2024.10.10
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近藤誠司氏(以下、近藤):みなさん運用をやっている方が多いということで、ご存知のITIL(Information Technology Infrastructure Library)のv3、シラバス2011をベースにしたものを貼っています。いろいろとプロセスや機能などがあって、分類がありました。
シラバス2011、ITIL v3の時点では、基本的にはサービスストラテジが戦略を練る、サービスデザインは設計するというところです。トランジションは、設計したものを作って移行する。オペレーションが運用していく。最終的には継続的なサービス改善していくというところで、基本、分類が時系列に並んでいたと思います。
2011年から2019年、8年ぐらいはITILはこの形態でよしとしていました。
2019年になると、これがITIL4に変わりました。久しぶりに大幅なアップデートが起こってどうなったかというと、分類が役割ベースになりました。ビジネスをする人、ビジネスをマネジメントしている人が、ITサービスマネジメント考えるとか。サービスマネジメントやってる人が、ITについて考えるみたいなこと。あとは、テクニカルのマネジメントやっている方が考えることということで、大きく分類がまず変わっています。
ここから読めることは、先ほどのITIL v3のような時系列でウォーターフォールで入れていくというよりは、DevOpsやアジャイル開発のような、ITはもう基本的に社会の基盤となっていて、それをどんどん改善していくところに主眼が置かれている。で(スライドの)赤字で書いているところは今回追加されたところですが、よくよく見てみると、ここはアジャイル開発やDevOpsで必要になりそうな項目が並んでいるというとこです。
詳しくはITIL4のほうに任せますが、まず、ITILの4で大きく考え方の変化が起きている。ただ(スライドの)赤枠で書いているサービスポートフォリオや、サービスカタログはITIL v3から変わっておらず、基本的にシステムを運用するというより、サービスを運用するという考え方が強くなっているところが見受けられます。
それが次の、もう1個のフレームワークであるCOBITというところです。COBITでも同じことが同じタイミングで起きています。COBITの話をちょっと簡単にしておくと、組織のITにおけるガバナンス、統治みたいなところを標榜としているフレームワークです。ITILはベストプラクティス集なので、「どうやったらいいか」が書いてありますが、COBITはどちらかというと、「こういうルールにして、こういうふうにしたほうが、うまく統制できますよ」ということが書いてある本です。
1996年なので、Windows 95が出た次の年ぐらいのイメージのところから、「監査だとかコントロールしていきましょう」「マネジメントをちゃんとやっていきましょう」と。そして2005年になると、「マネジメントからITガバナンスをちゃんとやりましょう」のCOBIT5というとこで、事業全体、会社全体がIT使うようになったので、「会社全体のITガバナンスをちゃんとしましょう」というところでした。2019年になると、もう1個進んでI&Tガバナンスとなっています。
このIとTの間に&が入っているのがけっこう重要で、インフォメーション、情報と、テクノロジーを分離して考えたほうがいいんじゃないか、という話になっています。
情報はいろいろなテクノロジーの上を行き交うので、それについて考えないといけません。クラウドサービスが出てきたおかげで、考えないといけないテクノロジーが変わっていって、その変化の速さも変わってきていると、会社など、そういう問題ではなく、もはや扱うデータと扱うテクノロジーに対してガバナンスをかけていくべきだ、という感じで変わっています。
これも、どちらかというと“システムを管理する”という考え方から、もはや“サービスを管理する”という考え方に変わってきていて。両方とも言っていることは、基本的に、「サービスを管理していく」という感じになっているということが、この2つをいろいろと読んでみたところ読みとけました。
これに向けて運用改善をしていかないと時代に取り残されてしまうんではないかというところで、改善のテーマはサービス管理をしっかりするような内容にしていこうと思い、『運用改善の教科書』の軸が決まりました。
今日は、私が一番最初に書籍を書こうと思った軸である、サービスポートフォリオ管理の重要性を知ってもらい、実際に改善したらどういったことが起こるのかをみなさんに説明しながら、解説していきたいと思います。
本題に入る前に、1回運用というのが何か。先ほどからサービス運用とかサービス管理とか言っていますが、運用が何かだけ、ちょっとおさらいしたいと思います。
私がよく使う用語で“ITシステム運用”と言っていまして。これをちょっと分解してみるのをやってみます。まずは“Information Technology(IT)”で、これは“情報技術”です。“システム”が“仕組み”なので、“情報技術の仕組み”というところは、「なるほど」となると思います。
しかし、これに“運用”という言葉が入って全部足すと、“情報技術の仕組みを活かして使う”となって、「んー、何すればいいんだろう?」と。“運用”が入ってくるせいで、全体がぼんやりしてしまう問題があります。
なので「運用」を分解していかないといけないところがあって。“運用”という言葉を英語で訳すと、5つぐらい主要な用語が出てきます。上から“Manage”。これは「どうにかする」とか「うまくやる」というところ、マネジメントと言われるぐらいなので、「システムに何があってもとりあえずどうにかする人」が運用者だという考え方。
“Utilize”や“Use”は、“利用する”、“役立たせる”、“用いる”など。要するに「システムを使ってもらう人」のことも“運用”。“Run”や“Operation”のような、「定期的にやること」「定期的にする業務、手順」みたいなもの、これも「運用」だと。まぁ、確かに全部入ってるな、これを全部やるというのが運用者と。そのため、やっていることはけっこう多岐にわたる、というとこです。
昨今の運用に求められていることは、RunとOperationはどんどん自動化していきなさい、というような御触れが出ているということです。同じことをずっとやっていると、人間はモチベーションも下がるし飽きるので、どんどん自動化していったほうがいいのは、みなさんも同意かなと思います。
Manageや利用する系、どうにかする系というのは、利用してもらうにあたってクラウドサービスにしたり、サービスにしてわかりやすくして使ってもらいやすくするようなところがけっこう重要になってくるので、クラウドサービスやサービス管理の重要性が増してきているというところです。なので、2つに分けて考えたほうがいいな、というのが最近思っていることです。
具体的なシステム運用、今みなさんが一般的にやっていることみたいなものは、1つは障害対応。これはマイナスになった、壊れたものをゼロに戻す、直すということです。アラートが出て、何かが起こっているので使えるようにする、というとこで、いわゆる保守作業と言われているものです。
問い合わせや作業依頼は、使ってもらうと言ったところに近いものなので、Useの話です。これはユーザーさんから問い合わせをもらって、何か返すという話になります。
続いて「定期/非定期(メンテナンス作業)」と書いていますが、これはあらかじめ予防措置だったり、定期的にやらないと故障みたいなことが発生するので、やらないといけない。このあたりの自動化はどんどんしていきましょうという話だと思います。
最後は「監視・モニタリング」。システム監視は今までやっていたような、障害が発生したらアラートが上がって、それに対応していく。これが従来からある監視ですが、もう1個、最近はモニタリングや傾向分析みたいなことが必要になってきていて、特にクラウドサービスだとスケーリングが簡単にできるようになっています。
スケールアップでCPUを増やしたり、メモリを増やしたりもそうです。インスタンスをどんどんオートスケールで増やしていったりもできるので、そういったところの傾向を予測して、リソースを追加したり減らしたりして、コストの最適化をするというところでモニタリングすることも、クラウドサービス時代には重要になってきているかと思っています。
これらを全部揃えて、運用者は左側の縁の下の力持ち的なもので、どうにかしてマイナスにならないようにしようというのが今までの話でしたが、今後はそこにサービスの管理やデータ分析などをしていってほしいという要望が出てくるのではないかなと思ってます。
オンプレミスでやっていたハードウェアの保守業務がなくなったり、クラウドサービスのマネージドサービスでサーバーの運用がなくなったりしてきているので、役割の変更というか、トランスファーはどうしても起こることです。
じゃあ新しく何をするのかといったら、会社全体のサービス、使っているサービスとか見渡して、そこから統計データを取ったり、レポートをまとめたり、それをもとになにか改善の提案をしたりをしてほしいと、経営の方は思っているのではないかというところです。
(スライドを指して)今日は右側のサービス管理をどうやってやっていくかを話したいです。改善のプロセスを本気で考えてみたところ、一応5ステップになるんじゃないかと思います。『運用改善の教科書』にも載せています。
まずは第1ステップとして、運用のプロセスの整理とか合理化、可視化というところで、これは、簡単に言うと運用設計です。運用をまず見えるようにして、無駄なことをやらないように省いていって、整理して、合理的に「みんなこれでいいね」と合意を得た上で、可視化するところが、まずは第1ステップとしてあって。
第2ステップが本当の運用改善です。運用業務を、「紙とかをなくしてデジタル化します」「会議をWebにします」といったことをやったり。あとは申請を全部ワークフローにして、不要なExcelやメールをどんどん減らしていって、自動化していく。作業自体も自動化していくということで、第2ステップが本質的な運用改善と呼ばれるものかなと思います。第1ステップがうまくまとまってくると、第2ステップは比較的簡単にできることかなと思っています。
続いて第3ステップは、その上でさらにクラウドの機能とか、今マネージドサービスがいっぱい出ているので、必要なものは仮想サーバーから脱却してPaaS、SaaSを使っていくし、それによってデータがいろいろなとこに飛び交ってしまうので、それをセキュアな状態でどうコントロールするのか。まず通信などのセキュリティを担保しながら、セキュリティインシデントが起こった場合に、迅速に対応するには体制としてどうしたらいいかの変革をしていくと。
情報システム室で扱う運用改善は、この第1ステップから第3ステップまでかなと思っています。ここができると、4番として業務のデジタル化だったり、BIだとかデータアナリストの領域になりますが、ビジネスデータの分析ができるようになってきたり。
最終的にはデジタルプロダクトによるビジネス開発というとこで、iPhoneを作ったり、Netflixを作ったりみたいなかたちで、業界を激震させるようなデジタルプロダクトを作るのが、最終的な企業の目標だったりすると思います。
正直な話、1人だけ天才が入ってくれば、第5ステップだけやることは可能です。しかし、組織としてこういったものに取り組んでいこうとすると、やはり第1ステップから第3ステップあたりをちゃんとデジタル化しておいて、整理した上で、第4ステップ、第5ステップに取り掛からないと、なかなかスピード感や効率が上がってこない。
情報システム部門や会社の情報システム扱う人たちは、ちゃんとプロセスなどを整理して、できるところは全部デジタル化して、ワークフロー化して、クラウドネイティブなものを使えるようにしておくのが大事かと思います。
今回はこの第1ステップのところの、サービス管理というところを徹底的にお話ししていこうと思います。
サービスポートフォリオ管理です。サービスポートフォリオ管理というのはなかなか一般的なITILでも使わなかったところだと思います。最近、僕の中では一番重要性の高いものかなと思っています。この説明をします。
そもそもサービス管理は、大きな会社になればなるほど、運用している人たちがいろいろと自由にやっているところがあると思います。勝手な運用しているところと、入れたままほったらかしになっているところと、すごい人がいて極度に自動化しているところ。
自動化していることはすばらしいことですが、極度に自動化している人たちと、まったく管理されていない、勝手に運用している人たちが一緒にいると、「これってどういうことだろう」という話になってしまうので、やはり最低限のルールは統合していかなければいけないですね、というのがサービス管理の基本的な考え方です。
サービスポートフォリオというのは、もともと経営的な目的で使われていて、リスクやコストなどを管理して、サービスの価値を最大化することで使われています。運用でサービスポートフォリオを活用する目的も、けっこう出てくるということで、いったん最初に4つほどあげてます。
それぞれのサービスが提供している価値をまず明確にします。ワークフローシステムが3つあったり、チャットが2つあったりは往々にしてあるので、「それぞれがちゃんと価値を発揮しているよね」「なんとなく好きに入れてないよね」というところを明確にします。それぞれのサービス同士の関連性を明確にして、同じものに同じぐらいの金額を払っているのであれば、結合したり統合、集約したほうが、成果や投資のバランスが出るんじゃないかというのを見たりします。
あとはもう単純に、責任者不在のサービスをなくしていくことが、統合・集約には重要なので、まずはそういったことをやっていく、という話です。
(次回につづく)
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