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【いつまで続く】長引く半導体不足、回復のプランは?/東芝の有識者が海外のサプライチェーン問題や自動車・スマホ向け需給を解説(全2記事)

自動車業界の半導体不足はいつ解消するのか? 回復プランの鍵となる“自動車産業専用製造ライン”

天野眞也氏が業界をリードするイノベーターたちと対談を行い、「日本の未来」「製造業の未来」について発信していくチャンネル「AMANO SCOPE(アマノスコープ)」。今回のゲストは、東芝チーフエバンジェリストの大幸秀成氏と、ものづくり系YouTuberのものづくり太郎氏。長引く半導体不足の解消について話しました。全2回。後半は、半導体不足の解消方法について。前半はこちら。

自動車産業の半導体不足はいつ解消するのか

天野眞也氏(以下、天野):ちなみに大幸さんはどうですか? 自動車業界の半導体不足はいつぐらいに終息すると思いますか?

大幸秀成氏(以下、大幸):難しいですよね(笑)。

天野:大幸’s Eyeだとどうでしょう?

大幸:まだいろいろな物流も若干詰まっているところと、車産業が一気に民生部品を採用し始めるかというと、徐々にはあると思いますが、一気には移行できないでしょうから。

天野:今の構造上、そういうことですよね。

ものづくり太郎氏(以下、ものづくり太郎):難しいでしょうね。

大幸:そういうのを見ると、最低でも半年はかかるんじゃないですか。

天野:「喉元過ぎれば~」という話もある一方で、早くここを解消してもらわないと、なんだかんだ言って自動車産業はいろいろな産業に対するモーター、牽引役なので…。

大幸:でも、半導体目線で見ると自動車産業は牽引役じゃないんですよ。

天野:そういうことなんですよね(笑)。

大幸:そういうことなんですよ(笑)。

天野:今聞いていて、構造上の怖さを感じましたね。

大幸:どのぐらいの需要が車業界にあるのかといった時に、スマホやタブレットとかと比べると、需要数の桁が2桁、3桁違うので。半導体業界もきちんと(車産業を)サポートしたいと思うんだけど、さっき言ったような特殊規格品で固められた産業で、なおかつ部品点数が多い。ということは、1個数円の半導体が入らないために、200万円、300万円の車が造れないという事態になっている。

天野:そういうことですね。まだ半年以上はかかる。

大幸:そもそも汎用品の固まりなので、どれか1個でも足を引っ張るものがあると作れないんですよ。

ものづくり太郎:まさに「業界のジレンマ」ですね。

大幸:ジレンマですね。

ものづくり太郎:自動車業界から「半導体がんばってほしい」と言われるけど、半導体業界としては「いや、あんたのとこ厳しいし」「注文も多いし」ということですよね(笑)。

自動車業界を救う「自動車産業専用ライン」

大幸:車メーカーが考え方を変えようかなと言い始めていて、ロングスパンのオーダーを出すという考え方が出てきています。ジャストインではなくて、ロングスパンのオーダーを出す長い期間、もしくは製造ラインそのものを車メーカー用に確保しちゃうという。

ものづくり太郎:僕、それをなぜしないのかなって思っているんですよ。

大幸:やり始めました。

ものづくり太郎:本当ですか?

大幸:はい。ちょこちょこ出始めました。

ものづくり太郎:ルネサスとかにラインを買っちゃったんですか?

大幸:そうでしょうね。メーカー名はオープンにはなっていませんが。

天野:「自動車産業専用ライン」を作っちゃえばいいんですね。

ものづくり太郎:突っ込んじゃうんですが、今の半導体ラインはいろいろなものを一緒に流しているじゃないですか。だから、ああいうジレンマが起こっちゃっている。

天野:そりゃ、数が出るところにいきたいですからね。

ものづくり太郎:いきたいし、僕は自動車業界は自動車専用ラインみたいな感じで、一緒に出資しちゃって作っちゃえばいいと思っているんですね。

大幸:その通り。そうだと思います。

ものづくり太郎:お金はかかっちゃうけれど、リスクを鑑みたらぜんぜん違っていて、確保すべきですよ。本当に的を射ているなという感じですよね。もちろん上の頭いい人たちは気づいていると思うので。

天野:これをきっかけに、その動きは確実に加速しますよね。

大幸:そう思います。だけど、網羅的にはたぶんならないでしょうから、キーコンポーネントを決めて、ある分類から手を付けていくことになると思います。だから、結局抜けはあって、パーフェクトにはならないだろうなと。でも、だいぶ変わるだろうなと予測できます。

ものづくり太郎:それはすばらしい吉報ですよね。

大幸:そうですよね。

ものづくり太郎:半導体業界も、工数をそこに丸投げできるし、自動車業界も確保できるし、自動車業界の裾野の広い業界にとってもプラスですよね。こういうところに支援は付くのかな、どうなんですかね。すごく本質的じゃないですか。本来であれば、そういうところはしっかりバックアップすべきだなとは思います。

大幸:最初のトライアルのところに官民協働でプログラムを付けて、それが終わったら具体的に商売として、企業、民間に任せるという流れを作るのもいいとは思いますね。

ものづくり太郎:そうですね。すごく理にかなっていて、おそらく今日の話の流れで熊本に半導体工場ができるわけじゃないですか。

大幸:TSMCですね。

ものづくり太郎:あのあたりもスマホの次の話題として、ぜひ話していただきたいなと思いますね。

天野:本当にそうですね。世界中の自動車向けに、自動車の半導体専用ラインを日本にどんどん作っちゃいたいよね。

大幸:それはあり得ますね。

ものづくり太郎:しかも、スマホに積まれているような超ハイエンドではないじゃないですか。だから、作ろうと思えば作れちゃいますよね。

天野:大事なのはやはり信頼性というところと、トレーサビリティだと今うかがったので、別に5ナノとか今は要らないわけですから。

ものづくり太郎:要らないと思う。

天野:それをしっかりと日本で車向けのラインを作りませんか? みなさん(笑)。 

ものづくり太郎:ピンチだけど、チャンスだと思うんですよね。

大幸:チャンスだと思います。

ものづくり太郎:ここを取っちゃえば、全世界の車業界にでかい顔ができるわけですから。

天野:「専用ラインを引きました、いつでも供給できます」と言ってしまえば。

大幸:ただ、車メーカーさんも、実は昔からある半導体分野だけは自己出資して育てて、オペレーションをしている部分もあるんですよ。でも、それは何かと言うと、だいたい「パワートレイン」という駆動部分に使うパワエレに近いような半導体、もしくはセンサーです。なので、センサーだとボッシュやデンソーが強い。つまりTier1と言われているメーカーが、センサーの半導体を作っているケースもあります。

ものづくり太郎:日野市にも工場がありますもんね。

大幸:パワエレの部品をモジュールにするのは自社でやって、チップはメーカーから買うというバリエーションはずっと前から始まっているんですよ。だけど、いわゆる演算とかプロセッサーとか、制御というよりもむしろ情報処理をする部分に関しては、後手に回っていた。これがこれから始まればと思います。

ものづくり太郎:いいですね。

スマホが一番早くリカバリーした理由

大幸:では、次はスマホの話に……。

天野:そうですね。ぜひこの流れで。

大幸:実はスマホはだいぶ(供給不足が)解消してきたという話なんですよ。

ものづくり太郎:そうなんですか?

大幸:そうなんですよ。

ものづくり太郎:何が違うんですか?

大幸:何が違うかというと、まさしくさっきの車の話の逆。

ものづくり太郎:いっぱい売れるから?

大幸:専用ラインを持っているんですよ。

ものづくり太郎:そっかそっか、そうだわ。

天野:あ~。

大幸:Apple向け、サムスン向けというラインを、半導体も、ケーシングも持っているんですよ。そこの設備の投資もAppleなり、サムスンなりが負担していて、そこで流すものはいち早くリカバリーできるようになっている。

ものづくり太郎:超優先ラインみたいな感じだし、売上も立つし、利益も見込めるから、そこのラインは経済合理性が成り立っているわけですね。

大幸:そうです。とにかく最終完成品としての安定供給ですね。これにコミットしないと、1年サイクルでニューモデルが出るのでついていけなくなるんですよ。

天野:しかも、毎回新しいものがチップとして載っていますもんね。

大幸:そうなんですよ。

ものづくり太郎:そこはすごいですよね。

大幸:当然、汎用品もいっぱい使っているので、供給問題があるんじゃないかという話になりますが、こっちは民生なので、ある意味高くても買うよと言ったら、どこかから集まってくる。変な言い方ですけど(笑)。

天野:別にトレーサビリティどうのこうのじゃないですもんね。

大幸:そこまではうるさくないですね。

ものづくり太郎:自動車ほどではないでしょうね。

天野:集まってくるルートだって当然たくさんありますからね。

大幸:まだ今月(※動画収録当時)ぐらいまでは、例えば「iPhone13」の供給がちょっと滞り始めていて、年末のクリスマスはどうしようかという記事が出ていたりします。どこまで本当かはちょっとわからないですが。

天野:実際はどうだろう。

大幸:もうおそらく解消しています。

天野:2~3週間待ちで来ましたけどね。

大幸:来ますよね。ほかの電気電子産業の機器と比べると、スマホは一番早くリカバリーしている。

ものづくり太郎:だから、ビジネス合理性が成り立つところからやはり解消していくんですね。「ビジネス合理性の最後が自動車」というのは、なんとも情けない話ですよね(笑)。

天野:でも、次のビジネスチャンスじゃないけれど、僕はそこに本質が見え隠れしたんじゃないかなという気がすごくしました。本当にこれはみなさんにぜひ参考にしていただけたらなと思いますね。

ものづくり太郎:これだけ語れたらすごいですもんね。

なぜ熊本に2世代遅れのクリーンルームが作られるのか

大幸:そうですね。先ほど天野さんが言われたように、熊本になぜ今から2世代遅れたクリーンルーム(TSMC)が建つのかということですよね。

ものづくり太郎:すごい皮肉っています?(笑)。

大幸:いやいや(笑)。

ものづくり太郎:違う?(笑)。 ごめんなさい(笑)。

大幸:いやいや、これは皮肉っているわけじゃなくて、なぜかというのが今までしゃべった内容とつながっているから。

天野:みなさん絶対聞きたいじゃないですか。次回も絶対見てね〜、ということで、よろしくお願いします。ここから盛り上がります。

大幸:盛り上がります。

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