2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
プロダクトマネージャーとしてのチーム運営術(全1記事)
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森本小百合氏(以下、森本):今日は「プロダクトマネージャーとしてのチーム運営術」というテーマでお話しします。よろしくお願いします。
最初に、このテーマにした理由を少しお話しさせてください。そもそも、2021年のYahoo! JAPAN Tech Conferenceで、「プロダクトマネージャーとは」「どうやったらなれるの?」についてはすでにお話ししていたので、別軸でなにか話さないとと思っていて。
よく考えてみたら、2020年の終わりぐらいから、チーム運営に困った人たちから「森本さんのプロダクトうまくいってるけど、なにやってるの?」「チームについてこんな時どうしていますか?」という質問をいただいていて。今も複数の方から(質問を)もらっていて。「あれ? チームうまくいってるんだ」というのを、私はその時に自覚しました。
でもやはりいいプロダクトを作るために、いいチームであることは大事だと思っているので、この切り口でお話しします。
自己紹介です。私はYahoo!ニュース トピックスのプロダクトオーナーをしています。2009年にヤフー株式会社に入社して、地図、検索に関わり、内閣官房に少し出向していました。2017年からYahoo!ニュースを担当していて、2020年から現職です。プロダクトオーナー歴は1年半です。
冒頭でも少しお話ししましたが、Yahoo! JAPAN Tech Conferenceの動画がYouTubeに上がっていて。「プロダクトマネージャー」と検索すると上のほうに出てくるので、もしよろしければ見てもらえるとうれしいです。
ゴールとアジェンダです。今日はみなさんが、チームをうまく回すヒントが得られた状態になるお話ししていこうと思います。アジェンダは下記の3つです。トピックスプロダクトについて説明と、2つ目がリーダーシップって何かというお話、3つ目がチームのために意識していることと、具体的な行動です。
まずプロダクトについてです。トピックスはYahoo!ニュースの中でも一番人数が多いチームとなっています。
Yahoo!ニュースはマトリックス組織で、ラインの縦軸とプロダクトの横軸で動いています。ラインとは、企画部や編集部、開発部とか、職種ごとに管理されているもので、プロダクトはいろいろな職種の人たちが運用しているスタイルになります。リソースの調整というのは、ラインとプロダクトどちらでも相談して行っています。
トピックスのプロダクトの持ち物は超多いと書きました。トピックスが管理しているものは、Webのトピックス、編集がトピックスを作るために必要なツールがいくつかありますが、それも作っています。APIとか、バックエンドも管理・運用しています。
(スライドを指して)では「リーダーシップってなに?」。いきなり出てきたと思いますが、プロダクトマネージャーという職種において、リーダーシップはとっても大事だと思っています。
でもみなさん、リーダーシップがなにか、はっきりとわかりますか。「“リーダー”はわかるけれど、この“シップ”というのなんなの?」みたいな感じに思ったりしませんか。私はずっと思っていたし、正直いうとよくわかっていませんでした。
4年ほど前に「あ、リーダーシップってこういうものか」と思った体験があって、ちょっとその話をしたいです。4年前に何があったかっていうと、圧倒的なリーダーシップを目の当たりにしたんです。圧倒的なリーダーシップって、誰が発揮したかっていうと、安倍元首相でした。
当時、私は人材交流の一環で内閣官房に出向していて、官邸の中で国際広報の仕事をしていました。基本的に仕事は総理の動きに応じて発生していたので、総理の影響をとても受けやすい場所にいました。上から降りてくる情報は絶対で、誰も異論や反対を言ったりしない組織でした。
正直この組織がいいかと言われると、ちょっと個人的にはあまり合わなかったし、好きじゃないんですけど。「右見て!」と言ったらみんなが右を見て、「左見て!」と言ったらみんなが左を見るみたいに動いていて、物事がムチャクチャスピーディに進んでたんです。
役人と聞くと、仕事遅そうだなと思うんですが、官邸の中ってメチャクチャ早くて。ヤフーよりも早いと思うこともよくあります。
それができているのは、先頭で「この方向に進め」という人がいるからで、みんながそれについていっている。「いやあ、これがリーダーシップだ」というのが、その時に腹落ちしました。
もう1人、リーダーシップがすごくあるなと思った方は、みなさんも知っていると思いますが、ソフトバンクの孫さんです。
私はソフトバンクアカデミアというところに入っていて、そこでは孫さんのお話が聞けたりとか、孫さんと一緒に実際に仕事している人の話を聞けたりします。
孫さんの場合、作りたい未来があって、すごくそれにワクワクしています。みんながそれに魅了されてしまって、ついていってしまうのも、これまたすごいリーダーシップだなと思ってます。
話してきたことでなにが言いたいかというと、リーダーシップとは、メンバー全員が同じ方向を向き、統率がとれている状態だと私は思ってます。
一番重要なことは、未来を示すことが大事だと思ってます。みんながついていきたいとか、人間性があるとベターと括弧で書いてありますが、実はこれはなくてもリーダーシップを示していることがあるので、括弧にはしていますが、私は意識したい点ということで書いています。
注意することとして、リーダーシップを意識しすぎる必要はないと書いてます。孫さんも安倍元首相も「リーダーシップをとろう」なんて、ぜんぜん思ってないと思うんですよ。
「こういうほうに進むんだ」と動いてるだけで、みんながそれについてく感じで、リーダーシップを発揮しようとしなくても、発揮できちゃうと思っています。なので、身につけようと思わなくても身につくと私は思ってるので、大事と言っておきつつ、あまり意識する必要はないとは思ってます。
では実際にチームのために意識していることとか、具体的な行動がなにかをお話しします。未来と先ほども言いましたが、私は“遠い未来”と“近い未来”を見るようにしています。
まず“遠い未来”について説明します。今後、よりたくさんの人にプロダクトを使ってもらうためには、進化させる必要があり、その理想像が“遠い未来”です。また、“遠い未来”を定めることで、チームの足並みが揃います。
“遠い未来”を作るための具体的なアクションとしては、このポチで書いてあることです。社内外のデータを見たり、調査をしたり、世の中の動きから導き出しています。
常に「これはYahoo!ニュース トピックスならどうできるのか」というフィルターで物事を見ています。「こういうものが未来に必要だ」と思った後に、「それを覆すには何をすべきか」と、一度反対に立って「これを壊すにはどうしたらいいのか」と、敵に回った気持ちになってプロセスを考えたりしています。
最終的に「これだ」と思った課題感をメンバーに伝えて、納得してもらえているか反応を見たりしています。納得してもらえていないと思ったら、ちゃんと納得してもらえるまで説明はしています。
次に“近い未来”についてです。メンバーは“近い未来”や細部を見ているため、未来ばかり語っていても、直近の課題にアプローチできていないと、信頼を築けないと思っています。また、直近の課題は“近い未来”への架け橋なので、絶対ないがしろにしてはいけないと思ってます。
どういうことかというと、“遠い未来”に行くまでにプロダクトがクローズしてしまったら困るので、大事だよという話です。
“近い未来”を作る具体的なアクションとしては、課題を話しやすい雰囲気や、課題を吸い上げやすい機会を作っています。実際に話を聞いてるだけで何もしないと信頼は築けないので、「実際に取り組んでいるよ」ということだったり、進行状況を可視化したりしています。
“遠い未来”はプロダクトだけではなくて、チームの課題を含めて対応しています。チームに対して「こういうふうなところがやりにくい」というところがあれば、「じゃあ、こういうことやってみよう」と取り入れてみて。「なんかやってみてもイマイチだからやめまーす」みたいなこともよくやってます。
曖昧なものをそのままにしないということで、1つおすすめがあります。slackのチャンネルの使い方とか、資料の作り方や置き方とかって、けっこう曖昧になってたりすることが多いと思います。
slackのチャンネルで「あの人はこういうことをこっちに書くけど、この人はこういうところに書く」みたいなところで。曖昧になったまま運用されてしまうのは、すごくやりにくい状況だと思います。そういうところを整理してあげるだけでも、メンバーも働きやすくなるし、物事もスムーズに進んでいくと思っています。
未来を見るほかにも気にしていることがあって、みんなが働きやすいか、ということです。大きい字で書いてあるのが大きな要素で、箇条書きにしているのが具体的なアクションです。
まずは、誰かの役に立つ仕事をしている実感があるか、ということです。仕事を割り振る際ですが、なぜこの仕事をやってほしいのか、これにどんな課題があるのか伝えています。逆にいうと、それ以上は伝えていません。「この課題がクリアされたら、あとはやり方はどうだっていいよ」みたいな、「自由だよ」と言って、考えて進めてもらっています。
やらない判断は早めにするということで、必要のないことをやるとリソースが無駄になるのももちろんですが、「なんかこれ、ちょっと無駄っぽいな」と思ってることって、みんなもけっこう「無駄っぽいな」と思っていて。そういうものって、ぜんぜんモチベーションが湧かないと思うんですよ。なので、そういうものは早めに「あ、やらなくて大丈夫です」と伝えることは気にしています。
自分たちの仮説が合っているかを、内部テストや調査で随時確認することもしっかりやっています。「こうであろう」と思って突き進んでいっても、結局ユーザーのためになっていなかったら意味がないので、そういうところでヘルスチェック的なことはしています。
2つ目が、チームメンバー同士が尊重され、頼りにされている状況です。私はお願いした仕事は任せるし、頼っています。コントロールしようとしないのを、すごく心がけています。
というのも、私はけっこうそういうことしないとコントロールしそうになってしまうので。みんなの考える機会とかを奪ってしまうし、できるだけコントロールしないようにしています。
常々感謝の言葉をかける。助かったことがあれば「ありがとう」「こういうところで、こういうことしてくれて本当に助かったよ」を随時、その時その時に伝えています。
その次が、主体的な行動が歓迎されるということです。やりたいことを尊重し、できるだけできるように調整します。
例えばですが、デザイナーさんが開発してみたいと言っていたことがあったので、開発できるようにちょっと調整してみたり。反対もあって、その時に開発のメンバーに相談したら、開発の人もデザイナーの仕事してみたいと言っていたので、お互いスイッチして。私はそれぞれのラインの上長に「こういうふうにやっていいですか」という話をしたり、リソースもちょっと空けてやってみたり。
直近で新しいプロジェクト2つ立てたんですが、いずれも「やりたい人ー」とslackに書いていて、手を挙げてくれたメンバーで、今メチャクチャすごくうまく進んでいます。
最後ですが、気軽にチームメンバーと話せるとか意見が言えることが大事だと思っています。気軽に話せるような場を設けるというので、私たちの場合はslackの雑談チャンネルがあったり、定例の雑談タイムは、完全にオンラインで業務をするようになってから設けました。
定例ミーティングを毎週1回1時間やっていますが、そこの冒頭の5分で、Zoomでランダムに3人とか4人とかの小さいグループに分けて、「最近食べた冷たい食べ物はなんですか」とか、ちょっと前には「オリンピック見てますか」みたいな、そういうテーマをファシリテーターの方に挙げてもらって雑談しています。
これやるとかなりうまくし、他のプロダクトとかでも導入されてずっと続いているので、けっこういいかなあと思ってます。
期末のKPTで困ってることを言える場を設けています。「本当にどんなに小さいことでもいいから挙げてください」と言っていて、それを挙げてもらって改善することをやっているので、困っていることは常に吸い上げています。
匿名で私に意見が言えるフォームを作っていると書いていますが、1年半作っているものの、ぜんぜん誰からも連絡がきません。ただ、もし何か言いにくいとこがあれば、こういうところも使ってくださいと思っています。
長くいっぱい話しましたが、今日はこれで以上です。今日はチームをうまく回すヒントを得ていただきたいと思ってお話ししましたが、何か得られたことがあるとうれしいです。今日はどうもありがとうございました。
中嶋道太郎氏(以下、中嶋):森本さん、ありがとうございました。最後の匿名フォームで誰からもまだ(連絡が)ないっていうの、ちょっとおもしろかったですね。
冒頭のお話にもありましたが、1月にやったヤフーのTech Conferenceの中でも、プロダクトマネージャーについてお話をしてもらって。その時の担当が、たまたま自分だったんですね。
資料とか、発表そのものもすごくわかりやすくて、視聴者からも好評だったので、今回のイベントでも声をかけたんですが、今日の話もすごくわかりやすいなと思いました。
質問より感想がたくさんきてるんですけど。(質問を読んで)「内閣官房で何をされていたのか気になります」。
森本:国際広報室というところで、デジタル周りを担当していて。対海外向けの「日本ってこういう国だよ」ということをやっていたんですけど。寿司とかアニメとかではなく、日本のインフラ事業はどうとか、アベノミクスはこうみたいな、けっこう硬いことを発信していました。
あと安倍元首相は外遊でいろいろなところには行っていたんですが、その時にも、「ロシアに行く」と言ったらロシア向けのコンテンツを作ったりとか。なんかいろいろなものをやっていました。
中嶋:へえ。とても参考になりました。「リーダーシップの未来において、人間性があるとベターとありましたが、人間性のある未来とは例えばどんなものでしょうか。もし具体的な例などあれば」。森本:人間性というのは、なんだろうな。スライドに書いてあるのはちょっと変ですね。今気づきました。ありがとうございます。
何が言いたかったかというと、「こういう未来があるといいよ」と示しても、その人がすごく意地悪な人だったりするとついてきてくれない、みたいなことが言いたかったです。
ただ意地悪な人であっても、すっごいカリスマ性がある人だと、「なんかこの人あんまり近くにいくと攻撃的だけど、格好いい未来を描いているから、ついていきたい」みたいなことは実際にあるので、そういうところで人間性と書きました。
中嶋:なるほど。「“遠い未来”“近い未来”を見る、がとても腹落ちしました」「Yahoo!ニュース トピックス、毎日読んでいます」。
森本:ありがとうございます。
中嶋:「中の人のお話が聞けて良かったです」。「slackの雑談チャンネルに投稿する人の偏りはあったりしますか」。
森本:そうですね。偏りはちょいちょいあったりしますが、でもスタンプとかはみんな参加してくれます。
中嶋:なるほど。匿名で意見が言えるフォーム使ってる人はいなくても、そういう窓口があるのはすごくいいですね。
「匿名フォームより内閣官房の経験がもっと聞きたいです」。「内閣官房でプロダクト作りに役立つところ、逆にアンチパターンだなと思ったことはありますか」。これはちょっと言える範囲で。
森本:そもそも組織の動き方がまったく違うことが私はやりにくかったし、難しかった。だけど、やってよかったなと思うところです。意思決定のプロセスがぜんぜん違ったりとか。
中嶋:なるほど。質問は以上です。では時間になったので、いったんここまでとします。森本さん、ありがとうございました。
森本:ありがとうございます。
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