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今話題のNFTの本質とは一体何なのか?(全2記事)

「“NFTバブル”は終わっても、技術的な発展は続いていく」 情報に流されないために意識したい「現実世界に置き換える」こと

メディアやSNSなどで毎日のように目にするようになってきた“NFT”というワード。私たちに身近な企業が取り組むことも増えてきたNFTですが、その正体をよく理解できていない方も多いことでしょう。そこで今回は初級編として、世の中に溢れる情報にも触れつつ、NFTについて整理します。ここからは、NFTが“バブル”と言われる原因と、ブロックチェーンやメタバースとの関係、初心者がNFTに関わる上で注意すべきことについて。前半はこちらから。

NFT絡みのゲームはシビアな世界

ーー最近ではNFTゲームに関する話題も多いですが、NFTゲームもNFTアートと同じように気をつけるべきことはありますか?

ヨーロピアン氏(以下、ヨーロピアン):NFTゲームは現実世界への例えが難しいですが、ポケモンカードや遊戯王カード、『マジック:ザ・ギャザリング』のような対戦型のカードゲームがあるじゃないですか。特に『マジック:ザ・ギャザリング』とかは、レアなカードはすごく高額で売買されているらしく、ものによっては100万円とか1,000万円という世界らしいです。NFTゲームもそれと同じようなことが起きています。

NFTゲームと呼ばれている中で有名なものでいうと、『Axie Infinity』、通称「アクシー」があります。

Axie Infinity

これはNFTのアクシーちゃんを育てて戦わせるゲームです。育てて戦わせて、そこから報酬として暗号資産、ファンジブルのトークンを得る。つまり、ゲームで稼げるんですよ。

なぜかというと、バトルで勝って手に入るこのトークンを売却することで、利益を得られる(Play to earn)から。つまり、このゲームにおける強いアクシー、レベルの高いアクシー、レアなアクシーは、稼げる力に直結するんですよ。カードゲームでレアなカードが戦いに有利になるのと同じように、レアなアクシーを持っているとたくさん稼げる仕組みになっているんですよね。

そうなると、このゲームがおもしろいかどうかをいったん横に置いておいて、お金稼ぎの手段となってしまう。もはや労働みたいなものです。ゲームをやって効率よく稼ぐためにいいアクシーがほしい。高額なNFTがほしいとなる仕組みになっています。

きちんと整理をしていくとわかることですが、得たトークンを誰が買っているのかというと、新しくそのゲームに参入してくれる人なんですよね。どういうことかというと、新規にゲームに入ってくる人の最初のイニシャルコスト、参入するために払う費用が、今アクシーに参入してゲームを遊んでいる人たちの報酬になっているんです。すごくわかりやすくいうと、ねずみ講みたいになっている。

だから、NFT絡みのゲームはけっこうシビアな世界というか。「なんで普通のNFTゲームで遊ぶのに、いきなり30万円ぐらいするNFTを買わなくちゃいけないんだ」と思うかもしれませんが、実態としてはそんなふうになっていたりします。

アートよりも余計に経済合理性を剥き出しというか、ゴリゴリの鉄火場みたいになっているので、初心者が入るのは少し大変です。「やたらお金のかかるNFTゲームはやらないほうがいい」というのが僕からのアドバイスですかね。

“NFTバブル”は終わっても技術的な発展は続いていく

ーーなんとなく、「NFTはバブルだ」と言われている理由がわかったような気がします。

ヨーロピアン:“バブル”という言葉が出てきたのでその話をすると、NFTのアートでは、「本気で自分が最終保有者になるなら、せいぜい1万円ぐらいしか出したくないな」と思うものでも、「他の人に売れるなら30万円でもいいな」とほとんど全員が思ってお金を出しているんですよね。でも、それって冷静に考えたらやばいじゃないですか。この構造自体はおそらく長続きしないので、“バブル”と呼ばれている。

例えば、少し絵が得意な人、イラストレーターみたいなことをやっている人がいて、ふだんの仕事では1点10万円ぐらいで引き受けている人が、「NFTです」と言って自分で発行して出したら、300万円で売れちゃったみたいな世界。これはたぶん近いうちに無くなります。

なぜかというと、これまで買ってきた人が「NFTが飽きてきたから売ろうかな」となった時に、「30万円で買ったので35万円で売ろうかな」と思って出してみたら、「あれ? 買い手が見つからなくね?」と気づくんですよ。みんながそれに気づき始めると終わります。

バブルはほぼ確実に終わると思いますが、これまでの過程ですごくお金が回っているので、NFTアートの売買プラットフォームはすごく市場価値がついています。投資家からたくさんのお金が集まって、時価相場がすごく高くなっているので莫大な企業価値がある。要するに、莫大な資金調達をしているので、お金があるんですよ。お金があるから、彼らはNFTの未来に向かって技術的な投資ができます。バブルのおかげです(笑)。

最終的にはバブルでみんな少しずつ損をします。でも、みんなが損したそのお金が回り回って、技術の発展に役立つんですよね。なので、仮にNFTバブルが崩壊したとしても、NFTアートとして出回っているものの平均的な価格が下がるようになっても、技術的にNFTが終わりかというと、たぶん終わらないです。

NFTのゲームとか、NFTを使ったゲームやアート以外の違う文化や技術の発展はこれからたぶん起こりうると思うし、Web3.0の文脈の技術もどんどん研究されて、開発されて広がって、便利になっていく可能性はすごく高いと思います。

だから“NFTの発展”という意味ではどんどん進化していくけれど、今のNFTアートやコレクション、ゲームのアイテムを持っている人は、まあまあな確率で損するんじゃないかと思っています。

ーーNFTの投資の側面の部分はいったん終わるけれど、技術的な進歩は続いていくだろうと。

ヨーロピアン:終わるというか、投資も妥当な水準に落ち着くという感じですかね。だってNFTアートとは言っても、僕らはそもそもふだん家に高尚なアートとか飾らないじゃないですか。大半の人は、本当はアートにそこまで興味がないんですよ。

10万円、20万円、30万円みたいな高額を支払ってアートを買って帰るなんてことしないじゃないですか。やらない人がほとんどなのにブームになることがそもそもおかしいんですよ。そもそもの土壌がないわけじゃないですか。

NFTとブロックチェーンは兄弟のような関係

ーーおっしゃるとおりですね。ほかにもNFTはブロックチェーンやメタバースと絡めて語られることも多いですが、これらはどのような関係性になっているでしょうか。

ヨーロピアン:ブロックチェーンとNFTの関係でいうと、NFTの登場以前であれば、ブロックチェーンは99パーセント仮想通貨のことを指していました。でも、厳密にはNFTは暗号資産(仮想通貨)ではありません。だから、兄弟ですかね。「仮想通貨とNFTは兄弟みたいな関係になっていて、どちらもブロックチェーンという技術を使っているもの」ということになります。

NFTとブロックチェーンは今のところは切り離せません。もしかしたらブロックチェーン以外の技術を使ってNFTを実現できる日が来るかもしれないけど、たぶんしばらくはないので、NFTは今のところ100パーセントブロックチェーンを使っていることになるし、仮想通貨も100パーセントブロックチェーンを使っているという話になります。

NFTとメタバースに直接的な関係性はない

ーーメタバースとはどのような関係でしょうか。

ヨーロピアン:メタバースは関係ないですね。同じぐらいのタイミングで出てきたバズワードなので「なんか関係あるんじゃない?」みたいな感じでザックリと話に出ているんだと思いますが、ほとんど関係ないです。

もし関係性を無理矢理見出すのであれば、例えば自分の仮想現実の空間上の部屋にアートを飾りたいと思った時に、そのアートの価値を担保できるような技術としてNFTが使われるかもしれないとか。あるいは仮想通貨の話でいうと、メタバースが広く普及したことで、みんながデジタル上の決済手段をもっとたくさん使うようになるかもしれないとか。それぐらいの間接的な関係性だと思います。

だから「メタバースにはNFTが必要不可欠」みたいな言い方は嘘だと思います。「そこまで関係はないけれど、使えないこともないんじゃない?」ぐらいの認識です。

ーーメタバースとNFTの話題でいうと、個人的にはアバターの衣装の話がよくあがっているように感じていました。

ヨーロピアン:NFTはアバターの洋服などにも使えますが、本質的にはどうなんでしょうね。さっきも言ったように、一点物というか、希少価値を持たせてアバターに着せたいというニーズがあればたぶん使えますが、普通の人が着るアパレル製品に一点物という概念はあまりないですよね。

だから、一点物で売るよりは、せっかくデジタルなんだからコピーできたほうがいいと思うんです。ノーコストでコピーできるのがデジタルのいいところなので。アバターの洋服とかの話でいうと、NFTではないほうがむしろいいんじゃないかと僕は個人的には思います。ただ、考え方はそれぞれなので、そういう使い方ができなくもないということですね。

新しい情報が出てきた時に大切なのは「現実世界に置き換える」こと

ーーNFTはこれからもどんどん新しい情報、徐々に変わっていく部分もあると思いますが、今後新しい情報が出てきた時に、振り回されることなく、冷静に分析するためにどのようなことを意識すればよいでしょうか。

ヨーロピアン:僕のこれまでの回答でも、度々「現実世界に置き換えるとこういうみたいなものだ」とお話していたと思いますが、自分の知っている知識の中で他のものに例えて「こういうものだな」と理解することがけっこう大切です。

よくわからないものだから余計によくわからなくて、でも今NFTのアートとかNFTのゲームのアイテムとかですごい値段がついていて、「自分はよくわからないけれど、すごい価値のあるものなんじゃないか」とか。「最新のトレンドの技術だから、世界を革命的に変えるものなんじゃないか」みたいな。未知の物への恐れというか、崇拝みたいなものが生まれてしまうと、物事を正確に見積もれなくなるというか、過大評価になってしまうと思います。

だから、「現実的にはこういうものだ」と押さえた上で、例えば「NFTアートが今すごい」と言われた時に、「僕らは現実世界でアートにそこまで関心を持っていたっけ?」というところに立ち返ってみれば「自分の人生で今までアートなんか買ったことないや」と気づく。

「買うとしても、家に飾るなら出せても5万円ぐらいだな」とか。そういうふうに思っていれば、「意外と大したことないものに値段をつけているな」という感じで、一歩引いて見れると思います。

今回はアートとゲームの例えで説明しましたが、今後の新しい文化や違う利用方法が出てきて、「これがすごい」「あれがすごい」といろいろな人がポジショントークで言ったり、そういう情報が出てくると思います。

それでも1回ちょっと立ち止まって「それってNFTじゃないといけないんだっけ?」「NFTじゃなかったら別にすごくなくないか?」と、NFTというバズワードを1回剥がして考えてみるといいかなと思います。

ーー「NFTだから」という前提があるから突き進んでしまうというか、「急がなきゃ!」という感情になってしまうのかもしれません。

ヨーロピアン:「トレンドの技術だから知っておかなきゃやばい」とか思う方もいるかもしれませんが、別にそんなことなんです(笑)。僕は毎日のように情報にも触れているし、NFTに関する話題もウォッチしていますが、本当に大したことないです(笑)。

一部のマニアとかの間で高額で売買されているものは、NFTに限らずいろいろなものであると思うんですよ。だけど、ほとんどの人たちには関係ないんですよね。だから、「全世界の人を巻き込んで発展する」とか、「知らなきゃやばい」「時代遅れです」ってことは絶対になくて。好きな人はとことん追求すればいいですが、大半の人にとっては「関係ない」で済ませられると思います。

こういう話をすると「知らないでは済まされない」とみんな言いますが、知らなくても僕はいいと思います。それくらいの温度感で考えておいて、興味があったら調べてもいいし、調べた結果さらに興味が深まったなら手を出してみてもいいぐらいのもの。「乗り遅れたくないから触ろう」みたいな感じでいくと、悪い人に騙されたりすることもあるので、気を付けたほうがいいと思います。

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