2024.10.10
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鈴木慎之介氏:オープンソースツールの導入を積極的に行いました。ご存じの方がいるかはわかりませんが、「Blender」という3Dの制作ツールがあります。
昔だと「LightWave」とか、最近だと「3ds Max」や「Maya」など、そういった3Dを作るソフトがあるのですが、このBlenderはオープンソースで作られています。開発元はBlender財団というところです。比較的普及し始めています。
これはエヴァンゲリオン初号機をBlenderで表現した作成画面例です。だいたいこういうツールはUIが暗いんですよね。なんで暗いんですかね。目が疲れちゃうからかな。わからないですね。
遡ること3年ほど前、カラーならびにスタジオQがBlender財団が運用している開発基金に対して賛同しました。
具体的には、コミュニティへの寄付を行いました。これにより、Blender財団といろいろな話が進み、かつ、スタジオQのエンジニアがBlenderのオープンソースへのコミットを行った結果、そのブランチがメインに取り込まれて、今世界中のみなさんに触っていただける状況に至りました。
2021年の秋ですね。これもスタジオQですが、「Tools:Q」という、Blenderのソフトウェアのアドオンを開発しました。これもオープンソースなので、「GitHub」で公開して今みなさんに使ってもらっている状態です。
なぜこれをするのか。まず、財団への寄付と周辺ツール開発は、ソフトウェアの利用人口の拡大につながると考えていて、私たちはこれを支援したいと考えています。
この支援をすると何がいいかというと、Blenderはオープンソースで無償なので、若い学生さんなどに使ってもらえるというメリットがあります。このツールの利用でクリエーターが育ち、そして私たちの業界にたくさん参加してくれることを願って、このような施策も取りました。
施策4、リモートクリエイティブですね。またこのフォントですが、2年前です。今までも何度かお話ししましたが、この憎きコロナウイルスですね。
今もそうですが、2020年にコロナウイルスが出始めた時から、外を出歩かないとか、なるべく人が密にならないとか、3密を定めてみなさんできっちりと守って日々過ごされていると思います。接触機会を7割、8割減らしてほしいという話も出ました。
当然出社率も削減というところで、今はかなりリモートワークが進んで、会社に人がいるケースも減ったと思いますが、当時私たちは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を絶賛制作していたため、ここで出社を7、8割減らすと映画がそもそもできないというところでかなり悩みました。
先ほどお話ししたとおり、SaaS製品の導入などでリモートワークの素地を作っていたおかげで、デジタルパートの部分に関してデジタル化はできたのですが、実際に絵を描く、作画の作業に関しては、なかなか難しかったです。
そこに関しては、スタジオに来るクリエーターの数を調整して、なるべく密にならないように運用したことでなんとか対応はできましたが、今後は、液晶タブレットなどで絵を描いて、そのデジタルスキャンデータをアニメーションに持っていくデジタル作画も進みますし、またこのようなパンデミックが起きた時に柔軟に対応できるように、プロセスを再構築しようと考えました。
その中で、この4社で共同の実証実験を実施しました。液タブ(液晶ペンタブレット)のメーカーさんのワコムさんと、当社カラー、リモートソフトウェアを提供しているSplashtopさん、携帯キャリアのドコモさんですね。この4社で実証実験を行いました。
どういったものかというと、今はもうみなさんのスマートフォンにも表示され始めていると思いますが、5Gですね。高速低遅延な5Gの通信を使って、会社にあるPCに対して、外から液晶タブレットで絵を描きます。
画面共有転送型のソリューションです。リモートドローイングをする実験をクリエーターと一緒に行ったところ、高速・低遅延で絵が描けました。これもインフラ的なアプローチですが、こういったところから地道にいろいろとチューニングしようかなと考えています。
課題ですね。どの業界でも言えることだと思いますが、エンジニアが不足しています。私たち映像制作業界にも、音響のエンジニアや動画のエンジニアなど、いろいろ種類はありますが、情シスや技術的な業界の方々は、実はあまりいなかったりします。
ただ、テクノロジーというものは、今すごく業界の垣根を越えて抽象化されていると感じています。どの業界も具体的な専門知識はありますが、突き詰めていくと、最終的にはわりとどの業界でも使っているよねという考え方ができるのではないかなと思います。(スライドの)上に書いてあるとおり、セキュリティもそうですよね。あとはシステム投資に対する評価みたいな考え方も、すべての業界で言えると思います。
これはどういうことかというと、技術スキルは業界行き来のためのパスポート。エンジニアは場所を選ばないと考えています。
みなさん最初は、専門的なスキルを学んでエンジニアリングのキャリアパスを進むと思いますが、スペシャリストの方々もそうですが、ジェネラリストの方々も、わりと学ぶ領域が抽象的なレイヤーになってくると、実はどの業界に行ってもそのスキルを使えると考えています。
なので、「旅」と書きました。転職みたいなニュアンスになるかなと悩みましたが、旅と言いました。転職というと、ストレスがちょっとかかるイベントに感じてしまいますが、そうではなくて、今は雇用の流動化や副業という選択もある中で、働き方がいろいろ変わっています。
その中で、副業でももちろんかまわないと思いますし、転職でももちろん十分問題ないと思いますが、旅という感覚で、持っているパスポート、エンジニアリングのスキルでいろいろな業界に行って、足を運んで、その業界の専門的なスキルを学びながら、もともと持っている自分の技術的な素地をその業界で発揮するのはどうかなというところを、ぜひ今日はみなさんに聞いてもらいたいなと思いました。
下のほうに書きましたが、アニメ業界はとてもおもしろいですし、日々アニメの作り方に触れるので、ご興味あればちょっと足を運んでもらえたらなと思います。
「終わりに」ですが、これも僕の好きな言葉です。「技術は人なり」という言葉を言った方がいます。字が多くて、すべて読むのは大変なので割愛しますが、真ん中に書いてある、『すなわち「技術は人なり」といいうるのです』という言葉があります。
これを言ったのは、ファクシミリの開発者ですね。東京電機大学初代学長の丹羽先生のお言葉です。なにかのタイミングこの言葉を聞いて「いいなあ」と思って、この本を読みました。「立派な技術には立派な人を要する」と書いてあります。
「よき技術者は人としても立派でなければならない」。まあ、立派な人って世の中にたくさんいるかというとそれは難しいし、自分は立派だと思っていたらすごいなとは思うのですが、僕自身もとてもじゃないですがまだ立派とは言えない人間なので、そうありたいという願いも込めて書きました。
技術は人なり。いいシステムは、やはりいい人格のもとにできるというところで、若干精神論っぽくなってしまいましたが、そういったところを持って日々がんばっていきたいなと考えています。
というところで、「良きエンジニアリングによる良きトランスフォーメーションを。」というふうに書かせてもらいました。
いろいろな手段、技術、システムの進歩によって、それこそ変革、トランスフォーメーションはうまくでき始めてきたのではないかなと私個人は思っています。私たちの業界である映像制作業界もそうですし、すべての業界にITがかなり浸透したなと思っています。
まだこれからもトランスフォーメーションがたくさん起きていくと思いますが、そういった手法や、目的、それをどうやってうまくやるかというところをみなさんと一緒に考えていけたらなと思いますし、そういった考え方を持って世の中をよりよくしていきたいと思っています。私もわずかながらでも、そこに協力するためにがんばっていきたいと思います。
先ほどお話ししたとおり、エンジニア不足というところで、東京のスタジオ、カラーと、福岡のスタジオQ、どちらもCGのエンジニアや、インフラエンジニアなど、いろいろな場面でエンジニアが足りていない状態です。もし興味がある方いましたら、「@shinno」というIDでTwitterやっているので、そちらにDMで投げてもらいたいと思います。興味ある方は、ご連絡ください。
というところで、私のセッションは終わりにします。本日はありがとうございました。
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