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ビジネス領域の経験から考える?プロダクトマネージャーのあり方(全1記事)

PdMが課題把握のために必要なのは“妄想力” “御用聞き”ではない、望まれる役割とスキルの鍛え方

さまざまなヤフーの独自技術や業界の最先端テクノロジーに触れ、関西圏のクリエイターの成長を目的にした、ヤフー大阪オフィスで開催される勉強会、「MixLeap Study #67 - 各社事例からプロダクトマネージャーのあり方を探る」。ここでChatwork株式会社の針北氏が登壇。課題把握のために必要なスキルと、その鍛え方について紹介します。

自己紹介と現在の業務について

針北陽平氏(以下、針北):よろしくお願いします。Chatworkの針北と言います。僕からは「ビジネス領域の経験から考えるプロダクトマネージャーのあり方」というテーマでお話できればなと思ってます。

僕の経歴を簡単に紹介すると、元ヤフーです。2008年からヤフー株式会社でエンジニアをやらせてもらっていて、2010年にはセカイカメラというアプリを作って、エンジニアやめて頓智ドットという会社で広報と事業アライアンスをやっていました。

1年後にハイベロシティという制作会社で新規事業の責任者をやらしてもらって、そこでのトラックレコードを使い、2013年にはフリーランスになっています。

2015年から約丸4年くらい、オープンエイトという会社に役員としてジョインさせてもらいました。そこで動画メディアの立ち上げとか、SaaS系のサービスの立ち上げという0→1の部分と、うまく事業としてもっていく部分を担当した感じになります。Chatworkには、2021年の2月にジョインして、今働いているような感じです。

僕が今Chatworkで担当している内容でいうと、ChatworkのIR資料に載っている、中期経営の3つの戦略にありますが、1番目にあるProduct-Led Growthの部分を主に見ています。今回、Product-Led Growthに関しては割愛しますが、この部分を中心にやっています。

それと、細かいグロースの部分を僕のほうで担当しています。AARRRモデルの部分をChatwork用に少し変換して、Chatworkの流れに沿ったファネルを定義して。この部分のKPIもすごく簡単には書いていますが、主にはこういった指標を伸ばして、現状はオンボーディングの部分にかなりに注力をしてやっています。

セッションのテーマと伝えたいこと

今日は「ビジネス領域の経験から考えるプロダクトマネージャーのあり方」というテーマを与えてもらいましたが、僕がこのテーマを解釈するに、ビジネスの方々とどういうふうなコミュニケーションを取ることによって、円滑に進められるのかといった部分を(話すことを)期待されてるのかなと思ったので、その部分を、今日はお話ししたいと思っています。端的に1つだけテーマを絞って、話せればと思っています。

今日この時間で伝えたいこと。もう“課題を正確に把握する”ことがメチャクチャ大事だということが伝わればいいなと思っています。この課題に対して、けっこう真剣に取り組んでない人が、今まで見ててけっこう多かったりするので、「やはりここが本当に一番大事なんですよ」というのを、今日あらためて覚えて帰ってもらえたらうれしいなと思っています。

よくあるPdMの間違いと望ましい行動

よくあるPdMの図で、プロダクトマネジメントトライアングルや、PdMに求められる要素みたいな感じのものがあると思います。

これをもとにやっていくと、僕の周りだと御用聞きになってるPdMをけっこうよく見かけてます。

御用聞きになって、いろいろブリッジをすることによって「自分はステークホルダーをちゃんと握ってるんだ」と思ってる人がいますが、そうではないと僕は考えています。

よくあるPdMの間違いでいうと、ある日、例えばビジネスチームから「この部分がわかりづらくて変えたいから、こんなふうな感じで改修してくれない?」と依頼が来た時に、確かに自分でも見てもわかりづらいから、改修を施策として進めよう、というふうにやっている。Chatworkでもそういう面を見ました。こういうのってよくあると思いますが、これは一番やっちゃいけないことかなと考えています。

本来はこうすることが望ましいと考えてる内容でいうと、依頼が来て、まず「この部分がわかりづらい」ということに、どんな課題があるのかを調べてほしいと思っています。

調べ方としては、けっこう多角的に見ていったほうがいいかなと思っていて。例えば、「この部分のユーザーの行動のデータってあるんだっけ」「期待しているアクションがあるのか」とか。「なにが解決されれば、この部分は正しいと言えるのか」とか。

ユーザーの要望があがってるかみたいなところを多角的に見て、課題を正確に把握した上でアプローチを考えて、そのアプローチをビジネスチームとすり合わせた上で、施策として進めていくのが望ましい進め方なのかなと思っています。

そのため、僕が考えているPdMの役割でいうと、課題を正確に把握して、どんなアプローチをするのかを考えて、課題が解決されている状態を作り続けるのが、PdMの役割なのかなと思っています。

ただ、これだけをするとあまりよくなくて、さらに言うと、経営戦略とフィットさせて、最終的にビジネスインパクトが起きている状態を作りだす。これがPdMとしての価値なのかなと考えています。

課題を正確に把握しさえすれば、アプローチの手法はたぶんいろいろあると思っているので、正解をそこで導き出すっていうのは(難しくて)、PDCAを回していかないと、なかなか当たりどころは見つけられないと思います。

でも、課題がずれていると、当たりどころのない部分をずっと掘り続けているので、課題を正確に把握する部分は本当に大事なんだなと思っています。

課題把握のために重要な“妄想力”とその鍛え方

最後に簡単に、僕が今現場のメンバーにけっこう言っていることを伝えます。課題を把握していくために大事なことが何かとあらためて考えた時に、僕は妄想力だと思ってます。(笑)。

妄想力とは何かというと、俯瞰して物事を考えるためにとても重要なことだと個人的には考えていて。例えば、登場人物を変えて、その人の気持ちをいろいろ考えてみるとか。例えば、「Aという登場人物なら、ここでこういうものを提供したら、こう反応するよな」といったように、登場人物を変えて多角的に考えて、そこに対して関連するデータというファクトを並べていくと、課題の本質はけっこう見えてきたりするので。

いろいろなパターンで、頭の中でちゃんと考えてみる。俯瞰して物事を考えてみるのは、すごく大事だなと思ってます。

ではこれを鍛えるためにどうすればいいのかを、最後に簡単に話をします。今のPdMの人たちって、同じ仲間を集めるために採用にけっこう力を入れていたりすると思いますが、この採用面接が、この妄想力を相当鍛えられると個人的には思っています。

何がいいのかというと、面接の前にはレジュメを読まない人がほとんどだと思うんです。前職でもそうでしたが、いろいろな人に聞くとレジュメぜんぜん読んでない人たちが多くて、本当に面接のその瞬間になったタイミングでレジュメを初めて開いて、それを見ながら話していく人たちがほとんどですが、それはすごくもったいないと思っています。

面接する前に、例えば15分間だけその人のレジュメをきちんと読み込んで、「この人はどういう人なのか」というのをできるだけ細かく想像して、メモをしたほうがいいかなと思ってます。メモした内容をもとに、面接で答え合わせをしていくようなプロセスを踏むと、自分の中で与えられた情報の中からペルソナみたいなかたちでイメージをして、その答え合わせを瞬時にできたりするので、妄想力を鍛えるのにはすごくいいかなと思っています。

実際に僕が書いているメモでいうと、(スライドを指して)こんな感じで、いつも面接の前には履歴書を渡されて、それを読み解きながらこういうふうな感じのものを必ずアウトプットするようにしてます。

例えば、宮城県出身だったら、東北育ちだから冬に寒さに強そうだなとか。三陸の新鮮な魚食べてきてるから、舌が肥えてそうだなとか。趣味はウクレレとゲームと書いてあるので、インドアなのかなとか。ウクレレっということは、ハワイが好きなのかなというようなことを書いてみたり。

職歴を見て、2017年新卒で入社して、4年目が終わりを迎えるタイミングでしたと。4年で4回部署を異動していて、3年目でリーダーにも抜擢されてるから、けっこう優秀な方なのかなと想像したりとか。地頭よさそうだなとか。英語も使われていたけれど、あくまでも手段として考えているのかな、力をつけてグローバル人材になることを考えているのかな、というような妄想をしてみたり。

この方は今まで英語を学んできましたが、配属された場所が技術チームのアシスタントって、相当訳のわからない部分に放り込まれている1年だったはずですが、でもインドアなオタク気質があるから、意外と楽しかったのかもしれないとか。

1年が終わったタイミングで、脳みそがガラッと変わって営業職に配属されていたので、この人のインドア気質には、企業を訪問することは合っていなさそうだなと。でも営業職が彼女の歴としては一番長くて、ここでの成果が認められてリーダーになっているから、地頭のよさでがんばれたのかな、と想像をしたりとか。

こんな感じで、履歴書から読み取れることをメモでアウトプットすることを必ず僕はしています。その上で、聞いてみたいことをアウトプットして、実際の面接に挑んで答え合わせをしていくのは、かなり妄想力を鍛えられるトレーニングなのかなと思っているので、ぜひいいなと思ったらやってもらえたらうれしいなと思っています。

最後にちょっと簡単にまとめをすると、課題を正確に把握することがメチャクチャ大事だと。さらに、課題を正確に把握するためには多角的に考える力、妄想力も大事だと常日頃思っているし、それを現場に伝えて、メンバーにも遂行してもらうことを、僕のほうで今やっています。そんな感じで、僕からは以上になります。ありがとうございました。

質疑応答

司会者:針北さんありがとうございました。内容もやってはいけないことが具体的ですごくわかりやすかったのと、あと私は、実は兼務で採用も担当していて、後半の妄想力を鍛える手段として採用面接がすごく斬新で、おもしろく聞いていました。

質問が来ています。「とても参考になりました。どんなアプローチをするかを提案するには、これまでの経験も大きいかなと思いました。今日お話しされた能力を鍛えるために、ふだんから意識していることや取り組まれていることがあれば教えてほしいです」。1つは先ほどの採用面接ですよね。

針北:そうですね。採用面接もそうですが、基本的にはいろいろ考えながら物事を進めてくクセをつけるのは、すごく大事かなと思っていて。

日常生活はなかなか難しいとは思いますが、1個1個の仕事をやっていくのに、「なんでこれやるんだっけ」ということを自分に問いかけるのは、できれば常にやったほうがいいかなと思っています。

僕もけっこう現場のメンバーにフィードバックする時は、「なんでそれやるんだっけ」というような話をよくしています。「なぜ?」「なぜ?」「Why?」「Why?」を、自分自身に問いかけられるように、いつも話をしています。

アプローチに関しては、自分でなにかゼロベースで提案をするのはもちろん大事だとは思いますが、課題がちゃんと明確になっていれば、けっこう周りからの力も借りやすいというか、「ここに課題があったんだね。じゃあこういうようなアプローチってどうなんだっけ」というような助言などももらえたりするので。

アプローチに関しては他人の力を借りれたりしますが、課題の本質を見つけにいくというのは、やはり自分自身でやらなければいけないので、大事なところでいうと、やはり課題なのかなと個人的には思っています。

司会者:ありがとうございます。もう1つが「妄想力の重要性を知りました。妄想力を鍛える手段として、実際に採用面接を担当するのもアリということでしょうか?」

針北:もしその採用するメンバーが自分となにかしら関わりがあるのであれば、ぜひやったほうがいいとは思います。

司会者:なるほど。将来同じチームに入る人とか、そういうことですか?

針北:そうですね。ちなみにChatworkでいうと、PdMの採用に関しては全PdMに会ってもらってます。なので、入る前からどんなPdMと一緒に働くのかは、かなりイメージできた状態でジョインしてもらえたりするので、そこはお互いにジョインしてからこんなはずじゃなかったにならないように、すごく大切にしている文化かなと思っています。

司会者:ありがとうございます。

もう時間なんですが、次の質問がちょっとおもしろそうで(笑)。「妄想すぎて聞くに堪えない人がいます。意味のある妄想は、どうすればできますか?」というのがあるんですけど(笑)。

針北:それは、ほかの人がってことですかね?

司会者:そうですね。妄想力は確かに大事だと思いますが、たぶん妄想が強すぎる人。

針北:そうですね(笑)。僕は「仕事に結びつかなければ、意味ないよね」って一蹴しちゃうので。これ、けっこう難しい質問ですね。

司会者:先ほどの「なんで?」を問いかけるところにもつながる気はします。「その妄想はなんのためだっけ」というのが。

針北:そこの部分はそうですね。「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」といつも詰めたりはします。ただ、意味のない妄想がアウトプットされた体験が仕事上あまりなかったりするので。(笑)。どう答えたらいいのかなとちょっと考えちゃいました。

司会者:ありがとうございます。時間なので、以上で終わります。針北さんでした。ありがとうございました。

針北:ありがとうございます。

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