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パネルディスカッション(全3記事)

「キャリアデザインや生き方は、もうすでに変化してきている」 DXの進歩が可能にする“自分でライフスタイルを選ぶ”こと

女性がエンジニアというキャリアに挑戦していく意義や、理系分野に女性が少ない理由について、ディスカッションする「女性こそエンジニアになるべき?- 私たちは好きなことに挑戦していい」。ここで株式会社ソウゾウの福田氏、早稲田大学の朝日氏が登壇。ここからは、参加者からの質問に回答します。前回はこちらから。

業界内に『女性エンジニアはこうだ』という空気はあるか?

やまざきひとみ氏(以下、やまざき):質疑応答でたくさん質問をいただいているので、できるだけお答えしていきたいなと思います。1つ目の質問からいきたいと思います。福田さん(宛て)かな。「業界内に『女性エンジニアってこうだよね』という漠然とした空気などはありますか?」。事実かはさておき、共通認識してなんとなく蔓延している考え方ってありますか?

福田里奈氏(以下、福田):昨日この質問を見て、その後、男性ばっかりのQAチームの朝会で「ある?」と聞いたら「ない」と言われて。「そうだよね」と。なので、ないと思います。

やまざき:「これが得意」とかも特に(ないんですね)。まあでも、先ほどのアンコンシャス・バイアスにもつながっちゃいますもんね。

福田:そうですね。そもそもあまりバイアスを持って接していないことが多いというか。意識するような出来事にあまり会わないので、ないと思って。周りの友だちはどうかなと一生懸命考えても、「あまりTwitterをやっていなさそうな友だちが多いかな」とか、エンジニアとぜんぜん関係ないところしか思いつかなくて。あまりないんじゃないかなとは思っています。

やまざき:なるほど。職業の中でも、特にジェンダーが本当に関係ない仕事なのではないかというイメージが、私にもあります。

福田:そうですね、特にもうリモートになったらぜんぜんなくて。出社の時にパソコンが重くて持てないとかがあるとしても、でも今はパソコンは軽いし、正直ないんですよね。

やまざき:なるほど(笑)。ありがとうございます。

女性エンジニアに対するアンコンシャス・バイアスは崩れつつある

やまざき:朝日先生はなにかありますか。

朝日透氏(以下、朝日):女性でエンジニアというと、ちょっとオタクみたいな。あと、視野が狭いという(イメージがある)。これもまさにアンコンシャス・バイアスです。僕はぜんぜんありませんが、やはりどうしてもそういうイメージがあるので、それを少し変えていく必要がある。

どういうことかというと、最近はそれこそブラインドタッチでバババッてやっている普通の女子学生がいっぱいいるわけですよね。だから、もうだいぶ崩れつつあるんじゃないかなとは思います。

ITでプログラマーというと、「ちょっと(やるのは)女性じゃないでしょう」というイメージがあったんです。でも、先ほどのキーワードで「デジタルトランスフォーメーション」とあったように、もうITやデジタル化というものを使ったビジネスや領域やライフスタイルが、世の中に入ることが普通になってくるから。

別に、ITでパソコンをバチバチと女性がやっていても、ぜんぜん違和感がないですよね。もっと言うと、電車の中でもバチバチやっている女性がいても、ぜんぜん違和感がないです。僕はもうそういう時代になったと思います。

やまざき:お話を聞いていて思いますが、私が知っている女性エンジニアの方って、実はかっこいい人が多いなと思っていて。プロフェッショナルだし、自分のライフスタイルを叶えている方が多い。私たちMs.Engineerは、むしろそういうイメージを多くの方に持ってもらいたいということをすごく思っています。

エンジニアをしながら子育てしてよかったこと

やまざき:では次の質問にいきます。こちらも福田さんへの質問かなと思うんですが。「現在、笑顔で子育てをしたいという思いで、より働きやすい環境作りに積極的に取り組んでいるIT業界、エンジニアへの転職を目指しています。エンジニアをしながら、子育てのこれまでを振り返ってよかったことを教えてください」。どうですか?

福田:そうですね。何がよかったかな。冒頭で言ったとおり、私が10年ぐらい働いていた会社の時に、初めて育休と産休を取ったんですが、その時はもう会社を辞めようかなと思っていたんですけど。

途中で「やはり働かないとまずいな」と思って、やはり育休にしたり、「もうちょっと時間を短くしたい」「長くしたいです」みたいなのを会社に伝えて。普通だと、「今までの実績が……」みたいなのがありますが、(育休・産休をとった人として)自分が初めてだったので、社長さえOKだったらOKみたいな感じでどんどん提案ができて。自分の働きやすい環境に自分が変えられるのは、たぶんよかったかなと思っています。

もちろんよくないこともあって。私は1時間ぐらいかけて通勤していて、正社員で働くとなった時に、遅くまで仕事をしていた時があったので。早いと7時前に家を出ていて、子どもに「行ってらっしゃい」も「お帰り」も言えないみたいなこともあったんですけど。

ちょうど今さっき子どもが帰ってきたようなのですが、今では「行ってらっしゃい」も「お帰り」も言える。やはり家族と近いところで、今までと変わらない働き、時間を実現できるのがまずよかったかなと思います。

不真面目なことを言うと、私は福岡にいてソウゾウは東京にあるんですが、今は2年ぐらいできていませんが、出張とかで東京に行くことができたんですね。お母さんが出張で東京に1人で行くってなかなかないんですよ。正直、ちょっと羽が伸ばせるみたいな(笑)。

やまざき:大事ですよね。

福田:やはり「本当にうらやましい」と言われる。もちろん自分の場合は夫の協力や実家の協力がけっこう得られるような環境にいることもあるんですが。子育てだけが仕事じゃないじゃないですか。「羽も伸ばしたいし」みたいなこともできるのはよかったなと思っています。

あとは、昨日の夜に中学校の子どもになりたい職業を聞いたら、一応「音楽関係の仕事か、ママみたいな仕事」と言っていたけれど、あまり私の仕事を理解はしていないと思っているので。

やまざき:でも血を受け継いでいらっしゃいますね。

福田:でもまだ視野がぜんぜん狭いと思っているので、できるだけ広げてあげたいなと思っています。

やまざき:いいですね。お母さんをかっこいいと思っていそうな(感じで)。

男女でキャリア形成に対する流れが大きく異なる印象はあるか?

やまざき:次の質問です。これは朝日先生におうかがいしたいんですが、「男女でキャリア形成に対する流れが大きく異なる印象はありますか?」ということです。いかがでしょうか。

朝日:キャリアデザインに関しては、今まではやはりあったと思います。というのは、例えば育児は、男性・女性にうまく分担して、シェアしながらやればいい。ただ、主に男性がやったほうがいいようなこととか、女性がやったほうがいいようなことはやはりあるんじゃないかなと。それは別にそれでいいと思います。

要は、「結婚したら女性は家で家庭を守って」というような、今までの極端な流れは、やはりまだまだあるんじゃないかなと思うんです。ただ、やはりこれから子どものいろいろな教育にかかるお金とか、子どもがなにかをやりたいと言った時にやらせてあげたいとか。または、自分たちが結婚したり、自分の生活をやりたいようにやっていこうと思った時、やはりお金がかかるわけです。これは避けてとおれません。

その時に、今までは自分の結婚する相手や自分の親とかに頼って生きていくしかないというか、生きていくことしか浮かばなかったわけです。

それが、例えば自分のご主人の給料だけではなくて自分の稼ぎがあれば、結婚した後も自分たちが子どもたちにしてあげられることや、自分のやりたいことができるようになるんじゃないかと。

その中で、特にプログラミングやそういうスキルは、今日何度も話に出ていますが、やはり在宅でできるわけですね。DXが進めば進むほど、医療ですらオンラインになりつつあるわけです。家で治療を受けられるようになった。

そういう世の中を想像すれば、自分が会社に行くことがあったとしても、その回数は圧倒的に少なくて。そうなると、今まで想定していた「私がもし結婚して子どもが生まれたら、こういうふうなことになる。ああ、無理無理無理。絶対無理」と言っていたことが可能になるんじゃないかと。

そういう意味で、キャリアデザインが大きく変わるんじゃないかと(思います)。今回のコロナによるニューノーマルとDX、デジタル化がすごい勢いでいろいろな生活に入ってきたことによって、キャリアデザインが変わってくるんじゃないかなと思っています。

やまざき:ありがとうございます。特に若い人とお話をすればするほど、やはり今後共働きが前提なので、男性側も「自分のお父さんのようには、たぶん将来はならないだろうな」という意識変化があるんじゃないかと私もすごく感じています。

朝日:特に会社のサイクルがすごく早くなってくるし、会社のビジネスモデルが生き延びていくために変わっていくことはよくあることで。そういうことがあった時に、今までは自分が会社にいて「うーん」と思っていても、我慢して働かなくちゃいけなかったのですが。

自分のやりたいようにスキルを身に付けたり新しく学ぶことで、自分がやりたいライフスタイルというか、男性も会社を自分で選んでいく選択肢も出てくる。なので、もちろん我慢してやらなくちゃいけないこともあるけれど、自分が我慢してやるだけではなく、時代の波に少し乗って、先取りをしながらやっていくことで、充実感を味わったり、自分がやりたいことと会社が求めていることがマッチするような環境を、自分で求められる。

そのためには社会人になっても学びを重ねていって、それでまた少しスキルを身に付ける。そういうこともできるようになってきたんじゃないかなと思っています。

やまざき:ありがとうございます。時間が迫ってきましたが、福田さん、簡単になにかありますか?

福田:簡単に(笑)。

やまざき:変わってきているな、みたいな。

福田:そうですね。前の会社も今の会社もそうですが、私たちの会社は男性の育休の取得率がたぶんものすごく高くて。特に私が今いるソウゾウという会社は、男性やエンジニアで小さいお子さんがいらっしゃる方が多くて。

みんなカレンダーに「夕方の5時から子どもの時間だからブロック」「子どもを病院や保育園に連れて行く」とかをCTOもしているような感じで。

たぶん私たちのようなIT企業って、働き方が自由だから、どちらかというと(ママよりも)パパのほうがけっこういろいろできちゃうようなことも普通に見ているので。キャリア形成というか、そういう中で私たちが最大限に価値を届けられたり発揮できるようになってきているので、男女でという考え方はあんまりなくなっているんじゃないかなと思っています。

やまざき:ありがとうございます。

子どもが小さい時に一緒に過ごす時間も作れる時代になってきた

朝日:ちょっとよろしいですか。やはり中学校以上になってくると、別に男女関係なく、父親、母親が子どもと接する時間ってだんだん減ってくるわけですよね。小さい頃に、一緒にいられる時間はあっという間なんですよ。

その小さい時に一緒に過ごす時間を作れるのは、これは父だろうが母だろうが関係なく、あっていいものだと思います。そうすることで、子どものいろいろな人間的な生活というものに触れる時間が増えてくるんじゃないかと思うんです。母だけとか、父だけじゃなくてもね。

忙しくて、睡眠時間も取れないような働き方をしなくちゃいけない時もあると思う。だけどそれはそれ。在宅ならそうじゃない時間も作れる。育休みたいなものも男性が取ることは悪いことではなくて、会社自身がそういうシステムを作って男性が育休を取ることで、男性自身も「自分は子育ても一緒にやりたい」とか。

もっと言うと、育休だけではなくて、学生の頃これを学びたかったけど、忙しくてできなかった。自分のキャリアがどこに合うかもよくわからなかった。だけど、会社に入って社会人になって、「ああ、自分はこっちだと思ったけど、ぜんぜんこっちのほうが合っているな」とわかった時に、もう戻れないんですよ。日本の場合はなかなか(変えるのが)難しかった。

だけどそうではなくて、「こっち側のほうが自分に合っているな」とわかった時に、「じゃあそこにかかわるスキルを身に付けよう」となったら、学びをする時間が必要ですよね。その時間を捻出することが、オンラインやそういうものが入ってきたことでやっと少しできる時代になって。

キャリア形成や生き方が、今までとは変わってきていることは間違いないと思います。そういう中で、エンジニアリングセンス、スキルを身に付けておくことは、非常に有効なんじゃないかと思います。

やまざき:ありがとうございます。もう、ちょっとソウゾウやメルカリさんが夢のような環境だと感じた方も多いんじゃないかなと思いますが。時間なので、こちらで終わります。

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