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フリーランスの仙人|小笠原治(全4記事)

“全員が業務委託”の中でどうチームを作り上げたか 柔軟な企業体のために取り入れた「スクラム」という開発手法

つよつよチャンネルは、bravesoft CEO&CTOの菅澤英司氏がエンジニア的に「おもしろい話」や「ためになる話」を届けるチャンネルです。ここでゲストで登場したのは、awabarオーナーであり、株式会社tsumugの取締役でもある小笠原氏。株式会社tsumugのサービスと、業務委託契約のメンバーのなかでのチームの作り方について話しました。

4つの肩書きを持つ小笠原氏

菅澤英司氏(以下、菅澤):つよつよエンジニア社長の菅澤です。

池澤あやか氏(以下、池澤):エンジニア兼タレントの池澤あやかです。

菅澤:今日はちょっと伝説の人を呼んでいるということで。実は僕も六本木のawabarという起業家がよく集まるバーに行った時に、そのバーをやられている方にお会いしたことがあるんですけど。その人が、たまたま、いけあや(池澤さん)の上司で。

池澤:そうですね。私がメインで仕事をしている、株式会社tsumugというスタートアップがあるんですが、そこの取締役の方です。

菅澤:そのawabarのすごい人を呼んでいますので、楽しみにしてください。今日もよろしくお願います。

池澤:よろしくお願いします。本日のゲストは、起業家が集まるバー、awabarオーナーの小笠原治さんです。

菅澤:よろしくお願いします。

池澤:よろしくお願いします。

小笠原治氏(以下、小笠原):よろしくお願いします。なんかすごいハードル上がってますね。

菅澤:(笑)。伝説の人を呼んでいます。

池澤:小笠原さんはすごくいっぱい肩書きがあるんですよ。awabarオーナー、京都芸術大学教授、投資ファンドABBALab代表。そして今私が働いている、tsumugという会社の取締役もされています。

菅澤:同時にいろんなことをするのは、もうずっとやられてきたんですか?

小笠原:この5年ぐらいはこんな感じの生活です。曜日で仕事が違うようなことをやっていました。

ハードウェアスタートアップはしんどい?

池澤:私が今働いているtsumugという会社は、空間シェアリングサービス「TiNK」を開発していて。「こういうサービスを作っていきたい」みたいなビジョンは、けっこう小笠原さんがそこで描いてくださっています。

菅澤:プロダクト開発の、本当にコアなところをやっているということですね。

小笠原:一緒にやってますね。

菅澤:直接打ち合わせとかはしますか?

小笠原:ぜんぜんします。正直、僕が盛っちゃうので、池澤さんがバッサリ切り捨ててくれるのがちょうどいい感じっていう。

池澤:「こんな細い機能いりますか?」みたいな。「もっと優先すべき機能があるんじゃないですか?」みたいな感じで。けっこうフラットな会社(笑)。

菅澤:白熱してそうですね(笑)。そもそも、tsumugは何年前ぐらいからやっているんですか?

小笠原:ちょうど5年です。2015年の12月創業です(対談当時)。

菅澤:空間シェアリングは、空間をデータ化して共有できるみたいな?

小笠原:そうですね。最初は、本当にシンプルにスマートロックを作ってました。僕らはスマートロックの中にLTEを入れて、要するにWi-Fiとかつながなくてもコネクティッド・ロックっていうのを。

菅澤:Bluetoothで、スマホからワンタッチで鍵が開くやつですね。

小笠原:LTEなので、BluetoothもWi-Fiも使わないんです。

菅澤:そうなんですね。

小笠原:LTEからつないだ閉域網だけで管理するので、インターネットにほぼつながなくても、みたいなものを作っていました。でも、正直ハードウェアスタートアップってしんどいんですよ。

菅澤:しんどいって聞きますね。

池澤:ソフトウェア開発からハードウェア開発に移行すると、その間にかなりギャップがあるみたいな話をよくしますが、小笠原さんもそこらへんでけっこう苦労されたんですか? 他人事みたいに聞いてますけど。(笑)。

菅澤:一緒に仕事してる最中でしょ。(笑)。

小笠原:めちゃめちゃ苦労してます。外に言えない話だらけですよ。

菅澤:小笠原さんが「始めようぜ」となった時期は、IoTにチャレンジするの流れはすごくありましたよね?

小笠原:そうですね。そうなんですが、当時から「やはりサービスは作ろう」という話をしてて。サービスで使うためのロックユニットとして、スマートロックを作るというのをやっていました。

ただ、ハードにどれだけこれからの時間と金を投下するのかというと、いったん10%ぐらいにして、残りをもうサービス開発に全振りしようとなって、今はサービスメインです。ハードウェアやってる時、池澤さんは社内では工場長って呼ばれていました。

菅澤:工場長って呼ばれてたんだ?(笑)。

池澤:そうですね。

菅澤:それはけっこう上のほうの役職じゃないの?(笑)。

池澤:とはいえ工場担当の人間が少なかったので、工場でチップにプログラムを書き込むこともしていました。でもそれも、けっこう大変で。チップって、Windows 7とか、かなり古いOSから書き込むものもあるんです。

Windows 7じゃないと、その書き込むソフトが対応していないものもあってて。そういうものと戦いながらプログラムを書いて開発してました。

菅澤:チップ側のプログラムはどういう?

池澤:私チップ側は、あまり詳しくないんです。また別に開発してる人がいて、それを書き込むみたいな。

菅澤:書き込む処理を作っていたと。

池澤:はい、そうです。

小笠原:そうですね。今はどちらかというと得意分野、主にRubyを使ってサービスサイドを開発してもらっていて。スクラムというフレームワークで開発をやっていっているんですが、この間、全員と1on1やって、「うちにいなくちゃいけない人って誰?」と聞いたら、何人かは「池澤さん」みたいな(笑)。

菅澤:おー。

池澤:ありがとうございます(笑)。

空間シェアリングサービス「TiNK」

菅澤:けっこう使われ出してるんですか?

小笠原:そうですね、今やっとサービスが立ち上がりかけているところです(対談当時)。実際には、いろいろな遊休スペース、例えば賃貸住宅の空室、インバウンドが減ったのでホテルとか。そういうところを、時間単位で使えるシェアオフィスのように、という感じで。

菅澤:なるほど。空いているエリアを管理して、ロックもできるから、ワンサービスで「ここすぐ使っていいよ」ということができるようになるってことですね。

池澤:そうなんです。管理人がいらないのが売りで。普通そういうスペース作ろうと思ったら、絶対に管理人を常駐させないといけないじゃないですか。そういうところをソフトウェアと、あとはスマートロックで解決しています。

菅澤:じゃあ、このリモートワーク時代で相当追い風が吹いているんじゃないですか?

小笠原:そうですね。不動産の動きが2020年までとは違っているので。そういう意味では、小規模拠点みたいなのを欲しがってる方とかもいます。短時間リモートワークに使いたい、週に2日3日リモートっていう人もすごく増えているので、そういう方々に使ってもらったり。資格試験などの自習に使っている方など、学生さんもけっこう使ってくれたりします。

池澤:空間シェアリングサービス全体を「TiNK」って呼んでるんですが、今リリースしているのは「TiNK Desk」というサービスと「TiNK Office」というサービスです。

「TiNK Desk」のほうは、比較的自由に学生さんとか、あとはフリーランスで仕事をしている方などに使ってもらっているシェアリングデスクサービスみたいな、デスク単位で空間を貸し出せるサービスです。「TiNK Office」が、企業が占有して、拠点にもよりますがちょっと広めの1部屋ぐらいのエリアを使うえるもの。

小笠原:クライアントワークスされてる企業だと、「スタバで仕事すんなよ」とか、やはりあるじゃないですか(笑)。なので、そういう自分たちだけの空間やデスクを作ったりというかたちで、共有の空間を時間単位で借りてもらったり。

「TiNK Desk」のほうは、時間単位で個人で使えるて、すべてLINEで完結します。クレカとかで支払い。「TiNK Office」は、Outlookのカレンダーから予約ができたりと、UI/UXまで違う感じです。

菅澤:なるほど。この間、きゅんくんさんも。

池澤:きゅんくんもtsumugのメンバーで、METCALFっていう着れるロボットを作っています。

全員が業務委託のなかでの会社作り

菅澤:なるほど。tsumugという会社自体がフリーランスの集合体みたいなものですが、けっこう仲良くやっていますよね。経営者としてもけっこう興味を持っているんですが、tsumugの会社作りみたいなものって、どういうふうにやっていったんですか?

小笠原:会社というよりは、チームみたいな感じなんです。基本的にはすべて業務委託で、「どういう仕事をしてください」ということは契約書に書いてある。当然、書いてあることだけになるかどうかは、そのあと変わってくるんですけど。

そこでギャラの設定がされている雇用契約がほとんどで、契約には変わりないので、業務の委託というかたち。何人かの人には権限として、「いくらまで会社の予算使っていいですよ」とか。

そういう権限委任で、例えば開発チームのリーダーだったら、小さいことでいうと、みんなで読みたい本とかを自由に買ってくださいというのも(やっています)。普通の業務委託だと、「それは業務委託費の中でやってくれ」とかになると思うんですけど。準委任までいかないけれど、という感じの業務委託契約です。

菅澤:距離感的には、けっこう社員にも近いというか。予算を使っていいよとか。

小笠原:社員というイメージが、僕の中でやはりちょっと微妙に仕事しづらい。なので、そこはどういう関係値ならみんなが自由に働きやすいか。競合さえしなければ、ほかの仕事したっていいはずじゃないですか。それをいちいち会社におうかがい立ててというのも、なんか違うと思ったので。そのあたりの自由は担保したいなというが最初の大きなポイントでした。

菅澤:そこが一番大きかったんですね。

小笠原:やはりマインドのフルコミットは求めますが、時間のフルコミットばかり言っててもしょうがない。受託した人ならみんなわかると思いますが、だいたい何人月っていう計算になっちゃうじゃないですか。

でも、本当にその人月当たってるなんてことはあんまりなかったり。逆に、その人月借りてるんだけど、それ以上に人をかけないといけなかったり。不透明なことが多いので、個人と1対1で業務委託。で、「やってほしいのはこういうことです」というかたちになっていきたいなという思いがありました。

池澤:けっこう柔軟な企業体なので、開発上苦労することもあって。それを解決するために、スクラムという開発手法を取り入れたんです。

菅澤:それはどういう問題があって、どう解決する?

池澤:それぞれが開発しているので、集中して「この機能を開発する」という意識が芽生えづらくて。昔は個人でそれぞれ開発して、なんとなくものが出来上がっていくような流れだったんです。

でも最近はスクラムを取り入れることによって、「そのタームでこの機能を作りあげよう」みたいな、一緒にやっている意識が芽生えて。この期間でこの機能を開発して、ちゃんとリリースを打つ、みたいなサイクルがどんどん出来上がっています。

小笠原:これってけっこう大事なことだと思っていて。やはり業務委託という自由度だけでいくと、なかなか1つのものを作り上げるチームにするのは難しかったんですが、この半年ぐらいスクラムに取り組んでみて、本当に今までで一番いい状態(になっています)。

菅澤:ちょっと時間がきてしまったんですが、後半はかなり不思議なキャリアというか(笑)。小笠原さんが不思議なパラレルキャリア、並行していろいろなことやっているということで、どうしてそうなっていったかちょっと聞きたいなと思います。

(次回につづく)

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