CLOSE

【藤田晋氏×堀江貴文】サイバーエージェント藤田晋社長が、ホリエモンの宇宙ビジネスに出資した理由(全3記事)

宇宙開発が進むと「プライバシーがなくなる」時代が訪れる? 堀江貴文氏が予測する、宇宙ビジネスの未来地図

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社。第三者割当増資により、シリーズDラウンドで総額17.7億円の資金を調達しました。今回は、サイバーエージェントの藤田晋氏が堀江貴文氏の宇宙ビジネスの出資に至るまでの舞台裏や、インターステラテクノロジズへの期待、両社が描く事業シナジーなどを語ります。

「偉い人」の声が通り、最適解から遠ざかる

堀江貴文氏(以下、堀江):おもしろいのは、政府がやっているような宇宙開発とかが今は世界的にすごく迷走していて、アメリカみたいなでっかい国でも、目標というか道しるべをいったん見失うと、けっこう失敗の方向に行っちゃったりする。

インターネット以上に間違った方向にね。例えば、サン・マイクロシステムズの高いサーバーを使ったところで、そこまでダメージはないんだけど、宇宙開発となると桁が何個も違うから。

日本の宇宙開発も、今JAXAがやっている「H3」という新しいロケットが、今けっこう暗礁に乗り上げているというか。エンジンのシステムには何個か方式があって、僕らが採用しているのは一番ベーシックで簡単な方式だけど、性能はそこそこみたいな。

だけど、国のやつはもうちょっと性能がよくてチャレンジングな、誰もやったことがないことをやりましょうという感じになっていて、それが原因で暗礁に乗り上げているところがある。

やっぱり、偉い人とか頭のいい人がたくさん集まると、これはこれで船頭が多くて、結局ちょっと声がでかい人の意見が通っちゃう。それがベストな解じゃないのに、なんでそっちに行っちゃったんだろうという話になっちゃうのが、おもしろいかな。

藤田晋氏(以下、藤田):そうなのかな。だから、イーロン・マスクみたいな起業家ができたってことなんだろうね。

堀江:そうね。逆に言うと、イーロン・マスクはそんなにいないっていう。

藤田:うん。それこそ、うちの投資委員会が投資する時に言っていたのは、「堀江さんはイーロン・マスクになる可能性があるよね」って。

堀江:(笑)。

藤田:人を見て投資しているから、そこにかけて張っておいたほうがいいんじゃないかという感じだよね。

技術力そのものよりも、注目すべきは「やりきるかどうか」

堀江:でもね、僕もここにきて、技術力とかよりも、最終的に「この人はやりきるかな」「やりきらないかな」というところのほうがでかいなっていうのはすごく思う。

藤田:そうだろうね。さっきの国の話で言うと、俺は日本ベンチャー大賞の審査員をやっていたんですよ。大賞になるのって、ミドリムシの会社(ユーグレナ)とか、CYBERDYNE(サイバーダイン)みたいな会社なんですよね。

堀江:うん。

藤田:ああいう、世の中の問題を技術力で解決するベンチャー企業が表彰されがちなんだけど、本当は堀江さんのロケットの会社は、まさしく国に応援されるような分野だと思うんだよね。

堀江:ここは本当に個人的というか、ある意味ポジショントークになるんだけど、IT業界の時って、国に関わる仕事をぜんぜんしていないわけですよ。だって、国に頼らなくてもできたし。

藤田:そうなんだよね、うん。

堀江:だから、あんまり政府の人たちとも関わっていない。ただ、ここにきて、やっぱりロケットって許認可の問題もあるし、飛ばす場所の確保とか、さまざまな分野でめちゃくちゃ国に関わってくる部分があるわけですよ。

それが、けっこう細かい問題で。例えば、無線もいろんな周波数帯を使うわけ。テレビの電波と同じくらいの周波数帯も使うし、Wi-Fiと同じような周波数帯も使うから、うちの会社も免許を何個か持っているんですよ。

最初は実験試験局の免許を取るけど、商用利用できないとか言われるわけですよ。それを、(インターステラテクノロジズ社の所在地が)北海道だから北海道総合通信局というところに行って、「これはどうやったら商用局に切り替えられるんですか?」みたいな話をしたら、「いや、実験局のままだと無理なんですよ」と言われて。

「じゃあ、どうやって商用利用すればいいんですか?」「商用免許を取ってください」「それはどうやって取るんですか?」「それは何か実績を積んで」みたいな話で、「えっ」てなって。

人工衛星を乗せればロケット、爆弾を載せたらミサイル

堀江:だけど、当時たまたま野田聖子さんが総務大臣で、前から知っていたんで、話をしに行ったの。政治家の人たちがすごいのは、その場で電波の免許を担当する局長を呼んできて、「どうなの?」って話をしたら、「それは実験局の免許を切り替えればいいんです」って言われて。

「商用利用する時に『商用利用します』と言って、実験局の免許を商用局に切り替えればいいんです。携帯電話の会社も、そうやっているんです」みたいな話になって。その場で話は解決したんだけど、そういう話をしなければいけないことがたくさん出てきて、政治とすごく関わるようになった。

何回も言うけど、ロケットの先に人工衛星を載っければロケットになるんだけど、北朝鮮のロケットがいつも「ミサイル、ミサイル」と言われているのと同じで、先っぽに爆弾を載っけるとミサイルになっちゃうんで、輸出が難しいんですよね。

藤田:なるほど。

堀江:国外に持ち出すのがすごく難しいから、実質的に日本国内で打ち上げる話になるので、IT企業だと、もしGAFAのようなグローバル企業になったとしたら、日本国に税金を納めないかもしれないじゃない?

なので、そういうふうに国に頼るのはあれかなと思っていたんですけど、僕らは確実に国内に雇用を作って、国内のサプライチェーンで調達をして、国内に税金を納めるんで、これは成長産業として国に支援してもらっても悪くないでしょうっていう。

藤田:うん。でも大樹町から飛ばしているのは、すごく優位性があるってことだよね?

堀江:そうそう。めちゃくちゃ、そう。

藤田:太平洋の、何もないほうに。

堀江:北海道はロケットをいろんなところに打ち上げられる可能性が高い場所で、非常に場所としての優位性があるからいい、という話なんですよね。でも、日本はロケットの会社が少ないんだよね。

資金調達の難しい宇宙ビジネス

藤田:本当に、数少ない成長の見込めるユニコーンが生まれそうな産業だと俺は思っているんだけど、難しいからっていうのもあると思うし。ネット企業の時はめっちゃ簡単に資金調達できたじゃないですか?

堀江:うん。

藤田:それは正しい起業家の姿なんだけど、それに比べて資金集めが大変そう。

堀江:大変です。

藤田:資金集めも大変そうだし、人材集めも大変そうだなって。

堀江:俺は、再び1990年代後半の苦労を味わっていますよ。

藤田:あの頃はネットバブルが来てから資金調達できたけど。

堀江:正直、お金は困らなかった。なんでかというと、あんなの最悪俺1人で作ればいいんだもん。うちの会社はまさにそうで、むしろ俺1人で作っていたほうが効率がよかったかもしれない。

藤田:うん。

堀江:それで上場できたかは別だけど。今思えば、上場した後、俺1人でずっと作っていたら、それはそれでよかったかもしれないし、俺プラス2人から3人のほうがいいものが作れたかもしれない。

藤田:でも、そういう投資ブームみたいなのは来てほしいね。

堀江:アメリカでは来ているんですよ。

藤田:だったら、また来るんじゃない? もうちょっとバブらないと話題にならないのかな?

堀江:アメリカはもうすごいことになっていて、SpaceXは時価総額10兆円超えで、もうデカコーンも超えているし、人工衛星を軌道投入できた会社はそれ以外に3社あるんだけど、全部SPAC(事業を営んでいない“空箱”の企業が、上場後にベンチャー企業などを買収することで、実質的にスピーディな上場を実現する仕組みで)上場しましたね。

SPACで、最低でも2,000億円以上の時価総額がついていて、類似企業もだいたいそれくらいがつくんだなと。だいたいアメリカの2年から3年遅れで日本に(投資ブームが)来るので。

「こんなの電話でいい」と言われた、インターネット黎明期

堀江:ちょうど僕が起業した頃にNetscape(ネットスケープ)という会社が上場して、日本でもヤフーが上場したのが1997年くらい。そこから3年くらい経ってネットバブルが来て、うちらが上場した状況に近いかなという感じではある。

ただ、レア感があるから、もっとすごいことになるかもしれないし、でも僕はその先のほうで、ちょっとおすすめしたいことがあって。(インターステラテクノロジズは)何にせよ、要は携帯電話の基地局を立てたり、光ファイバーを敷設したりしている会社なんですよ。

藤田:うん。

堀江:あと、インターネットサーバーを安く作っていますというのを全部複合した感じの会社になっていて、その先に来るものが、まさに俺はインターネットの世界だなと思っている。

僕らがインターネットの仕事を始めた頃って、「インターネットは何に使えるの?」と言われて、「電子メールとか使えますよ」「超便利じゃないですか」(と言っても)「いや、こんなの電話でいいでしょう」「FAXでいいでしょう」とか言われたり。

「これはNASAのホームページとかを見れるんですよ」「へぇ……で?」という感じだったじゃないですか。マウスコンピュータの広告とか、よく打ってたよね。

藤田:まあ、そうだね。最初の最初ってことでしょう。

堀江:そう。だから、この人が広告を打っていたから、さらにその場所で。

藤田:その周辺ビジネスが盛り上がってくると、もっと来るのかな。

堀江:そう。

藤田:日本はプレイヤーが少ないもんね。

堀江:うん。そのへんのことを俺は聞いてみたいの。俺は何十年もかかる話じゃなく、10年以内にできることしか言わないです。その感じで考えてほしいんですよ。

宇宙から、高解像度の映像を撮影できるようになる未来

堀江:Google Earthって、使っているでしょう? Google Earthが一番わかりやすい例だけど、地球観測衛星は空から地球の写真を撮影している。

藤田:うんうん。

堀江:あの解像度がもっと上がって、人の顔が見えるか見えないかくらいになって、それがリアルタイムに動画でできたらどう思いますか? 何に使えると思う?

藤田:「怖っ」って感じがするよね。

堀江:(笑)。「怖っ!」って感じはするんだけど。

藤田:(笑)。怖っ!

堀江:それは技術的には10年以内に実現可能なんですよ。

藤田:うん。宇宙に飛ばしておけばってことだよね?

堀江:いや、そういう細かい技術的な話は全部抜きにして、僕たちはそれを作れる。

藤田:宇宙から(動画を撮影する)ということ。

堀江:宇宙から常にリアルタイムで、人間の顔が判別できるかできないかくらいの解像度の映像を撮影できるようになります。

藤田:できそうだね。

堀江:技術的にはたぶんできるんですよ。それができたとして、人の目で見て「ああ、ちょっと人の顔がわかるかな、わからないかな」くらいの感じなんだけど。

さっきの藤井聡太さんの話じゃないんだけど、AIで見るとわかるんですよ。たぶんもう、地上にあるすべての物体の動きを全部把握できるんです。そういうことが起きたとして、ネット企業として何をやるか。

藤田:いや、ちょっと、まず自分が撮られていたら怖いな、ということが頭をよぎるんです(笑)。

堀江:(笑)。撮られます!

藤田:落としものはすぐ見つかりそうだけどね。

堀江:落としものはすぐ見つかるかもしれない。あと例えば、全世界を走っている自動車を全部把握できるかもしれない。

藤田:まあ、そうでしょうね。

宇宙から映像が撮影できると、プライバシーがなくなる?

堀江:それができたとして、みんな何に使うのかな。例えばメタバースの世界を、今の本当の地球で作るとかね。

リアルタイムメタバースを作って、全世界を飛び回れる。どこに視点を置いてもいい、エベレストの頂上にも行けるし、南極のどこかにも行ける。今、みんなGoogleストリートビューでやっているじゃないですか。

藤田:なるほどね。そういうのを全部、宇宙視点でっていうことですよね。

堀江:そうそう。今、僕はエンタメのメタバースっぽい、『マトリックス』みたいな世界をイメージしたんだけど、もっと実利的な話で言うと、東南アジアのアブラヤシのプランテーションをリアルタイムに監視できるわけですよ。

そうすると、パームオイルの木の生育状況をウォッチできて、病害虫にやられそうなところに集中的に農薬をまくことで、1,000億円のコスト削減効果を出すこともできるんです。

藤田:確かに。上から見ると視点が変わるな。

堀江:そう。でも、Google Earthだけでも変わったじゃない。

藤田:そうですね。

堀江:うん。Google Earthって今は解像度が格段に上がっているけど、20年くらい前のめちゃくちゃ古い技術で、最初に見た時、おもしろいけどこれは何に使うんだろうなと、一瞬思った俺が馬鹿だったっていう。

藤田:さっきYouTubeで(見たけど)、ここは前澤さんが買った別荘ですっていって、京都の豪邸(を映している)。

堀江:(笑)。

藤田:(笑)。勝手にGoogle Earthで撮って、さらにその(建物の)目の前で紹介してるんだけど、「怖っ」と思って。

堀江:そう。ある意味プライバシーがなくなるかもしれない。

藤田:いや、なくなるでしょう(笑)。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「ノーベル賞もの」と評価する最新の生成AIとは “考える力”を初めて身につけた、博士号レベルを超えるAIの能力

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!