
ものづくり太郎:意思を持ったこういうものがプログラミングできるわけですね。
大幸:そういうことです。
ものづくり太郎:なるほど。しかも人間とは違う動き方もできる。
大幸:できます。(人間の)指が本来届かないような使い方もできます。だから今半導体はそういうところに部品として採用されていくというよりは、一緒になってモジュールを作っていくという枠組みが問われているんだろうと思います。
ものづくり太郎:なるほど。要するにバリューチェーンを塗り替えられるわけですね。
大幸:そうですね。
天野:本当に、これからの日本の産業の1つの明るい未来を教えていただきました。
ものづくり太郎:(日本が)モーターを取っているのはでかいですね。
大幸:そうですね、モーターは大きいですよ。
ものづくり太郎:負けないもん。
天野:そうですね。「20世紀は自動車の世紀だ、21世紀はロボットだ」と言っていて、もちろんロボットなんでしょうけれど、その要素を分解していくと、機電一体モーターの時代なのかもしれないですね。
大幸:そうなんです。
天野:「21世紀はモーターの世紀だ」と言われるかもしれないですね。
大幸:そうですね。機電一体モーターを手掛けることによって車の産業でも下克上が起きると言われているんですよ。
天野:それはどんな下克上ですか。
大幸:Tier1がトップに立つ。
ものづくり太郎:モーター、足回りを押さえちゃうからですか?
大幸:足回りと電池があれば、だいたい終わっちゃうんで。
ものづくり太郎:そうですね。
天野:なるほど。今まではやはり内燃機関を作るのがすごく難しかったから、カーメーカーさんに価値が今まで置かれてきたけれども、そこが逆転しちゃうんですね。
大幸:そうですね、EVになった途端に逆転しちゃう。だから車産業は恐れていて水素燃料車みたいなのもちょっとやってみようかなと言い始めたりしている。本当に、Tier1というメーカーのほぼみんなが機電一体をやっていますね。
天野:それこそボディの部分があれば、付け替えてというふうになっちゃう。
ものづくり太郎:ミニ四駆の時代。
(一同笑)
天野:太郎さんは見たことあるかな。Teslaのショールームで、ボディを外しているシーンを見ると、本当にゾッとするぐらいなにもないんですよ。もうカスカスなんですよね。あれを見ると、本当に大きなミニ四駆なのよ。
今まさに大幸さんがおっしゃったように、Tier1さんがそこのキーパーツを全部持っているとすると、本当にそういう時代が来るのかもしれないですね。
ものづくり太郎:日本のメーカーがやってほしいですね。
大幸:そのとおりです。
ものづくり太郎:どうせ海外にやられるなら、やっちゃえよという感じですよね。
天野:確かに。もちろんカーメーカーさんといろいろなコラボをしながら、日本の会社が世界を取れるチャンスがまた来るということでもあるんですよね。先ほどのSIP技術のお話もありましたが、半導体のモジュール化の鍵は、デジタルツインのソフトウェアエンジニアの育成。
ものづくり太郎:バーチャル上の検証。
天野:そこで柔軟に作られた製品が、移動型ロボットみたいな新たなるジャンルの産業に対してどんどん行く。
大幸:そうです。
ものづくり太郎:いやあ、NECにがんばってほしい。
天野:視聴者のみなさんは、本当にものづくりが好きな方が多いので、もちろんいろいろなご意見があると思いますが、こういうところで、どんどんダイレクトメッセージも送ってほしいですし、次へのリクエストも入れてほしいですし、こういうこともまたどんどん発信していきたいですよね。
ものづくり太郎:いやあ、おもしろかった。
天野:本当に、大幸さん、太郎さん、ありがとうございました。
ものづくり太郎:ありがとうございました。
大幸:ありがとうございます。
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