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フリーランスの仙人|小笠原治(全4記事)

こだわったのは「徹底した場のイメージづくり」 小笠原氏のawabarに起業家が集まるようになったわけ

つよつよチャンネルは、bravesoft CEO&CTOの菅澤英司氏がエンジニア的に「おもしろい話」や「ためになる話」を届けるチャンネルです。ここでゲストで登場したのは、awabarオーナーであり、株式会社tsumugの取締役でもある小笠原氏。awabarを始めたきっかけや、起業家が集まるようになるまでの過程について話します。前回はこちらから。

awabarを始めようと思ったきっかけ

池澤あやか氏(以下、池澤):本日のゲストは起業家が集まるバー、awabarオーナーの小笠原治さんです。よろしくお願いします。

菅澤英司氏(以下、菅澤):よろしくお願いします。

池澤:視聴者の方は「awabarとは何か」みたいなところをもうちょっと知りたいんじゃないかな。

菅澤:スタートアップ界隈ではawabarにみんな集まる、というのはありますよね。

小笠原治氏(以下、小笠原):少し前にテレビ番組で取り上げてもらったことで、「IT社長っているんですか?」といきなり入ってきた方もいました。いなそうだったら帰っていく女性とか。

菅澤:観光地になってきたかもしれない(笑)。

小笠原:客層が乱れてまいりましたが(笑)。

菅澤:awabarの“awa”は、どういう意味ですか?

小笠原:もともとは、スパークリングワインとかの“泡”です。

菅澤:どうしてバーを始めようと思ったんですか?

小笠原:六本木のクラブとかで飲み歩きすぎて、自分の店で飲んだほうが早いなって。

菅澤:起業家あるあるみたいな。(笑)。

小笠原:実際はそういうのを思ってはいたんですが、最初はやる気なかったんです。独立したいっていう女性がいて、六本木で女性が来やすい立ち飲み屋をやりたい。10年前は、六本木で立ち飲み屋なんてほぼなかったんです。

菅澤:そういうことか。

池澤:なるほど。

小笠原:「ヒールの女性も多いし、なかなか立ち飲みなんて流行らないんじゃない」みたいに周りに反対されたので、逆張りしてみたくなって始めました(笑)。

起業家があつまるようになるまで

菅澤:最初は、ぜんぜん(お客さんは)来なかった?

小笠原:月の売り上げが100万いかなくて、お客さんが来ない日もありました。アルバイトの子が、このままじゃクビになると思って、自腹でジュースを飲んでお客さんが来たことにしてたり。

菅澤:でも、途中から起業家が集まるように?

小笠原:そうですね。きっかけは、震災の時にawabarを開けて、固定電話とテレビは夜そこで見れますよと。帰れない人向けに電話とかが必要なら(提供する)、とかやっている時に、いわゆるネット業界の人たちが、「店でチャリティーをやろうよ」みたいなことを言い出してくれて。

4月には被災地への寄付のための営業というかたちで、売り上げの半分を寄付するかたちでやり出して。そのあたりから人が来始めてくれたんですが、当然それだけではなかなかなので、1年目の僕は、年間200日以上をお客さんといました。友だちを呼んで、「いっぱい奢るからチェックインしてね」と。

それやってるうちに、数百人が来ているわけなので、なんとなく“ネットの人が来る店”というイメージができて。そこからですかね。

だから、最初はぜんぜんダメでした。ダメならダメで、どういうふうにしたらいいかなを考えられるので。その中で、徹底して自分が人を呼ぶ、イメージを付けることをやった感じです。

池澤:そこでスタートアップが生まれたり、なにか進展があったりとかもあったんじゃないですか?

小笠原:そうですね。ちょうどEast Venturesのシェアオフィスがawabarの向かいにあったっていうのもあって、創業時のメルカリとかのメンバーが、仕事が終わるとちょうどawabarの前に降りてくるんです。

そのままズルズル引きずり込んで、一緒に飲んで(笑)。そういう起業家の人がいっぱいいると、やはり投資家の人も来ます。それこそDMMの会長の亀山さんが来ていたということで。そこで「お前、今から何やるの?」と言われて、「メイカーズスペースみたいなのを作りたいんです」と言ってたら、「それDMMでやれよ」と言われて。7年も8年も前のDMMなので、どちらかというとエロとFXのイメージしかなくて。

菅澤:怖い、みたいな。(笑)

小笠原:「これ、僕のほうがレピュテーションリスクあるんじゃないか」と思って、ちょっと(金額を)大きめに言ったんですよ。「20億ぐらいかかりますよ」って言ったら、その場で「いいよ」って言われちゃったので(笑)。「はい、やりまーす」って。

菅澤:すごいな(笑)。

池澤:すごい。

菅澤:DMM.makeはそこで生まれたんですか?

小笠原:そうです。

池澤:そのDMM.make AKIBAから生まれたハードウェアスタートアップとかもちょこちょこあるので、つながっているという。

現金を一切使わないawabar kyoto

池澤:今は六本木だけではなく、福岡や京都にもあるんですよね。最近awabarがチェーン展開してる。

菅澤:awabarが成功モデルになったんですね。

池澤:最近「awabar kyoto」がオープンして京都芸術大学の生徒の方が運営しているんでしたっけ?

小笠原:そうですね。うちの学生が起業して、運営をやらせてもらってます。「飲食でDXをれたらいいね」ということで、現金を一切扱わない店舗としてやってます。

菅澤:awabar kyotoは現金を一切使わない?

小笠原:はい。金融機関の1階で、ATMもすぐ横にありますが、現金は使いません。

池澤:すごいですね、それ。

小笠原:これだけで、ものすごくコストが変わるので。その分、学生の時給を1,500円とか1,800円とか、カフェとか気軽なバーにしては比較的高めに設定して、運営しています。

これまでも取り組んできた場作り

菅澤:さくらインターネットの取締役をやっていたり、IT系やソフト系をやってたと思うんですが、バーとかハードウェアのスタートアップとか、かなりハードというかタフな方向だと思うんです。そういうものは、やはりもともとやりたかったんですか?

小笠原:場作りでいうと、高校卒業して設計事務所に入っているので、自分でデザインしたりするのが好きなんです。なので、場所を作るのが好きは好きです。ただ、飲食をやってること自体は手段で、やはり場作りでやってて。そういう意味で、DMM.makeなんかも場作りとしてやらしてもらった感じです。

ハードウェアに興味持ったのは、3Dプリンターですね。今だとわりと「ああ、3Dプリンターね」となりますが、7、8年前に3Dプリンターと言われても、あまりピンと来なくて。ピンと来ないのに、当時「チタンの3Dプリンターあるよ」と言われて、すごく興味が出てきてしまって(笑)。

そのあたりを調べてるうちに、「もの作りって、いわゆる量産はまだまだ難しいけれど、プロト(プロトタイプ)ってこんなに簡単に作れるんだ」となって、おもしろくなって。でも、僕はエンジニアとしての才能はあまりないので、やってくれる人にお金が少しあると回るんじゃないかなと思って、孫泰蔵さんと一緒に、そういう人向けの投資ファンド作ろうとなって、投資ファンドを始めたり。流れ流れできてるだけですね。

菅澤:流れはあるんですね。

小笠原:そもそもさくらインターネットも、建築の仕事でタイに行っていた時に、ニフティサーブとかで日本にデータを送ると、当時1,200 bps とかしか出なかったんです。

菅澤:1,200bpsは、1Kということですね。

小笠原:1,200bpsで1,640KBのデータを何十枚も送るとか、すごくしんどいんです。その時にTCP/IPとかその周りを触ることがあったので、日本に帰って来て、田中さんと出会ってインターネット系の起業をしたりとか。

菅澤:それで日本のサーバーのクラウドの走りみたいなのも、いち早くやっていると。

小笠原:2006年に動画のCtoCとか始めてるんです(笑)。プレイヤーの中で動画のアップロードもできて……。

池澤:今ですね、それちょうど。

菅澤:今でしたね(笑)。

小笠原:それやってる時に、YouTubeがGoogleに買収されるってニュース聞いて、「あ、これ無理だ、諦めよう」って言って。

菅澤:まずYouTubeでよかったっていうぐらいの(笑)。

池澤:いきなりGoogleに買収されると恐れを抱きますよね(笑)。

菅澤:もう「あー無理だ」って(笑)。

小笠原:動画系はむしろインフラが重たすぎるので。大きいところがやり出したら終わりだから、まだいいと思ってやっていましたが、「やっちゃうんだ、Google」みたいな感じで(笑)。

菅澤:なるほど(笑)。ちょっと今回は、時間が来てしまったので、次回にいろいろやってきたことを、もう少し深掘りしていきたいなと思います。いけあや(池澤さん)の初めての上司ですが、どんな上司なんですか?

池澤:本当に先の先までビジョンが見えているような方なので、そういうところで会社を引っ張っていってくれている印象があります。

菅澤:場作りというのが1つテーマにあるんだな、と。awabar自体も“場”だし、DMM.makeも“場”だし、tsumugという会社も1つの“場”だということで。たぶん何かいろいろなことがつながって今に至るんだろうと思うので、次回、いろいろ聞いてみたいと思います。いったん終わりにしたいと思います。

(次回につづく)

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