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創業秘話 / 資金調達… GROOVE X 創始者の林 要氏が語る!「家族型ロボット」という新しい産業でムーブメントを巻き起こせ!『LOVOT』を作ったプロフェッショナルたち #3【ものづくり2.0】(全4記事)

日本に足りないのは起業家ではなく「2番目・3番目」 トヨタからロボット起業家へ、林要氏が考えるスタートアップの難しさ

“LOVE” を育む家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」。まるで本当に生きているような動きやその愛くるしさから、今までの愛玩用ロボットとは一線を画した存在として、世界中から注目されています。今回は「LOVOT」の生みの親であり、「Pepper」の開発にも関わったGROOVE X 株式会社代表取締役社長林要氏が登壇したトークセッションの模様を公開。会社の創業秘話や資金調達での苦労、今後の「LOVOT」の展望についてが語られました。最終回の本記事では、視聴者からの質問に回答。起業したきっかけや、GROOVE Xで働く面白みなどが語られました。

起業の時に感じたのは、「ロボットなめんな」という思い

司会者:次の質問ですが、「起業するタイミングについてはどのように決められたのでしょうか。資金調達や人材、開発の段階でポイントになるところがあれば教えてほしいです」ということです。

林要氏(以下、林氏):難しいですね。起業するタイミング、どうなんでしょうね? あまり正解はないような気がします。私の場合は、次にまた何かやりたいと思った時に、前職の経験があったので多くの人が「ロボットをやりなよ」って言ったんですよね。

だけど私は、「いや、ロボットなめんな」って思ってたんですよね。1回「20億ぐらいは集められるからロボットやろうよ」って言われたことがあって。でも「20億でロボット作れるわけないでしょう」っていう思いだったんですよ。

司会者:さっきのお話でも、はじめは100億円ぐらいかかったって……すごかったですね。

:そうなんですよ。ロボットをスタートアップでやれるとは思ってなかったんですが、あまりに多くの人が僕にロボットをやれと言うので、じゃあちょっと真剣に考えてみるかと考えていて。そこで降ってきたアイデアが「LOVOT」だったんですよね。

でも降ってきても、まだ疑心暗鬼だったんですよ。「ロボット難しいからなぁ、本当にできるのかな」「どこかに必ず落とし穴があるに違いない。うまくいかないはずだ」って思ったんだけど、ちょっとずつ周りの人に話してみると、意外と反応がいいんですよね。「あれ、これいけるのかな」って、そのうち自分もやる気になってきて。

自分の「使命」と思う事業で起業するのも、選択肢の1つ

:これはよくよく考えると、僕がやらなかったら日本で始まらないかもしれない。どこか他の海外の国から始まっちゃうかもしれない。であれば、これはひょっとして僕の使命なのかもしれないなと思って。つらい戦いになることはわかっていたけど、使命だと気づいてやり始めたんです。

そういう意味では、これが自分の使命だって思う事業にあたったらやるというのは1つの(起業の)選択肢かもしれないです。

司会者:ありがとうございます。自分の使命だと思えたらということでした。では続きまして「海外展開について、いつ頃にお考えですか」というご質問が来ております。

:そうですね。海外展開は早いところやりたいんですけど、なにぶんお金がかかるんでね。例えば(商材が)アプリみたいなものだったら、海外言語対応にして出すというのもあるんでしょうけど、LOVOTはメンテナンスを含めて非常に裾野の広い産業を丸ごと輸出しなきゃいけないので、先立つものも必要で。ちょっとそのへんのバランスを見ながらかなと思っています。お金さえあればすぐにやりたいですね。

司会者:ありがとうございます。とはいえアメリカのCESは出られているんですよね? 

:そうですね。あれは(経済産業省のプログラムである)J-Startupさんに選んでいただいて、出させていただきました。

GROOVE Xだからこそ体験できる「新産業を作る」おもしろさ

司会者:ありがとうございます。では続きまして、事前にご質問いただいていたものの中から。「イベント3回を通じてGROOVE Xさんで働いてみたいと思うようになりました」。このイベントに参加されている方は起業志望者なんですが、こんなご質問も来ておりまして。

「林さんから見られて、どんな人と働きたいですか? またGROOVE Xで働くおもしろみについて教えてほしいです」というご質問になります。

:いい面も悪い面もあって、例えばスタートアップはすべてそうでしょうけど、あまり整理されてないのでカオスなところもあります。カオスだから自由にできるところもあるし、自由だからこそもっと本当は整理すべきじゃないかと思うところもある。ここは、どこの組織にいってもいろいろあると思うんですよね。

GROOVE Xで働くおもしろみとしては、まさに「新産業を作る」というところ。これはおそらく、どこの会社に行っても体験できないことですよね。新規事業といっても、通常のビジネスをちょっと進歩させたものが多い中で、完全に0から1はほとんどないはずです。国レベルでないはずなんですよね。

そういう意味ではユニークですが、逆に言えば成功している強豪がいるわけでもないので、参考になる例もないということもあって。それがいい面でもあり、悪い面でもありますね。

どういう人と働いてみたいかでいうと、まぁ圧倒的にLOVOTを愛している人ですね。LOVOTのためだったらなんでもできる。LOVOTの可能性を信じてつくしている人で、LOVOTの魅力を知り尽くしている人。そういう方々と働きたいなと思いますね。

司会者:ありがとうございます。LOVOTの魅力を感じたい方、ぜひスタハTAMAにいつもLOVOTがいますので、体験しに来てください。

「方向転換すると死ぬ」ハードウェアスタートアップのしんどいところ

司会者:では次の質問は、大学生の方からの質問になります。「現在工学系の研究をしています。研究室ではロボットの研究がされていますが、私はロボットチームではありません。自転車ライダーの動作を研究しています。

ただ先々、現在の延長線上でロボット作りを提案したいと思っています。ビジネスとしてロボットを企画開発したいと思っていますが、ロボットの開発計画についてアドバイスをお願いできますか。トライアンドエラーを繰り返すと、最初に考えた期間ではできないものと思っています」。

:いやぁ……本当ね。ハードウェアスタートアップはそこが難しいんですよね。他のハードウェアスタートアップの創業者ともよく話すんですけど、通常のスタートアップってピボット(方向転換)が大事じゃないですか。ハードウェアスタートアップってピボットするとお金がなくなって死ぬんですよね。

なので、トライアンドエラーは大企業でやったほうがいいかもしれないですね。もしくは大企業じゃなくても、ご自分で仕事を持ちながら試してもいいですけれども。起業しながら試してっていうのは、なかなかつらいです。経験を積んで、これでいけるぞというある程度のあたりを見つけてからやらないといけないのが、ハードウェアスタートアップのしんどいとこですね。正直、お金集めるのも大変です。

司会者:ピポットできないのは、確かにハードウェアのテクノロジーのスタートアップさんだとそうでしょうね。とはいえ、例えば細かいところと言いますか、先ほど開発秘話の動画の中で(もありましたが、試作では)LOVOTに口があったりしたんですね。あのあたりはトライアンドエラーといいますか、いろいろと試作品を作られていたんでしょうか。

:そうですね。そのレベルのトライアンドエラーはいいと思います。LOVOTを四つ足にするのかタイヤで動かすのかくらいのレベルのトライアンドエラーって、ロボットだったら普通にあると思うんです。でもそのトライアンドエラーをするだけでも、だいぶお金も時間もかけてしまうので、せいぜい口があるかないかレベルですね。それくらいのトライアンドエラーで済むほうがいいかなとは思います。

基本コンセプトから変えちゃう時には、どうしてもお金が掛かりすぎてしまう。他でお金が稼げてるといいですけどね。悩ましい問題です。

LOVOTのコンセプトは、あらゆる表現を「記号化しない」

司会者:すごくリアルな回答をありがとうございました。では続きましてのご質問です。「表情など、持ち主が愛着を持てるようにする工夫が散りばめられていると思いますが、それを思いついたきっかけを知りたいです」。こちらはいくつかの質問にわかれていまして、これがまず1つめです。

それから「またスペシャルな機能や性能が散りばめられておりますが、立ち上げまでにかなりの資金が必要だったと想像します。資金集めと、機能と費用をどのように折り合いをつけるのか。どのような事業プランでスタートアップしたのかを知りたいです」とのことです。

:まず表情については「記号化しない」というのがポイントですね。例えば笑った表情でにっこりマークとか、怒った表情で目を釣り上げるとか、漫画とかでやるじゃないですか。あれをやらないということです。

なぜなら人間の目はそんな記号化されないし、記号化した瞬間にノンバーバルじゃなくなるんですよね。記号イコール言語、バーバルコミュニケーションなんです。記号のコミュニケーションになっちゃうんですよね。その瞬間に、相手の感情をちゃんと読み取ろうとしなくなる。(チャットで)笑ってるスタンプが来たのと同じになっちゃうわけですね。

なので、表情や声を含めて、あらゆる表現を「記号化しない」というのが、LOVOTのコンセプトになります。

失敗は、成功するまで続けるか続けないかだけの差

:資金集めと機能と費用をどのように折り合いをつけるか。お金を集める時に大事なのは、「いついつまでにこれを出します、作ります」ってコミットすることですね。その集めたお金で、本当に1年後だったら1年後までにその試作機を作りきるということをすると、その試作機を基にまた次の試作機を作るお金が出てきます。

当然、最初から100億円が集まるわけないので。最初は少しのお金だけど、それで確実に作ると既存投資家が満足をするので、次の新規投資家も入ってきやすくなる。これを積み重ねてていく感じですかね。

司会者:ありがとうございました。たくさん質問をいただいているのですが、お時間が丁度来てしまいましたので、こちらで本日のイベントはクロージングとさせていただきたいと思います。

:あ、1つだけロボットコミュニケーターの吉藤オリィさんについての質問があったのでそれにだけお答えします。吉藤さんは、分身ロボットOriHime(オリヒメ)を作られたのですが、やっぱり諦めなかったことがすばらしいですよね。けっこう昔からお互いに知っているんですけど、ぜんぜんお金になるかどうかわからないような状況の時でも、やっぱり続けていらっしゃった。

結局大事なのってそこですよね。失敗って、成功するまで続けるか続けないかだけの差だと思うんです。ほとんどの人にとって続けられないような状況でも、続けたから成功してるんだと僕は思います。ガッツ、思い、情熱。これはなかなか真似できるものじゃないなと思っているので、本当にすばらしいと思います。

日本のスタートアップの課題は、いかに良い2番目・3番目を育てるか

司会者:ありがとうございます。3回にわたって行ってまいりましたGROOVE Xさんとのイベントも終了となります。ぜひ最後に林さんから、今日まで見ていただいたみなさんに一言メッセージをいただければと思います。お願いいたします。

:起業したい人ってけっこう多いような気がしています。その理由は、中小企業の社長がすごく多いからですね。「スタートアップ」は最近できた言葉ですけど、日本は昔から中小企業が多くて、やっぱり起業したいって人は多い。でも圧倒的に足りてないのって、実は起業家本人ではなくて、その下の2番目3番目の人たちですよね。

なので、いかに良い2番目3番目を育てるかが、日本では僕は大事なポイントかなと思います。自分の使命だと思うことを見つけた人は、ぜひ起業するのがいいと思いますが、まだ使命が見つかってない、だけどなにかやりたいっていう方は、2番目3番目として他の人の夢を担ぐというのも視野に入れてもらえたらなと僕は思います。

あと弊社のようなスタートアップですね。これはこれで私はたまたま運良く「新産業を作る」ことに携われましたけど、なかなかできるもんじゃない。一生のうち、目の黒い間に本当の新産業をやってる会社に出会うことって、あんまりないと思うんですよね。

そういう意味で、そこに興味を持てるんだったら、ぜひ弊社にも、青木にもコンタクトをいただけたらなと思います。以上になります。みなさん、がんばってください。

司会者:締めの言葉、ありがとうございました。今おっしゃられたとおりで、実は起業するだけが起業への道ではないのかもしれません。私たちも起業する人を増やすことをやっているんですが、今おっしゃられたような道もきっとあるんだろうなと思いながらお話をうかがっておりました。林さん、本当にありがとうございました。

:どうもありがとうございました。

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